叱り方にはコツがある!部下を伸ばす叱り方4つのステップ

「部下をうまく叱れない……」そんな悩みはありませんか? もし上手に叱れるなら、仕事の生産性を上げることができるはずです。今回は叱り方について伺いました。人間関係の悪化やモチベーションの低下を懸念して、改善するべき部下の行動をスルーしている方も多いでしょう。ぜひ参考にしてください。

【叱ることから逃げちゃダメ!】部下を伸ばす上手な叱り方4ステップ

「『叱る』というのは責める行為ではなく、相手の可能性を広げるコミュニケーションです」と語るのは『部下がついてくる人、離れて行く人の叱り方』の著者、齋藤直美さんです。今回は齋藤直美さんから、部下のモチベーションを下げずに叱る方法を紹介していただきました。

「叱る」は相手本位、「怒る」は自分本位


そもそも「叱る」と「怒る」はどう違うのでしょうか。

「簡単に説明すると、『叱る』というのは相手本位の行為ですが、『怒る』は自分本位の行為といえます。

自分が困りたくないから、相手に行動の回避を求める。『お前がちゃんとやらないと俺の評価が下がる』など、自分の利益や保身のためのコミュニケーションが、『怒る』という行為です。

その点、『叱る』は相手の成長や、望ましい行動を促すきっかけをつくることが目的なのです」(齋藤直美さん:以下同じ)

叱るときに大事なのは“説得”ではなく“納得”

叱ることが相手本位の考え方に基づいていても、やはり人間関係の悪化などの悪影響が心配です。部下を叱るときに大事なことは何なのでしょうか。

「部下が『納得』できる叱り方をすることが大切です。

『納得』とは、部下が上司の考えを聞いて『そうだよな!・なるほどな!』と腑に落ちる感覚のことです。人は自分で決めたこと、思ったこと、考えたことに対しては、納得感がありますよね。

人には自分の意思で決めたい心理があります。ですから、できるだけ部下自らが決める場面をつくり、自分で決めたと感じるような話し方の工夫をすることが、モチベーションを下げずに叱ることにつながるでしょう」(同)

一方、相手のモチベーションを下げたり、人間関係を悪化させる「叱り」は説得するような叱り方だと齋藤さんは言います。

「『説得』とは、上司の考えを部下に理解させようとすることです。強い説得は、上司の考えで部下をねじ伏せることになるので要注意です。そういった押しつけ感が残ると、『また押しつけられるかも……』と、あなたに警戒心や不信感を部下は抱くようになってしまうかもしれません」(同)

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部下の叱り方4ステップ


納得感を引き出す叱り方を実践するための叱り方を、段階に分けて教えてもらいました。

叱り方のステップ0:
準備-タイミングと場所を決める-

■叱るタイミングは“その場、その時”

「タイミングの原則は、その場その時。それが一番相手に伝わるタイミングです。しかし相手に余裕がない場合は、別のタイミングがベターです」(同)

■叱る場所は人前と個室を避ける

「人前はNGです。人に聞こえない配慮をして伝えた方がよいでしょう。内容の重要度によっては、個室に呼んでじっくり話すことも必要です。しかし、毎回叱るたびに個室に呼びだすと、“また説教部屋に呼び出された”とネガティブなイメージを植え付けてしまうので、毎回は避けたほうがいいかもしれません」(同)

■叱るのは直接が原則

また、叱る場合は直接が原則です。特にメールは感情的になりやすいので避けるべきでしょう」(同)

叱り方のステップ1:
事実の確認-主観を入れない-

「実際に叱るとき、最初にすることは事実確認です。例えば『◯分遅刻してしまったよね』ということを確認します。

しかしこのとき、主観が混同してしまわないように気をつけてください。例えば『遅刻したお前はやる気がないのか!』という発言には、遅刻という事実と、『遅刻=やる気がない』という主観の両方が混ざっていますよね。ここでは主観を入れずに、お互いに事実が把握できるまで話を確認しましょう」(同)

叱り方のステップ2:
感情の共有-本当の気持ちを伝える-

 

「事態を把握できたら、次はそれに対して自分が何を思ったか、気持ちを伝えましょう。遅刻の例えでいうなら『事故でもあったのかと不安になった』といった自分の気持ちです。

ただ、怒りの感情が湧いた場合、そのまま気持ちを伝えてよいのかといえばそうではありません。伝えるのは本当の自分の感情や気持ちです。感情は二重構造でできています。怒りの感情は表に出やすいですが、根底にあるのは落胆で あったり、不安など別の感情なのです。そういった怒りの奥にある感情を伝えることで、建設的なコミュニケーションを取ることができるようになるでしょう」(同)

叱り方のステップ3:
望ましい行動の共有-具体的行動を示す-


「こちらの気持ちを伝えたところで、次は改善するべき具体的な行動を示します。遅刻の例えでいうなら『〇時に出社しよう』と、具体的に提示することです。

そこで注意したいのは、あまり抽象度の高い指摘をしないことです。叱るというのは意識改革ではなく、行動改善に意味があります。『もっと頑張れ!』など抽象的に伝えてしまうと、具体的にどう改善すべきか部下に伝わらず、行動の改善がされずまた同じことを繰り返すことになってしまいます。できるだけ具体的に改善するべきことを伝えましょう」(同)

叱り方のステップ4:
メリットの共有-最後は相手を快い状態に-




「最後は励ましたり、褒めたりして相手の気持ちが『快・プラスの感情』になるようにしましょう。

人間の行動は感情の影響を受けています。快の感情のときは積極的に、不快の感情のときは消極的になるものです。そのため、『あなたが行動を改善することで、みんなから信頼されるよ』など励ましたり褒めたりして、感情をプラスにして終わるということがポイントです」(同)

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これだけは言ってはいけないNGフレーズ4パターン


叱るときには、何気なく発したひと言で取り返しのつかなくなるほど相手を傷つけてしまうこともあります。そこで最後に、叱る上で絶対避けたいNGフレーズを紹介します。

■YOU+否定言葉
『だからお前はダメなんだよ』

『キミにはがっかりだ』

『もう信用できないな』

「YOU(あなた)と否定的な言葉がセットになると、『YOU(あなた)=ダメ(否定)』という意味として伝わってしまいます。あなたがダメではなく、どの行動がまずいのか具体的行動を示さなければ行動改善は促されません」(同)

■部下の能力を否定
『こんなこともできないの?』

『新入社員でもできる仕事なんだけど』

『難しいことなんて頼んでないけどな』

「こうした言い回しは、遠回しに部下の能力を否定しています。部下にはイヤミな上司としか映らないでしょう。上司にとっては簡単に思えることでも、部下にとっては難しいというケースもあります。自分の基準でとらえるのではなく、相手の基準でとらえてみましょう」(同)

■部下の可能性を否定
『この仕事向いてないんじゃないかな』

『うちの社風に合ってないよ』

「直接、人格否定をしている言葉ではありませんが、注意が必要です。『向いていない/合っていない』という発言は、『この先の成長は期待できない』と、部下の能力や伸びしろまで否定している言葉として伝わってしまいます」(同)

■部下のバックグラウンドを否定
『お前、大学で何勉強してきたんだ?』

『どういう育ちしてきたんだ?』

『だからイマドキの若いやつはダメなんだよな』

「学歴、家庭環境、社会的環境など相手のバックグラウンドまで否定することは、環境や過去の人生を否定することにつながります。また、その家族や恩師まで否定することになりますので特に注意です」(同)

叱るのは部下も上司も育つ機会

 



「叱る」という行為はただこちらの感情を伝えるのではなく、相手の可能性を広げるために細心の注意を持って行うコミュニケーションだと分かりました。

最後に齋藤さんから部下を持つビジネスパーソンにメッセージをもらいました。

「叱るというと相手を責める悪いイメージがありますが、叱らないということは相手の成長の可能性を閉じることになります。果たしてどちらが悪いことなのでしょうか? 

叱ることが苦手な方も、部下の可能性を広げるためのコミュニケーションだと前向きに捉えてください。教育は『共育』といわれるように、部下と一緒に上司も育つ機会です」

ぜひ皆さんも、部下も自分も育つような叱り方を実践してみてくだい。

※この記事は2015/10/30にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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