お風呂業界で何かしたい!と、大学生時代のアルバイトから通算8カ所のお風呂屋さんで働いてきた水品沙紀さん(26)は、今までに1,000以上の温泉を巡ってきたほど大の温泉好き。
ある日、中三依の自然に一目惚れした水品さんは、2年間閉館していた「中三依温泉 男鹿の湯」の運営を再開させるためオーナーとなり、奮闘しながらも見事、今年4月にリニューアルオープンさせました。
今回は温泉ソムリエアンバサダーで、温泉ライターでもある水品さんに、好きなことを仕事にするための原動力や開業のきっかけについてお伺いしました!
とにもかくにも「温泉」が好きだった
幼少のころから「お風呂が好きでした」という水品さんは、大学生になると迷わずお風呂屋さんでアルバイトを始めます。その理由とは…?
「温泉に入り放題&大衆演劇見放題だったんです。実は最初はお風呂というより、大衆演劇が目当てでしたね」
そんな水品さんは、時には大衆演劇の劇団に入団し、なんと1カ月?24時間を温泉施設で過ごすこともあったのだとか。
その後、大学を卒業し、会社員として温泉関係の仕事に就きます。そこから起業したきかっけは何だったのでしょうか。
「まず本能的に言うと、社会人時代の最後の勤務先が、空気と水の汚い地域だったため、三依の空気と水に触れた瞬間に後戻りできなくなったんです。
また、経営者の知り合いの何人かに、『早く始めちゃった方が勉強になるし、自由だよ』と助言を受けたことも理由の一つでした。
実は勤務先が、たまたま上司のいない環境で、2年ほどのびのびとした会社員生活を堪能していたのですが、異動で上司ができた途端に反発しまくり、自分が全く会社員に向いていなかったことを思い知りました(笑)」
温泉への情熱的な愛が、起業へと導いた
そんな中、SNS上で休館中だった「中三依温泉 男鹿の湯」のオーナー募集記事を目にし、現地を訪れたところ、その壮大な自然や穏やかな環境に心を奪われ起業することを決意します。
しかし、見知らぬ土地で初めての起業。そこには苦労も多かったようです。
「土地や源泉などの権利関係がややこしく、話が難航してしまったり、一度閉鎖した状態での再開だったので、複数もの営業許可の取得、源泉調査など何から何まで手探り状態でのスタートでした。あとは地域性なのか、見積もりを出して、見積もり通りに請求がくる…という自分の中での常識が当てはまらないことが多く、苦労しました」
さらに、20年目という一番設備の老朽化が目立つ時期に、2年間の休館と大雨のダブルパンチで設備が次から次へと壊れていき、途方に暮れてしまったのだとか。そんな中でも、水品さんを救ったのは…。
「やはりパワーの源は温泉への愛と、その温泉を利用してくれる人たちの笑顔を見たかったことですね。
立ち上げ当時は、旅館街のように周りがライバルということもなく、周りの人たちは基本的に歓迎モードだったので、ほかのことでいっぱいいっぱいだった私には精神的にやさしかったことも大きかったです」
そして、黒川温泉の「黒川温泉一旅館」という「温泉街が一体となって助け合いながらお客さんをおもてなしする」という考えに憧れ、実現を目指して奮闘。
将来的には、本物の温泉で湯治する文化を現代の日本にも取り戻したいと思っているそうです。
温泉という文化と資源を守っていきたい
そんな“温泉愛”溢れる水品さんに、温泉の魅力とこだわりについて教えていただきました。
「温泉に漬かると人が自然の一部だということを再認識でき、心身共にゆがみが出ているところが矯正される気がするんです。
現在の施設は違いますが、私は特に45度くらいの熱いお湯(生源泉)がドバドバ掛け流されている小さめの共同浴場が好きですね。泉質より泉温重視で、手が加わっていない生命力のあるお湯(運び湯、加温、塩素消毒、循環湯などはNG)にしか興味がありません」
現在は日帰り温泉をメインに、食堂、BBQ場、キャンプ場、コテージの管理運営をしているという水品さん。
同級生と水品さんの二人のみで運営しており、掃除や厨房での料理、WEB管理・経理財務まで全てを手がけているので、休館日の週1日以外は休む暇もありません。
しかし水品さんは充実した毎日を送っていて、顔が生き生きとしています。そんな水品さんにこれからのビジョンや夢を伺いました。
「湯治文化を再来させて、日本を元気にしたいと思ってます。私自身も夏は休みなく働いて、冬場はガッツリ休んで視察を兼ねた湯治休暇をとる予定です。
具体的には、温泉のある地域に住む人が増えたらいいなと思っています。資源と医療費が削減できて、幸せ度もきっとアップするはず。
日本には、全国民をどっぷり癒やすだけの温泉と自然がこんなに有り余っているのに、寂しく垂れ流されているのが現状なんです」
好きを仕事にしている水品さん。どうすれば好きなことを仕事にできるのでしょうか。
「逆に好きじゃない仕事はできないたちなので、よく分かりませんが、図々しくしてるとうまくいってしまうと思います!(笑)」
20代は「自分を売れ!」
最後に20代のビジネスパーソンへ、同世代の水品さんからご自身の経験をもとにキャリアについてのアドバイスいただきました。
「独立して、初めて無限に広がる海の中を見た気がしました。大きな航海に出れば広い世界を知ることができる。何かに挑戦しだせば、自分が思う以上に支えてくれる人やものは多いことに気づくと思います。
あと、20代ならば恥を捨てて『自分を売る』のが近道だと思います。私も好きで自分の顔をパンフレットやHPに載せているわけではないので…。
最悪、大失敗しても日本には、無料で入れる極上温泉がたくさんあるんです。そう思えば怖いものなんてないなと思うんですよね」
まとめ
20代の女性からの等身大の言葉を聞けた今回の取材。「20代ならば恥を捨てて『自分を売る』のが近道」―これはご自身の経験の中から得た言葉なのではないでしょうか。
失敗や恥を恐れず、時には若さを武器にして大胆な行動に出ることが、周りを巻き込むきっかけをつくってくれるかもしれませんね。
※この記事は2016/10/14にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています
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