常見陽平が語る、“好き”を仕事につなげられる人の5つの共通点

「好きなことを仕事にしたい」と多くの方が思っているはず。しかし、実際に実現できるのは一握りでしょう。“好き”を仕事につなげることができる一握りの人は、どのような共通点を持っているのでしょうか?

常見陽平が語る、“好き”を仕事につなげられる人の5つの共通点

「好きなことを仕事にしたい」と多くの方が思っているはず。しかし、実際に実現できるのは一握りでしょう。“好き”を仕事につなげることができる一握りの人は、どのような共通点を持っているのでしょうか?

以前キャリアコンパスでは「常見陽平さんが問う、『自由な働き方』の幻想と現実」という記事で、人材コンサルタントで千葉商科大学専任講師である常見陽平さんに、近年注目を集めている「自由な働き方」について聞きました。今回は常見さんに、“好き”を仕事につなげられる人が持つ共通点を挙げてもらいます。

「好きなことを仕事にする」と「好きなことを仕事につなげる」は違う


さて、好きなことと仕事はどのようにつなげていけばいいのでしょうか……と、本題に入る前に、明確にしておかなければならないことがあると常見さんは言います。

「“好きなことを仕事にする”のと、“好きなことを仕事につなげる”というのは、少し意味合いが違います。前者は、ミュージシャンや小説家などをイメージすると分かりやすいかもしれません。まさに好きなことを仕事にしている人たちです。一方で後者は、一般的な企業で働く会社員であっても可能です」

“好きなことを仕事にする”のは、突出した才能や特別な能力、努力がない限りかなりハードルが高いようです。しかし、“好きなことを仕事につなげる”のは、意識するだけで、意外と誰にでも可能なのだと常見さんは言います。

常見さん自身も、会社員時代には、いかに好きなことを仕事につなげるかを考えて働いていたのだとか。

「例えば、ある企業の人事部で働いていたときには、“好きなことを仕事につなげる”を意識的にやっていました。音楽が好きだった私は、会社の就職説明会をロックフェス風にできないかと考えて、思いついたのがロックフェスに不可欠な“リストバンド”を参加証として就職説明会に導入すること。さらに、ロックフェス風に同じ時間内にいくつもの企画を走らせ、自由に回れるようにしました。テーマ曲やムービーも友人につくってもらいました。ある意味で公私混同ともいえます。そんなふうにして、好きな音楽を仕事につなげていました」

今の仕事とは異なる好きな仕事を始めるのではなく、今の自分がしている仕事をいかに工夫して好きなこととつなげるか。その“つなげる”という発想が、基本になるといえそうです。

好きなことを仕事につなげられる人が持つ5つの共通点とは?


では、どうすれば、好きなことを仕事につなげることができるのでしょうか。常見さんに、好きなことを仕事につなげられる人が持つ共通点を5つ挙げてもらいました。

1.「最初から10のことをしようとするのではなく、1から始める」


「いきなり好きなことを10やるのか、まずは1からやらせてもらって、それを徐々に増やしていくのか、どちらのほうが好きなことを仕事につなげられるかといえば、当然1からやる人です。

人の成功体験を聞いたり、本で読んだりすると、“最初は無謀な挑戦だった”っていう話がよく出てくる。つまりいきなり10にチャレンジしたかのような話ですね。

実は、それは多くの場合、後から付け足した美談だったりするので注意が必要です。やっぱり成功に見合うだけの地道な作業や根回しをしていることがほとんど。最初から10をやれる人は、本当に限られた人だけだと考えたほうがいいでしょう。

何事も今やればいいわけではありません。1年目に種まきをしたものが、3年目に実ればいいくらいに考えてみてはどうでしょうか」(常見陽平さん:以下同じ)

2.「一緒に仕事をした人にとってもプラスになることをしている」


「一緒に仕事をする相手が法人でも個人でもそうだと思うのですけど、その人を違うステージへ連れていくことが重要です。その期待感のようなものを相手に感じてもらえると、何でも仕事になりやすい。

自分がただ“やりたい”というだけでは仕事につなげられません。世の中は、私やあなたのためだけにあるわけではないからです。

それをやったことで、みんなをすごく気持ちよくさせるとか、面白いところに連れていくとか、最終的にもうけさせるとか、企画を通してくれた課長なり取引相手なりを出世させるなどして、“違うステージへ連れていく”ことが重要なんだと思います。それができる人は、好きなことを仕事につなげられるようになるのではないでしょうか」

3.「好きなことができるポジションを確保する」


「例えば僕の場合、音楽が好きなので、音楽評論とかやりたいなって中二病的(笑)なことを考えていたんだけど、そんなもの最初からやらせてもらえるわけないですよね。

だけど、いろんな仕事を受けて、ネットニュース界隈でのライターとしてそこそこ売れてきた中で、“あの人はどんな音楽を聴いているのか”という企画をやらせてもらえるようになった。“労働問題を扱っている人なのに、ヘヴィメタルを聴くんだ”というような切り口から、音楽のことを書いたりできるようにしたんです。

そんなことを続けていたおかげで、今はメタルバンドのアーティストインタビューの仕事をいただいたりするようになった。1から始めるということと近い話ですけど、好きなことを仕事につなげられるポジションに、どうやって就くかを考えることが重要なのではないでしょうか」

4.「みんなを口説けるような圧倒的に強い企画を考える」


「依頼された人が“こんな面白いことをさせてもらえるんだ”と思えるくらい、圧倒的に強い企画が提案できれば、好きなことを仕事につなげられるのではないでしょうか。

CMを見ていて、『え? この人がそんな役をやっちゃうんですか』って感じたことがある人は少なくないでしょう。それって、役者が企画に動かされたからだと思うんですよ。つまり、『これならやってみたい』『これなら懸けてみたい』と思えるような、圧倒的に面白くて価値のありそうなものが提案できれば、その案件は通るんです。

また、基本的にはやりたいことの押し売りではダメだけど、よほどの熱量があれば別かもしれないです。『お前だったらだまされたと思ってやってみよう』と思わせるような熱の入った提案ができれば、きっとそれは仕事につながっていくのだと思います」

5.「ライスワークでまわりに味方をつくる」


「味方をつくっておくということも大事だと思います。ときに、ライバルさえも味方にすることが必要でしょう。

『お前が事を起こすなら、何であれ応援するぞ』って言ってくれる人が、組織内外にどれだけいるか。それはこびて仲間をつくるというのとは違います。人は馬鹿じゃないから、“こいつこびているな”と分かってしまうからです。

ただし、何かが起こってみないと、誰が本当に大事な場面で味方になってくれるかは、分からないものです。だからこそ普段からきちっと仕事をこなしておく。私はライスワークとライフワークという言葉を使っているのですが、日常業務であり食べていくために必要なライスワークで、しっかりと周囲の期待に応えておくことが大切です。

それが信頼につながり、人生を懸けてでもやりたい仕事(=ライフワーク)をやる際に、味方になってくれる人をつくるのだと思います」

“好きを仕事につなげる”のはゴールではない


最後に、好きなことを仕事につなげたい若者に向けての一言をお願いしました。

「結局、最後は“想い”があるかどうか。“なんでお前がやるの?”って聞かれたときに、どれだけ“想い”を語れるかだと思います。ぜひ企画を考えるときなどに、あらためてそれを自分に問いかけてみてください」

常見さんは、「“好きなことを仕事につなげる”をゴールにしてはだめ」とも言っていました。一度だけの成功で満足してしまうため、そこを目標にしていては、継続性が生まれず、成長も止まってしまうからだそうです。

好きなことを継続して仕事につなげていくためには、やり遂げたといって満足せずに、すぐに「はい、次!」と思えるかどうかも、重要なことなのではないでしょうか。

著者プロフィール
常見陽平(つねみ・ようへい) 評論家・コラムニスト。北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、玩具メーカー、コンサルティング会社などを経て、現在は千葉商科大学国際教養学部専任講師。著書に『「就活」と日本社会 平等幻想を超えて』(NHK出版)、『下積みは、あなたを裏切らない!』(マガジンハウス)、『自由な働き方をつくる』(日本実業出版社)などがある。


※この記事は2015/09/25にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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