世界を救う企画書?途上国の教育格差を改善!e-Education Projectの場合?

会社や団体はいったい何のために存在するか考えたことはありますか? 「取引先」「従業員」「株主」、そして「社会」。

世界を救う企画書?途上国の教育格差を改善!e-Education Projectの場合?

 

会社や団体はいったい何のために存在するか考えたことはありますか? 「取引先」「従業員」「株主」、そして「社会」。

多くは世界の誰かの抱えている問題を解決するために存在しており、また世界で次々と立ち上がる事業は、その発起人の解決したい問題に対してのさまざまな“志”でもあります。本企画ではそんな“志”の詰まったプレゼン資料を“世界を救う企画書”と称し、発起人の言葉とともに紹介します!

今回は途上国の教育格差を是正するための活動を続ける「e-Education Project」の共同代表の一人、三輪開人さんに、同団体の活動報告書を拝見しながら、お話を伺いました。

【e-Education Project活動報告書】(PDF)

教育格差是正にアプローチする


満足な教育が受けられない途上国の農村部で暮らす高校生たちに、現地の有名予備校講師や有名学校教師の授業を収録したDVDなどの映像を届ける活動を行っている「e-Education Project」。三輪さんはもう一人の共同代表を務める税所篤快さんと共に2010年、この団体を設立しました。

これまで10カ国(12地域)に計500本の映像を作成し、2,000人の若者に届けているそうです。最初に活動を始めたバングラデシュでは2014年までに、貧しい農村部の50人以上の高校生が難関大学への合格を果たしています。

日本での経験が教育格差に目を向けさせた


「e-Education Project」の活動は、まずバングラデシュからスタートしました。この国の教育格差とは具体的にどのようなものだったのでしょう。

「バングラデシュでは、慢性的な教員不足や、高校卒業だけでは相応の学力が身に付かないなどの理由から、9割の人が予備校で学んだ後でなければ大学に進学できないというシステムのゆがみがありました。そこで暮らす子どもたちは、優秀な教員も予備校もない農村部に生まれただけで大学進学を断念しなければなりません。その格差を是正したいという思いから活動をスタートしました」(三輪さん 以下同じ)

「アジアの最貧国」などといわれるバングラデシュにはさまざまな問題があると思うのですが、その中でも「教育」に目が向いたのはなぜなのでしょう。

「大学4年生のころ、マザーハウスというアパレルベンチャーのインターンとしてバングラデシュに赴いた際、グラミン銀行グループのインターンとして来ていた税所と知り合いました。彼は高校時代、学校の授業に付いていけず留年勧告までされた苦い経験があります。

私は中部地方の田舎が故郷なのですが、日本のトップレベルの教育を受けるには限られた大都市に行かなければ無理だと常々感じていました。そうしたお互いの経験から、特に教育格差に対して目が向いたのだと思います」

活動の内容はいたってシンプル


都市部の優秀な予備校講師の授業をDVDなどに収録し、大学受験できる水準の学力を身に付けられる環境を農村部に整える、というのが「e-Education Project」の活動。このアイデアはどのように生まれたのでしょう。

「税所は学力が身に付かず苦しんでいた高校時代、予備校のDVD授業を受講し、一年で早稲田大学に合格できるまでの学力を身に付けるという体験をしていました。

私自身も同じ予備校の卒業生であり、大学生のころはずっと予備校でアルバイトとして働いていた経験もあり、このDVDを活用した教育支援がバングラデシュの教育格差是正につながると確信を持ちました」

NPO法人格を取得してさらなる活動拡大へ


「e-Education Project」立ち上げ当初から現在まで、たくさんのご苦労があったと思われます。

「立ち上げたばかりのときは、何か問題があるというものではなく、問題しかないという感覚でした。事業をスタートしようとしたバングラデシュの国情もまだまだ分からなかったですし。実際事業を始めてみると、さらに大変です。資金不足、人財不足、時間不足と、足りないものばかりでした。しかし、それでもとにかく前に進むことを考えましたね。足りないなら集める、無理でも何とかするというように工夫や改善を重ねて常に前を目指しました。結果、少しずつではあるけれど、なんとか実績を積み上げてくることができました。現在は20名を超える仲間たちと一緒に活動しています」

現在「e-Education Project」は、NPO法人格取得に向けての申請を進めています。NPOとなることで、どのようなメリットがあるのでしょう。

「現在は任意団体のNGOとして活動していますが、法人となると信用度という点で大きく前進できます。助成金の申請などでも、今よりも有利になることが期待できます。

もしNPO法人格取得が達成できたとしても、その後も多くの方々からご支援をいただかなければ私たちの活動は成り立ちません。そのために心掛けていることのひとつとして、活動の目的や内容を分かりやすく説明できるツール作りです。私たちの活動や目標は、すごくシンプルだと思うんです。活動報告書などは、その活動や目標などをストーリー仕立てにまとめることで、まるで紙芝居を見ながら内容を理解していただけるようにと意識して作成しています」

20代の若いスタッフだけで構成されているという「e-Education Project」。同団体の活動の根っこにあるのは、社会が直面している課題を自分事として感じ取る感受性と、それを変えられると信じる気持ち。そして何より実行に移す行動力なのではないでしょうか。「まだ自分は若手だから……」と思っている20代のビジネスパーソンの皆さん、“志”次第で明日から会社を、そして社会を変えられるのかもしれませんよ?


(識者プロフィール)
三輪開人/1986年生まれ。早稲田大学法学部在学中に、同大学の税所篤快と共にNGO e-Education Projectを設立。大学卒業後はJICA(国際協力機構)で東南アジア・大洋州の教育案件を担当。2013年10月に退職し、e-Education Projectの共同代表になる。


※この記事は2014/06/26にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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