「実現したい世界がある。そのために私は”起業”という道を選んだ」保育士から会社の社長へ。キッズカラー雨宮みなみ流、人生を180度変える方法

今回、お話を伺ったのは「子どもの”イマ”を虹色に」という理念のもと、こども法人キッズカラーを運営している、雨宮みなみさん。

「実現したい世界がある。そのために私は”起業”という道を選んだ」保育士から会社の社長へ。キッズカラー雨宮みなみ流、人生を180度変える方法

今回、お話を伺ったのは「子どもの”イマ”を虹色に」という理念のもと、こども法人キッズカラーを運営している、雨宮みなみさん。

起業家としての人生を歩んでいる彼女ですが、前職は保育士。現在、手がけている事業も保育士時代に感じた疑問をもとに立ち上げたそうです。”起業”と聞くと、多くの人が「自分には無理……」「ハードルが高すぎる……」と思ってしまいがちですが、雨宮さんの生き方を覗いてみると、起業はハードルが高いものではなく、”やりたいこと”を実現するための一つの手段であることが分かります。

保育士としてのキャリアから一転、起業家としての人生を歩むことにした彼女の人生を紐解き、”やりたいこと”を形にするためのヒントを探っていきます。

職業体験を通して見つけた、自分が自然とずっと笑顔でいれる仕事。私が保育士を目指そうと思ったワケ

 

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-- 現在の会社を設立する前に、保育士として6年間働かれています。なぜ、保育士を目指そうと思ったのでしょうか?

雨宮:保育士を目指したキッカケですか。幼い頃から、自分よりも小さい子と遊んだり、面倒を見たりするのが好きだったことも一つの理由ですが、心の底から「保育士を目指そう!」と思うようになったキッカケは中学生時代の職業体験ですね。

職業体験を通して保育園に訪れ、保育という仕事に触れてみたときに「こんなにも自分が自然と笑顔でいられる仕事があるんだ!」と思って。そこから、保育士の仕事をもっと詳しく知るために、夏休み中に保育園に電話してボランティアにも参加しました。

-- ちなみに保育士の仕事をやってみて、何が最も楽しかったのでしょうか?

雨宮:楽しかったことは色々とありますが、特に印象に残っているのは、子どもたちと共鳴した瞬間です。共鳴と言ってもそんな大袈裟なことではなくて。

例えば、普段は許されていないことを特別にOKにして、少しだけハメを外して遊ぶ、とか(笑)。思いがけない場面に遭遇して子供と一緒に目を丸くしたり、思わぬハプニングにゲラゲラ笑ったり、些細なことなんですけど、大人や子どもといった概念を飛び越えて、子どもと同じ“時”を隣で体験した時の感覚は、今でも思い出すとニヤけてしまうくらい本当に楽しかったです。

-- その感覚、まさに保育士しか味わえないものですよね。

雨宮:そうなんです。保育士の仕事を経験し、その楽しさを知ってからは「保育士になる」という気持ちは一瞬たりとも揺らぎませんでしたね。高校を卒業してからは、そのまま保育専門の短大に進学し、保育士になりました。

-- 実際に”保育士”として働き始めてみて、どうでしたか?「これはすごい大変だった……」みたいなことはありました?

雨宮:これは保育士に限らず、どの仕事でも同じだと思うのですが、やっぱり1年目は本当にキツかったですね。あれだけ「保育士になりたい」と思って就いた仕事なのに、正直、「辞めたい…」と思うこともあるほどでした(笑)。


未知なことに対する大きな不安、初めての環境で責任ある仕事を任せてもらったのに思うように動けない自分への葛藤。色々な感情が蓄積されていき、精神的にも身体的にもだいぶパワーを使っていたんだと思います。不器用な分、余計に。

でも振り返ってみると、その1年はその後の保育士生活につながっている部分がすごく多くて。大変だった分、その後の自分の人生というか、生き方に繋がる土台が築けた気がしています。

逆に、保育士という仕事が、悩みも苦労もせず淡々とこなせてしまうような単純な仕事だったら、それはそれで困りますけどね(笑)。

“やりたいこと”を形に。「こんなものがあったらいいな」という思いから始まった、起業家としての人生



-- その後、6年間保育士として活動を続け、起業へ。なぜ、保育士として歩む人生を辞め、起業をしたのでしょうか?

雨宮:保育士として働き始めてから、保育士の置かれている環境にちょっとした疑問を感じていたんです。

-- ちょっとした疑問というと?

雨宮:保育園に通う年齢の子どもたちは、人生の土台とも言えるほど重要な時期を生きています。でも、その子どもに大きく携わっているとても責任の大きい保育士がおかれている環境は、決して良いものとは言えなくて。

毎日、様々な体験を通して一つ一つ成長していく子どもたちの横にいる大人が、こんなに疲弊していて、果たして子どもたちの育ちは保たれるのかな、と。そう思ったんです。


「子育て支援はあるけれど、保育士を支援するものは何もない…」そして、「社会から見ても“居て当たり前”という感覚が強く、保育士の価値がきちんと評価されていない」そんな疑問を感じていました。

その疑問を解決するためには何をすればいいのか考えていたら、「“支援”というのはおこがましいけれど、“こんなのあったらいいな”を形にすることならできるかもしれない」という想いが生まれ、起業への一歩を踏み出し始めました。

-- ”疑問”を解決するための起業。実際にどんなことをしていったのでしょうか?

雨宮:まずは、“あったらいいなという思いを形にするところからスタートしたので、起業よりもやりたいこと(現在の♪[ほいくる]サイト)のアイディアを形にするために行動していきました。


どういうサイトにしていけばいいのか。アイディアを出しては構想を練り、掲載するあそびの内容を書き出しながら一つ一つ記事にしていって。それを毎日毎日、地道に作成していきながら、少しずつ形にしていきました(その当時はまだ、保育士も続けていたので)。

なので、HoiClue♪[ほいくる]サイトのアイディアが閃いてから、約8か月後くらいに起業したといった感じです。

-- “やりたいこと”を形にするためには、小さくスタートしていくのが大切だということが分かりました。実際、どのように事業を立ち上げ、現在はどういった展開をされているのでしょうか?

雨宮:現在は、こども法人キッズカラーという会社を通し、子どもに失礼のない社会の実現に向け子育てや保育に繋がる、2つのサービスを運営しています。

1つは、起業するきっかけともなったHoiClue♪[ほいくる]という、保育や子育てに繋がる遊び情報サイトです。子どもと楽しむ遊びのタネ(レシピ)を掲載しているサイトになります。“うまくやるための大人の助言”ではなく、“子どもたちのやってみたいが溢れるきっかけ”を大切に、様々な遊びのタネを掲載しており、現在では保育士の3分の1以上の方にお使いいただいています。

もう1つは、「ほいくずかん(4月以降、HoiClue♪「ほいくる」に名称が統一されます)」という、保育や遊びを楽しく記録したり、写真を共有することができるアプリです。数多くの遊びの写真が投稿されており、遊び溢れるアプリとなっています。


さらに、かくれ保育士さん(いわゆる潜在保育士のこと。キッズカラーでは、かくれ保育士さんと呼んでいます)が、子育てしながらちょっとした仕事ができる、HoiClue♪[ほいくる]のライタ―の仕組みや、月2回オフィスを開放して、大人や子どもが自由に遊ぶことができる、“コドモガラクタラボ”というイベントを開催しています。

-- "保育士の価値を向上させる"という思いが詰まっているサービスだなと思いました。今でこそ、"保育士"の重要性が説かれるようになってきていますが、起業当時は周囲の環境もだいぶ違ったんじゃないでしょうか?

雨宮:起業当初は、想い描いている世界観を周りに理解してもらうまでに時間がかかりましたね。保守的な保育業界と、保育についての認識が薄い(6年前の当時は特に)社会それぞれに、どのようにアプローチしていくべきか、認知を広げていけばいいか。そこにとても大きな壁があったことを今でも覚えています。

もちろん、その壁を乗り越えることは簡単なことではなかったのですが、そこは地道にサービスを作り上げて、保育士が集まる勉強会でアンケートをお願いしたり、ビラを配ったりしたりと小さいながらに継続して発信することで次第に認知も広がっていきました。想像以上に時間がかかってしまいましたけど……。

起業してからの出産……。私は仕事と育児の両立をこうやって図っています!



-- 雨宮さんの場合、起業してから出産もされてますもんね。余計に大変な気がします。

雨宮:本当に日々、学ぶことばかりですね。妊娠・出産を経験してからは特にめまぐるしく、その時々の環境に応じてどう並行していくか、毎日試行錯誤を繰り返しながら濃い生活を送っています。


-- 働きながら育児をする。その大変さ、詳しくお伺いしたいです。

雨宮:大変なこと…なんだろう。保育士ということもあってか、子どもと過ごす時間って、何かが片手間の状態で関わることができなくて。「100%の状態で子どもと向き合いたい」という気持ちが強いあまり、要領が悪くなってしまい(笑)。

だから、極力、仕事とプライベートの線引きをしっかりとする方が私にとってはバランスが取りやすいのですが、最初はそれを実践するのが難しかったですね。

寝不足なときも多いです(笑)。でも、夫婦できちんと役割分担ができていることもあって、今のところはそこまで大変さは感じていないかもしれません。

-- 夫との連携ができているからこそ、仕事も育児も全力で取り組めている。

雨宮:そうですね。二人がいて初めてできること、広がることも多いと思っているので、何が大変というよりは今しかないその時々の環境をいかに楽しむかが大切かな、と思っています。もちろん、バタバタしていることは多々あるんですけどね(笑)。

仕事とプライベートのバランスは、子どもの成長によってもバランスの取り方が変化していくので、その都度気をつけていきたいなと思っています。

起業をして味わった苦悩や迷い……それでも、たくさんの可能性と多様性に溢れた子供の世界を守るために今日も私は走り続ける



-- 起業して6年が経ちますが、何が一番大変でしたか?

雨宮:起業してからの4年間は外部から資本を入れておらず、受託などしながら事業の拡大を目指していたんです。そのため、限られた時間で何にどう取り組むべきかをずっと考えていましたね。それこそ、サービスを軌道に乗せるまでは環境的な部分ですごくハードだったり、事業での収入を確保するという部分での苦労もあったり。

-- 事業面での悩みが色々降ってきたと。

雨宮:ユーザー課金をスタートし、ある程度の売上も確保できていたのですが、果たして本当にそれでいいのか、収益の生み出し方と事業の作り方は、何度も議論を重ねてましたね。

HoiClue♪[ほいくる]サイトの舵の取り方など、最終的には決断あるのみなんですけど、決断するための判断材料をとにかくかき集めつつ、同時に、キッズカラーだからできることや軸にブレがないか、にもこだわりながら進めてきて、ようやく今に至ります。

-- では最後に。これからキッズカラーを通して、社会ひいては誰の生活や仕事を変えていきたいと考えていますか?

雨宮:子どもと大人が共に生きる社会の軸に、小さくて大きい“子どもの姿”がしっかりと在り続ける社会を実現してきたいです。おもしろおかしくて、デタラメで、でもどこか本質をついていて。たくさんの可能性と多様性に溢れている子どもの世界や、一人一人の育ちを守って保っていくことが、これからの未来にも大きく繋がっていくと思っています。

そのためには、まずは子どもの近くにいる大人が抱えている様々な課題改善に努めることから。中でも、まずは子どもの育ちに大きく関わっている保育士の支えになる仕組みを作る(例えば、毎日の保育がもっと楽しくなったり、長期的に安定した就職をすることができたりする)ことで、長期的に安定した、子どもの育ちが保たれる環境を築いていきたいです!

同時に、きちんと保育士の価値を社会に発信しつつ、会社自身もしっかりと価値を生み出し続けながらながら成長していきたいと思います。

-- 雨宮さんが思い描く世界の実現、心から応援しています!本日はワクワクするお話、ありがとうございました!

(取材・執筆:新國翔大)

※この記事は2016/11/04にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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