世界よ、これが日本のアニメだ! 最強の「ごっこ遊び」、プロコスプレイヤーの仕事って?

近年ハロウィンが日本でも定着し、コスプレが一般的な趣味として広く認識されるようになりました。矢野経済研究所が発表した国内における「『オタク』市場に関する調査結果2016」によれば、2015年度の“コスプレ市場”は、なんと435億円だったそう。

世界よ、これが日本のアニメだ! 最強の「ごっこ遊び」、プロコスプレイヤーの仕事って?

近年ハロウィンが日本でも定着し、コスプレが一般的な趣味として広く認識されるようになりました。矢野経済研究所が発表した国内における「『オタク』市場に関する調査結果2016」によれば、2015年度の“コスプレ市場”は、なんと435億円だったそう。

そこで今回は、コスプレを仕事にする「コスプレイヤー」という仕事に密着。ゲームやアニメのキャラクターになりきってファンを楽しませるコスプレイヤー、その知られざる仕事内容やお給料、今後の可能性に迫ります!

日本が誇る! 美しきコスプレイヤーたち


まずは、実際に国内外で活躍されているプロの人気コスプレイヤーさん2人を、ご本人のコメントとともにご紹介しましょう。2人には、コスプレイヤーという仕事のやりがいについて聞いてみました。

<コノミアキラさん>
独自の発想力とメイク技術を駆使し、男女のキャラクターの分け隔てなく、全くの別人へと変化することができる。「世界コスプレサミット」では代表にも選出され、日本におけるコスプレパフォーマンスの草分け的存在として活躍。

2013年、大好きな「イナズマイレブン」シリーズでは、公式ゲーム・ア二メの声優になる夢をかなえ、現在は海外諸国のさまざまなオタク系イベントにゲスト出演したり大型コスプレ大会などの審査員を務める一方、国内ではラジオパーソナリティー、作家、講師としても活動しています。

幻想的な世界観の演出も魅力なコノミアキラさん



「オタクじゃない人にはちょっと理解しにくいかも知れませんが、私の活動はあくまでファン活動の延長線であり、結果はその副産物だったりします。原作へのリスペクトと作者様や制作スタッフの方々へのリスペクト、ファンの皆さんへのリスペクトを忘れず、その思いを自分なりのクリエイティブに昇華し、本気で無我夢中で作って遊ぶイメージです。

そこに『楽しい』を忘れたら、『愛情』と『感謝』を忘れたら、終わりだと思います。自分の大好きな作品を大好きな人と分かち合い楽しむ。『あなたを見て、この作品を知り興味もちました』って言われるのが一番うれしいですね。仕事というよりも志事というイメージです」


<峯田大夢さん>
雑誌『メンズナックル』のモデルを経て、現在はもともとの趣味だったコスプレが本業に。武器(小道具)の造形なども手掛け、「FINAL FANTASY VII」のクラウド・ストライフなどをはじめ、クオリティーの高いコスプレが評価され、海外を中心に活動中。現在は、「モンスターストライク」のヤマトタケル役など、声優としても活躍している。

「好きな作品で、好きなキャラクターになりきれる最強の『ごっこ遊び』。自分がその作品の一部になれるので、本当に心から楽しんで仕事ができることが、コスプレイヤーの魅力です」

まるで本物のゲームの世界。バスターソード(大剣)は峯田さんの自作。制作費用は約5万円。「無いものは作る、それがコスプレイヤー思考」とのこと。


知られざる世界、「コスプレイヤー」という職業


そんなコスプレイヤーたちが活躍するコスプレ業界の実情について、今回詳しいお話を伺ったのは、コスプレイヤーを派遣するプロダクション「コス企画」を運営する三宅さんです。

-- ハロウィンの仮装など、ライトユーザーが増えたとはいえ435億円というのはかなり大きな市場ですよね。

「自作する方もいますが、コスプレ衣装を買うと、1着だいたい1?3万円くらいします。ウィッグ・服・シューズなど一式揃えると3~4万円はかかってしまうので、衣装の売買が市場を大きく占めていると思います」

-- 国内にコスプレイヤーはどれくらいいるのでしょうか。

「はっきりとした数は分かりませんが、国内最大のコスプレイヤー専門SNS『コスプレイヤーズアーカイブ』の登録者数が約15万人なので、その数字が一つの目安になるかと思います」

-- プロのコスプレイヤーの仕事には、どういうものがあるのでしょうか?

「撮影会を開催したり、写真集を販売した収益をメインとするコスプレイヤーが多いですね。そのほかの仕事は、日本のコスプレイヤーは企業から受ける仕事が多いです。一番多いのはコンパニオン。

企業がゲームやアニメを作ったときに、二次元の世界を三次元の人間で表現した方がイメージを伝えやすいので、コスプレイヤーを使ってPRをします。ほかにも、ゲームの実況、広告のモデル、インフルエンサー、地方イベントでのステージ、パチンコ屋さんの営業などがあります」

キャラクターによって180度変身するコノミさん


SNSの登場で需要が拡大


-- コスプレイヤーの需要はいつから出始めたのでしょう。

「本当にここ数年だと思います。フェイスブックやインスタグラムなどのSNSが登場して、セルフプロデュースができる世の中になってきたじゃないですか。それによって個人の発言力が強くなり、インフルエンサーの需要が高まってきたんです。

今まで芸能人を使って数万人に声を届けるということが、一個人でもできるようになってきました。そこで、もともと趣味で好きなアニメやゲームのキャラのコスプレ画像を発信して、多くのフォロワーを抱えた情報拡散力のあるコスプレイヤーたちに、企業が仕事の依頼をするという流れが出てきたのです」

コスプレは海外の方がアツかった!


-- 海外でのコスプレ需要はいかがですか?

「実は海外の方が、オープンにコスプレを楽しむ文化があるんです。海外でコスプレ文化が熱いのは、中国・韓国・タイ・フランスあたりでしょうか。特にアジア圏が熱いですね。偏見的な見方になってしまいますが、これらの国はもともと日本のようにアニメや漫画などの強いコンテンツがない国なので、コンテンツ力の強い日本のアニメやゲームなどが受け入れられたのではないかと思います。

彼らがコスプレするコンテンツは日本発のものが多いので、日本の有名なコスプレイヤーが、海外のステージのゲストや審査員として呼ばれることは多いですね」

峯田さんのコスプレ、クオリティーの高さに圧巻



前出の峯田さんは「中国やベトナムに行ったときはステージに出ただけ、日本語を喋っただけで『キャー!』みたいな、日本と比べてリアクションが大きかったですね。まず、日本人のコスプレイヤーというだけでステータスが上がるというか…。空港で出待ちしてくださる方までいらっしゃいました」

-- 日本と海外のコスプレイヤー需要の違いはありますか。

「はい。海外は、コスプレに対する文化とアプローチが日本とは全く違います。日本のコスプレイヤーは“広告塔”として企業からオファーされて仕事することが多いですが、海外の場合、ユーザーに対して“パフォーマンス”を行って収入を得ることが多く、コスプレイヤー、衣装、音響などがチームとして動くグループも少なくありません。私が見た限り、日本より海外を拠点にした方がコスプレイヤーとして経済的に成功している人が多いようです」

これには、前出のコノミアキラさんも衝撃を受けたそうです。コノミアキラさんが、初めて海外招聘されたのは、2007年韓国でした。

「ステージで大人数でのコスプレパフォーマンス。皆さんキラキラしていて写真での止まった表現のみならず、動くコスプレの表現に驚き、感動しました。『大好きな作品を身体で表現する』ことが私のコスプレですが、写真以外にも魅せる方法があるんだと、そのとき鳥肌が立ちましたね。エンターテインメントとして進化した形がそこにはありました。

それから、さまざまな国に行き、宗教や政治や人種によってやはりいろいろあるんだと感じましたが、オタクの心だけは、日本と世界はあまり違いがありません。そのことに日々驚いています。『OTAKU イズ ノーボーダー』です!」(コノミアキラさん)

気になるお給料は?

 

アニメもゲームも漫画も、リアルな世界を体現する峯田さん



-- コスプレを生業にしている人たちは、どれくらいいるのでしょうか?

「コスプレイヤーの仕事だけでご飯を食べていけている人ということなら、数十人はいると思います。パチンコ屋さんの営業でも高ければ1日30万円ほどの報酬が出ますから。撮影会で1日20万円も稼ぐ人もいますし、写真集も1日の売上げが50~60万円ある人だっています。それがほんの数人というわけではなく、それなりの数はいると思います」

ちなみに、峯田大夢さんに実際のお給料を聞いてみたところ「海外に呼ばれたり、コミケでの写真集販売など大きな仕事が続くと多少懐は温かくなりますが、基本的には同年代の会社員の月収と同じくらいです」とのこと。峯田さんによれば、中国の有名なコスプレイヤーの中には、月に500万円を稼ぐ強者もいるのだとか!

ビジネスとしての可能性はありえる?


-- 最後に、コスプレイヤーはビジネスとして今後どのような展開が期待できるのか教えてください。

「やはり、芸能人などのアイコンの代わりとなって、日本が誇るアニメやゲームなどのコンテンツの魅力を最大限、国内外に発信できることが強みであり、ビジネスとして期待できるところではないでしょうか。

『好きなことを仕事にしてはいけない』という言葉を聞きますが、コスプレイヤーたちは“好き”を突き詰めていった結果、それを仕事にした人たち。コスプレイヤーと彼らのファンには、どちらにも共通して作品へのリスペクトや愛があり、とても夢のある仕事だと思います」

私服姿も美しい峯田さん。コスプレ姿とのギャップが少ない?


まとめ


今回ご紹介したコノミさんや峯田さんも含め、コスプレイヤーの人たちはビジネスではなく、もともと趣味でコスプレをしていた人たちばかり。

しかし、その情熱や突き詰めたこだわりが次第に周囲に評価され、いつしか「好きが仕事になった」と話します。今後、日本のコスプレイヤーが国内外でどのような活躍を見せてくれるのか注目です!


【リンク】
コス企画
コノミアキラ ツイッター@akiracos
峯田大夢(ミネタ・ヒロム)


※この記事は2017/01/09にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています

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