コンサル会社を退職して、福島で起業! 被災地で働く20代の“思い”とは?

「東日本大震災」から丸3年が経ちました。しかし、被災地ではまだまだ多くの支援活動が必要とされています。

コンサル会社を退職して、福島で起業! 被災地で働く20代の“思い”とは?

「東日本大震災」から丸3年が経ちました。しかし、被災地ではまだまだ多くの支援活動が必要とされています。

本記事では、震災を機に東京で勤めていたコンサルティング会社を退職し、福島県の相双地区で「かけはしツアー」という福島に新産業を興すためのバスツアーを企画・運営している加藤裕介さん(26歳)の取り組みをご紹介します。

---そもそも大手コンサルティング企業を退職して、被災地支援に関わろうと思った理由はなんだったのでしょうか?

「私は2011年の5月に某コンサルティング会社に入社し、8月から翌年1月末まで中国で勤務していました。その後日本に帰ってきたとき、被災地の状況が1年経っても何も変わっていないことにがくぜんとしたんです。そんな折に大学時代お世話になった方が、震災復興のリーダーを募る『右腕派遣プログラム』を紹介してくれたのをきっかけに、1年間という期間限定で福島で働くことを決意しました」(加藤さん)

---志望した企業を1年以内で退職することに対して、ためらいなどはなかったのでしょうか?

「特にありませんでした。というのも、将来的に起業や転職という道を選ぶつもりだったので。ただ、会社を辞める直前は『被災地のために何かしたい』という気持ちや、『このまま大企業にいていいのだろうか』という進路への悩みがあり、こんな心持ちで福島に行っていいのだろうかとちゅうちょもしました。しかし、信頼できる周囲の方が『あなたの力は東北できっと役に立つはずよ』と後押ししてくれたお陰もあって、決断することができました」(同)

---そもそも起業する意思があった上に、今回の震災が重なったことで福島県に赴くことを決意したという訳なんですね。『右腕派遣プログラム』ではどのような活動をしていたのでしょうか?

「一般社団法人Bridge for Fukushimaに参画し、福島市に避難している飯舘村(避難指示区域内)の方々に弁当販売等のサポートをしたり、地域の方の実施するアクティビティのお手伝いをしました。それ以外にもNPO法人の方や起業家らと人脈をつくり、自分の能力を最も有効に活用してもらえる場所を探していました。現地での活動が半年過ぎたころから首都圏の方々から、相双地区の様子を知るためのスタディツアーをしてほしいと依頼をいただくようになり、半年間で培ったネットワークを活用しつつ、相双地区で復興に向けて、さまざまな活動を行う地域のチャレンジャーを紹介するスタディツアーを企画しました」(同)

---スタディツアー「かけはしツアー」の具体的な中身や成果について教えてください。

「沿岸部の新地町・相馬市・南相馬市・浪江町をバスで案内するツアーです。相双地区は、いまも10万人が避難中の地域です。現地の復興に向け頑張る水産加工業者、みそ屋、まちづくりNPO、高校生等多様な方の生の声を聞いていただくことで、現状を伝え、復興を加速させるための力を相双地区に呼び込もうという取り組みです。成果として1年半で約2,000人の呼び込みに成功しました。また、首都圏の大企業が南相馬市小高区のまちづくりNPOの住民会議のファシリテーションを継続的に行うようになったり、ツアー参加企業と製造した水産加工品の取引が発生したりと、マッチング事例も徐々に生まれてきています」(同)

---1年間のプログラム終了後、現地に残ることを決意したのは何だったのでしょうか?

「東京に戻ってもすぐに自分がやるべきことはないけれど、福島には今すぐ自分がやらなければ消えてなくなってしまうものがたくさんある、という感覚がありました。『やりがい』とも『使命感』ともちょっと違うのですが、『少しは役に立てている』という実感が福島に残った理由です」(同)

---東京に人脈があり、福島県で自分の人脈を還元できる。そう思えたからこそ、現地で活動を続けているのですね

圧倒的な人材不足を解消したい


---現在の福島の実情や、そこでの自分の役割を、どのように感じていますか?

「津波・地震・原発災害の影響を受けたこの地域には、地域内外の知恵や力を結集しても、解決できるか分からない問題が山積しています。解決にはたくさんの人の力が必要だけれど、どこで何をすればいいのかわからないという人も多い。またせっかく『何かしたい』と思っても、『何かしてほしい』と思っている人の元へ思いが届かない。そういった状況を解消するため、双方の思いを丁寧にくみ取る場づくりができるコーディネーターが必要だと思っています。

そして、よそ者である私もまた、首都圏で働く人と現地の方をつなぐコーディネーターなのだと考えています。今、被災地には圧倒的にコーディネーターとなりうる人材や復興事業を取り仕切る人材が不足しているので、短期的なボランティア活動ではなく、中長期的な取り組みができる人を相双地区に引っ張ってこられるように活動していきたいです」(同)

彼の活動がやがて新たなビジネスを生み、福島県の経済を支える力になることを私たちも期待したいですね!


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みちのく起業
震災復興リーダー

※この記事は2014/03/11にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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