老後の年金は自分でつくる! 節税効果抜群の「iDeCo」、専門家が解説するメリットと注意点は?

2016年9月半ばに愛称が“iDeCo”(イデコ)と決まった「個人型確定拠出年金」という貯蓄方法を、あなたはご存知でしょうか?

老後の年金は自分でつくる! 節税効果抜群の「iDeCo」、専門家が解説するメリットと注意点は?

2016年9月半ばに愛称が“iDeCo”(イデコ)と決まった「個人型確定拠出年金」という貯蓄方法を、あなたはご存知でしょうか?

「公的な年金には期待できない」「若いうちから資産形成を」そんなことが叫ばれている今、特に財形の仕組みがないベンチャー企業に勤める方や、個人年金保険以外の方法を探している方、運用を始めたい方にオススメだというiDeCo。

そんなiDeCoについて、申し込みや運用商品の選び方、家計を見直して資金をつくる方法など、多くの不安に丁寧に答える全国のFP(ファイナンシャルプランナー)相談ネットワーク「確定拠出年金ねっと」の代表、山中伸枝さんに詳細やメリット、デメリットについて伺いました。

日本でもっとも税制優遇の特典が大きいiDeCo


iDeCoとは、月々の積立掛け金を、60歳以降に年金または一時金として受け取れる国が認めた特別な仕組みです。iDeCoのメリットは、大きく節税しながら“自分年金”がつくれるという点で、つまりお得な制度ということ。

「減税が期待できる自分年金制度といえば、生命保険会社の個人年金保険がありますが、これだと税金控除の上限があります。例えば年収300万円の方が個人年金保険に月1万円の積立をすると、年末調整で2,000円税金が戻ります。

一方、同じく老後の備えとしてiDeCoで月1万円の積立をすると、こちらは掛金全額が所得控除なので、年末調整で6,000円税金が戻ります。同様に個人年金保険は翌年の住民税が2,800円安くなるのに対し、iDeCoなら12,000円も安くなるのです。

他にも、積立期間中の運用益が非課税だったり、受け取り時に退職金扱いになって税金負担が減ったりと、今の日本にある仕組みのなかでもっとも税制優遇の特典が大きいのがiDeCoです。運用と聞くと尻込みする人もいるかもしれませんが、おなじみの定期預金という選択肢もありますし、投資信託などと組み合わせて運用することもできます」(山中さん、以下同)

2017年からは60歳未満の成人すべてが対象に!


税金が得するiDeCoですが、これまでは加入できる条件が、自営業者と一部の会社員だけでした。しかし、2017年1月からは、専業主婦、公務員を含む60歳未満の成人はすべて加入ができるようになりました(国民年金の未納または免除者は加入できません)。

月々の掛金は5,000円以上、1,000円刻みで任意の金額を指定することができます。積立途中で金額の変更もできますので、自分のペースで資産形成が行えます。

iDeCoを始める3つのステップ


iDeCoの運用を始めるには、以下の3つのステップが必要です。

1.窓口となる運営管理機関を決める


「iDeCoに加入するには、まず窓口である金融機関を決めて手続きをしなければなりません。ただiDeCoは加入時と積立期間中に手数料がかかり、その手数料は金融機関により差があるので、注意が必要です。まずは以下のような手数料を比較できるサイトがありますので、安いところに資料請求をしてみることをオススメします」
個人型確定拠出年金(iDeCo)ナビ (確定拠出年金教育協会)
個人型確定拠出年金(iDeCo)ガイド (モーニングスター)

2.運営管理機関にiDeCoの加入申し込みをする


運営管理機関を決めたら、申込書を取り寄せ書類を作成します。できれば、2~3社の資料を取り寄せ、サイトも含めた「分かりやすさ、内容の充実度」を比較することをオススメします。
※会社に勤めている方の場合、会社から印鑑をもらう書類があります。原則会社が掛け金を給与天引き&振込みをすることになっていますが、ほとんどの会社はその手続きを嫌がるため、その場合は個人の指定口座からの引き落としにします。
むしろこちらの方が面倒がなくオススメですが、いずれにしても会社からの印鑑が必要です。
会社からもらう書類の書き方はこちら

3.運用する商品を選ぶ


「リスクを取らず定期預金で積立てるという選択肢であっても、節税メリットがあるため十分といえますが、やはり長い年月をかけての資産形成と考えると、積極的な運用も考えたいところです。そんなときは、ぜひ私たちプロの専門家にご相談ください」

iDeCo、3つの注意点


20代など若い世代がiDeCoに加入する上で注意したい点は、大きく下記の3つです。

①金融機関選び


「若い方だと所得税率5%という方が多いので、その節税効果は掛金×5%となります。住民税は10%ですが、これは翌年の支払いが減るという意味なので、『節税効果』としては実感しにくいかもしれません。

そうなると、金融機関選びを間違った場合、掛け金の額によっては年末調整の戻り額より手数料の方が大きいこともあるのでしっかりチェックしたいところです」

②60歳まで解約できない


「もし、仕事が安定していない、今後の貯蓄計画が立てられないという方については、まずは足元での生活設計を先にすることをオススメします。それを踏まえた上でiDeCoへの申し込みを検討してください。

60歳以降70歳までの任意のタイミングで一時金として、あるいは年金で受け取ることができますが、それ以前であれば加入者が亡くなる、あるいは障害を負う以外での払い出しは原則ありません」

③勉強が必要


「iDeCoによる節税効果は確かに魅力的ですが、国がこれだけ推奨する理由にはやはり公的年金に対する危機感があります。公的年金制度がなくなることはありませんが、今までと同じ水準で老後の年金をもらうということは期待できないでしょう。だからこそ推奨されているiDeCoだということを理解するべきです。

その上で、国の仕組みも学び、資産形成の必要性や、資産運用も学びたいという前向きな方にとってはiDeCoは素晴らしい制度。しかし、ただやるだけでお得なんだと安易に思っていると、メリットは半減します。iDeCoを始める前にしっかりこれからについて考えた上で始めてほしいですね」

資産運用を学ぶ最高の場


最後に山中さんは、iDeCoをオススメする理由を、こうも語っています。

「iDeCoを通じて、国が皆さんに伝えようとしているメッセージは『経済的自立』です。社会保険の仕組み、税金の仕組み、経済の仕組みをしっかり学んで、経済的に自立をしてほしいという強いメッセージです。

しかし、今まで特にお金の教育を受けてこなかった日本人にとって、経済的自立はなんとなくピンとこず、何から手を付けてよいのか分からないのが実情です。

特に若い人の場合は、iDeCoをきっかけとしてセミナーなどに参加し、知識を深めることをオススメします。iDeCoは単に貯蓄の仕組みではなく、資産運用を学ぶ最高の場でもあるので、ぜひこれをきっかけにお金の勉強をしていただきたいと思います。

お金の勉強をすることは、これからの人生に必ずプラスになりますよ!」

まとめ


公的な年金だけでは私たちの老後の費用をまかなうことはできないといわれています。

備えあれば憂いなし。20代のうちから老後のことをしっかり考え準備をしつつ、節税を心がけていきたいものですね。


(オススメ記事)
【やらないと後悔する!?】20代から貯金するためにしておくべき7つのこと

識者プロフィール


山中伸枝(やまなか・のぶえ)
確定拠出年金相談ねっと代表ファイナンシャルプランナー(CFP)。
1993年、米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後メーカーに勤務。これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)を目指す。
2002年にFPの初級資格(AFP)、2004年に同国際資格であるCFP資格を取得した後、独立系FPとしての活動を開始。個人相談も多く手がけ、年金、ライフプラン、資産運用を特に強みとしており、具体的なソリューション提供をモットーとする。
著書:『「なんとかなる」ではどうにもならない 定年後のお金の教科書』(インプレス)、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)

※この記事は2017/01/30にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

page top