新社長は34歳3児の母、アイスを片手に挑むキャリアへの道「竹下製菓」竹下真由

2016年4月、九州の老舗企業「竹下製菓」で、一人の若き女性社長が誕生しまた。

新社長は34歳3児の母、アイスを片手に挑むキャリアへの道「竹下製菓」竹下真由

2016年4月、九州の老舗企業「竹下製菓」で、一人の若き女性社長が誕生しまた。

彼女の名は竹下真由さん(34歳)、なんと4歳から1歳まで3人の子を持つ母親でもあります。同社は昭和2年に創業し、看板商品の「ブラックモンブラン」をはじめ、地元九州で長く愛されている冷凍・菓子メーカー。

5代目社長として父の敏昭さんからバトンを受け継いだ真由さんは、どのようにして育児と社長業をこなしているのでしょうか。

自身の奮闘体験から女性のキャリアの可能性まで、本音をたっぷりと語っていただきました。

20代はガムシャラに働きたかった、外資系コンサルで経験を積んだのちに継いだ家業



幼いころから父の後継者になることを意識していたという真由さん。家業を継ぐ前に、どうしても外の世界を知っておきたいという思いから、東京にある外資系コンサル企業への就職を決めたそうです。

「当初、私が就職すると言ったとき、父は不満気でした。そんな父を『絶対に帰ってくるから東京で3年は働かせてほしい』と説得して、就職したんです。
いくつか内定をいただいたなかで外資系コンサル企業を選んだ理由は、あらゆる企業の裏側を見ておきたかったから。
20代はガムシャラに働きたいと思っていた私にとって、東京で経験した刺激的な4年間は大きな財産になりました」(竹下真由さん:以下同じ)

前職で同期だった雅崇さん(現・竹下製菓の副社長)と結婚した真由さんは、それを機に一家で実家の佐賀県へ帰ることに。

竹下製菓に入社し最初に配属されたのは、新商品を生み出す開発部門でした。竹下製菓といえば、「ブラックモンブラン」や「ミルクック」などキャッチーなネーミングがおなじみ。

「ブラックモンブランは48年前に生まれた商品で、名付け親は私の祖父です。当時としては非常に先進的だったと思います。
祖父はよく海外視察にも行っていて、とにかく新しいものに敏感でした。そうやって常にトレンドやおもしろいものを追い求めていたからこそ、ヒット商品が生まれたんでしょうね」(同)

2014年に商品開発室長に就くと、スキルアップ勉強会やエクセル講習なども取り入れ、事業の加速に貢献。

甘酸っぱい苺と、昔の恋人へのキュッとすっぱい気持ちを掛け合わせたズバリ「昔の恋人味~すっぱいイチゴ」や、ざくざく食感のグラノーラをたっぷりコーティングした「これで朝食アイス」など、次々と斬新なネーミングの新商品を生み出します。

こういったアイデアが一体どこから湧いてくるのか伺ったところ、こんな答えが返ってきました。

「東京に出張に行った際は、必ず『デパ地下』に足を運んでいます。トレンドの先端を走っている都内のデパ地下は、まるで宝の山。今でも商品の色や形、パッケージなど新商品のヒントになる要素を盗んでいます」(同)

 

前職との体質の違いに葛藤しながらも、率先して動ける社員の育成をけん引



精力的に開発に携わっていた真由さんでしたが、当時はどうしても、もどかしい気持ちになる場面が多かったと言います。

それは仕事への向き合い方のギャップ。前職の外資系企業では、自らの存在意義を見いだし積極的に動く人ばかりに囲まれ、もちろん真由さんもその一人でした。

しかし、当時の竹下製菓の開発部には「指示されなければ動かない」風潮が漂っており、仕事で何を成し遂げたいのかという、もっとも肝心な意欲が欠けていたのです。

この現状に危機感を覚えた真由さんは、メンバーの意識改革を開始。

「自分のこだわりを持たず、言われたことだけをやるのって一番楽じゃないですか。でもそんな姿勢で、お客様の心をつかむ新商品なんて作れるはずがありません。これはどうにかしなければいけないなと。そこで、『どうすればいいですか?』との質問には『それを達成するには、どうすればいいと思う?』と返し、道具を購入したいと相談されたら、『それを買ったらどんな効果があって、パフォーマンスがどう上がるのかを伝えてほしい』と言いました」(同)

これまでのリーダーとは180度異なる対応に、社員の反発は少なくなかったのだとか。

しかし、やらされ仕事ではいつまでたっても進歩はない。前職での経験からそれを痛感していた真由さんは、社員たちの士気を高め最大限のパフォーマンスを発揮してもらうべく、地道な努力を続けました。

その結果、上述した竹下製菓ならではの斬新な新商品が誕生したのです。もちろん社長になった今でも、理想とするステージに近づくための努力は怠らないと言います。

女性が働き続けるためには「完璧を目指さない」ことや「社内の体制作り」が重要



竹下製菓の社長として奮闘する真由さんの、もう一つの顔。それが、3児の母としての顔です。社長に就任してからというもの、どうしても抜けられない会食などが増え、夜に家を空けることが多くなったそう。ただ、その分メリハリを大切にしているのだとか。

「社長でなければできない仕事は絶対に出てきてしまうので、そのときは周囲の手を借りて社長業に徹しています。その代わり、休みの日は部屋の片付けなど、本当はやらなきゃいけないことが山積みだけど、目をつぶって子どもたちと遊びに行きますね。それでも寂しい気持ちにさせてしまう瞬間はあるかもしれませんが、子どももわかってくれていて『大きくなったらママと一緒にアイスを作る』と言ってくれるんです」(同)

さらに、「女性が仕事と育児を両立するうえで心がけたいことは?」との問いには、先輩としてこんなアドバイスを送ってくれました。

「私は正直、両立なんてできていないのですが、最初から完璧を求めないようにしています。ある程度は仕方ないと割り切る。育児も家事も仕事も、すべて周りのサポートがあってこそ、なんとか回っているようなもの。私の場合、両親が心強いサポーターとしてそばにいてくれるので、送り迎えや食事の面倒などの育児は、夫を含め4人体制で行っているんです」(同)

また、会社では「お互い様」の精神を大事にしているそう。竹下製菓には真由さん以外にもお母さんの社員がいれば、介護と仕事を両立している人もいます。それぞれの事情を考慮しながら、末長く働き続けられるようフォロー体制を強化しているそうです。

「私の場合、子どもの病気や外せない行事など、休まなければいけない日が必ずあるので、そのときは周囲にきちんと理由を伝えて休むようにしています。社員たちにも、『私が全力でフォローするから遠慮せず休みの希望を出すように』と伝えています。そうやって困ったときはフォローし合える体制を整えておけば、育児や介護などと両立させながらストレスなく働くことができると思うので」(同)

最後に女性のキャリアの可能性については、「明確なライフプランの設計」とともに、「自分の価値観を理解してくれるパートナーを選び」が大切とのこと。

「自分が生涯をかけて何を成し遂げたいのか、そして、どんな生活を送りたいのか、思い描いておくことが大事なのではないでしょうか。キャリアだけでなく、結婚や出産、生活環境なども含め、いつまでに何をするのか具体的なライフプランを設計しておければ、なおいいですよね。そして、その価値観を理解してくれるパートナーをちゃんと選ぶこと。この点も忘れないでいただきたいです」(同)

まとめ



今後も老若男女に愛されるヒット商品を生み出しながら、九州地区だけでなく全国での商品展開を目指すと意欲を見せている真由さん。約80名の社員を先導しながら3児の母を務めるのは、並大抵の苦労ではないはず。

ですが、「地方の小さな企業でも、仕事と家庭を両立できるんだと身をもって証明したい」と力強く語ります。きっとこれからも、あらゆる壁にぶつかりながらも悠々と乗り越えていくことでしょう。大好きなアイスを片手に持ちながら。


識者プロフィール

竹下真由(たけした・まゆ)
1981年9月生まれ。佐賀県出身。
2005年に東京工業大学 工学部経営システム工学科、2007年に東京工業大学大学院 社会理工学研究科経営工学専攻を卒業。2007年にアクセンチュア株式会社 戦略グループに入社し4年間勤務したのち、2011年竹下製菓株式会社へ入社。2014年より商品開発室長を務め、2016年4月より同社代表取締役社長へ就任。私生活では2010年に結婚、2012年に長女、2013年に次女、2014年に長男を出産。
竹下製菓株式会社 公式サイト:http://takeshita-seika.jp/

※この記事は2016/11/09にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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