うわさの真相! 「北海道で僧侶になれば一生安泰」ってホント?

「僧侶が北海道に渡れば、一生安泰で暮らせる…」。僧侶事情に明るくない筆者の耳にも、こんなうわさが届いてきました。どうやらこの4、5年ほど、仏教界で「北海道における僧侶不足」がまことしやかに語られているようです。

うわさの真相! 「北海道で僧侶になれば一生安泰」ってホント?

「僧侶が北海道に渡れば、一生安泰で暮らせる…」。僧侶事情に明るくない筆者の耳にも、こんなうわさが届いてきました。どうやらこの4、5年ほど、仏教界で「北海道における僧侶不足」がまことしやかに語られているようです。

果たしてこれは本当なのか? 本当であれば、会社でつらい営業や嫌いな上司との飲み会を我慢して給料アップを目指すよりも、北海道で僧侶を目指した方が良いのではないか? というわけで、匿名希望を条件に、とある宗派の若手僧侶に、若手ビジネスパーソンに耳寄り?な、北海道の僧侶事情を伺いました。

年収700万以上!? 北海道の僧侶は安定収入の見込みあり


「私も、北海道の僧侶不足という話を聞いたことがあります。ただ、文化庁の『宗教年鑑』によると北海道の寺院数は2,360(宗教法人数)、お坊さんの数は1万476人です。いずれも全国10位と決して少ないわけではありません。しかし人口におけるお寺の数を計算した調査によると、10万人あたり42.8寺と10番目に少ないことがうかがえます」

--お寺や僧侶の絶対数は多いけれど、それでもなお人口比では足りないというわけですね。

「そもそも明治以降に入植し始めた開拓地ですからね。その分、土地は広大ですので札幌など都市の郊外に大規模霊園をかまえ、檀家が2千軒を超えるお寺もあると聞きます。くわえて合理的な土地柄で、冠婚葬祭でのご祝儀や香典は明朗会計です。こうしたルールは景気に大きく左右されないため、檀家の軒数に応じたお布施、つまり収入が読みやすいのも一生安泰といううわさを裏付けているのではないでしょうか」

--一軒一軒のお心付けは多くなくても、毎年、複数の檀家さんから入ってくれば経営も安定しますものね!

やはり厳しい現実が! 今後生き残れるのは大規模寺院のみ


--じゃあ、やっぱり北海道で僧侶を始めると一生安泰といううわさは本当みたい! さっそく荷物をまとめて頭も丸めなきゃ…

「そうとも限らないと思います。北海道も御多分に漏れず過疎地です。人口減が続くエリアでは急速に檀家が減り、経営が立ち行かなくなってゆくことでしょう。団塊世代が鬼籍に入るここ20年は安泰でも、それをすぎると都市部近郊の大規模寺院しか生き残れないのではないでしょうか」

--え…? つまり、大規模寺院の雇われ僧侶としてでないと生き残るのは難しいと。それって「サラリーマン僧侶」でもあるということですよね。ある意味一生安泰ではありますが、がっぽり稼げるというわけにはいかないのか…。

「そもそもなのですが、一番肝心なのは一般の方が『僧侶になりたい』『北海道で住職になりたい』といっても、思うようにはなりにくいという点です。基本的に実家がお寺の次男坊や三男坊が優先される世界ですから、よっぽど処世術に長けていないと自分の希望する土地のお寺の住職になるのは難しいと思います」

確かに、僧侶にはどんな人でも分かりやすいように教えを説く「プレゼン能力」や、地域の住民の方の相談にじっくり耳を傾け、問題の本質を理解する「聞く力」、そして自分の希望する地位に就くために、上司に当たる住職や地域の有力な僧侶に気に入られる「愛嬌」が求められるみたい。



なるほど、コミュニケーション能力がなければ出世は難しいという点は、ビジネスパーソンと同じなのですね。やはりビジネスの世界も僧侶の世界も、簡単に一生安泰、というのは難しいということのよう。やっぱり、いまの環境でしっかりがんばろうっと!


※この記事は2014/09/12にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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