手付かずの20億人市場!? イスラムビジネスに商機あり

「イスラム教徒(ムスリム)に商機がある」といったニュースが世間をにぎわせています。人口減少で国内需要が先細っていく日本は、2020年には20億人と世界の人口の4分の1を占めるムスリム相手にビジネスをしていくべきだ、と言われています。

手付かずの20億人市場!? イスラムビジネスに商機あり

「イスラム教徒(ムスリム)に商機がある」といったニュースが世間をにぎわせています。人口減少で国内需要が先細っていく日本は、2020年には20億人と世界の人口の4分の1を占めるムスリム相手にビジネスをしていくべきだ、と言われています。

特に、2013年7月のマレーシアに対する訪日ビザ解禁に伴い、日本に訪れるムスリムの数は増え続ける一方です。「ヒジャブ」と呼ばれる布を被ったムスリム女性が、東京の街を歩く姿を見かけたという人も少なくないはず。

では、そんな存在感を増し続けるムスリムに対して、どんなビジネスを仕掛けたらいいのか。そして、どんな注意点があるのか。今回は、日本企業のムスリム市場への海外進出をサポートしている一般社団法人メイドインジャパン・ハラール支援協議会代表の高橋敏也さんにお話を聞いてみました。

ASEANやドバイの先に眠る、20億人のマーケット


「なぜムスリムなのかと問われれば、『そこに大きな市場があるからです』と答えています。今、日本の企業が積極的にビジネスをしようとしているのは、マレーシア、インドネシア、それにドバイといった国です。

でも、実はその先を考えるとムスリム市場を狙うべき本当の理由が見えてきます。ASEAN(東南アジア)やドバイの先には、人口の多いインドやバングラデシュ、中東、そして人口増加の一途をたどるアフリカ、さらには多くの地下資源が眠る中央アジアなど、甚大なマーケットがあるのです」(高橋敏也さん:以下同じ)

つまり、目先のインドネシアやマレーシア、ドバイの先には、実に20億人というとてつもなく大きな手付かずのマーケットが眠っているのだと高橋さんは言います。その大きな市場でチャンスをつかむためにも、まずはなじみの深いマレーシアやインドネシア、ドバイなどで成功しておく必要があるようです。

高い参入障壁があるからこそ、大きなチャンスがある


では、いったいどんなビジネスを仕掛けたらいいのでしょうか。

「ムスリムの世界には、『ハラール』という参入障壁があります」と高橋さんは言います。

ハラールとは、イスラム法に則った健全な商品や活動のこと。イスラム法に則っていないものは「ハラーム」と呼ばれ、代表的なものは豚肉やアルコール入り飲料、遺伝子組み換えをした植物などです。これらのハラームを取り除いたものがハラールです。ムスリムの人々は、ハラールであると正式に認められていない食べ物、飲み物などは避けなければなりません。

「ハラールには、食べ物や飲み物、化粧品などが関わってくるのですが、この障壁があるため、参入していく企業は少ない。ですから、そこに商機があるのです」

いわゆるハラールという参入障壁を越えた先に、ビジネスの世界で「ブルーオーシャン」と呼ばれるような未開拓の市場が眠っているのだそうです。

「ムスリムの人たちも、私たちと同じようにおいしいものが食べたい。でもハラールじゃないと食べられない。そこをクリアすると、一気に成功をつかむことが可能です。

たとえば、インドネシア人などは、本音ではおいしいラーメンが食べたいと思っています。そこでハラール、またはムスリムフレンドリーを意識したおいしいラーメンを提供できれば、成功は見えてくるのではないでしょうか」

そのほか、お酒が飲めないムスリムたちが大好きな甘いお菓子や、アルコールなどの禁止成分が入っている化粧品といった分野にも、ブルーオーシャンがあるようです。

日本でも増え始めたハラール認証店


実際に日本ではどのようなイスラムビジネスが行われているのでしょうか。2020年の東京五輪・パラリンピックの開催が決定し、ムスリムの観光客が増加することに伴い、日本の大手企業もハラール認証の取得に乗り出し始めています。

2014年6月26日には、日本の玄関口である成田空港に初めて、ハラール認証レストランがオープンしました。


第1ターミナル中央ビル5階にあるうどん専門店「自家製麺 杵屋麦丸」と、第2ターミナル本館4階にある天ぷら店「あげたての味 天亭」では、ハラール専用キッチンで調理された料理を提供しています。

また三越伊勢丹は2014年9月24日、ハラール認証を取得した食品のオンラインショップ「ハラール・フードセレクション」を開設しました。


ショップではステーキ用黒毛和牛やローストビーフ、またレトルトカレーなどを販売。材料から製造工程、工場施設までの監査を通過し、日本イスラム文化センターからハラール認証を得たといいます。

これらの事例は、「和食が食べたい」「ステーキが食べたい」といったムスリムの人々の本音をくみ取ったビジネスだといえます。このように、日本でもハラールという参入障壁を越えたビジネスが活発化しているようです。

ムスリムを相手にビジネスをする時の注意点


ただし、ムスリムを相手にビジネスを始めようと思ったら、注意も必要だと高橋さんは言います。

「国や人によって、ハラールの捉え方は異なります。先日、ムスリムの知り合いともんじゃ焼きを食べに行きました。厳密にいうと、豚肉が焼かれた鉄板を使うのはタブーです。でも、もんじゃ焼きの中には野菜しか入っていない。そう説明すると、8人中8人とも食べました。彼らは比較的戒律の緩いインドネシア人でしたが、これが厳格なマレーシアであればNGだったでしょう。

とにかく言いたいのは、ハラールを厳格にやろうと思えばキリがないということ。ですから、大切なのは、『ここまではちゃんとハラールにしてますよ』と情報公開をすることだと思います。あとは、選ぶか選ばないかは、相手に任せるという広い心が必要です」

来る2020年には、東京オリンピックが行われ、たくさんのムスリムが日本を訪れることになるでしょう。さらに、同年にはEXPO(万国博覧会)がドバイで開催されることが決まっています。今後ムスリム市場が盛り上がっていくことは間違いないようです。ぜひ一度、ビジネスチャンスとしてのイスラム教について考えてみるのはいかがでしょうか。


団体プロフィール
一般社団法人メイドインジャパン・ハラール支援協議会/
国内外のハラール認証機関と協力して、日本国内の飲食コンサルティング企業や飲食店組合、飲食店、宿泊施設、食品メーカーのネットワークをつくり、日本国内での飲食、宿泊施設でのムスリムフレンドリー基準の普及や日本製の優れた商品のハラール認証支援を行い、ASEANや世界へ出て行く支援を行っている。 メイドインジャパン・ハラール支援協議会

※この記事は2014/10/22にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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