編集者・江口晋太朗の20代が知っておくべき、知られざるニュース4選

「別に無関心でもいいんです。でも、参加やプロセスを知る機会は誰にでも提供されているのに、それを逃した人は決定事項や結果に対して文句を言えなくなるけど、それでいいんですか? ということなんです」(江口晋太朗さん:以下同じ)

編集者・江口晋太朗の20代が知っておくべき、知られざるニュース4選

「別に無関心でもいいんです。でも、参加やプロセスを知る機会は誰にでも提供されているのに、それを逃した人は決定事項や結果に対して文句を言えなくなるけど、それでいいんですか? ということなんです」(江口晋太朗さん:以下同じ)

若手社会起業家の台頭や、NPO・NGO法人への就職・転職の一般化など、“20代の仕事”と“社会”との距離感に大きな変化が訪れている昨今。企業で働く20代のビジネスパーソンの中にも「自分の仕事は社会にどれぐらい役に立っているのだろうか?」「もっと社会や人の役に立ちたい」と考えたことがある人は少なくないはず。

そこで本記事では、著作「パブリックシフト」で知られ、2012年にネット選挙解禁の流れをつくった「One Voice Campaign」の発起人を務めるなど、社会派の編集者・ジャーナリストとして活躍する江口晋太朗氏にインタビュー。今、20代が知っておくべきニュースを4つ選んでいただきました。人生をかけて取り組むことになる、あなたの“仕事のテーマ”が見つかるかも!?

1.あの都市が無くなる? 「消滅可能性都市」


◯ニュース概要
有識者らでつくる政策発信組織「日本創成会議」の人口減少問題検討分科会が2014年5月8日、「2040(平成52)年に出産可能な女性人口の減少により、全国の896市区町村が『消滅』の危機に直面する」という試算結果を発表。人口が1万人を切ると、加速度的に人口が減少し、都市としての機能を維持するのが困難になる可能性があるという。

◯江口氏の視点
「出産率の低下と晩婚化などによって、日本の人口が徐々に減っているのは間違いありません。ただ人が減るだけならいいのですが、問題が大きいのは、経済の縮小や労働人口の減少、さらに社会保障や年金、都市インフラといったものが、それに伴い提供できなくなる、もしくは非常に高額になる可能性があるからです。都市機能を維持するために、『消費税や住民税を高くする』『水道光熱費を高くする』こともありえます。少子化といわれるとピンとこないかもですが、こういわれると世の中の出来事も自分事化できると思うんです」

2.無理して東京来なくてもいいんじゃない? 「Uターン・Iターンの盛り上がり」


◯ニュース概要
2014年の5月に政府は「国家戦略特別区域及び区域方針」を決定した。東京圏、関西圏の他に、新潟市、兵庫県養父市、福岡市、沖縄県の地方4区域を国家戦略特区として指定し、さまざまな規制緩和、特例措置を講じる予定。地方の拠点の整備に伴い、近年ではUターン、Iターンをする若者が増えるなど、地方への関心も増してきている。

◯江口氏の視点
今や、なにかの分野で活動したいと思ったときに、最初から世界に行くこともできる時代でもあります。自分が働きやすい場所や、住みたい場所に住める時代になっているわけで、東京に行くことだけがすべてではありません。もっと能動的に働く場所や住む場所の選択をすべきだと思います。最近では、沖縄のIT特区や福岡の創業特区という取り組みなど、それぞれの地域の特色もでてきています。若い人が『出張で地方にいるのはイヤだ』といったマインドになるのはすごくもったいない。拠点は地方だけど、仕事のたびに東京や関西、場合によっては海外にいくという、移動を念頭に入れた環境に身を置くと、住む場所や居る場所をより自身に合ったところへ、というマインドになってくるかもしれません」

3.あなたはロボットより“良い仕事”できる? 「人型ロボットの実用化」


◯ニュース概要
2014年6月、ソフトバンクが人間の感情を読み取ることができるという人型ロボット「pepper(ペッパー)」を発表。同年7月に孫社長は講演の中で「日本の製造業の労働人口1000万人を1億人に増やしたい。もし日本が産業用ロボットを3000万台導入することができれば、ロボットは1日24時間働くので1台で3人分、9000万人分の労働人口に匹敵する」と持論を展開した。

◯江口氏の視点
「ロボットが社会に浸透してくることで、これまで人間がやっていた仕事の代替が起きてきます。そうなってくると、『人間しかできない仕事ってなんだろう』ということを考えなくてはいけません。『機械との競争』というネガティブな意識だけではなく、人間しかできない知的行為や、新しいクリエイティブな取り組み、考えを生み出すことがこれからさらに求められてくることは間違いありません。社会がより便利になってくればくるほど、人間がなにを考え、行動していくべきか。だからこそ、特に若者はもっともっと勉強し、いろんなことを身体を使って経験していかなくてはいけないのです」

4.市民自ら行政サービスをつくる 「シビックデザイン」


◯ニュース概要
これまで一方通行だった行政サービスを見直し、自分たちが住んでいる地域を自分自身でデザインしていく「シビックデザイン(civic design)」と呼ばれる取り組みが盛り上がりを見せている。市民参加型で地域課題の解決を支援する非営利団体「Code for Japan」は地域のITコミュニティーやデザイナーやエンジニアを市役所に派遣し、公共サービスをデザインし直したり、市民のニーズに合ったサービス開発に取り組んでいる。他にも、自分の払った税金が1日当たり何に使われているかを可視化する「Spending.jp」など、さまざまな活動が全国に広がりを見せている。

◯江口氏の視点
「民間と行政府が、一緒になって考えたりなにかをつくるというアクションがこれから増えてきます。いわゆる、『オープンガバメント』による市民参加型の双方向の政治や行政のあり方というシフトです。若者も、ただ政治や行政に文句を言うのではなく、地域や社会の問題解決のためのアクションを起こしてみると、なにかが見えてくるかもしれません。アクションというとボランティアやゴミ拾いを想像しがちですが、例えば『FixMyStreet』というサービスは参加型の地域のあり方へのヒントがあるかもしれません。同サービスは、町中の落書きや補修すべき設備を、市民がスマホで撮影し、投稿された写真の位置情報が地図にマッピングされ、どのエリアに地域の課題があるかを可視化しています。そうすると、汚いところや課題があるところから優先的にきれいにしましょうということで、コストパフォーマンスの高い清掃サービスが提供できるようになります。こういったサービスのように、根本的な問題を探し、議論し、それに対するソリューションをみんなで考え、行動していくことが大事なのです」

なるほど、今の日本にはさまざまな課題があり、それに対して志を持って取り組んでいるさまざまなプレーヤーがいることがよく分かりました。課題があるということは、ビジネスの需要があるということでもあるわけで、企業で働く皆さんの日々の業務にも、ヒントになる部分が多かったのではないでしょうか?

最後に、今の20代にメッセージをお願いします。

「今の社会の中で、(社会問題の解決に)参加できる機会は、選挙の投票といった行為以外にも、いくつものアクションが考えられる時代となってきました。世の中に文句を言うだけだったり、アクションに参加しないことによる利益と不利益を天秤にかけたときに、どっちがいいですか? ということなんです。さらに、問題が発生した後に行動しても手遅れだったりします。問題は常に変化しているから、問題が起きる前にアクションを起こすということ、つまり今ここではなく『未来』を考えた思考と行動が求められるのです。少しでも多くの人が、未来志向になってくれることを期待しています」


識者プロフィール
江口晋太朗(えぐち・しんたろう)/1984年生まれ。福岡県出身。編集者、ジャーナリスト。「社会を編集し、未来をつくる編集者」として、情報・環境・アート・デザイン・テクノロジーなど、ジャンルを超えたさまざまな分野を横断しながら企画制作やプロデュース活動を行う。ネット選挙解禁に向けて活動したOne Voice Campaign発起人、NPO法人スタンバイ理事、オープンデータやオープンガバメントを推進するOpen Knowledge Foundation Japan、Code for Japanに所属。著書に『パブリックシフト ネット選挙から始まる「私たち」の政治』など。

※この記事は2014/08/11にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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