議事録は成長のバロメーター。よい議事録を作るための3ステップ

議事録の作成は、会議の内容を書き残し、うまく文章にまとめなければならないため、書き方に悩んでしまったり完成までにかなりの時間を要してしまったりすることもしばしば。そこで今回は、上手な議事録を書けるようになるための3つのステップを紹介します。

議事録は成長のバロメーター。よい議事録を作るための3ステップ

「議事録の作成は、しっかりと準備をしてポイントを押さえれば決して難しいものではない」と断言するのは、株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長の舟橋孝之さん。若手社員が知っておきたい議事録の書き方について、舟橋さんにご指南いただきましょう!

議事録は成長度合いを示すバロメーター


そもそも、議事録はなぜ作成しなくてはならないのでしょうか。

おそらく多くの方は、「議事録は会社で記録・保管するためのもの」だと考えているのではないでしょうか。たしかに外部企業との商談に関する打ち合わせ内容は、後から「言った・言わない」にならないためにも、議事録が必須です。しかし週に一度開かれる社内会議など、「みんな参加しているし、わざわざ議事録を残さなくてもいいんじゃないかな」と思うものまで議事録作成が求められることは少なくありません。

会社(上司)が、若手社員に議事録を書かせる理由について、舟橋さんは「記録として議事録を保管し、会社のために役立てたいということ以上に、『議事録を書く本人の成長のため』」だと話します。

舟橋さんは、かつて金融機関で働いていた若手の頃、上司から「1年間、すべての会議の議事録をとる」というミッションを課せられ、議事録の腕を磨いていったのだとか。

「当時はパソコンが普及していなかったので、レポート用紙のような紙に議事録をまとめていました。すると1年後にはパイプ式ファイル10冊分くらいの厚さになっていたんです。おかげで文章がかなり上達しましたし、何より自分の仕事のことをよく理解できるようになりました。

その経験からわかったことは、議事録を見れば書いた人の“理解力”がわかるということ。もしもその議事録に抜け落ちている要素があれば、上司から『ここが足りないよ』と指摘を受けます。そのコミュニケーションにより、当時の自分は仕事を覚えていきました。

すなわち議事録は、自分自身の仕事の理解度合いを示すバロメーター。会社(上司)は若手社員に議事録を繰り返し書かせることで、その社員の成長をうながそうとしているという点を理解するといいかもしれません」(舟橋さん、以下同)

上手な議事録作成に欠かせない3ステップ

 

ステップ1:「まずは手書きから」


議事録は自身の成長につながる――。そう考えれば、意欲も変わってくるのではないでしょうか。では、どのように議事録を作成すればよいか、引き続き舟橋さんに指南いただきます。

まずはステップ1。「会議中は、ノートに手書きでメモをとりましょう」。

「会議の内容は『一字一句逃さない』くらいの心がけですべてを記録します。後からその発言が『誰のもの』なのかわかるよう、名前を記録するのも忘れずに。記録の際は、後工程で必要になるので、ノートに1行飛ばし(文と文の間を1行空ける)でメモをとりましょう」

なお「最初から要約してまとめる」「重要じゃないと判断した部分は省く」はNG。その場・その時の自分の視点だけを頼りにすると、重要なポイントを欠いてしまうことがあるためです。「たとえそれが親父ギャグだったとしても、上達しないうちはとにかくすべての内容を記録します」。

すべて記録しなければならないなら、スマートフォンなどで録音したほうがよいのではないでしょうか?

「それは避けたほうが無難です。なぜなら、音源から文字に起こす作業だけでかなりの時間を要するためです。通常、30分の会議なら文字起こしだけで2時間くらいの時間が必要。会議のたびに文字起こしをしていては、時間の浪費になってしまいます」

ステップ2:「手書きメモの内容を整理(分類・再構成)しよう」


次にステップ2。ここではステップ1の手書きメモの内容を整理していきます。「ノートの内容を文章にしながら、内容を整理(分類・再構成)しましょう」。

会議中の「話し言葉」では、主語・述語が抜け落ちるケースがあります。また会議というものは、必ずしも内容が整理された状態で対話が進んでいくとは限らず「何度も同じ発言が出る」「話が飛び飛びになる」といったこともしばしば。そこで次なるステップとして、ノートの内容を文章に近づけながら、議事内容に“かぶり”がないように、分類・再構成して整理していきます。

「具体的には、ノートの内容に主語・述語を書き加えながら『誰が』『何をする』のかがわかるように文章化していきます。ステップ1の『1行空いた部分』に書き足していくイメージです。また整理(分類・再構成)の方法として、会議で出たいくつかの話題を『大きな意味のかたまり』ごとに分類しましょう。その下に『誰が』『何を言ったか』を書き並べます。発言者は単語を省略して話すことが多いため、その場合は議事役がその内容を補記してあげましょう。さらに、議事録に不要な部分は訂正線で削除します」

以下はその一例です。特に、日時・数量・場所・手段といった具体的事柄は正確に書くようにしましょう。

【ノートのメモにある内容】

営業部長「来期重点目標は東海地区の売上を3倍にすること。名古屋支店の取引先は何社くらいあるのか?」

山本主任「現在のところ、主要取引先は8社。三重県には5社ある」

営業部長「では最低限、取引先数は39社、いや切り上げて40社を目標にしよう」

【不必要な部分を削除した内容】

営業部長「来期重点目標は東海地区の売上を3倍にすること。名古屋支店の取引先は何社くらいあるのか?

山本主任「現在のところ、主要取引先は8社。三重県には5社ある」

営業部長「では最低限、取引先数は39社、いや切り上げて40社にしよう」

【補記&整理した内容】

来期は東海地区で、今期の売上3倍増を目標とする(営業部長)

現在、東海地区の取引先数は13社(名古屋8社、三重5社)(山本主任)

来期、東海地区の取引先数は40社を目標とする。(営業部長)

※赤字(太字)部分は、議事役が補記した部分。

ステップ3:議事録を清書する


最後にステップ3。ここからいよいよ「上司に提出する議事録」の作成です。ワードなどの文書作成ソフトを使い、ステップ2までに整理した手書きメモを「議事録の清書」として作成していきましょう。その際、押さえるべき内容は以下の6つです。

1. 標題


その議事録の「タイトル」にあたるものです。何に関する会議・打ち合わせだったのか、ひと目でわかる標題をつけましょう。

2. 日時・場所・出席者


日時は「西暦表記」、時刻は「24時間表記」がのぞましいでしょう。いずれも正確に記録します。出席者は「役職順」に書きましょう。同様に、お客様との会議の議事録ならば「お客様の会社が上」になるように。社内の部門間会議では、部門に暗黙的な序列があることもあるので、間違えないよう注意しましょう。

3. 内容要旨


ここには、その会議・打ち合わせで決まったことの「要旨(述べられた大事なポイント)」を簡潔にまとめましょう。

4. 会議内容


「3. 内容要旨」の具体的な内容であり、主にはステップ2で整理した内容を記述します。「見出し→小見出し→説明」といった3つくらいの階層構造があると、とてもわかりやすくなります。

5. 次回会議の日程


会議・打ち合わせの際に決まった次回の開催日時・場所・予定される内容を書きます。誰が参加するのかもまとめておきましょう。

6. 所見


所見とは自らの意見を述べることです。これは必ず書かなくてはいけないものではありませんし、特に社外に提出する議事録では「書いてはいけない」ものです。上司から所見を書くことの許しが得られる立場ならば、簡潔にここで自分の意見を述べましょう。

以下の画像は上記6点を盛り込んだ議事録の文例です。


舟橋さんは議事録作成の際の注意点についてこう補足します。

「たとえば、一般的な民間企業では『1,000円』と書くものが、ある一部の大企業では『1K円』といった言い回しを使うことがあります。お勤めの企業によってはそのような特徴的な言い回しを代々使っているケースがあるため、そうした見えないルールを知る意味でも、過去の議事録などは1つの前例としてチェックしておくのがよいでしょう」

議事録はあくまでその企業の慣習のなかで「読みやすい」ものが評価されます。読み手の気持ちを考えることもまた、皆さんの成長度合いを示すバロメーターになることを忘れずに作成しましょう。

(取材・文:安田博勇/編集:東京通信社)


識者プロフィール
舟橋孝之(ふなはし・たかゆき)
株式会社インソース 代表取締役 執行役員社長。株式会社三和銀行(現:株式会社三菱UFJ銀行)に入行し、テレフォンバンキングやコンビニバンキングの企画・開発等を担当。2002年にインソースを設立。

識者プロフィール
株式会社インソース
URL:https://www.insource.co.jp
「働くを楽しくする」サービスを提供。組織における課題解決のため、年間で1万7000回(2016年10月~2017年9月)以上の幅広いジャンルの研修や、人事総務関連業務を楽にするシステム等を販売している。自社メディア「Gambatte 上司が唸る書き方シリーズ」では、議事録・報告書・日報・詫び状などの書き方を指南している。
Gambatte 上司が唸る書き方シリーズはこちら

※この記事は2018/05/07にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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