梅雨に差し掛かる6月は「ゴールデンウィーク以降、休みがほとんどないからつらいなあ」「雨のせいか気分が上がらない」など、ビジネスパーソンにとって、どうしてもネガティブなイメージがつきまといます。
でもそんなときだからこそ、週末や有給を利用してちょっと足を伸ばし、気分転換の旅へ出かけてみませんか? 初心者さんでも安心・安全に楽しめて、自然の中でぜいたくな時間を味わう「グランピング」は、キャンプよりも気軽に始められるとここ数年、年齢や性別を問わず人気を博しています。
今回は山梨県の河口湖を望む、日本初のグランピングリゾート「星のや富士」で、広報の五十嵐さんにお話を伺いました。あらためてグランピングの魅力に迫ります!
グランピングの発祥
―まず、グランピングとは何でしょうか? その発祥から教えていただけますか?
グランピングは、「グラマラス(Glamorous)」と「キャンピング(Camping)」を合わせた造語です。
「自然の中でラグジュアリーに過ごす」という意味では、19世紀にヨーロッパ貴族が狩りや戦場に行くとき、宮殿と同じ生活を送るためにたくさんの荷物とお供を携えて野営をしたことが始まりだといわれています。
右:中央にあるのは焚き火スペース。人と人がつながる場所。
―1900年ごろに欧米人がアフリカに視察に行った際、デザートサファリでも問題なく快適なキャンプ生活を送れるようテントの改良をしたそうですが、これを起源にどんどん便利で快適なスタイルになったのでしょうか?
そうですね。巨大な森の中やサファリを見渡せる大自然に、ホテルと変わらぬ快適な宿泊施設をつくる。そこにバトラー(給仕)がついて、ラグジュアリー層のお客様も満足いただけるようなサービスを提供するというものに進化し、その後、「グランピング」という言葉が生まれました。
言葉の発祥は、アメリカかイギリスという説がありますが、「リゾート滞在型のスタイル」としては10年ほど前からはやり出しました。
自然に囲まれるのは心地よいし理想ですが、自分たちの普段の生活空間とは異なり、なんでもかんでも欲しいものや必要なものがそろっているわけではありません。
そこで自然を堪能しながらも過ごしやすい環境をつくるため、人々が徐々に工夫を凝らし、より利便性が高く気軽で快適に自然を体験できるようになった―それが現代におけるグランピングなのです。
グランピングはアウトドアとホテルの“いいとこどり”
右:自家製のカモミールティーで心も安らぐ至福のひととき。
―なぜ、ここ数年でグランピングが一気に広まってきたのでしょうか?
現在グランピングは大きく分けて3種類あるといわれています。弊社のようなリゾートホテル型のもの、用意された大きなコットンテントなどの中にベッドなどの家具が用意されているもの、ご自身で全て用意して楽しむもの、この3つ。
人には「自然の中で過ごしたい」という欲求があります。しかしテントで過ごす従来のキャンプでは、暑さや寒さ、寝心地、食事やテントなどの後片付け、虫やトイレの問題など、多くのわずらわしさがついてきます。
「大自然の中で過ごす醍醐味を味わいながらも、ホテルのような快適な空間で過ごしたい」、そんなわがままをかなえ“いいとこどり”の普遍的なニーズに応えたのがグランピングなのではないでしょうか。
右:おしゃれなファブリックに包まれたクッションとふかふかベッド
ほとんどのグランピング施設は「手ぶら」でOKなのだとか。ただし日中と夜の寒暖差があるので羽織るものは必須。そして自然の中を散策するので、動きやすい靴や服装が好ましいとのこと。
キャンプの場合は車やテントなどの道具をそろえたり、ある程度の知識が必要だったりと初めのハードルを高く感じる方も多いのですが、グランピング施設は都会からも近い場所に多く、ゼロからでも始められる。この気軽さから人気に火がついたのでしょう。
実は多い「お一人様グランピング」
―ここにいらっしゃるお客様はそれぞれどのように過ごされていますか? また、グランピングの醍醐味とは?
「星のや富士」では、ブランドプロミスとして「圧倒的非日常」をお約束しています。都会では時間や仕事に縛られ忙しく過ごすことが日常になってしまって、緑に囲まれることはもちろん、ちょっと立ち止まって休憩することもままならなかったりしますよね。
グランピングではそんな日常から少し離れて、普段できないような多くの自然体験ができます。例えば、アウトドアでシェフと料理をしたり、早朝の湖へカヌーで出かけてのんびり過ごしたり。釣りに出かけたり、馬に乗って緑の中を散策することも。都会の騒がしさを遮断した豊かな自然の中で、頭をクリアにしたり、心をスッキリさせたりできます。
必ずしもアクティビティを選択する必要はなく、お客さまは思い思いの時間を過ごされています。開放的な野外でご飯を食べる、ハンモックに揺られてお昼寝する、木々の匂いがする静かな空間で読書に没頭する、焚き火を見て無の時間を過ごす……。ちなみに、お一人でいらっしゃる方も多いんですよ。
―グランピングにお一人でいらっしゃる方が多いとは、少し意外ですね。
薪を割ったり、森林浴を楽しんだり、何もせず目をつぶってじっと考え事をしたり……本能的な情緒に訴えかける何かしらの「体験」ができるので、普段とは違うことに思いきり「集中」できます。それによって心身ともに良いリフレッシュになるのではないでしょうか。
―集中することでリフレッシュですか。確かに頭の切り替えがうまくなりそうな気がしますし、また、「マインドフルネス」のようにも思えますね。
それに近いかもしれません。また、通常のホテルでは個室が良しとされていますが、「星のや富士」ではパブリックスペースでの時間を楽しんでいるお客様も多いようです。自然の中、焚き火を囲むことで自然といつもよりカジュアルな気持ちを持たれるのか、スタッフや初対面のお客様同士、談笑を楽しんでいる姿をよくお見かけします。
これも「非日常空間」が働きかける作用なのかもしれませんね。心が少し開放的になり、新たな出会いや気づきのきっかけが自然と生まれてくるのではないでしょうか。
旅は発想力を加速度的に成長させる
―20代は仕事だけではなく、趣味や友達、家族と過ごす時間もワークライフバランスとして大切にしたいですよね。
身近な人の、いつもとは違う姿を見ることで新たな発見もできますし、料理などの共同作業でさらに関係性も深まるのではないでしょうか。
また、環境を変えることで参加した方の視野もぐっと広がるはず。旅先での出会いや見聞きしたことは、直接的ではないかもしれませんが、間接的に仕事に反映されてくると思うんです。
異業種や多国籍な友人が多い人は、仕事の発想力も豊かだったりしますよね。さまざまな人の考えや文化に触れ、考え方の指針を複数にすることができると、固執した一つだけの考え方にとらわれることなく、多くの引き出しを持って仕事も柔軟に対応できるようになるはず。
右:夜は昼と雰囲気が違ってとっても幻想的。ウイスキーで大人の時間。
―そうですね、いつもと違う五感が働いて新たなアイデアが創出されたり、さらには感性が磨かれ人としての魅力も底上げしそうです。
スタッフも旅好きが多く、連休があったら迷わず旅行に行っています。一歩足を踏み出してさまざまな景色や人に出会うことで、発想が加速度的に成長して人間味を増していき、その人の人生を豊かなものにしていくのではないでしょうか。
自然から受け取る多くのもの
これから雨がちな日々がやってきますが、自然の中で過ごす雨の時間には情緒があります。グランピングでは、木々をすり抜ける雨音の美しさや、しっとりとした自然の匂い、そして風景などを楽しめることでしょう。
一人でも、誰かとでも、とっておきの時間が過ごせるグランピング。今年あなたもチャレンジしてみませんか?
(取材・文:ケンジパーマ)
取材協力
星のや富士
山梨県南都留郡富士河口湖町大石1408
0570-073-066(星のや総合予約)
※この記事は2017/05/31にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
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