いまさら聞けないビジネス用語! クラウドファンディングとは?

「クラウドファンデング」という言葉自体は聞いたことがあっても、詳しい内容を知らない人は多いでしょう。そこで今回は、3つの成功事例を参考に、今後クラウドファンディングによってビジネスがどう変化していくのかを見ていきましょう。

いまさら聞けないビジネス用語! クラウドファンディングとは?

昨今話題の「クラウドファンディング」について、聞いたことはあるけれど詳しくは知らない、という方も多いのでは?

そんな方のために、今回はその仕組みや今後の動向を、日本クラウドファンディング協会理事の宮本聡さんに聞きました。

クラウドファンディングとは


「クラウドファンディング(crowd funding)」とは、crowd(群集・大衆)からfunding(資金調達)を行うという意味からつくられた造語であり、ある目的を持った事業者や個人がインターネット等を使い、不特定多数の支援者から資金提供を集めることです。

支援者は自分が共感したプロジェクトやサービスに資金を提供したり、支援後はプロジェクトの実施状況の報告を受けたり、見返りとしてサービスや商品を受け取ったり、あるいは金銭リターンを得たりします。

クラウドファンディングの仕組みを活用することにより、これまで金融機関等から資金を調達することが難しかった事業者や個人は、新たな資金調達の可能性と手段を得て、資金を持つ人々は新たな資金の活用の選択肢を得ることができるとされています。

このように、資金を必要とする人と資金を提供する人の双方が幸せになる可能性のあるのが、クラウドファンディングなのです。

クラウドファンディングはどのように普及したのか


クラウドファンディングが広まってきた経緯を、宮本さんは次のように語ります。

「クラウドファンディングは、もともとは2008年ごろのアメリカで生まれ、北米や欧州において音楽や映画の分野で製作者がファンから活動費を募る目的で広まったといわれています」

世界規模でクラウドファンディング市場の調査を行うMAs solutions社のレポートによると、2014年度の世界のクラウドファンディングによる総調達額は、16.2億ドル(約1兆9440億円 1U$=120円換算)に達しているとのこと。

さらに宮本さんによれば、2015年度には、欧米での市場の拡大が鈍化するなか、アジア地域で大きな伸びが予想されているのだそうです。

クラウドファンディング5つの類型


クラウドファンディングは一般的に、「寄付型」「購入型」「貸付型」「ファンド型」「株式型」の5つの類型があるそうです。

◎寄付型
金銭リターンはないが、社会貢献の一つとして参加する

◎購入型
金銭リターンはないが、商品やサービスのリターンが受けられる

◎貸付型
お金を借りたい企業や個人へ資金を貸し出し、貸し出したお金とその間の金利に基づいて金銭リターンが受けられる

◎ファンド型
ビジネスやプロジェクトなどに資金を提供し、売り上げ等の成果に応じた配当を受け取る。また、金銭リターンだけではなく、商品やサービスのリターンも受けられるものもある

◎株式型
株式市場に上場していない企業の株に投資し、業績に応じた配当を受け取る

日本でのクラウドファンディングによる資金調達の事例


では実際、日本ではどんなプロジェクトが成功を収めたのか、その成功例を宮本さんに紹介してもらいました。

(1)日本初の障がい児訪問保育を立ち上げるプロジェクト


一つ目は、NPO法人フローレンスが寄付型のプラットフォームの「ジャパンギビング」が行った、日本初の障がい児訪問保育「アニー」を立ち上げるためのプロジェクトです。

(参考:「預け先のなかった重度障害児の保育を可能に!日本初の障害児訪問保育『アニー』の立ち上げ!」ファンドレイジングサイト JapanGiving)

このプロジェクトでは、目標金額1000万円のところ、支援者698人、支援金15,477,700円もの支援を集めました。

「寄付型のクラウドファンディングでは、寄付者がお礼を受け取ることができる機能はありますが、あくまで寄付であるため基本的に対価はありません。

しかしこの事例では、まず医療的ケアの必要な重度障がい児の問題を伝え、その解決策として『アニー』は効果的であることを示し、そしてそれが社会全体に与える効果をメッセージとして届けて得た『プロジェクトへの共感』が大きく支援の輪を広げ、対価なしでも多くの寄付を集めた好事例といえます」

(2)失われた名刀を復活し、神社に奉納するプロジェクト


二つ目は、地域特化型のプラットフォームの「FAAVO」が展開する「FAAVO美濃國」におけるプロジェクト「蛍丸伝説をもう一度!大太刀復元奉納プロジェクト始動!」です。

(参考:「蛍丸伝説をもう一度!大太刀復元奉納プロジェクト始動!」 FAAVO美濃國

目標550万円のところ、支援者3,193人、支援金45,120,000円もの支援を集めました。

「岐阜県関市周辺の職人たちの手により、“失われた名刀”として名高かった『大太刀 蛍丸』を現存する資料を元に再現し、阿蘇神社へ奉納するプロジェクトでした。

この支援金額は、地域支援を目的とした購入型クラウドファンディングの調達額で今のところ過去最高額です。オンラインゲーム『刀剣乱舞』のブームがこの成功を後押ししたともいわれています」

(3)がん患者の相談支援センターを設立するプロジェクト


三つ目は、マギーズ東京プロジェクトの鈴木美穂さんが、購入型プラットフォームの「READYFOR」で行った、英国にあるがん患者を支える人々のための相談支援センター「マギーズセンター」を、日本にも設立するプロジェクトです。

目標700万円のところ、支援者1,100人、支援金22,068,000円もの支援を集めました。

「がんが日本人の主要な死因となっている今日です。そんななかで『マギーズセンター』というがん患者を支える人々のための相談支援センターの建設は、医療関係者やがん経験者など多くの方々から期待の声が寄せられました」

クラウドファンディングによってビジネスはどう変わるか


資金調達の常識を覆したクラウドファンディングは、これからの社会をどう変えていくのでしょうか。宮本さんは次のように語ります。

「クラウドファンディングは金融業界に関わっている人を除いて、日本人には比較的欠けている“資金提供のリスク”と、“その提供にあうリターンの重要性”を、資金調達者と資金提供者の双方に広げていくだろうと考えています。

またクラウドファンディング市場の発展により、事業者はリスクを取ってチャレンジする機会が増え、資金提供者はそのチャレンジへの参画の機会を得られます。

そういった環境が整えば、世界にはもっともっと夢を持ち、それを実現したいと願う人たちが増えると思います。そのため、クラウドファンディングは未来をより豊かなものに変える可能性を秘めた、優れた仕組みであるといえるでしょう」

さらに宮本さんは、クラウドファンディングはビジネスにとってもう一つ重要な機能があると言います。

「クラウドファンディングは、プロジェクトが必要な資金を集められるか否か、起案者が信用に足る人物であるかどうかなどが、ネット上の不特定多数の人々の集合知を使って、スクリーニング(選別)できるという機能も持っています。

多くの人の目によって、公開されたアイデアの魅力は磨かれ、起案者の姿勢や覚悟もよりよくなるでしょう。そしてそれは、次の新しいアイデアを生むきっかけにつながるのかもしれません」

まとめ


資金調達の常識を変えつつある、クラウドファンディング。「お金がないから」と諦めていた皆さんの夢も、この仕組み利用すればかなえることができるかもしれません。

今後さらなる普及が予想されるクラウドファンディングの動向を、ぜひ注意してチェックしてみてくださいね!

 

識者プロフィール


宮本聡(みやもと・さとる) 一般財団法人ジャパンギビング 事務局長/株式会社JGマーケティング 取締役/認定特定非営利活動法人ACE 理事/日本クラウドファンディング協会 理事長1972年生まれ、静岡県出身。6業種6社の勤務とフリーランスの活動経験後、一般財団法人ジャパンギビング事務局長、株式会社JGマーケティング取締役に就任。国内最大のファンドレイジングサイト「ジャパンギビング」と企業向けの資金調達サイト「シューティングスター」を運営し、チャレンジする人と支援する人をつなぐ活動に取り組む。

※この記事は2016/03/09にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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