初めてでも、難しくない!フィスコの企業アナリストに聞く企業分析で絶対押さえたいポイント

大学生時代、新卒での就職活動を行う中で「企業分析」をしたことがある方は少なくないでしょう。しかし転職となると自分の希望や条件を優先してしまい、企業分析はおろそかになりがち……なんて声も。

初めてでも、難しくない!フィスコの企業アナリストに聞く企業分析で絶対押さえたいポイント

大学生時代、新卒での就職活動を行う中で「企業分析」をしたことがある方は少なくないでしょう。しかし転職となると自分の希望や条件を優先してしまい、企業分析はおろそかになりがち……なんて声も。

社会人経験を積んだ今、これからの仕事や転職を考えたときのためにも、一歩先をゆく企業分析を身につけたいもの。安心して働ける環境を自ら見分けられるようになるべく、企業向けの投資支援サービスを行うプロフェッショナル集団、株式会社フィスコのアナリストお二人に、「企業分析」のイロハについて伺いました。

初めての企業分析! まずは決算短信を見てみよう


―まず、アナリストとはどんな仕事か、簡単に教えていただけますでしょうか。

フィスコ 情報配信部・株式チーム(チームアナリスト)佐藤勝己さん(以下、佐藤)

アナリストとは、企業分析に従事した専門職のことです。ごくごく簡単にいえば、上場企業を分析・評価し、その情報を投資家にリポートする――それが私たちの仕事です。

―フィスコ社にはそうしたアナリストが多数在籍し、上場企業のアナリストレポートや企業情報を配信しています。

フィスコ 情報配信サービス事業本部長 中村孝也さん(以下、中村)

当社は主に投資家の皆さまを支援する、各種金融サービスを提供しています。なかでも個人投資家向けに無料で公開している「フィスコ 企業調査レポート」では、上場企業の経営戦略や成長性分析など、個人投資家にとって関心が高い内容をレポートしているんですよ。

右:情報配信サービス事業本部長 中村孝也さん 左:情報配信部・株式チーム(チームアナリスト)佐藤勝己さん



―今日は、そんな分析のプロであるお二人の視点から、おおよそ20代の転職希望者向けに「企業分析」のイロハを教えていただければと思います。転職先企業のことを分析する際、まずはどんなことから行えばよいものなのでしょうか?

佐藤:アナリストや投資家が企業分析をする際にいつも見ている指標の1つが「決算短信」です。決算短信とは一定の開示ルールに則って、上場企業が決算発表時に公開している決算速報のこと。企業ホームページのIR・投資家情報ページなどで公開され、誰でも簡単に見ることができます。Googleなどで「決算短信 企業名」と検索すれば、すぐに出てくるはずですよ。

―決算短信の中身とは?

佐藤:決算短信は添付資料を含めると数十ページのボリュームがありますが、企業を分析する際に特に見るべき箇所は、決算内容が簡潔にまとめられた「サマリー情報」(最初の1~2ページ)にあります。

〈決算短信「サマリー情報」の構成〉

1.業績

(1)経営成績

 売上高、営業利益、経常利益、純利益、

 1株当たりの純利益、自己資本純利益率、総資産経常利益率、売上高営業利益率

(2)財政状態(総資産、純資産、自己資本比率、1株当たりの純資産)

(3)キャッシュ・フローの状況

2.配当の状況

3.連結業績予測



佐藤:特に、転職するときの企業分析に役立つのが「1.業績」の部分です。我々アナリストがいうところの「良い企業」とは、収益性の高い企業のこと。その意味で、サマリーにある「自己資本純利益率」――通称・ROEが1つの指標となっています。

転職の際の「ROE」の役立て方


―ROEとは何でしょうか?

佐藤:ROEとは、当期純利益÷自己資本(1株当たり利益÷1株当たり純資産)で算出される割合のことです。

中村:要は、その企業が株主から預かる資金をどれだけ有効活用できているかわかる指標です。ROEはその数値が高ければ高いほどよいとされていて、アナリストや投資家の間では「ROEから企業経営の効率性がわかる」と言われているんですよ。

ROE=1株当たり利益/1株当たり純資産



―なるほど。では、転職のときにも長期的に安心できる会社として、ROEの数値が高い会社を優先して選べばよいのでしょうか?

佐藤:そこはちょっと注意が必要ですね。それは、株式市場から見る企業分析と、労働市場から見る企業分析で相反する面があるから。そこは念頭に置いていただきたいですね。

―「相反する」とは?

佐藤:例えば、売上が減っていても利益が伸びている――そんな会社があるとします。これは言い換えれば、原価や人件費を含んだ販売管理費を圧縮しているということですが、「もしかしたらリストラ効果などで収益率を上げたかもしれない」と、そういう見方もできるわけです。いずれにせよ、そうして利益を上げればおのずとROEも高くなる。ROEが高くなると、株式市場だけで考えればその企業は評価される、ということになります。

しかし考えてみてください。それはつまり、コストカットのしわ寄せが従業員に及んでいるともいえます。もしかしたらの話ですが、従業員の給与だって減らされているかもしれませんよね?

ROEが高いからといって、働き手(転職活動をする側)にとってもすべてプラスに働くとは限りません。転職を考えているビジネスパーソンが、単純にROEだけを見て転職先を判断する、というのはちょっと危険な選択だったりします。

―転職希望者は転職先企業の情報を、どのように見ればよいのでしょうか?

中村:ROEがある一定以上の数値であれば「効率的な企業」といえると思いますが、業界ごとに収益構造は違うため、それぞれ事情も異なります。転職したい業界をある程度定めたら、まずは同業他社、つまりその業界の平均と比較してその企業がどうであるか、という角度で見てみるのがよいかと思います。

佐藤:あとは、企業の収益を単年度ベースで追いかけるのではなく、売上・利益が安定して伸びているのか、5年や10年の長期スパンで見てみることです。

中村:そうですね。短期的に考える必要はまったくないと思います。要は、よくなったり悪くなったりしながらも、右肩上がりに伸びていればよいのです。ただ、4年、5年と続けて減益が続いている企業ならば、少し検討すべきかもしれませんね。

佐藤:いずれにせよ、転職のときはこうした決算情報を大局的に見たほうがベターかもしません。

今後成長の見込みがある企業を見つける方法

 


―決算短信のほかに企業分析の指針になるような、わかりやすい資料などはありますか?

佐藤:ほかに挙げるとすると、決算説明会の資料でしょうか。

企業のIR・投資家情報ページには、決算説明会のときに使用したプレゼン資料が公開されていることがあり、そこに「企業がアピールしたいポイント」「これから注力していく分野」などがわかりやすくまとめられています。

決算短信は記載すべきことが決まっていますが、決算資料は特に形式は定まっておらず、その企業特有の情報性に富んでいます。企業の詳細情報をもっと知りたいときなどに、きっと役立てられるはずですよ。

―「これから注力していく分野」とおっしゃっていましたが、この先、業績を伸ばしていく企業はどんなところでしょうか?

佐藤:ここ最近で成長した企業に共通しているのは、2000年代のIT革命の波にうまく乗り、そこから新しいビジネスをつくり出したこと。これまではそれが「インターネットの波」だったわけですが、これからはそれが「AI」や「ビッグデータ」に置き換わっていくでしょう。

―目前に迫っている「AIの波」「ビッグデータの波」に乗れる企業、ということですね。

佐藤:それらが次なるインセンティブになる可能性があります。特にビッグデータの革命が起これば、企業が持っているデータが売れる時代がやってくるわけですから。

―そうした企業を見つける方法はありますか?

佐藤:私たちは「株式の名称・品目」のことを「銘柄」と言いますが、例えば「ビッグデータ 関連銘柄」などと検索すれば、インターネット上のさまざまな投資家サイトで、その分野に注力している企業を見つけることができます。そうした情報も、きっと皆さんの転職活動での企業選びなどで参考になると思いますよ。

―安定性・収益性・成長性・働きがい……など、転職先となる企業に求めることは人によってさまざまですが、誰でも「ブラック」あるいは「グレー」と呼ばれるような企業への転職は避けたいものです。アナリストとしてのご経験から、そうした企業を見極めるポイントはありますか?

佐藤:我々は「就職する」という観点で企業を見ているわけではないため、はっきりとしたことは言えませんが――、IRの視点から言いますと、IRや投資家向けのページがしっかりと作り込まれているかどうかは転職活動を行う際に1つの見極めポイントになるかもしれませんね。

―それはどういうことでしょう?

佐藤:IR・投資家情報のページを開くと、(ルールで定められた)決算短信だけしか公開されておらず、やけにすっきりしている……なんて企業に出くわすことがあります。

中村:そうですね。そうした企業は得てして、業績が悪いことが多かったりします。あくまで感覚的なものなので一概には言えませんが――アナリストあるいは投資家がこれだけ企業を分析しているのが世の情勢という中で、それでも「情報を公開したがらない」というのは、企業体質に何か問題があると思って注視したほうがいいかもしれませんね。

まとめ


佐藤さん、中村さんから、企業分析における“基本のキ”を伺いました。こうした視座に立ち、皆さんがこれから踏み出したい業界をくまなく分析していけば、安定した経営で、なおかつ自分が「ここで働きたい」と思えるような企業をうまく見つけられることでしょう。

また、転職活動の結果、複数の企業から内定をもらったときに比較検討する際の指針にもなってくれるはず。分析をしてみて初めてわかる企業の情報と、社員訪問など自らの足で集めた情報を総合的に鑑みることで、一歩踏み込んだ深い判断が下せるかもしれません。

なお、フィスコ社とDODAが共同で運営している企業情報検索ページ(DODAコンテンツ内)では、事業内容などがまとめられた「基本/求人情報」のほか、直近5期の売上高・経常利益をまとめたグラフ、従業員(平均年齢、平均勤続年数等)、財務(総資産、自己資本等)、キャッシュ・フロー、さらにはROE等の指標を見ることができます。こちらのサイトも皆さんの企業分析に役立ててみてください。


(取材・文:安田博勇)

識者プロフィール


中村孝也(なかむら・たかや)さん フィスコ 情報配信サービス事業本部長
日興證券(現SMBC日興証券)より2000年フィスコ移籍後は、新規上場(IPO)担当として1,000社を超える新規上場企業の調査・分析を手がけた。業種に縛られることなく、中小型株を中心にさまざまな企業の分析を得意とする。担当は株式市場・個別銘柄。

佐藤勝己(さとう・かつみ)さん フィスコ 情報配信部・株式チーム(チームアナリスト)
1998年フィスコへ入社、担当は株式市場・個別銘柄。

フィスコ社ホームページ:http://www.fisco.co.jp/index.html

※この記事は2017/06/12にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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