読まないなんて、もったいない! 会社のアレコレを知るには社内報が一番!

会社が定期的に社内報を発行している皆さん。毎回、じっくりと読んでいるでしょうか? 何気なく開いてパラパラとめくってみるけれど、「時間もないし」とすぐに閉じてしまう……そんな方もいるかもしれません。

読まないなんて、もったいない! 会社のアレコレを知るには社内報が一番!

会社が定期的に社内報を発行している皆さん。毎回、じっくりと読んでいるでしょうか? 何気なく開いてパラパラとめくってみるけれど、「時間もないし」とすぐに閉じてしまう……そんな方もいるかもしれません。

ところがある日、キャリアコンパス世代である20代読者からこんな声が届きました。

「最初の頃は社内報をほとんど読んでいませんでした。でも、あるときたまたまじっくり読んでみたんです。仕事に役立つ情報もたくさんあって、なんでこれまで読んでなかったんだろうと思いました」

近年、社内報の注目度は上がっており、新たに発行する会社も増えているのだとか。そもそも社内報にはどんな役割があり、読めばどんないいことがあるのでしょうか? 社内報の企画・制作を手掛け、組織のインナーコミュニケーション活性化を支援するウィズワークス株式会社代表取締役社長兼CEO・浪木克文さんにお話を伺いました。

社内報で半日社長体験!? 社員を巻き込んだ企画で好評!――東京電力フュエル&パワー


他社の社内報を目にする機会はなかなかないもの。まずは、ウィズワークスが制作を手掛けている中でも、特に社員からの支持が高い社内報を2つご紹介いただきました。

浪木さんが最初に見せてくださったのは、東京電力FP(フュエル&パワー)株式会社の社内報「FP Way」。

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隔月で発行されている東京電力FP(フュエル&パワー)の社内報「FP Way」



「東京電力グループさまは現在、組織の再編を進めており、東京電力FP(フュエル&パワー)さまでも会社と社員を取り巻く環境や状況が一気に変化するタイミングを迎えています。それに伴い社内報も一新したいということで、2017年より「FP Way」を創刊されました」(浪木さん、以下同)

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2017年9月、新たに「FP Way」となった社内報の創刊号



社内報のタイトルは、社員から募集して決めたそう。創刊号では、名付け親になった社員が半日間の社長体験をする企画を行い、その様子がレポートされています。

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社員が半日社長に。一社員ではなかなか乗れないハイヤー体験も!



「以前の社内報は会社の組織風土を伝えるメッセージや、組織変革に成功した事例を多く載せていました。しかし「FP Way」では大きく方針を変え、特集に社員を巻き込み、現場の頑張りを紹介する内容がメインに。以前よりも親しみやすいと、社員の支持が高くなったそうです」

100周年記念で特集。かわいいマンガを使った企画も!――オリンパス


続いて見せていただいたのは、オリンパス株式会社の社内報「FORUM」。

A4判が多い社内報ですが、オリンパスでは一回り小さいB5判で発行しているのが特徴。「女性の小さなカバンでも、持ち運びやすいサイズにしてほしい!」という社員の声を実現したためです。

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B5サイズの冊子で発行されるオリンパスの社内報「FORUM」



2019年に100周年を迎えるオリンパスは、顕微鏡からスタートした会社。しかし、新しい社員は当時の詳しいことを知りません。そこで、あらためて創業からの自社の歴史を共有しようと「顕微鏡の創世期をみる」という特集を組んだそうです。

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100周年記念に合わせ、会社の歴史・創世期を振り返る特集



100周年の節目に自社の社史を知ることで、当時から変わらない大切な理念を再確認しつつ、気持ち新たなスタートが切れそうですよね。

また、歴史などの硬めの話を掲載する場合は、マンガを入れて読みやすくするなどの工夫を凝らしているのだとか。

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コミュニケーションがチームの関係を強くする! 今、社内報が注目される理由


ここからは、より詳しく社内報の役割について浪木さんに伺いました。

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ウィズワークス株式会社代表取締役社長兼CEOの浪木さん



――最近では、社内報を発行する企業が増えているそうですね。なぜ企業は社内報に注目しているのでしょうか?

理由は主に2つあります。

1つ目は、社員の皆さんに気持ち良く長く勤めてほしいという会社の願いからです。会社と社員、社員同士の関係性が良くなければ、気持ち良く働けませんよね。そして、良い関係性を築くためには、社内の人同士が互いを知ることが不可欠。つまり、社内報を通して情報を共有し合うことが効果的なんです。

――私たちも、一緒に働く相手の人となりを知っていたほうが働きやすいですよね。

会社も同じです。身近なつながりはもちろん、隣の事業部、グループ会社……お互いの「人となり」を知っていたほうがスムーズに仕事を進めやすい。そこで情報を共有するためのツールとして、社内報が注目されています。

――もう1つの理由は、何でしょうか?

社内報をきっかけに、社員同士のコミュニケーションが活発になることが挙げられます。会社でのコミュニケーションが楽しければ、雰囲気が良くなるし社員のモチベーションも上がりますよね。

人によっては、コミュニケーションや情報の共有が良い影響となって、思考が変化することもあります。すると行動が変わり、結果として仕事の成果向上も期待できるんです。

――どのように思考と行動が変化するのでしょうか?

情報が共有されると共通の話題ができます。そこで生じた会話を通じて、「ああ、そういう考え方や価値観があるんだな」と、新たな視点や気づきが生まれてくる。すると視野が広くなり、これまでとは異なるものの考え方ができるようになります。

そうすれば自然と行動もポジティブに変化して、結果として仕事の成果が上がりやすくなるという考え方がされています。

社内のニュースと世の中のトレンド。社内報にはそのときの重要なテーマが載っている


――社内報では主にどのようなテーマを取り上げることが多いのか教えてください。

大きく分けると4つのテーマがあります。企業の理念やトップのメッセージ。事業やノウハウなどビジネス。組織風土などのカルチャー。企業の仕組みや制度などのデータ。この中でどこを厚くするかは企業によって異なります。カルチャーに重点を置いていることが多いのですが、この場合は社員の皆さんが一番求めている情報が、カルチャーに関することなのだと考えられます。また、社内報で「人を載せる」ことを重視する企業も多いですね。

――「人」を載せると、どんな効果があるのでしょうか?

よりたくさんの社員に読んでもらいやすくなります。自分と仲のいい社員が載っていたら、読みたくなりますよね。カルチャーのみでなく、理念について取り上げる場合でも、それを実践している社員を紹介したり、社長に語ってもらったりして、情報が主体ではなく人から発信していく見せ方をしています。

ほかにも、社員の面白い趣味の紹介や、「〇〇さんがご結婚されました!」のような結婚・出産報告など、仕事外のことを取り上げている企業もあります。

――結婚・出産報告、幸せですね! 会話が弾みそう。

社内報に載せる情報は、企業が置かれたその時々の状況によっても変わります。

人生にはライフイベントがありますよね。成人、卒業、結婚などの節目では、自分自身の生き方が大きく変わることもある。同じように、企業も以下のようなライフイベントを迎える節目で大きな変革を迎えることが多いのです。

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企業のライフイベント[無断転用不可]



この「企業のライフイベント」によって特集も変わってきます。例えば社長が交代するときは、新しい社長の紹介や社長のメッセージの特集を組むとか。

――たくさんある社内の情報から、そのとき重要なものをピックアップしているのですね。社内報を読めば、自社の重要なトピックがわかりそうです。

社内の情報に限らず、世の中のトレンドを押さえることもポイントですね。例えば、2017年から2018年にかけては「IoT」「AI」「働き方改革」などがキーワードです。社会のトレンドを知れば、その情報を自身の仕事に活かすことができます。また、それら時代の変遷に対して会社はどう取り組んでいくのか。これは社員の皆さんの働き方にも影響するものなので、読めばそれがつかめるような役割も社内報は担っているんですよ。

いかに読んでもらえるか? 企画が腕の見せどころ!


――社内報が企業と社員、両方に役立つことがわかりました。ただ、忙しい社員がじっくり社内報を読むのは、なかなか難しいこともあるのでは……?

そうですね。大事な内容だとわかっていても、例えば経営計画などが小難しく書いてあったら、なかなか読む気にはなれませんよね。「いかに読んでもらうか」を考えることが、社内報を作る人たちの腕の見せどころです。

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「重要なのは、企画」と力強く話される浪木さん



――制作されたものに限らず、数々の社内報を見てこられた浪木さんが「この企画は、すごい!」と思ったものはありますか?

社員の出社時間に合わせて、毎朝9:30にメールで社内報を配信している企業があります。その日のニュースダイジェストや、ビジネス用語を毎日1つ取り上げた解説など、会社に着いて最初に見てもらえるような、鮮度が高く仕事に役立つ情報を日々社員に届けているんです。

その企業の編集部は、ただ配信するだけでなく「毎朝必ず見てもらう」ことを目標にしているそうです。どんな人が見たか、どのコンテンツが読まれたかなどしっかり振り返って内容をブラッシュアップし続け、今では74%以上の社員が、朝一番に必ず社内報を見るそうです。

――74%以上とは驚きです! 出社して席についたら、まずは社内報メールを開くのが日課になっているのですね。

すごいことですよ。どんな情報なら社員が読みたいと思うか、社員がメールを開くタイミングや状況なども考えて作ってきたからこその成果です。

会社により異なる社内報の形式。スマホアプリの活用も!


――メールの社内報という話があがりましたが、社内報は冊子とは限らないのですか?

冊子や壁新聞などの紙媒体、メールや社内Webサイトなど、企業によって形式はさまざまです。

例えば、IT系の企業でクライアント先に常駐している方は、社内限定のWeb社内報が受け取れない場合があります。工場勤務の場合は1人に1台PCがない場合も。これらのケースでは紙媒体で発行することが多いです。

――紙媒体とWebやメールなど、複数の媒体を使うこともありますか?

あります。特に、大きな企業では紙媒体とWebを活用しているところが多いです。速報性の高いニュースなどはWebに、じっくり読んでほしい特集は紙にと、内容に応じて使い分けています。

最近は、Webの代わりにスマートフォンアプリを使う企業も出てきました。特に20代~30代の若手は、業務をこなすのに精一杯で紙もWebもじっくり読むのは大変ですよね。スマートフォンアプリなら、通勤時間やランチタイムのちょっとした隙間時間にサッと読んでもらいやすくなります。

社内報で互いを知れば、会社もきっと楽しくなる


最後に浪木さんは、このように話してくれました。

「社内報を読んでみると、職場のあの人の意外な一面が知れたり、新しい誰かと話す話題も生まれたりするかもしれませんね。ちょっと仕事に行き詰まったりしたときのヒントをくれる情報に出会えることもあるでしょう。

そうなると徐々に人間関係や仕事の質も変わってきて、いつの間にか会社に行くことが楽しみになってくる。社内報にはそんな可能性が凝縮されているんです」

いつもはすぐに閉じてしまうという方も、次号の社内報はじっくり目を通してみませんか。

(取材・文・編集・撮影:東京通信社/イラスト・図:ウィズワークス株式会社さまご提供資料を元に編集部にて描き起こし)

識者プロフィール


浪木克文(なみき・かつふみ)
ウィズワークス株式会社 代表取締役社長兼 CEO。1965年福岡県北九州市生まれ。1990年九州大学卒業後、株式会社リクルート入社。人材部門の組織長として継続して高業績を上げる組織を実現。九州支社長として支社マネジメントも行う。その後、株式会社ゼロイン取締役社長、株式会社リンクイベントプロデュース取締役を経て、2016年7月より現職。人事・組織・採用コンサルティング、インナーコミュニケーション分野においての課題解決が得意。経営者・管理職・学生向け講演・研修講師実績多数。
https://wis-works.jp/

※この記事は2018/05/25にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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