20代はどんどんキャリアチェンジできる!? 日本と違うシンガポールの働き方

近年、目覚ましい経済発展を続けているシンガポール。ビジネスでも観光でも日本人がよく訪れる国ですが、日々進化を遂げる最先端のこの国で、ビジネスパーソンたちはどのように働いているのでしょうか?

20代はどんどんキャリアチェンジできる!? 日本と違うシンガポールの働き方

近年、目覚ましい経済発展を続けているシンガポール。ビジネスでも観光でも日本人がよく訪れる国ですが、日々進化を遂げる最先端のこの国で、ビジネスパーソンたちはどのように働いているのでしょうか?

今回は、シンガポールで石炭、石油、穀物、鋼材などを運ぶ貨物船のコンサルティングを行う会社に勤める横山賢来さんに、日本との働き方やキャリア感の違いについて伺いました。

シンガポールってどんな国?


シンガポールは東京から飛行機で6~7時間ほどの場所に位置する国。時差は日本から見てマイナス1時間と、ほぼ変わりはありません。平均気温は年間を通して26~28度と温暖な気候です。マーライオンの像は有名な観光スポットなので、キャリアコンパス読者の皆さんもよくご存じかもしれませんね。

通貨はシンガポールドル(SGD)で、1SGDは約81円(2018年2月現在)。代表的なグルメはチキンライス(約250円)、肉骨茶(バクテー。約330円)、チリクラブ(約2,500円~)です。

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チキンライスは日本でも人気



家賃は日本と比べて高く、ワンルームの部屋は郊外でも約16万円~、都心だと約25万円~が相場です。そのため、単身者はシェアルームを借りることが一般的だとか。交通機関の場合、電車は約80円~、タクシーは約170円~と安いのが特徴。

シンガポールには日本と違い、厳しい罰金制度がいくつかあります。例えば、電車の中で飲食すると約4万円、ゴミのポイ捨ては最高で約8万円の罰金。街中には等間隔でゴミ箱が設置され、清潔できれいな環境を保っています。これらの厳しい罰則は人々の暮らしやすさを守るためのもの。

そして、より快適な生活を送れるよう、電子マネーや電子決済のインフラも日本と比べて整備が進んでいます。ほとんどのお店にクレジットカードやデビットカードの端末が設置され、2017年にはキャッシュレスで支払いができる無人コンビニが開店するなど、発展を遂げています。

たった50年で急成長したシンガポール


シンガポールが建国されたのは1965年。たった50年ほどしか経っていない若い国です。初代首相のリー・クアンユー氏は、東南アジアの中心であるシンガポールの立地を活かし、法人税や所得税を下げるなどして優秀な人材や企業、投資家など富裕層を誘致し、世界経済のハブにまで押し上げます。今では国民1人当たりのGDP(※)は日本を抜くまでに成長しました。

※国内総生産のこと。一定期間内に生産された商品やサービスの付加価値の総計

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巨大な池が設置されたターミナル2



その経済発展を象徴する一つが、空の玄関口であるチャンギ国際空港の発展です。空港から都心部までは電車で30分ほどの好アクセス。巨大な空港内には数々の蝶が飛び回る庭園「バタフライガーデン」、チューブ状の大型滑り台「スライド」、そのほか映画館やプールなど、まるでアミューズメントパークのような施設が設けられています。

2017年後半に完成した第4ターミナルは、搭乗手続きから手荷物の預け入れ、出国審査、搭乗まで、すべての工程に完全自動化システムを導入し、世界から注目されました。チャンギ空港の利用状況は旅客、貨物ともに右肩上がり。急成長を押し上げていることがわかりますね。

日本人とシンガポール人の働き方の違い


シンガポールの面積は約720平方キロメートル。東京23区と同じほどの国土には約560万人が住んでおり、そのうち約220万人は外国人です。シンガポール人は中華系、マレー系、インド系に分かれており、多種多様なルーツを持つ人々が共に働いています。

働き方や考え方は、日本人とどのような違いがあるのでしょうか。

「シンガポール人も現地採用の外国人も、残業をすることなく定時で帰っていますね。仕事は仕事できっちりやって、終わったらみんな、自分の家族との時間や趣味の時間を大切にする。娯楽がたくさんあるわけではありませんがアジア各国へのアクセスは良いので、土日を使ってタイやインドネシアなど近隣諸国へ気軽に旅行へ出かけている人は多くいます」。

「シンガポールにある欧米系の企業は効率重視なので、やるべき仕事さえ終われば早く上がれるんです。16時くらいから街でお酒を飲んでいるビジネスパーソンをよく見かけますね(笑)」。

企業に勤めるビジネスパーソンは日本と同じくスーツが基本です。温暖な気候のためノーネクタイで、上着を着ることはありません。大手企業でも金曜だけはカジュアルでの出勤が認められていて、ポロシャツやアロハシャツ、ジーンズや短パン姿で働く人もいるのだとか。ちなみに、シンガポールの企業のオフィスにはほぼシャワールームがあります。

「暑い国なので、1日に2~3回シャワーを浴びることも珍しくありません。また、業務の休憩中にジムで筋トレする人もこのシャワーを利用しているようです」。

そんなシンガポールの公用語は英語。横山さんも普段から英語で仕事をしています。

「英語では日本のような複雑な敬語表現は少ないので、ビジネスシーンでも時にはジョークを交えて話すなど、フランクなノリで会話することも。本音と建前を使い分けるよりも、ビジネスでは意見をはっきりさせることが重要視されるので、物事が決まるスピードも日本と比べると速いです」。

法人税は17%と低く、世界各国から先進的な事業を展開する企業を積極的に受け入れているシンガポール。東南アジアにおける配車サービスの最大手までに成長したスタートアップ企業「Grab」の本社もシンガポールに拠点を構えています。「Plug-In@Blk71」というオフィスビルには500ものスタートアップ企業が入居し、ビジネス向けのセミナーや講演会が開催されるなど企業同士が刺激し合うコミュティになっています。こうした国を挙げての施策や、企業同士の切磋琢磨が経済の成長を支えているのではないでしょうか。

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まばゆい夜景のマリーナベイ・サンズ

 

異業種への転職が当たり前


気になるシンガポールの給与事情。シンガポール政府は、外国人労働者に対して最低賃金を公表しています。

「労働ビザによっても変わりますが、私のような専門職などに多いEP(Employment Pass)の最低給与は3,600SGD(約30万円)以上、一般職に多いS Passは2,200SGD(18万円)以上です」。



また、共働きの世帯が多いのも特徴なのだとか。

「男性は真面目でおとなしいですが、『家族を守るために稼がなきゃ』という考えを持っていて、芯がしっかりしています。育児参加も当たり前。女性は男性よりも気が強い人が多く、結婚して子育てもしながら仕事もバリバリこなしているイメージです。シンガポールはメイドの雇用が安いため、メイドに家事を任せて夫婦共働きの家庭が多いです。メイドは住み込みで雇っても月に約5万~7万円ほどですね」。

また、シンガポールでは転職して給与を上げていくことが一般的なのだそう。

「国の政策でシンガポール人はとても優遇されています。シンガポール人の雇用を生むために、企業はシンガポール人の求人枠を用意しなければならない場合があります。そのためシンガポールでは今、シンガポール人の売り手市場になっているのです。ですから企業は、シンガポール人を採用するためには給料を高く設定するほかありません」。

「シンガポール人の20代のビジネスパーソンは、より高い給料をもらうためにだいたい2~3年で転職するので、30歳になるまで3つくらい企業で働きます。銀行や証券会社のような金融系は高給なので人気です。40代で大臣になるなど若い政治家も活躍しており、政治家を目指す若者もいます」。

「政策で安定した職や収入を得られるようになったため安定志向が多く、起業しようとするシンガポール人は少ないですね。逆に、外国人はスキルだけを見られます。日本よりも実務経験が必須とされ、即戦力になるかどうかが重視されるのです」。

20代はチャンスが溢れている


ただし、20代の外国人はスキルがなくても将来性があるため、採用について比較的寛容なのだとか。

「20代ならスキルがなくても、海外の企業で実務をこなす中で多くのことを学ぶことができ、給与がもらえる、というメリットを享受できます。短期で働くならワーキングホリデー制度もありますし、シンガポールや香港、オーストラリアなど2~3カ国で働いてから日本へ帰国する方もいますよ」。

「シンガポールにはアジアトップのシンガポール国立大学があり、アジア中の優秀な人材が集まります。日本人の集まりの中では『県人会(※)』が特に有名。企業の社長に会える機会も多いですし、アジア中の情報が県人会を通じてシンガポールに入ってきます。そんな環境で若いうちに揉まれながら成長できることは、大きな財産になるはずですよ」。

(※都道府県や他国に住む同県人同士や、その県に縁のある人が組織している会)

チャンスや可能性が未知数な20代。もしも、あなたがキャリアについて迷った時は、一度、海外に目を向けて見てはいかがでしょうか。自分が本当にやりたいことを見つけ、日本では気づけなかった自分の強みを認識する機会になるかもしれません。

(取材・文:ケンジパーマ/編集:東京通信社)

識者プロフィール

 

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横山賢来(よこやま・まさき)
1980年生まれ。
4歳~14歳までアメリカ・シカゴで過ごす。大学卒業後に外資系メーカー、コンサル会社での勤務、ネイルサロンの経営などを経て2016年より渡星。現在はシンガポールを中心に船舶・海運業に従事。

※この記事は2018/03/09にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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