【連載】あの人だって元ビジネスマン! 芸人 やさしいズ・タイ┃ 美味しいご飯もタクシーも…今だから感じる会社勤めのありがたみ

今回は、連載第2回目。お笑い芸人のやさしいズ、タイさんの後編をお届けします。幹部候補として入社したにもかかわらず、なぜ芸人の道を選んだのでしょうか。同期5人の世界から同期1000人の世界へ――タイさんの過酷な芸人人生が始まります。

【連載】あの人だって元ビジネスマン! 芸人 やさしいズ・タイ┃ 美味しいご飯もタクシーも…今だから感じる会社勤めのありがたみ

いま、新たな舞台で活躍しているあの人にも、実はビジネスマンとして会社勤めをしていた日々があったそうです。

しかし、なぜ彼らは会社員を続けなかったのでしょうか。ただ単に彼らは向いていなかったのでしょうか。どんなビジネスマンだったのかを訊いてみました――。

今回は、連載第2回目。お笑い芸人のやさしいズ、タイさんの後編をお届けします。幹部候補として入社したにもかかわらず、なぜ芸人の道を選んだのでしょうか。同期5人の世界から同期1000人の世界へ――タイさんの過酷な芸人人生が始まります。

お笑い芸人┃やさしいズ・タイ
1985年生まれ。東京都出身。吉本興行所属のお笑いコンビ・やさしいズのボケ担当。日本大学卒業後、約2年間旅行系の広告代理店に勤務。その後16期生として、NSC東京校に入学する。中学・高校の保健体育の教員免許、空手の全国3位経験を持つ。

 

大阪という土地柄、「芸人になるから辞める」とは言えなかった

 

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――大阪の文化にも馴染み、社会人生活も順調だったようですが、2年で辞められたんですよね?

タイ:やっぱりお笑い芸人になりたくて。でも、「お笑いの養成所に行くので辞めます」とは言えなかったですね、大阪にいる東京人ですから(笑)

――あははは。その告白はハードルが高すぎる。

タイ:なので、「映画の専門学校に行きます」と嘘をつきました(笑)。

――でも、親しい同僚には言ったわけですよね?

タイ:本当は言いたかったんですけど、誰と誰がつながっているかわからなくて……。一番偉い部長に話が伝わると辞めづらくなるので、誰にも言わなかったですね。会社ってそういうところが難しい。送別会でも「いい映画を作ってね」とかみんなに励まされちゃって。

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――あれだけ反対していた母親の反応は?

タイ:反対されることは分かっていたので、すべての手続きを済ませてから電話しました。

――どうでしたか?

タイ:「どんだけ頭下げてもいいから、とにかく会社に戻って!」って。父親はそこまで反対しなかったです。

――今はもうご両親ともに応援してくれていますか?

タイ:母親はピースの又吉さんのファンだったみたいで。又吉さんに食事に連れて行ってもらった話をしたら、急に態度が変わりました(笑)。

同期5人から、同期1000人のお笑い界へ

 

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――会社員を経験して、いまは芸人として活動されたことで、人生訓みたいなのは生まれましたか?

タイ:うーん、これまで何度か人生の岐路に立ちましたけど、そういうときは難しい方を選ぶようにしてきたんです。

――それはなぜ?

タイ:自分ができることをしてもあんまり楽しくないじゃないですか。できなさそうなほうが、ドキドキする。

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――とはいえ、お笑い芸人の数ってものすごいですよね。勇気があるなと思うんです。

タイ:これほどたくさんいるとは思ってなかったんですよ! 会社の同期は5人でしたけど、NSC16期生だけで1000人いましたから。

――会社員を経験していて良かったと思うことはありますか?

タイ:そう簡単には辞められない状況が作れたのは良かったですね。戻れる場所はもうないので。

会社のお金で美味しいものを食べられた

 

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――実務面では何かありますか?

タイ:広告制作って、限られた誌面のなかで必ず入れる情報と、こちらが入れたい情報のバランスをどうするかなんです。そういう意味では、お笑いでもネタの持ち時間が4分と限られたなかで、どうやって取捨選択するかの作業と似ているかもしれませんね。

――編集的な側面ですね。

タイ:はい。デザイン的にはおしゃれだけど、クライアントはそんなことよりも文字を目立たせたかったりするんです。お笑いも、自分が面白いと思ったボケもお客さんにウケないと意味がないのと同じです。

自分たちがやりたいことと、お客さんがほしいものが違うということですかね。

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――会社員と芸人の違いはどこにありますか?

タイ:芸人は自由な分、リスクがあることですかね。昼まで寝ていても、1日何もしなくても誰からも何も言われません。逆に毎日朝9時~17時まできっちりネタ作りをしても、お金にはなりませんから。これは芸人ならではですね。

あと、美味しいご飯は食べられないです!(笑)

――接待費はないですからね(笑)。

タイ:若手芸人たちは格安居酒屋でぎゅうぎゅう詰めになって飲んでますから。貧乏って心が荒むんです。皆さん、会社員のうちに、会社のお金で美味しいご飯食べたほうがいいですよ!(笑)

冗談じゃなくて、会社にいるときってそのありがたみが分からないと思うんですけど、僕はやっぱ接待とかで食べられる美味いメシがデカかかったっすよ。

――では最後に、会社員の方々へアドバイスを

タイ:嫌な上司もいると思うんですけど、毎月給料が振り込まれますし、有給もありますし、そういう環境をもっとありがたく利用してほしいですね。

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この連載では、会社勤めの経験がある著名人に会社員時代のちょっとやんちゃなエピソードを伺っていきます。次回は、お笑い芸人「フランスピアノ」のお2人のインタビューをお届けします。

前編:【連載】あの人だって元ビジネスマン!芸人 やさしいズ・タイ┃大阪勤めで経験した「面白ければオールOK!」の文化。笑いとともにあった会社員時代

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文/富山英三郎 撮影:佐坂和也

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