ツイッター運用歴10年以上! 東急ハンズの「中の人」に聞いた、コミュニケーションの大切さ

2009年からツイッターをはじめ、フォロワーの心をがっちりと掴んでいる東急ハンズ公式アカウント。その「中の人」にお話を伺うと、顔の見えないSNSの世界だからこそ痛感した、コミュニケーションの大切さ、そしてツイッター運用歴10年で培った「現代のはたらき方」にも通ずる仕事術を教えてくれました。

ツイッター運用歴10年以上! 東急ハンズの「中の人」に聞いた、コミュニケーションの大切さ

企業のツイッターアカウント黎明期とも言える2009年からツイッターをはじめ、フォロワーの心をがっちりと掴んでいる東急ハンズ公式アカウント。その「中の人」とは、同社の本社部門で働くベテラン社員でした。

ツイッター運用担当になった経緯は、なかば無茶振り? だったようですが、他社の企業アカウントの良い例を探り、少しずつ独自のスタイルを確立。フォロワーと同じ目線に立つことの重要さに気づいていったと言います。

今回は東急ハンズの「中の人」に、顔の見えないSNSの世界だからこそ痛感した、コミュニケーションの大切さや、独自の仕事術を教えていただきました。

 

ツイッターの「中の人」は、本当は「側(そば)の人」だった

 


――本日はよろしくお願いします。東急ハンズ公式アカウントは2009年のスタートだそうですが、それから10年間ずっと担当されているんですね。

中の人:ツイッター運用をはじめてから、部署異動などで名刺は6枚目になっていますが、ずっと担当しています。

――「中の人」のやりがいってどんなところにありますか?

中の人:運用そのものを楽しんでいるのかもしれません。ツイッターだからこそ、お客さま目線で会社を見ることができる。「中の人」と言われますが、お客様の側(そば)からも会社を見られる「側の人」と言う方がしっくりくる気がします。

フォロワーの方々、一般のお客さまと、東急ハンズという名前で直接コミュニケーションが取れることを、僕自身がとても楽しんでいる感覚ですね。

――なるほど。

中の人:ツイッターは、本音の部分でみんなが繋がり、共感できる。そこがきっとやりがいなんだと思います。特に、初期のころは写真も貼れず、140字の短文勝負でした。たった140字ですが、本音で言ってないと、それがバレるんです。

端的な例で言うと、食レポ的に「新しく出た飲み物が美味しいよ」と言っても、飲まずに言うとバレるんですよ(笑)。でも本当に飲んで言うと「そうなの?」「美味しそう!」って反応が返ってくる。忙しくて飲んでないけど宣伝しなくちゃいけなくてツイートしたものは、全然響かない。自分で見て、触って、実感したものだけが伝わるんです。

 

お店での接客に通ずる、顧客との直接コミュニケーションの場

 


――今後、どんなことを目指して公式アカウントを育てていく予定ですか?

中の人:僕がたまたま運用担当していますが、その後ろには実際にお店でお客さまと接して、長い時間をかけて信頼を獲得してきた多くのスタッフの存在があります。お客さまは、その東急ハンズを信頼してくれているのだと思います。

僕があまりツイッターでの運用リスクを心配していないのは、お店のスタッフがちゃんとしてくれているからです。東急ハンズの公式ツイッターは、東急ハンズ各店のスタッフによる接客のひとつのかたちに過ぎません。ツイッターは、基本的にはコミュニケーションを取るツールです。企業が使っても、宣伝目的というより、コミュニケーションに使うべきだと思っています。

ツイッターを運用するようになってから、改めてこういったコミュニケーションの大切さや、店頭ではたらいている多くのスタッフ、ひいては東急ハンズが得てきた信頼の大きさを感じることができたのは事実です。

――フォロワーの方々とのコミュニケーションがすごくフランクですよね。

中の人:そうですね。コミュニケーションを取る中で、ブランドを知ってもらって、その後にお買い物がついてくるんだと思っているので。どうせ買うんだったら、ツイッターで面白いことを言っている会社で買おうかなって思ってもらえればOK。普段から他愛もない会話でコミュニケーションを取っていると、フォロワーさんから突っ込んでくれることもあります。

暑い日が続いて「今日も暑いですね、気をつけましょう」みたいなことを言うと「そういう時でしょ~暑さ対策のグッズを紹介するのは~!」って、フォロワーさんに言われて「なるほど! そうですね」って。

それを自分から「暑いからハンディファン売ってまーす」って言っても、フーンって感じで流されてしまうと思うんです。

 

――ボケとツッコミの漫才みたいですね。

中の人:本当ですね(笑)。漫才といえば、東急ハンズのロゴは「手」のアイコンなんですけど、ツイッターでは「羽」にも見えることから、もはや「手羽さん」とか「手羽先」とかって呼ばれて、お約束の掛け合いみたいになってますけど……。

やっぱり、すべてにおいてコミュニケーションは大事なんです。社内調整でも、メールで済ますのではなく、なるべく直接会って話をするようにしています。すでにしっかりとした関係性が築けているならいいですが、そうじゃなくても一緒に盛り上がりましょうよって直接伝える方が、きっとどこかで効いてくるのかなって僕は思うんです。

 

手探りで切り拓いたツイッター仕事術は“現代のはたらき方”に通ずる



――そもそもツイッター投稿は、どのような経緯で始まったのでしょうか?

中の人:当時の広報チームが2009年7月にアカウントを取得して、僕が実際に投稿を開始したのは9月14日です。

2009年とは、ちょうどツイッターが流行り出したころ。すでに仲間内で使っていて、これは宣伝に使えるんじゃ? って話になって、冗談半分で「良いですね」って言ったら、当時の上司から「(中の人)さん、使い方よくわかっているから、やってみれば?」って振られました。

さすがに会社の看板を背負うのに、そんな軽々しく始めるものじゃないって3回断ったんですが(笑)、その上司が広報の管理職に「(中の人)さんが会社の名前でツイッターやりたいって。いいよね?」って。聞かれた管理職も「いいんじゃない~?」ってまたカジュアルな回答。それで決まったという経緯なんです。

――ずいぶんと寛容な社風ですね(笑)。

中の人:いや、そのふたりが寛容なだけです(笑)。でも結果としては、本人希望のボトムアップ案件になっています。

――始まりはどうあれ、当時はどんな風に運用しようと思いましたか?

中の人:とりあえず企業アカウントなので情報発信だな、と思い、イベントや新商品情報を発信し始めました。ところが、一向にフォロワーさんが増えないんです。

そこで、たくさんのフォロワーさんを抱えている企業さんはどうしているんだろうと気になり始め、よく観察しました。すると人気の企業アカウントでは、情報発信よりもむしろフォロワーさんと会話したり、コミュニケーションを取っていたんです。

例えばTSUTAYAさんの公式アカウントは、自社コンテンツである映画について、「あの映画が良かった」っていう会話をフォロワーさんとしていたり。当時から有名だった冷凍うどんの加ト吉さんも、やっぱりフォロワーさんとうまくコミュニケーションを取られていました。

当時は、まだ参考事例が少なくもあり、手探りの状態でした。それでもシステム部門の僕が、ツイッターを通じて直接コミュニケーションできることが面白いと感じて、だんだん自分なりのやり方が固まっていきました。

――最近で、記憶に残っているツイートはありますか?

中の人: 2018年1月、東京に大雪警報が出たときのことです。実際に雪が昼ごろに降り始めました。でも、みんな出勤して、オフィスにいるじゃないですか。もちろん、僕もオフィスにいました。外を見ていたら、どんどん降り積もっていって。こういう日は、うちみたいな小売業だと、どうしても売上は厳しくなります。

ところがツイッターのタイムラインを見ていたら、ほかの小売業さんが「お足元に気をつけてご来店ください」って。こんなときに「お足元に気をつけて来て」と言われても、行くわけなかろう! って思ったんです。

なので、自分はそのまま言っちゃいました。「東京23区、多摩地区に #大雪警報 が発令されたようです。東急ハンズに来ている場合ではありません。早めにご帰宅を。」って。そしたらバズっちゃいまして。

 

――好感度の高さの理由は、その率直さでしょうか?

中の人:企業の看板を背負ってるからって、買ってください! って情報発信するのは、ツイッターには全然馴染まないと思うんです。逆に、皆さんと同じ目線に立ってツイートすることが、受け入れられるひとつの条件だと思っています。

東急ハンズの立場というよりも、東急ハンズのお客さまと同じ立場で、「これを言われたらみんな面白がるだろうな」「この商品情報のこの一面がまだ知られてないんじゃないか?」っていう感じじゃないと、ツイートしないようにしています。

――仕事を頑張る若手ビジネスマンに伝えたいことはありますか。

中の人:運用当初のことはあまり思い出せませんが、ツイッターも、最初から面白がってやってたわけじゃなかったと思います。自分の場合も、無茶振り気味で始まりましたので、楽しんでやり始めたわけではありません。

でも、始めたからには何か面白いことを見つけないと悔しかったんです。どんな仕事も絶対面白く思えるところがあると思いますから、それを見つけるようにすると深掘っていけるかもって思います。

そして楽しくなってくると、プライベートと仕事を切り分けることもアホらしくなってくる。切り分けられない部分がどうしてもあって、“楽しいからやっちゃえ”みたいな部分があります。

言っていいのか分からないけど、うちのアカウントは毎日発信してて、500日くらい続いているんです。ということは、休みの日もやっています。土・日も、お正月も含めて500日。いまは2人体制になったのでコンプライアンスを守りながら達成できるようにはなりましたが、一人でやっているときも楽しくなっちゃって何日連続でできるかやってみようって。

 

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お客さまの目線に立ち、いま何を言われたら嬉しいか、どんな情報が必要とされているのかを読み解きながら、会話のキャッチボールでフォロワーとの関係を築いてきた東急ハンズの公式アカウント。そして今後は妹さんのツイートにも大注目です。

今回インタビューをさせていただくにあたり、「中の人」にビジネスマンにおすすめの商品もピックアップしていただきましたので、そちらもご覧ください!

■中の人インタビューはこちら!
これは便利! 東急ハンズの「中の人」に聞く、ビジネスマンにおすすめのお役立ちグッズ6選

文/土田貴史

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