初のエッセイ『僕の人生には事件が起きない』(新潮社)を刊行したハライチ・岩井勇気さん。本書には「ありふれた毎日」に嘆きながらも、日常生活で起きる些細な出来事が岩井さん独自の目線で綴られています。
ビジネス書は読まないけど、働くうえできっとビジネスパーソンにもためになる一冊『僕の人生には事件が起きない』。ラビジ連載第4回目は、ハライチ・岩井勇気さんが登場です。
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第1回:上司は教えてくれないお金と仕事の幸せの話! 会社に縛られない生き方とは
第2回:精神科医・樺沢紫苑に聞く、脳を上手に使いながら必要な情報だけをインプットする方法
第3回:ネガティブ思考を吹っ飛ばすために「脳を鍛える」? “がんばりすきない休み方”が仕事を楽にする
充実していると他人に思われたいジレンマ
――まず、今の若い世代って、リア充になりたいって思いが強くあるような気がします。
それは普通のことだと思います。誰もが自分の人生の主人公ですから。ただ、「俺は人生の主人公だから、普通じゃないし、いろんな事件が起こるはずだ」って思い込んでいる人が多いんですよね。
――それはどうしてでしょうか?
今は、カラフルないろんな情報をたくさん見せられていますよね。SNSとかで充実した週末を送っている人の投稿を見て、だんだん洗脳されていってしまうんじゃないですか。「俺の人生にも非日常なことが起こるはずだ」って。
――自分を特別だと思いたいっていう気持ちが強すぎる?
自分を高く見積もり過ぎているなって気がしますね。正直、うぬぼれてるふしがあるなぁって。でもそのせいでどんどん追い込まれていく感じもありますね。
――いわゆる“中2病”みたいな感じですか?
そうですね。例えば、世の中を「芸能人」と「一般人」というくくりで分けると、僕は芸能人のくくりに入る。でも何か起こりそうな芸能人の僕でさえ、ほとんどそんなことは起きてない。
僕だけじゃなくてほとんどの人にも何かが起きているわけじゃないし、みんな誇張して言ってるだけですからね。じゃあ一般人ならなおさらあるわけないでしょ? そう思うわけです。
――そうであるにも関わらず、みんな必死に非日常な出来事を求めてしまうという……。
SNSもそうですけれど、そうやって人の言ってることを真に受けているうちに、だんだんと「楽しく充実しなきゃいけない」っていうところから、「人に楽しく充実しているって思われなきゃいけない」っていう感じになってしまう。
そうなると、自分の価値観ではなく人の価値観で行動するようになりますよね。
――結果として何を目的に行動するのか、わからなくなってしまうんですね。
「自分を特別だと思いたい」ってことのジレンマで悩んで、結果的に自分が関係なくなっちゃう。じゃあ、すごいことが何も起きない毎日が楽しくないのかって言えば、僕は違うと思うんです。
――それぞれ、その人だけの人生を送っているんだから、日々いろんなことがあるはずですよね。
それもあるけれど、僕はもともと主観的なので、あんまり人に左右されないんです。自分がおもしろいと思っているものや、いいと思っているものが、大多数と違ったとしても、自分がいいと思ってるからいいや、自分がおもしろいと思ってるからいいやって考えてるんです。
――非日常的なものを求めなくても楽しめるということですか?
というよりも、起きたことを楽しむしかないっていうことですね。僕は自分がどんな苦しい状況におかれていようと、自分を客観視して楽しまなきゃいけないという職業についてしまったんで。
――具体的にはどういうことでしょうか。
エッセイにも書きましたけど、例えばひどい店員がいる飲食店に入っちゃったとする。で、ひどい接客を受けている。出てくるものも違う。これって腹立ちますけど、客観的に「俺、ひどい店に入っちゃって、変なもの出されちゃって、怒ってるじゃん」っていう見方をしたら楽しめるじゃないですか。
――自分を主観的に見る目と、客観的に見る目の両方を持つ、ということですね。
客観的に見る目は持った方がいいと思いますけど、価値観は自分にあった方がいい。自分がおもしろいと思えれば満足できるし、それでいいんじゃないですか。
楽しい仕事って?稼ぐための仕事に意味はあるのか
――いまひとつ仕事が楽しくない。楽しくするにはどうしたらいいのか? というのも若いビジネスパーソンの大きな悩みのようなんですが。
それにはまず、「お金を稼いで何がしたいのか?」ってことを具体的に考えてみたらいいと思います。
僕は幸いやりたい仕事ができているから、自分のやりたいことが必要最低限やれるお金があればいいかなっていうくらいです。でもそうじゃない場合は、お金稼いで何がしたいの? って。それを考えてみたらいいんじゃないですか。
――そうしないとお金稼ぐためにお金稼ぐことになりますよね。
それって意味がわからないじゃないですか。「流行りのものが買いたい」とか「将来のために貯金する」とか、目的は何でもいいと思うし、それならその目的に突き進んでいく過程なんだから楽しいはずだって思うんですよね。
――エッセイにもありましたけど、中にはお金を稼いでいること自体を自慢する人もいますよね。
どれだけ稼いでいるかという価値観だけですごく上からくる人って、「もし俺に収入で負けたときに、お前何にもなくなるけど大丈夫?」って思いますね。だって、僕、別にそこの価値観で生きてないから。危ないんですよ。
――何のために稼いでいるかわからない……っていう悩みも多いですよね。それで仕事帰りに居酒屋でブーブー言っているっていう。
もし、何のために稼いでいるのかわからなくてつらいんだったら、会社を辞めて別の仕事をすればいいと思いますね。何のために稼いでるかわからないけど、「この仕事が楽しいからやってる」だったらいいと思うけど。
――目的のために耐えられない仕事であれば、それはそんなにやりたいことじゃないかもしれないですしね。
やりたいことのために働くのだったらつらいとは思わないから。僕はアニメが好きなんでアニメの仕事をよくしているんですけど、毎クール40本くらいアニメがあって、それ全部見るんですよ。「しんどくないですか、大変ですね」って言われるけど、大変だなんて1回も思ったことないです。
――目的のために仕事をして稼ぐ。そうでなければずっと不満を言い続けるだけってことですね。
人生はだいたい二者択一だから、必ず何かを天秤にかけているんですよ。それをはっきりさせたらいい。自分の一番求めるものが明確になれば、楽しく仕事をすることは不可能じゃないですよ。
後編はこちら
ハライチ・岩井さんが教えてくれた――苦労なんてしないほうがいい。「こつこつやる奴はごくろうさん」
『僕の人生には事件が起きない』
著者:岩井勇気
出版社:新潮社
発売日:2018年9月26日
判型:B6判
定価:1,320円(税込)
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