チームを円滑に動かすことだけがコミュニケーション術ではありません。コミュニケーションを通してパフォーマンスを上げることも組織としての重要な働き。メンバーとのコミュニケーションの取り方次第で大きな成果を得ることもできるのです。
今回は、パフォーマンスにつながる心理学のスキルをお教えします。今回紹介する「ザイオンス動因理論」「ヤーキーズ・ドットソンの法則」を頭に入れてコミュニケーションをとることで、チームとしての成果を上げていきましょう。
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第1回:心理学を応用して上手に「断る」!「DESC法」と「熟知性の法則」
第2回:上司との人間関係で役立つ心理学!「開放性の法則」と「類似性の法則」をマスターする
第3回:社内のコミュニケーションでLINEを使うコツ!「返報性の法則」と「メラビアンの法則」で好感度アップ
「他人の目」で伸びる人、落ちる人の差――「ザイオンス動因理論」
チームでプロジェクトに取り組む場合には、メンバーの個性やコンディションを見極め、各人が最大のパフォーマンスを発揮できるように調整する必要があります。その際、ぜひ意識してほしいポイントの一つに「他人の目」があります。他人から見られることで、パフォーマンスを大きく伸ばして飛躍する人と、必要以上に意識するあまり、落ち込んでしまう人を二分してしまいます。これは、心理学者ザイオンスが証明した「動因理論」によるものです。
この理論によると、人は簡単で単純な課題に取り組んでいるときには、「他人の目」がほどよい緊張を生む良いプレッシャーとなり、比較的スムーズにこなすことができます。一方で、複雑な課題に取り組むときには、それが悪い緊張を生むプレッシャーとなり、本番に弱くなってしまうのです。
たとえば、練習中はうまくいくのに、本番で他人の目にさらされると、なぜかいつも失敗してしまう……。そんな経験を持つ方は少なくないと思います。この現象を「動因理論」から考えると、本人にとってその課題が「複雑課題」のままであり、たやすくこなせる「単純課題」になっていないために本番で失敗してしまった、ということになります。
では、どうしたら本番で成功できるのでしょう? ずばり言えば、何度も練習をする、場数を重ねることによって、複雑課題を単純課題に変えていくしかありません。たとえば、チームメンバーがプレゼンテーションやデモンストレーションに取り組む際、その内容を本人が目をつぶってもできるほどの単純課題になっているかどうか、よく見極めていく必要があります。
単純課題になっていれば、どんどんアウトプットさせ、さらに上達するようにサポートしてあげるとよいでしょう。複雑課題のままであれば、まずはたくさん練習させ、場数を踏ませて、単純課題になるように指導してあげるとよいでしょう。
成果の上がるコミュニケーションを図るには、相手の得手不得手を理解してその人にとってどんな課題なのか、きちんと把握するのがポイントです。
ストレスがチームの生産性を高める!――「ヤーキーズ・ドットソンの法則」
もう一つ、チームメンバーのパフォーマンスを向上させるために活用したいものがあります。それはずばり「ストレス」です。人のパフォーマンスは、ストレスが多すぎる状態でも、少なすぎる状態でも低下してしまいます。最大のパフォーマンスを発揮できる環境は、ほどほどのストレスにさらされているときです。
このメカニズムを説明する理論に、「ヤーキーズ・ドットソンの法則」があります。これは、心理学者のヤーキーズとJ.D.ドットソンが、覚醒レベルとパフォーマンスには逆U字の関数関係が成立することを証明した理論です。
人はストレスの少ない低覚醒レベル(ゆるゆる状態)に置かれると、緊張感が薄れすぎて物事に取り組む意欲が湧きにくくなります。逆に高覚醒レベル(ピリピリ状態)に置かれると、疲弊しすぎて取り組めなくなってしまいます。真ん中である“ほどほどのストレス”にさらされたときに、人のパフォーマンスは最大になります。
したがって、チームの生産性を高めるためには、メンバーがほどよいストレス下で活動できるように、環境調整をしていくことが必要です。そのためには、ルーチンワークばかり振らず、業務の半分はチャレンジングな仕事に取り組ませたり、ライバルの存在を意識させたりするなど、コミュニケーションをとりながら常に“ほどほどの”危機感や切迫感を感じ続けられる状況を作っていく必要があります。
このように、「他人の目」と「ストレス」というプレッシャーを上手に活用し、チームメンバーのパフォーマンスが最大限に発揮できるように、ぜひ調整を行ってみてください。意識的に行っていくと、チーム全体のパフォーマンスアップが期待できることと思います。
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プロフィール
産業カウンセラー
大美賀直子
メンタル&マインドコンサルティング代表。産業カウンセラー、公認心理師、精神保健福祉士、キャリアコンサルタントの資格を持つ。「こころと人生と人間関係」のベストバランスを提案するカウンセラー、セミナー講師として活動する。ストレスマジメントに関する著著・監修多数。
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