今さら聞けない! お金のアレコレ┃第6回:財形貯蓄で貯める金額は?

実はよくわかっていない、お金のアレコレ。今さら聞けないという方もいるのではないでしょうか。 本連載は会社員が知っておきたいお金の「きほんのき」を分かりやすく解説します。

今さら聞けない! お金のアレコレ┃第6回:財形貯蓄で貯める金額は?

今回、先輩が教えてくれるのは「財形貯蓄」。結婚、マイホーム、老後を考えると、人生にかかるお金は計り知れません。そのためにも財形貯蓄で賢く貯めていきましょう。

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第1回:手取りと額面ってどう違うの?
第2回:源泉徴収の仕組みとは?
第3回:ふるさと納税って何がお得なの?
第4回:年末調整と確定申告
第5回:会社員の社会保険



【登場人物】

後輩後輩:入社2年目の営業部員。やる気だけは人一倍だが、お金に関してはややルーズ。毎月、給料日前には財布の中がスカスカになるタイプ

先輩先輩:入社以来、総務、経理を経て現在は業務推進部に所属するベテラン社員。同じ大学を出た後輩にとって、何かと頼りになるセンパイ


給与からの天引きで確実に貯められる貯蓄


後輩これから結婚したり、マイホームを買ったりするためには、今からお金を貯めておかないとダメですよね、センパイ!

先輩もちろん、会社員は毎月の給与の一定割合を貯蓄として、将来のために貯めていくことが大事だぞ。財形貯蓄はしてる?

後輩していないんです……。やっぱりやったほうがいいですよね?

先輩金融機関の積立預金などを使って貯めてもいいけれど、貯蓄が苦手な人ほど、給与からの天引きで自動的に積み立てられる財形貯蓄を利用したほうがいいだろうね。

財形貯蓄制度は、会社が福利厚生の1つとして導入するもので、社員は簡単な申し込み手続きだけで利用できるんだ。最初からこの積立分はないものと思って生活すれば、確実に貯められるよ。気づいたときにはけっこうな金額が貯まっていることもあるから、これから結婚資金を貯めたり、住宅資金を貯めたりする人にも向いている。

後輩なるほど、もらった給与は全部使ってしまう自分のようなタイプには、ちょうどいいかもしれませんね。

先輩そうだよ。月々の積立額は1,000円単位で指定できるし、ボーナスからの積立もできる。利子が非課税になるメリットや特典もあるしね。

後輩そのメリットや特典、気になります。詳しく教えてください。

先輩まず、財形貯蓄には3種類あるということは知ってる?とくに目的を限定せずに利用できるのが「一般財形貯蓄」。マイホームの取得や増改築資金を目的に積み立てるのが「財形住宅貯蓄」。そして、将来、年金として受け取るための貯蓄が「財形年金貯蓄」だ。

後輩それは聞いたことあります。ボクはどれから始めればいいでしょうか?

先輩独身のキミは、まずは結婚資金を貯めるのが先だろうから、一般財形貯蓄からスタートすればいいだろう。月々5,000円でも、1万円でもいいんだよ。

後輩結婚資金って、実際にはどれくらい貯めればいいんですかね?

先輩『ゼクシィ』の「結婚トレンド調査2019」によると、挙式・披露宴・披露パーティにかかった費用の総額は平均で約355万円だ。実際には親や親族からの援助もあるから、自己負担はもう少し低くなるようだけど、新婚旅行や新居の準備費用なんかも考えると、300万円くらいは準備しておきたいところだね。

後輩300万円の目標なら、月1~2万円の積立額では、何年かかるかわからない……。ボーナスからも貯めたほうがいいですね。

先輩そのとおり、ボーナスも使わない分はとりあえず一般財形貯蓄に入れておく手もあるぞ。一般財形は積立開始から1年経てば、いつでも自由に引き出せるから、その点でもいろいろな目的に使えて便利なんだ。

後輩なるほど、一般財形はフレキシブルに利用できる基本の積立というわけですね。


マイホーム資金を準備するなら、財形住宅貯蓄で頭金を貯める


先輩それぞれのライフプランにもよるけれど、結婚後にマイホームを購入したいと思ったら、「財形住宅貯蓄(住宅財形)」を利用して頭金を貯めるといいよ。


後輩住宅資金のための貯蓄ですね。

先輩住宅といっても、本人の居住用つまりマイホーム資金のための積立だ。マイホームの建設・購入・リフォームのために払い戻す際は、元本(その時点で加算された利息も含む)550万円まで、利息に税金がかからないんだ。それ以外の利用目的で引き出すと5年さかのぼって課税されるから、マイホーム資金のために積み立てることがポイントだね。

後輩利率はいいんですか?

先輩財形貯蓄はどれも、勤務先が提携している金融機関の商品を利用して積み立てるから、とくに利率がいいわけではない。だけど、財形貯蓄を利用している人がマイホームを取得する際は、住宅ローンとして「財形持家転貸融資」を利用できる特典があるんだ。

後輩そういえば、隣の部の係長が家を買ったとき、財形から融資を受けたといっていたけれど、その制度ですね。

先輩そうだね。勤務先を通じて、勤労者退職金共済機構からマイホーム資金の融資を受ける制度なんだ。融資額は財形貯蓄残高の10倍以内(最高4000万円)で、取得費の9割以内。金利は5年ごとに見直す5年固定金利で、利率は低めだ。ほかの住宅ローンは申し込み時ではなく、融資時点の金利が適用されるけれど、財形持家転貸融資は、当初5年の金利が申し込み時点の金利になるから、資金計画も立てやすい。

後輩ところで、マイホームの頭金は、どれくらい用意したらいいんですか?

先輩一般的には取得費用の2割が目安というけれど、頭金は多ければ多いほどローンの借入額が少なくなって、将来の負担も減るから安心だ。それに、マイホームの取得時には、ローンの事務手数料や税金などの諸費用もかかるし、いざというときの貯蓄も多少は残しておかないとならないから、住宅価格の3割くらいの貯蓄は用意しておきたい。3000万円の家なら、900万円といったところかな。

後輩それだと、住宅財形だけでは足りないかもしれないですね。

先輩最近は新築マンションも高くなっているしね。だから、住宅財形は頭金を貯めるために非課税枠の550万円まで利用して、それ以外にも、別の預貯金などで並行して貯めていくといいよ。

マイホーム取得後は、財形年金貯蓄で老後資金を準備する


後輩もう1つの「財形年金貯蓄(年金財形)」は、いつごろから始めるのがいいんですか?

先輩年金財形も、住宅財形と同様に550万円までの非課税枠があるんだけれど、この非課税枠というのは、年金と住宅の2つの貯蓄残高を合わせて550万円なんだ(年金財形を保険商品で貯める場合は、払込額で385万円までの差益が非課税)。

そのため、住宅財形をしているときに年金財形も始めると、非課税で貯められる住宅資金が少なくなってしまうから、マイホーム取得後に、住宅財形の貯蓄をすべて引き出してから、年金財形を始めるほうがいい。そうすれば、どちらも非課税枠の550万円までめいっぱい貯められるからね。

後輩そうか、それはぜひ覚えておきたいですね。

先輩年金財形は満55歳未満の人で、積立期間は5年以上というのが条件だから、40歳くらいから始めても遅くはない。受け取り開始は60歳以降で、5年以上20年以内に年金として受け取る仕組み。積み立て終了から5年以内の据え置きもできるから、60歳まで積み立てて、65歳から受け取れば、公的年金の上乗せ資金にもなるし。

後輩ボクたちの世代は、公的年金や退職金も今の高齢者より少なくなりそうだから、老後資金の準備は大切ですよね。

先輩昨年は「老後資金は2000万円必要」という金融庁の報告も話題になったけれど、どれくらい必要になるかは、いつまで働くか、老後にどんな生活を送りたいかで人それぞれ違うし、正確なところはリタイア時期が近づいてこないとわからない。だから、ボクらは少しずつでもコツコツと資産形成に励むしかないよ。

後輩たしかに。まずは当面の目標である、結婚資金に向けて財形貯蓄を始めます。

先輩それがいい。自分のライフプランに合わせた資金計画を立てることが重要で、その計画のなかで、会社員は財形貯蓄もかしこく利用していくことが大切だね。

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第1回:手取りと額面ってどう違うの?
第2回:源泉徴収の仕組みとは?
第3回:ふるさと納税って何がお得なの?
第4回:年末調整と確定申告
第5回:会社員の社会保険

執筆者プロフィール
マネージャーナリスト┃光田洋子
出版社の雑誌編集部などを経て、編集者・ライターとして独立し、編集事務所インタープレスを設立。現在は家計全般、住宅、保険、税金などの生活まわりのお金について、MOOKや雑誌などの編集・取材を担当するほか、新聞・情報サイトなどにも執筆している。
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