【睡眠専門医に聞いた】「休日の寝だめ」は意味がない?ビジネスパーソンの疲れを効果的にとる睡眠方法

残業や飲み会など、ついつい平日の睡眠時間は削られてしまうもの……。日々の睡眠不足を補うため、休日に「寝だめ」をしているビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。今回は、日本睡眠学会専門医の中村真樹先生に、疲れを効率的にとる睡眠術について解説していただきます。はたして、休日の寝だめには効果があるのでしょうか?

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日本は睡眠不足が深刻!「睡眠負債」の状況

「睡眠負債」という言葉はスタンフォード大学のデメント博士が1990年代に提唱しました。「慢性的な睡眠不足を抱えている人が睡眠不足を解消するまでに、9時間睡眠を1カ月以上続ける必要がある」という症例結果があるように、睡眠不足はちょっとした借金ではなく、多大な借金と同じくすぐには返済しきれないといった意味を込めて“睡眠負債”と呼ばれるようになりました。

日本では、現在平均睡眠時間が6時間以上7時間未満の割合がもっとも多く、6時間を下回る割合も男性34.5%、女性39.6%と非常に高い水準となっています(「健康日本21(第2次)の目標」睡眠による休養を十分とれていない者の割合の減少より)。一般的には「6時間睡眠が理想的」と認識されていますが、実は6時間睡眠でも十分な睡眠とはいえません。つまり、日本人のほとんどが睡眠不足を抱えている状態なのです。

「寝不足」を判断する基準とは?

小さな子どもが良い例ですが、適切な睡眠がとれている人間にとって意識的に長時間寝るのは難しいこと。つまり休日に長時間寝てしまうこと自体が、寝不足の証拠といえます。休日に目覚ましはかけずに好きなだけ寝ようとしたとき、二度寝・三度寝含め平日より2時間以上長く寝てしまった場合は、睡眠不足と判断できるでしょう。

土日に「寝だめ」をすると、翌週以降の分まで寝だめできるのか

広く周知されている「寝だめ」ですが、そもそも“ためる”という表現自体が不適切です。実際にはためているのではなく、平日の睡眠不足を補っている状態。食事をイメージすると分かりやすいですが、いくらお腹いっぱい食べたからといって、その後何日も食事をとらないでいるのは難しいもの。睡眠も同様で、集中的にたくさん寝たからといって、翌週以降の睡眠分をためられるわけではありません。また、スマホなどのバッテリーに例えると、8時間でフル充電できるバッテリーを12時間コンセントにつなげても、使用できる時間が長くならないのと同じようなものです。

「寝だめ」をするデメリットとは?

睡眠は体内時計とリンクしているので、「○時に起床、○時に就寝」のリズムができていれば、決まったタイミングで眠くなり、必要な睡眠時間を取れば自然に目覚めます。しかし、寝だめによって週末に長時間寝て起きる時間が遅れてしまうと、睡眠のリズムが大きく崩れてしまいます。結果的に、「日曜日の夜に寝ようと思っても寝付けない→出勤のため起きる時間は早い→睡眠時間が確保できない→寝不足のため一日中眠気を感じる→仕事のパフォーマンスが落ちる→残業が増える」という悪循環に陥ってしまうのです。

また、寝だめは「ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ボケ)」を引き起こしてしまい、眠りの質が低下する恐れがあります。週末の2日程度の夜ふかし・遅起きだけでも体内時計に乱れが生じ、ソーシャル・ジェットラグが起きます。体内時計が乱れることで、予期せず心身の不調が起きる場合も……。一度、体内時計が乱れてしまうと元通りにするのにかなりの時間がかかるため、すぐには体内時計の乱れによる日中の疲労感や倦怠感を解消できなくなってしまうのです。

寝だめをせずに、平日の疲れを効率的にとる方法

平日に7~8時間の睡眠をとろうと思っても、なかなか難しい方も多いはずです。どうしても平日に十分な睡眠がとれない場合には、休日は夜ふかしせず就寝時刻を平日よりも少し早めて、起床時刻は平日より1時間程度遅くして1~2時間多く睡眠時間を確保すると良いでしょう。起床時間が平日より2時間以上遅れると体内時計も遅れやすくなり、また、正午を過ぎてしまうと体内時計は大きく乱れてしまうので、遅くとも昼の12時までに起きるよう心がけてください。

また、「睡眠の質を下げる要因」を排除することも重要です。睡眠の質には、騒音・温度・湿度・寝るときの服装・アルコール摂取量・体内リズムなどさまざまな要素が影響を及ぼします。過度な寝酒や夕方以降のカフェインの摂取を避けて、睡眠環境を整えるよう意識してみましょう。

寝だめは厳禁。休日は早寝を心がける

前日までの睡眠不足を取り返そうと、休日のほとんどを寝て過ごしてしまうビジネスパーソンも多いはず。しかし、「寝だめ」には睡眠を貯蓄する力はなく、あくまで平日にたまった睡眠負債を返しているに過ぎません。

長時間睡眠で体内リズムを乱すことのないよう、休日は平日よりも早く就寝して日々の睡眠不足を補うようにしましょう。

【監修】
中村真樹●日本睡眠学会専門医。2008年睡眠総合ケアクリニック代々木に入職。2012年、同病院の院長となり、睡眠で悩むビジネスパーソンを月に300人以上診察する。2017年6月には青山・表参道睡眠ストレスクリニックを開院。
https://omotesando-sleep.com/

文=山本杏奈
編集=五十嵐 大+TAPE

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