「菓子折り」は本当に必要? 取引先に謝罪するときのマナー【起死回生の謝罪術#4】

信頼や関係性というのは、ささいなことで簡単に崩れてしまうものです。特に取引先との仕事におけるそれらは、一度崩れると元に戻るまで長い時間がかかります。そこで大事になるのが「謝罪の方法」。謝罪時に誠意を見せることができれば、信頼や関係性を大きく崩さずに済むかもしれません。今回は、ビジネスマナー講師の桜美月先生に「取引先に対する謝罪術」について教えていただきました。

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取引先への謝罪に大切なのは「敏速」「誠意」「相手の立場を考えること」

基本的にミスを犯した場合は、以下の三つの要素を押さえながら対応します。

・敏速な行動
・誠意を見せる
・相手の立場を考えた対応を心がける

こと取引先が相手の場合は、これらの要素を高いレベルで求められるでしょう。どれか一つでも不足すると、取引先との関係性が悪化するためです。ただミスを犯した後というのは、なかなか気持ちの整理がつかず焦ってしまうもの。特に新人や異動したばかりの社員はその傾向が強いかもしれません。そんな時は迷わず、上司や先輩の指示を仰ぎましょう。決して一人で判断してはいけません。

謝罪時は、先方の抱える「第一次感情」に目を向けることが大事

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そもそも「怒り」とは第二次感情であり、その裏にある「悲しい」「悔しい」「寂しい」といった第一次感情があふれた場合に表面化するもの。したがって怒りを鎮めるには、表面化している「怒り」ではなく、隠れた第一次感情に目を向けるのがポイントです。

ただ取引先の感情は、普段接する機会が少ない分、直属の上司や先輩よりも読み取りづらいかもしれません。そんな時こそ、先方の「言葉」や「声の大きさ」に耳を傾けてみることが重要です。先方の言葉や声の大きさからどんな第一次感情を抱いているのかを分析し、それに合わせた対応を考えましょう。きっと双方の円滑なコミュニケーションに繋がるでしょう。

謝罪時のNGな言動は?

先に述べたように、取引先への謝罪は社内の謝罪時と比べて、さまざまな面で読み取りづらいことが多いです。そのため、社内では通じた謝罪方法が取引先では通じない場合もあります。ふとした言動で先方の怒りを増幅させないためにも、基本的なマナーは身に付けておきましょう。

・状況説明から始めない
つい「先に状況を説明しないと……」と思ってしまいがちですが、誠意を見せるのであれば、何をおいてもまず謝罪から入ることが鉄則です。加えて謝罪する時間をいただいたことへの感謝も伝えると良いでしょう。

先方が知りたいのは「結果」と「今後の取り組み」です。だらだらと長い状況説明は、相手のイライラを増幅させかねないので注意しましょう。

・相手の話の腰を折らない
先方が話している最中に、口をはさむのはNGです。先方からすれば「まだこっちが話してるのに!」と思うはず。もし訂正したいことがあったとしても、それは先方の話を最後まで聞いてからにしましょう。

・強めの否定的語句を使わない
「できません」「不可能です」「無理です」といった強めの否定的語句は、先方を不快にさせやすく危険です。謝罪時は柔らかい表現を使うようにしましょう。例えば「大変申し訳ございませんが、ご希望には沿いかねます」のような言葉であれば、柔らかさがあります。

・謝罪時の仕草にも注意!
謝罪時の仕草も言葉と同じくらい大切です。いくら言葉だけ飾っても仕草や態度が伴っていないと先方に誠意は伝わりません。

よくやってしまいがちなのが、握り拳を作ってしまうこと。握り拳は「攻撃」や「威嚇」を表す拒否のサインととられることがあるため、好ましくありません。また、相手の目を見ずに話を聞き続けるのも、「内容に同意、納得できていない」と捉えられてしまいがちです。必ず相手の目を見て話を聞くようにしましょう。

遠方への謝罪訪問は、ミスの度合いで判断

一般的に謝罪訪問は、「取引先との信頼回復」が目的です。謝罪訪問は「取引先を尊重している」という会社の姿勢を体現でき、また相手の気持ちを和ませ、より良い信頼関係の構築にも繋がると考えられています。ただ一方で、遠方への謝罪訪問にかかるコストや、謝罪訪問のためだけに先方の時間を割くリスクも考えなくてはいけません。

そこで大事になるのは、「ミスの度合い」です。重大なミスの場合には、遠方であろうと直接謝罪に行くのがマナーですが、ささいなミスであればまず電話で対応し、必要に応じて訪問するのが良いでしょう。コストやリスクを最小限に抑えるためにも、最初はミスの度合いを分析し謝罪訪問をするか判断しましょう。

もし一人で判断できないようであれば、上司や先輩に相談し必要に応じて同行してもらってください。上司と謝罪に行く方が「取引先を尊重している」と捉えられる可能性が高いためです。

取引先へのお詫びの品は必要?

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謝罪の際は、菓子折り(手土産)を持って行くのが礼儀と考えている人も多いと思います。しかし、取引先によっては「これでお許しください」「これで謝罪を受け入れてほしい」という意味だと誤解される可能性があり、場合によっては火に油を注いでしまうかもしれません。会社によっては、謝罪やクレーム対応の時に菓子折りを持って行かないと決めている場合もあるので、自社のマニュアルに従いましょう。

もし渡す場合は、「タイミング」「言葉」「品物」に気を配ってください。タイミングは、関係がある程度修復された時が効果的。渡す時には「せめてものお詫びの気持ちです」と必ず添えましょう。品物に関しては、冷蔵保存が必要な物や日持ちしない生ものは好ましくありません。個別包装になって複数名で取り分けていただけるものがおすすめです。

【監修】
桜美月●個人向け・企業向けに立ち居振る舞い・ビジネスマナーの研修を行う講師。企業での就労経験を経てビジネスマナーインストラクターの資格を取得、独立。
個々人の良さを最大限に引き出す指導・コンサルティングに力を入れており、現在も執筆、講演、監修、ラジオなどの活動を続けている。

文=トヤカン
編集=五十嵐 大+TAPE

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