強く怒られると再起不能に…要領がよくないと思い込んでいる人が抱えるストレスとは

職場では多種多様な人が働いています。細かいことに気付ける人、事務手続きが苦手な人、プレゼンが得意な人、電話対応がうまくできない人...。それぞれ得意不得意があり、できる・できないがあります。中には「自分は要領がよくない」と思い込み、自信を失っている人も。そんな人はどんなストレスを抱えているのでしょうか?「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)の著者・F太さん、小鳥遊(たかなし)さんに、「要領がよくないと思い込んでいる人」が抱えるストレスについて明かしていただきました。

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 やるべきことを先送り。ミス連発で怒られる!

――はじめまして。まいにちdoda編集部です。

小鳥遊さん(以下、小鳥遊):はじめまして。小鳥遊と申します。もともと司法書士を目指して勉強していたものの試験に合格できず、挫折。実は、不注意や多動・衝動が目立ちやすい「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」という発達障害を抱えており、それもあってか休職や退職を何度か経験しました。現在、勤めている3社目はなんとか辞めずにおり、管理部門で法務関連の業務を担当しています。

F太さん(以下、F太):F太といいます。小鳥遊さんが司法書士を目指していたように僕も公認会計士を目指していましたが合格できず、地元を離れ上京しました。公認会計士が無理なら経理関連の仕事をしようと就活するも、どこにも雇ってもらえずコールセンターでアルバイトを始めましたが、そこでもダメ。すぐにクビになりました。その後に入ったアルバイト先もコールセンター。上手く業務ができるか不安でしたが上司との相性が良く、続けることができました。そこではチームリーダーなどを経験させてもらった後に退職し、現在はTwitterを中心に活動しています。

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――お2人とも自称「要領がよくないと思い込んでいる人」だそうですが、具体的にどんなところが「要領がよくない」と思っていますか?

小鳥遊:とにかく忘れてしまう、やるべきことを先送りしてしまう、そして詰めが甘くマルチタスクが苦手。あと、心に引っ掛かることがあると受け流せないんです。例えば、職場の方に注意されたらそのことに大きなショックを受け、モヤモヤをずっと抱えてしまう。そういう不器用なところもあり、世渡りができません。

F太:僕自身、要領がよくないポイントが大きく2つあり、1つ目は面倒くさがり屋なところ。やるべきことに取り掛かれず、最終的に逃げ出すんです。夏休みの宿題をギリギリにやるのではなくて、やらない。2つ目は焦る場面に遭遇すると、頭が真っ白になる。昔、飲食店でアルバイトをしていた時、忙しくなると注文間違えたり、お皿割ったり、お釣り間違えたり、とミスを連発するんです。

――お2人はどうやって克服し、仕事をこなしているのでしょうか?

F太:克服したというよりは良い上司と出会えたことが大きかったですね。2社目のコールセンターで、電話対応をしていた時、焦って頭が真っ白に。そしたら当時の上司から「ゆっくり対応すれば大丈夫だから」と言われたんです。他の人が10分で終わる仕事を3時間もかけて終わらせた僕を「それでいい」と肯定してくれた。その言葉がきっかけで、心にゆとりが生まれ、ちゃんと仕事に取り組めました。その時、精神的に安心できる状態で仕事をすることが、どれほど大事か気付かされました。

小鳥遊:私は、タスクの手順をまとめた「手順書作り」をしたことで業務をこなせるようになりました。これは大きかったですね。

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職場で「自分はダメなんだ」と感じることがストレス

―――「要領がよくないと思い込んでいる」お2人は仕事中、どんなことにストレスを感じますか?

小鳥遊:私がストレスを感じるのは「怒られること」なんですよ。発達障害を持っており、どうしても締め切りを守れなかったり抜けがあったりと、ミスをしがち。自分が至らないと自覚しているのにミスをしてしまい、その上「なぜミスをするんだ!」と強い口調で言われると、頭が真っ白になり再起不能になるんです。それはすごいストレス。なので勤務先には「この業務に責任を持ちますので、怒らないでほしい。そして直さないといけない部分は(強い口調で注意するのではなく)改善の提案をしてください」とお願いしました。

F太:小鳥遊さんの内容と似ているのですが、失敗した時に上司や同僚から厳しい言葉を投げられると自信を失い、「僕は役に立たない人間なんだ」という精神状態に落ちてしまうんです。そうなると周囲から怒られない振る舞いをすることにエネルギーを使ってしまい、仕事に力を注げなくなる。そういった状態にストレスを感じますね。

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―――そんなお2人がストレスを感じないために、上司や同僚はどんな風に振る舞えば良いのでしょうか?

F太:ストレスを感じている時、その人は明らかに不安を感じびくびくしています。そこでお願いしたいのは、何に不安を感じているのかを聞いてほしい。そして不安を取り除き、心に余裕を持たせ、自信を積み上げさせてください。そうすることでちゃんと業務をこなせますし、それは会社にとってもプラスになるはずです。

小鳥遊:言葉の使い方ひとつとっても、「ストレスを感じる・感じない」が変わります。「何でできないの?」という言葉には「できないとダメなんだよ」という意味が含まれています。それを言われた人は「すみません」としか返せないんです。言葉の使い方を気にしつつ、責めるのではなく、どうすれば改善するかを教えることが大事だと思います。

「要領がよくない」は思い込み

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「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」(サンクチュアリ出版)

―――お2人の経験を元にした著書「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑」が出版されましたね。注目してほしい箇所は?

F太:まずはタイトルに注目していただきたいです。僕自身、ずっと要領がよくないと思っていましたが、2社目のコールセンターで活躍しやすい環境を与えられたおかげで「要領がいいね」と言われるようになりました。それまで要領の良し悪しは先天的なものだと思っていましたが、自分の所属する場所で変わること、そして「要領がよくない」は思い込みだと気付きました。なのでタイトルが「要領が“よくない人”のための仕事術図鑑」ではなく「要領が“よくないと思い込んでいる人”のための仕事術図鑑」なんです。場所が変われば可能性だって変わる。今いる場所で自分を発揮できないからといって、他の場所でも発揮できないわけではない。そういう思いを込めています。

小鳥遊:1冊まるまる読んでほしいのですが、その中でもぜひ読んでほしいのは172ページです。そこに「人前で怒るのは論外だと思います」と書かれています。実はこの箇所「人前で怒るのは仕方ない」といったニュアンスを含めた文章だったんですが、F太さんから「待った!」がかかったんです。

F太:そうでしたっけ(笑)?

小鳥遊:そうです(笑)。 F太さんに「人前で怒ることは絶対ダメ!」と言われ、「人前で怒るのは論外だと思います」と修正したんです。ここにこそ本書の姿勢が出ています。つまり「『人』を否定しない」という姿勢。私自身、評価を人の性格に紐付けないでほしいと思っています。本書の33ページに書いてある通り、パソコンのプログラムを実行しバグが出たとしても、パソコンの性能が悪いと言わないですよね。プログラムを直せばパソコンは正常に動作します。人間だってそう。仕事でミスしたからといってその人自身を否定するのではなく、その人の行動を改善するようにすれば、その人はちゃんと業務を行えます。

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―――どんな思いを込めて執筆しましたか?

小鳥遊:この本は10年前に自信を失った自分が読むことを想定して書いています。その時の自分に「大丈夫だよ」と伝えたかった。なので要領がよくないと思い込んでいる人にも「自分も大丈夫」と思ってもらいたいですね。

F太:先ほどの言葉と重複しますが、要領がよくないのは“思い込み”です。落ち着いて自分のペースで業務をこなせば仕事はできます。それを伝えたいです。

 

取材協力=サンクチュアリ出版
参照本=「要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑
取材・文=野田綾子
編集=TAPE 

【プロフィール】
F太(えふた)
1984年生まれ。学生時代に公認会計士を目指すも不合格。その後のアルバイトも3カ月でクビに。そんな中、Twitterでのつぶやきが共感を得て、フォロワー数が急増。現在はTwitterを中心に活動しつつ、小鳥遊氏と「自分は要領が良くない、と思い込んでいる人のための仕事術」というイベントを継続開催。著書に「明日ちょっと運がよくなる、思考のメモ」(大和出版)。
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小鳥遊(たかなし)
1976年生まれ。発達障害のひとつADHD(注意欠陥・多動性)と診断される。仕事の抜け漏れや要領の悪さから自分を責め、抑うつや適応障害から休職や退職を繰り返す。その後、仕事の管理を自作Excelツールで工夫しADHDの特徴をカバー。現在は一般企業で会社員として勤務中。F太氏と「自分は要領が良くない、と思い込んでいる人のための仕事術」というイベントを継続開催。
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