集中力アップに効果的! すぐに使える「マイ儀式」の方法を詳しく解説

業務に集中したくても気分が乗らず、ついつい怠けてしまう…。自分には集中力がない気がする…。そんなときに役立つのが、最新の科学エビデンスを駆使して書かれた「ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45」(SBクリエイティブ)という本。ハーバード大学、スタンフォード大学など世界的な研究機関の分析結果に基づいており、情報が満載です。そこで今回は、著者の鈴木祐さんに科学的根拠に基づいた集中力アップの方法を伺います。

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集中力をキープできない人の共通点

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「ヤバい集中力 1日ブッ通しでアタマが冴えわたる神ライフハック45」(SBクリエイティブ)

“行動の先延ばし”の心理研究で有名なカールトン大学(カナダ)のティモシー・ピッチェル氏によると、集中力を維持できない人にありがちなのは以下の2点です。

  • 不毛なタスクだと感じている
  • 難易度エラーを起こしている

1つ目の不毛なタスクとは、「この作業は何のためにやっているのだろう」「この仕事で何が得られるのだろう」と思わず疑問を持ってしまうことです。終了時の報酬に意味が感じられないと、業務に取り組むエネルギーが湧きません。「内容がなく時間だけが過ぎる会議」「プロジェクトに関係のない決裁」などなど、思い当たる方も多いのではないでしょうか。

2つ目の難易度エラーとは、「タスク達成の難易度が、自分の能力に適しているのか」疑問を持つことを意味します。

  • 作業が難し過ぎる場合→「頑張っても報酬が得られそうにないから放っておこう」
  • 作業が簡単過ぎる場合→「いつでも報酬は得られるから放っておこう」

このように、どちらも仕事への意欲と集中力が下がってしまいます。また、一つひとつの作業を大雑把に捉えている人も、集中力の持続が難しい傾向にあります。例えば、「企画の概要を箇条書きにする」という作業に集中できない場合は、

  1. 「資料から使えそうな情報を抜き出す」
  2. 「抜き出した情報を箇条書きにまとめる」

というように、1つのタスクを2〜3に分解することが必要です。ゴールまでの作業を細かく分けるのはタスク管理の基本。1つあたりの業務が「数分から1時間で終わる」くらいに分割するのがいいでしょう。タスクを小分けにするほど作業の難易度は下がり、達成感を得られるので、やる気と集中力がアップします。

<関連記事>日常の行動から集中力を高める方法

「マイ儀式」で強力な集中モードへ

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自分なりの「マイ儀式」で集中力を高めている人は、どの世界にも存在します。赤いポロシャツで常にトーナメントの最終日に挑むタイガー・ウッズは、その代表例と言えるでしょう。

「マイ儀式」と集中力の関係を表す事例として以下のことが報告されています。

  • ゴルファーがボールにキスをする仕草でパットの成功確率が38%上昇
  • 認知テストの前に指を10回鳴らして成績が21%アップ 

なぜ「マイ儀式」が集中力を上げてくれるのでしょうか? 私たちの本能のなかには、「マイ儀式」がもたらす「反復」に強く反応するセンサーが備わっており、何度も繰り返される行動や刺激に魅力を覚え、モチベーションを高めるようにプログラムされているんです。

「マイ儀式」を作る際に大切なポイントは次の2点。

  1. 「この動作をしたら大事な作業に取り組む」と決めておく
  2. 決めた手順を何度もくり返す 

このポイントを満たせば、どんな内容でも効果が見込めます。ただし、継続的に行うなら無意味な手順ではなく、業務の役に立つ行為の方が効率アップを見込めます。実用的な「儀式」にはどんなものがあるのか、すぐに取り組めるものを3つ紹介します。 

<儀式その1>朝は簡単なタスクから手をつける

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1日の始めに行うタスクはメール返信や請求書の作成など、5分前後で片付くようなものを選んでください。日常の業務が少しだけでも前に進むようなタスクがベストです。

簡単なタスクをこなすとその時点で脳内にドーパミンという神経伝達物質が大量に放出され、達成感を覚えます。ドーパミンには注意力やモチベーションを引き出す働きがあるため、タスクを終えた直後からあなたの集中力は一気に増加。その勢いが次のタスクにも影響を与えて、最終的な成果が上がりやすくなります。

ハーバード・ビジネス・スクールの研究においても、1日の最初に簡単なタスクをこなした被験者のほとんどに集中力の上昇が見られ、仕事への満足度が向上しています。

<儀式その2>「できた!」を繰り返し記録する

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正しい儀式を作る2つ目の方法は、「記録」です。日記、ブログ、SNSなどにデータを残し続ける行為は、いずれも集中力アップの儀式として機能してくれます。記録することで、「自分はできる人間なのだ」という自己肯定感が高まり、さらに記録を長く続けるうちに、「この作業はとても大事」と無意識に思い始めます。

さらに何度も記録を繰り返すと、「これだけ大事なことをしっかり続けられたのだから、自分には高い能力があるに違いない」という感覚が育つのです。つまり、記録の継続があなたの自信を高め、日々の仕事に取り組む意欲と集中力を高めていきます。

ゴールまでの進捗状況を記録する時には、次のポイントに注意してください。

  • 行動を変えたい時には、自分が取った行動だけを記録する
  • 結果を出したい時には、結果への過程だけを記録する

例えば、体重を減らすのがゴールなら、体重の記録に集中するのが基本。逆に食事の習慣を変えたいなら、食べた物を記録した方が効果は高くなります。

これを日々の仕事に置き換えると、売上アップのために多くの顧客を獲得したいなら、自分がアプローチした人数を記録。仕事の分野を広げたいなら、新たに取り組んだ業務内容を記録していくのがいいでしょう。

<儀式その3>「5のルール」で作業を続ける

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カウンセリングの世界などで「先延ばし対策」に使われるテクニックが「5のルール」。その基本的なルールは単純です。

  • 仕事を止めて休憩したくなったら、あと5分だけ続ける
  • スマホをチェックしたくなったら、あと5分だけ目の前の作業を続ける 

作業を止めたくなったら、とにかく5の数を使ってタスクを続けてください。私たちの集中力は非常にもろく、いったん目の前の作業から気がそれると、再び元の状態に戻るまでに20~30分の時間が必要です。この時間が積み重なり、1日の貴重な時間を無駄にすることも。

しかしそこで「あと5分だけ!」と小さな我慢を積み重ねれば、集中力のバランスは崩れません。また、「作業を止めたい」「スマホを見たい」といった小さな不快感を乗り越えることで、自信が育まれていきます。

一方、「どうしてもタスクに手をつけられない」「業務に取り組む気が起こらない」ときには、「5、4、3、2、1」と心の中でカウントダウンをして、その間に作業を開始してください。5秒のカウントダウンを行うことで、本能的な時間感覚が刺激され、確実に生産性が上がります。

今回、紹介した集中力アップの方法は今日から実践できるものばかり。集中力が続かない…と思ったら、ぜひやってみてくださいね。

文=平原健士(iPPON COMPANY GROUP)
編集=野田綾子+TAPE 

【監修者プロフィール】

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鈴木祐
サイエンスライター
1976年生まれ、慶應義塾大学SFC卒業後、出版社勤務を経て独立。10万本の科学論文の読破と600人を超える海外の学者や専門医へのインタビューを重ね、現在はヘルスケアや生産性向上をテーマとした書籍や雑誌の執筆を手がける。自身のブログ「パレオな男」では心理、健康、科学に関する最新の知見を紹介。近年はヘルスケア企業などを中心に、科学的なエビデンスの見分け方などを伝える講演なども行っている。著書に『科学的な適職』(クロスメディア・パブリッシング)、『超ストレス解消法 イライラが一瞬で消える100の科学的メソッド』(鉄人社)他多数。
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