一流の雑談力とは?雑談力を磨くコツとテクニックを紹介

ビジネスシーンにおいて、雑談が得意なほうが有利に働くことがあります。雑談を通して取引先や顧客と親しくなることで「○○さんは話しやすい」と感じてもらえて、大きな依頼や定期的な発注をもらえることがあるからです。でも、話題を振ってみても話が広がらず、どうすれば盛り上がるのかと不思議に思う人も多いのでは? 雑談の広げ方&盛り上げ方のコツを『雑談の一流、二流、三流』(明日香出版)の著者、桐生稔さんに聞きました。

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会話の主題を相手にするだけで、雑談は一気に広がる!

雑談というと「話し上手にならなければいけない」と思っていませんか? 話の中心になって、さまざまなネタを披露して、周囲の人々を感心させたり、笑わせたりできる人……そんなイメージではないでしょうか。雑談力を武器に営業成績最下位から抜け出した経験を持ち、現在はコミュニケーションに関する研修やセミナーを開催している桐生稔さんは「雑談で“話す”ことは重要ではない」と言います。

「雑談力に関する研修やセミナーで多いのが『何を話したら良いのかわからない』という声。そこで私は『雑談は話す場ではない』という前提を伝えています。雑談で大切なのは、いかにその場を心地よく、温かい場にするかということ。まるでキャンプファイヤーのように、自然と人が集まりたいと感じる温かい場がそこにあることが、良い人間関係を築ける雑談のコツです。そのためには話すだけでなく、聞く力、質問する力、フィードバックする力など、さまざまな力が必要だとわかります。それに気付けたとき、話すことだけではなく、話し下手の自分でもできる打つ手が見えてくるのです」(桐生さん・以下同)

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雑談力のある人の特徴とは?

自然と人が話したいと感じる場は、具体的にどう生まれるのでしょうか? 雑談力がある人に共通した特徴を、三つの項目にわけて桐生さんに解説してもらいました。

特徴1 話題の矢印を相手に向けている

一流の雑談力の持ち主は、自分が話者になるのではなく、話題の矢印を相手に向けているそうです。

「人間が一番興味を持っているのは『自分』です。自分のことを一番意識しているし、自分のことが一番話しやすいし、むしろ話したいと思っている。一流の雑談力を持つ人はそこを理解しているので、会話の主題を相手にして、相手が話しやすいテーマを設定します。たとえば『今日は暑いですね』と話を振るだけではなく、『今日は暑いですね。30℃を超えるそうですよ。夏バテとか平気ですか?』のように、質問を使って相手から会話を引き出すことで、会話をリードします。質問すれば、質問された人は必ず答えてくれます。そうすることで『あの人とは話しやすい』と思ってもらえるのです」

特徴2 相手をよく見ている

雑談力を持つ人は、矢印を相手に向けているがゆえに「相手をよく見ている」という特徴もあるそう。

「雑談は相手のことをよく見ていないと広がっていかないんです。たとえば今、楽しそうにしているなとか、話している最中の話題で笑顔になっているのか深刻そうな表情をしているのかなど、そのときのコンディションが相手を見ていれば判断できます。相手にスポットライトを当てて、相手中心に話をしないとなかなか話が広がっていきません

特徴3 自己開示を行う

もちろん、自分の話をなかなかしたがらない相手もいると思います。そんなときに雑談力のある人は、先に自己開示を行うようです。

「リアクションがない方っていらっしゃいますよね。そういうときは、その方はなぜ反応がないのかと考えます。ただ話すことがなかったり、その方自体も何を話していいかわからなかったりする場合がよくあります。そういう場合は、こちらから先に話題の材料をテーブルに載せましょう。つまり、少しだけ自己開示する。『寒くなると、僕は手が乾燥してカサカサになるんです』と自己開示された上で『◯◯さんはどうですか?』と聞かれると、それに返答しやすくなります。話題を一つテーブルに載せると相手もかぶせやすいので、短い自己開示と質問を交代で行っていくことで雑談が広がりやすくなります」

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相手が話しやすい話題・テーマの見つけ方

でも、そもそも何の話題を振れば良いか、わからないことも多いもの。天気の話や話題のニュースについて話すのも限界があり、かといってそれ以外に何の質問をすれば良いのでしょうか。

話題が広がる5つのテーマ

「一流の雑談力の持ち主は、誰もが絶対に興味があるネタから会話を始めています。それは、人間が毎日する『食べること』『動くこと』『働くこと』『お金を使うこと』『寝ること』の5つ。毎日やっていることは誰でも興味があるので、話が展開しやすいのです」

たとえば、その5つに当てはめると、以下のような会話が展開できると言います。

●食べること
「最近忙しそうですけど、お昼を食べている時間はあるんですか?」
「最近どのあたりでお昼食べてますか?」

●動くこと
「最近運動されてます? 私はまったくしていなくて…」
「○○さんって毎日何時に起きてるんですか?」

●働くこと
「最近、仕事終わるの遅いみたいですね」
「今、一番時間を使っている業務って何ですか?」

●お金を使うこと
「最近、自己投資とか趣味とかされてます?」

●寝ること
「最近、睡眠取れてます?」「寝付きは良い方ですか?」
「お休みの日はしっかり休息取れてます?」

このように、自分の生活上、興味のある話題であれば質問しやすいし、相手も答えやすいもの。結果的に温かい場が作り出せて、相手に心地良いと感じてもらえるでしょう。

よくある雑談の失敗例と注意点

目上の人や、取引先が相手だといくら雑談と言っても緊張をする人もいると思います。しかし、それを過剰に恐れると、余計に失敗の原因になりかねません。

失敗例1 話かけられるのを待つ

雑談が苦手な人は、その苦手意識のせいで自分からなかなか話しかけない人も多いと言います。しかし、それが失敗の原因になるようです。

「雑談は、先に行動したほうが主導権を握っているんです。雑談が得意な人は先に挨拶をしたり、声をかけたり、アイコンタクトしたりする。常に先手なんです。逆に雑談が苦手な人は、必ず話しかけられてからこちらも話すという後出しの姿勢になりがちです。相手が話を導いてくれる人ならそれでも良いですが、声をかけられるのをただ待つという姿勢では、雑談が盛り上がらずビジネスにネガティブな影響を生む可能性もあります。雑談が苦手な人ほど、先に挨拶をするということを心がけると良いですよ」

失敗例2 質問内容を吟味しすぎる

取引先が相手のときなど、ビジネスシーンでの雑談では気を遣うことも大切です。ただし、気を遣いすぎるのも失敗の原因になるようです。

「『こんなことを言っていいのかな』『こんなことを聞いて大丈夫かな』と相手を不快にさせないかを考えすぎる人がいますが、それも注意が必要です。なぜかと言えば、それはスポットライトが相手ではなく、自分に向き始めているから。自然と言葉数が少なくなるので、雑談も盛り上がりません。相手の表情をよく見ることも重要ですし、もし迷いがあるのであれば、それを相手に聞いても良いと思います。『こんなことを聞いて失礼に感じるかもしれませんが』と前置きすれば、質問しやすくなるはずです」

できるビジネスパーソンがやっている雑談のコツ

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注意点に気をつけるだけでなく、質問にはテクニックも必要です。頑張って質問しても「そうだね」で話が終わってしまって続かなかったり、いまいち反応が悪くて盛り上がらなかったりすることも。どうすれば話が広がるのでしょうか。

ワンクッション置いてから質問する

「『何か言わなきゃ』と焦るあまり、畳み掛けるように質問をする人がいますが、それはボクシングで例えるなら、いきなりストレートばかり繰り出しているようなもの。まるで尋問のようで、相手も戸惑ってしまうでしょう。大切なのは、ストレートの前にジャブを打つこと。ワンクッション置いてから質問すると、相手も答えやすいです。たとえば、いきなり『趣味は何ですか?』と聞かれたら唐突過ぎますが、『最近、趣味が欲しいんですよね。○○さん、何かされてますか?』とワンクッション置けば、相手も『趣味の話が始まるな』と準備ができて答えやすいです」

話させ上手になる

また、雑談で話が広がるようにするには「話させ上手」になることも大切だと、桐生さんは言います。

「人間は聞いている時間よりも、話している時間のほうが、あっという間に過ぎるものです。いかに相手が話したくなるような空間を作るかが、腕の見せどころ。相手の趣味がテニスだと判明したら『ということは、学生時代からずっとやられてるんですか?』『そうすると、健康にはけっこう気を付けているタイプですか?』『ちなみに、ほかにもスポーツをされているんですか?』のように、接続詞を用いて話を進めます。相手の会話に『そうですか』と頷いているだけでは、会話は終わってしまいます。『ということは』『そうすると』『ちなみに』のような接続詞を使い、会話を引き出していくのです」

質問内容にもひと工夫を

さらに、相手が答えやすいように質問内容にも工夫が必要!

「アバウトな質問では、相手はいちいち深く考える必要があり、心地悪く感じて会話が止まってしまいます。常に相手が即答できるような、具体的な質問をすることもポイントです。『最近忙しいですか?』よりも『最近、土日はお休み取れてますか?』『趣味はありますか?』よりも『休日によくやっていることってありますか?』のように、相手が考えなくても反応レベルで応えられる質問をしてみてください」

ビジネスの場での雑談力を磨くポイント

雑談力を磨いていくために、具体的にどんなことを実践すれば良いでしょう? そのポイントを桐生さんに伺いました。

雑談に使える情報収集をする

ビジネスパーソンであれば、ぜひやりたいのが情報収集。桐生さんも、情報が何もない状態で雑談するのは目をつぶったまま、話をするくらい難しいとおっしゃっています。

「ビジネスシーンでお客さんと雑談が弾まない人というのは、圧倒的に情報が足りていないケースが多いです。お客さんが今どんな仕事をしているか、どんな商品を扱い、どんなプロモーションをやっているか、ということを調べない状態で、いきなり話すことは難しいと思います。『最近、御社の新しいCM見ましたよ。反響がすごいですね』など、雑談のきっかけになるような情報を事前に調べていきましょう」

できることのレベルを徐々に上げていく

昔から「千里の道も一歩から」と言われてきましたが、いきなり一流の雑談力を持つのは難しいもの。雑談力も少しずつ磨いていくしかないことを意識しましょう。

「おすすめしているのは、『100分の1行動療法』。これは『雑談がうまくなる』を100とすると、1から始めましょうという方法です。話すことが苦手なのであれば、最初は相手とアイコンタクトをすることから始める。アイコンタクトができたら、相手の話を聞きながらリアクションを取ってみる。リアクションが取れたら質問してみる、といった具合に、徐々にできることを増やすと、雑談力が磨かれていきます」

30秒ごとに相手に反応する

会話はよくキャッチボールに例えられますが、ボールをどのくらいのペースで回せば良いのでしょうか? 桐生さんは30秒を目安にすると良いとおっしゃっています。

「自己開示でも質問でも構いませんから、こちらが30秒ほど話をしたら、相手に会話のボールを渡します。相手も30秒くらいで返してくれたら、こちらも30秒ほど話をして、と交代で行っていくことで、会話の交通量が増えていきます。もちろん、相手が1分、2分と話すかもしれませんが、30秒くらいの目安でラリーをしていくとすごく心地良い会話に感じられると思います。相手が30秒ほど話をしたところで一度、リアクションを入れて、また相手の話を聞くなどでも良いです。30秒を一つの区切りと意識すると、雑談力がぐっと磨かれます」

苦手な相手に興味が持てないときの雑談テクニック

ちなみに…苦手な上司や同僚のように「そもそも相手の話に興味がない」という場合、どのように質問すれば良いでしょうか?

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好奇心を持って接するのがポイント

「よく『相手に興味を持とう』というアドバイスがありますが、興味がないものに興味は持てないですよね。だから私は『興味ではなく、好奇心に変えよう』と伝えています。好奇心とは、知らないものを知ろうとする心。その人に興味はなくても『なぜ仕事がうまく回っているのか』『なぜジムに通っているのか』など、不思議に感じるポイントはあるはずです。その好奇心を満たすためのインタビュー、と捉えれば、苦手な相手とも雑談しやすくなるでしょう」

リモートワーク普及によって雑談力はさらに重要なものに

コロナ禍になってリモートワークが中心になったビジネスパーソンも多いかと思います。そこで対面とオンラインでの雑談で、どんな違いがあるかを桐生さんに伺いました。

「リモートと対面はたしかに感覚が全然違いますよね。一方で、なぜリモートでコミュニケーションが取れないかと言えば、対面のときと違うことをするからです。たとえば対面の会議であれば、時間内に会議室に集まったら、何かしら挨拶や雑談を交わしますよね。しかしリモートになると集まってもミュートにしていて挨拶しない人や、始まるまでずっと無言でいつづける人がいる。また画面をオフにしている人もいます。対面の会議なら顔を隠して会議室に入ってくるようなものです。リモートだからといって対面と違うことをするとコミュニケーションが取りづらくなります」

リアクションはオーバーにするのが大切

オンライン会議には「相手がどんなリアクションをしているか把握しづらい」という課題があると思います。そのため、オンライン会議では対面のときより少し大げさにリアクションをし合うことも重要のようです。

「オンライン会議は画面を通じた会話です。楽しいときやうれしいときの表情が読み取りづらかったりするので、対面で会話するときよりも少しオーバーにリアクションすると良いでしょう。普段の相槌よりも大きめに首を動かしたり、表情を少し大きめに変えたりすると、相手も話しやすく感じてくれます」

まとめ

桐生さんのヒントを使えば「あなたとはなぜか話しやすい」「あなたといると楽しい」と感じてもらえるような、一流の雑談力を身に付けられるはず。まずは身近なところから、試してみましょう。

 

<識者プロフィール>
桐生稔(きりゅう みのる)
株式会社モチベーション&コミュニケーション代表取締役。
1978年、新潟県十日町市生まれ。2002年、大手人材派遣会社に入社。営業成績がドベで新卒3カ月にして左遷される。そこから一念発起し、全国で売上達成率No.1を実現。その後、音楽スクールに転職し、事業部長を務める。2017年、社会人の伝わる話し方を向上すべく、株式会社モチベーション&コミュニケーションを設立。これまでに全国40都道府県で年間2,000回にわたり「伝わる話し方」のセミナーや研修を開催してきた。 テレビ朝日とABEMAが共同製作する人気番組『マッドマックスTV論破王』では、ディベートの審査員も務めている。
https://www.motivation-communication.com/

取材・文=富永明子(サーズデイ)
編集=村田智博(TAPE)

※更新日=2022年12月8日

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