【通夜・葬儀】香典の金額はいくらが正解? 毛皮を着てはいけない? 弔事の基本をマナー講師が教えます

年齢を重ねるにつれて、通夜や葬儀に参列する機会が増えてきます。故人を偲ぶ気持ちがあっても、常識やマナーを知らないことで失礼な振る舞いをしてしまい、その後の関係に支障をきたす場合があります。そこで今回は、NPO法人日本サービスマナー協会でゼネラルマネージャー講師を務める松原奈緒美さんに、葬儀や香典のマナーを教えていただきました。

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通夜・葬儀の前に準備しておくこと

いつあるか分からない弔事に備える

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葬儀などの弔事は急にあるもの。結婚式のように招待状を受け取ってから式まで期間がありません。そのため、香典袋は何とか用意できたとしても、喪服を揃えるのは難しい場合も。だからこそ、必要なものをあらかじめ用意しておく必要があります。

ちなみに、一般の参列者は通夜だけに参列する方が増えていますが、本来は逆です。通夜を親族や関係の近い方々で行い、葬儀・告別式で一般の方が参列するのが従来の葬儀・告別式の進め方です。それが逆転したのは、通夜が行われる時間帯が夜で仕事終わりに出席しやすいから。ビジネスパーソンとして、それらの葬儀の常識についても知っておくと良いでしょう。

当日の装いは「ブラックフォーマル」

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本通夜や葬儀には、平服ではなく「ブラックフォーマル」の装いで参列します。

  • 男性:ブラックスーツ、白シャツ、黒ネクタイ、黒靴下
  • 女性:ブラックフォーマル、パール一連ネックレス、1粒パールイヤリング、黒ストッキング、黒パンプス

若い世代では黒のスーツを持っていない方も多いかと思いますが、弔事のために一着用意しておくといいでしょう。また本来は殺生した毛皮や革製品などを身につけてはいけません。男性は革靴を履く方もいるため難しいのですが、女性は布製のパンプスを用意できると良いですね。用意できない場合は、金具のついていない無地の黒パンプスを用意しましょう。

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香典はそのままバッグなどに入れず、必ず「袱紗(ふくさ)」に包んで持参します。また、女性用のバッグは弔事用の布製のものが販売されているので、1つ持っておくと良いですね。男性はそのまま袱紗を持参するか、セカンドバックのようなものに袱紗を入れます。袱紗にはいくつかの種類があり、そのうちの1つ「手袱紗」(小風呂敷状のもの)などで香典を包めば、出し終わったあと畳んでポケットなどに入れることもできます。包み方が分からない場合は、挟むだけで簡単な簡略式の袱紗がオススメ。紫色の袱紗を一つ持っていれば、結婚式でも使えるので便利です。

念珠(数珠)の貸し借りはしない

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日本において最も参列する機会が多い仏式の弔事。その際に必要な「念珠(数珠)」は、貸し借りをしないようにしましょう。「念珠」は漢字の通り、「念じる珠」であり、宗教的な意味合いを持つものなので大切に扱います。葬儀場などでテーブルや椅子に置きっぱなしにする方を見かけますが、受付〜出棺まで常に左手に持っているようにしたいもの。ただし、お手洗いなどの時にしまうことは問題ありません。

念珠には男性用と女性用があり、一つひとつの珠の大きさが異なります。正式な念珠は108個の珠がありますが、一般的には珠の数が27個、36個、54個の略式で結構です。一連のものや二連の念珠などさまざまなものがありますが、一連のものですと珠の個数が男性なら27個、女性なら36個。念珠を使用するのは仏式の弔事のみで、キリスト教、神式であれば持参する必要はありません。

香典の金額はいくら包めばいいの?

香典の金額相場

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香典の金額は、故人や遺族との関係性によって変わりますが、以下の相場が一般的だと考えられます。

  • 友人・知人:3,000円〜
  • 親戚:10,000円〜
  • 親族:30,000円〜

香典を包む際に考えるべきなのは、遺族の負担です。通夜や葬儀に参列した弔問客に対して、足を運んでいただいたお礼として会葬御礼を用意します。そのために必要な費用だけでも年々上がっており、1人につき大体700〜1,000円くらいかかります。その場で香典返しを用意しているケースもあり、その場合にはさらに費用がかかります。遺族に負担をかけないよう3,000円くらいからと考えると良いでしょう。

なお、関係が近しい人には、酒食をふるまう「通夜振る舞い」を用意している場合もあります。ご遺族からお声がけがあった場合には、一口でも口をつけるのがマナー。なお、ご遺族のご負担を考え、早めに退席しましょう。何より、ご遺族の気持ちやご負担を考えることが大切です。

会社関係の場合は?

故人が会社の同僚や上司の家族、あるいは取引先の弔事の場合、まずは個人で出すのか、会社で出すのかを、会社に確認しましょう。総務部などで花や弔電を手配するケースがあったり、香典の金額が会社ごとに決まっていたりすることもあります。個人で出す場合、5,000円程度を包むのが一般的です。その際、上司よりも多く出さないように注意しましょう。会社や部署で包む場合、以下の相場が一般的だと考えられます。

  • 会社の同僚や上司の家族:10,000円〜(部署内の連名で出す)
  • 取引先(クライアント)の親族:10,000円〜(法人名を記載して会社として出す)
  • 取引先の担当者本人:10,000円〜(法人名を記載して会社として出す)

いずれの場合も、訃報が入ったらまずは会社に確認を。社内でまとめる場合や代表者をたてる場合は、個人で出さないようにしましょう。香典が重なることはマナー違反です。

会場の受付で香典を断られたら?

一方で、最近は香典やお花を断るケースも増えています。「香典を控えてください」など受付で言われた場合には、遺族の意思に従うようにしましょう。受付にいるのは、遺族の代理の方なので香典を無理に押しつけられても困ってしまいます。喪主などと近しい間柄で、別の場で直接渡すのは問題ないと思いますが、会場の受付で無理に渡してしまうと、他の人も「出さなきゃいけない」と感じてしまいます。

事前に香典の有無を知りたい場合には、葬儀や通夜が行われる会場に確認すれば教えてもらえます。遺族は大切な方を亡くして悲しみの中、葬儀・告別式の手配など短期間でやるべきことが多いため、心身ともに疲れています。できる限り直接の連絡は控えた方がいいでしょう。

香典袋の書き方と葬儀場でのマナー

宗教が分からない場合の表書き

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香典袋の表書きは、宗教により異なるので可能なら早めに確認するようにしましょう。大きく分けて、仏式の葬儀だと事前に分かっているかどうかで表書きが変わってきます。

  • 仏式だと分かっている場合:「御香典」
  • 宗教が分からない場合:「御霊前」
    ※例外として浄土真宗は「御仏前」

「御霊前」の表書きで、仏式、神式、キリスト教式の葬儀に対応できますが、浄土真宗の場合は、「亡くなったらすぐに仏になる」という教えのため「御仏前」で用意します。ちなみに、神式やキリスト教式の葬儀だと事前に分かっている場合は、御霊前の他、以下のような表書きが一般的です。

  • ・神式:「玉串料」「御榊料」
  • ・キリスト教式:「御花料」「献花料」
  • ・無宗教:「御花料」

中袋には表側に金額を縦書きで書き、裏側に自分の住所と名前を記載します。金額を書く際には、通常の数字ではなく漢数字を使用しましょう。連名の場合は、中央に代表者の名前を書き、そこから左へ順番に名前を書きます。3名以上の場合は、代表者の左に「外一同」などを記載しますが、その際には必ず連名の内訳を書いた別紙を同封するようにしましょう。

葬儀場での言葉かけはどうすれば?

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通夜や葬儀の受付では、宗教に合わせた言葉でお悔やみを伝えてから、香典を渡します。

  • 仏式:例)この度は御愁傷様でございます など
  • 神式:例)心よりお悔やみ申し上げます(仏式でも使える)など
  • キリスト教式:例)安らかな眠りをお祈り申し上げます など

言葉の最後まではっきりと言わず、語尾にいくにつれて声を抑え気味にした方が、故人を偲ぶ気持ちが伝わります。

受付だけでなく、ご遺族へのお声がけにも配慮が必要です。一番つらく大変なのはご遺族なので、長々と話してご負担をかけないようにすることが大切です。会話のなかで、「続く」、「繰り返し」、「重ね重ね」などの忌み言葉を使わないように気をつけましょう。

このように通夜や葬儀にはさまざまなマナーがあります。マナーを正しく認識し、遺族に対して失礼のない行動を心がけましょうね。

取材協力=NPO法人日本サービスマナー協会
文=平原健士(iPPON COMPANY GROUP)
編集=野田綾子+TAPE

【監修者プロフィール】

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松原 奈緒美
NPO法人 日本サービスマナー協会 ゼネラルマネージャー講師
EXSIA代表。
講演・研修年間約150登壇。様々な企業研修、講演を担当し、延べ35000名以上を指導。「マナー講師養成講座」「プロフェッショナルマナー講師養成講座」では、プロ講師育成や認定試験官担当。テレビ、雑誌などにも多数出演。Eラーニングやマナー映像監修なども多数行い、企業内マナー映像も手掛ける。

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