【新型コロナウイルスと失業】コロナにより失業手当はどう変わった? 社労士さんが解説!

新型コロナウイルスの影響により、失業を余儀なくされた人が増加。それにより、失業手当の制度が変更されました。今回は、新型コロナウイルスにより失業手当はどのように変化したのか、社会保険労務士事務所リーガルネットワークス所属の社会保険労務士、小島麻友子さんにお話を伺います。(情報は2020年11月10日記事執筆時の内容)

f:id:nojikoji1948:20201201153729j:plain

そもそも失業手当とは?

f:id:nojikoji1948:20201201153732j:plain

失業手当は、求職活動中で就職できない人のための制度です。失業中の生活をサポートしながら、安心して就職活動に専念できるよう、給付金を支給しています。

退職理由には「会社都合」と「自己都合」がありますが、「自己都合」の退職はさらに「正当な理由があるかどうか」に分けられます。

  • 「正当な理由なし」……転職や起業するなどの自発的な退職 
  • 「正当な理由あり」……傷病や介護、事業所への通勤困難な場所への移転など労働できない何らかの事情による退職

受給するための条件とは?

失業手当は誰もが受け取れるわけではなく、以下の受給条件が定められています。

(1〜3は会社都合と自己都合の共通条件)

  1. 失業していること
  2. 就職する意思と能力があること
  3. 求職活動を行っていること
  4. 離職日以前の2年間に、被保険者期間が通算1年以上あること(自己都合の退職で正当な理由なしの場合)
  1. 離職日以前の1年間に、被保険者期間が6カ月以上あること(会社都合の場合、自己都合の退職で正当な理由ありの場合)

申請するための方法は?

居住地を管轄するハローワークで必要書類の提出、求職申し込みなどの手続きが必要です。失業手当を受け取るまでの流れは以下です。

  1. 必要書類を揃えてハローワークへ求職の申し込みをする(受給資格決定日)。
  2. 「雇用保険受給説明会」に参加。失業手当の受け取り方や求職活動の進め方を学ぶ。
  3. 1週間の待機期間(本当に失業しているか様子をみる期間)。
    →アルバイト、内職などはしないように注意が必要。
  4. 会社都合による退職の場合、待機期間終了の翌日から支給対象者となる。
    →自己都合による退職の場合、さらに3カ月間の給付制限を経て、支給対象者となる(2020年10月1日以降の離職は2カ月間)。
  5. 4週間に一度、ハローワークへ行き失業の認定を受ける。認定日までに行った「求職活動の実績(求人応募・面接、再就職のための資格試験の受験など)」を報告し、確認してもらう。
  6. 失業手当の受取(指定口座へ振込み)

新型コロナウイルスにより、失業手当のどこが変わった?

f:id:nojikoji1948:20201201153737j:plain

新型コロナウイルスの影響で変更された失業手当の内容は、大きく分けて3つあります。従来の制度と比べながら変更点を見ていきましょう。

特例延長給付

従来、失業手当を受給できる日数は、年齢や雇用保険に加入している期間に応じて90〜330日と定められています。しかし、新型コロナウイルスの影響で解雇や雇い止めに遭い、仕事を失う人が増えていることから、条件を満たした人に給付日数を60日延長する(一部30日延長、受給期間は最大で1年間)「特例延長給付」制度が創設されました。

これにより、決められた給付日数の間に就職が決まらなかった場合に、受給期間を延長できることになりました。延長された期間は、従来の制度と同様、積極的な求職活動が必要となります。

また、退職理由と離職日によっても、受給可能かどうかが変わってきます。その基準は以下のとおりで、地域にかかわらず全国一律で適用されます。

f:id:nojikoji1948:20201201165420j:plain

但し、以下のいずれかに該当する人は、受給対象にならないので注意が必要です。

  1. 所定の求職活動がないことで失業認定日に不認定処分を受けたことがある場合
  2. やむを得ない理由がなく、失業認定日に来所しなかったことにより不認定処分を受けたことがある場合
  3. 雇用失業情勢や労働市場の状況などから、現実的ではない求職条件に固執される人
  4. 正当な理由なく、公共職業安定所の紹介する職業に就くこと、指示された公共職業訓練を受けること、再就職を促進するために必要な職業指導を拒んだことがある場合

受給期間の延長

従来の制度において、受給期間は離職日の翌日から原則1年間ですが、疾病、出産・育児等の理由で30日以上職業に就くことができない日がある場合には、受給期間の延長が認められています。その一環として、以下の理由でも受給期間を延長できます。

  • 新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からハローワークへの来所を控える場合
  • 新型コロナウイルスに感染している疑いのある症状(※1)がある場合
  • 新型コロナウイルス感染症の影響で子どもの養育が必要となった場合。なお子どもは小学校、義務教育学校(※2)、特別支援学校(※3)、放課後児童クラブ、幼稚園、保育所、認定こども園などに通学、通園するものに限る。

※1……風邪の症状や発熱がある場合、強い倦怠感や息苦しさがある場合など
※2……小学校課程のみ
※3……高等学校まで

働き方改革により給付制限が3カ月から2カ月に

f:id:nojikoji1948:20201201153744j:plain

自己都合による退職の場合、受給までに3カ月間の給付制限期間が設けられています。しかし、2020年10月1日以降に離職された人で正当な理由がない自己都合であっても、5年間のうち2回までは給付制限期間が2カ月(※1)に短縮。この給付制限2カ月の改正は、コロナのために変わった改正点というよりは、働き方改革により、労働者がより安心して転職活動ができるよう雇用保険が充実したことによる改正点です。

※1……2020年9月30日までに退職し、「正当な理由がない自己都合」で退職した人は、給付制限期間が従来どおりの3カ月。

失業手当の変更点を紹介しましたが、社会情勢に合わせて制度は更新されます。自分は対象外と思っている人も最新情報をチェックして、ハローワークに相談してみてはいかがでしょうか。

また、失業手当を受け取ることができない場合、労働者が自ら申請できる「コロナ休業支援金・給付金」という、休業前賃金の8割を休業実績に応じて支給する制度があります。他にも、就職に役立つ知識・スキルを無料で習得できる「職業訓練制度」などもあるので、積極的に活用することをオススメします。

 

文=平原健士(iPPON COMPANY GROUP)
編集=野田綾子+TAPE

【監修者】

f:id:nojikoji1948:20201201153802j:plain

小島麻友子(社会保険労務士事務所リーガルネットワークス 社会保険労務士) 
顧問先様からの労務相談や、労務手続きの代行・給与計算などの支援を担当。最近では管理職向けハラスメント防止研修に注力し、新型コロナウイルス以降、就業規則改定や在宅勤務規程の制定のご依頼等を中心に活動している。

【関連記事】
【社労士に聞く】残業代の計算に関する基礎の基礎!働いた分はしっかりもらいたい!
【はたらくクイズ】そもそもハローワークってなんだ? 雇用保険と失業給付金について学ぼう!

page top