マインドフルネスとは? 瞑想の実践方法や仕事の合間に取り入れる効果を解説

近年、ビジネスシーンでよく耳にする「マインドフルネス」。普段の生活の中で、マインドフルネスという瞑想(めいそう)のエクササイズを意識して行っていくと、心の状態が安定するだけでなく、仕事のパフォーマンスにおいても良い効果が得られると注目されています。マインドフルネスの理解を深めつつ、ビジネスにおいてマインドフルネスを活用していくポイントについても知っておきましょう。

マインドフルネスとは?

マインドフルネスとは、2500年前の初期仏教にルーツを持ち、1990年代頃から展開されている認知行動療法の第三世代にあたる心理療法です。マインドフルネスを行うと、過去への後悔や未来への不安など、自分の気持ちを煩わせる思考や感情にとらわれにくくなります。日常生活におけるストレスを受け流す力がつくだけでなく、仕事をする上で経験するさまざまな雑念を払拭することができるため、ビジネスシーンにおいても活用されています。

「今、この瞬間」に集中する方法、マインドフルネス

マインドフルネスとは、「マインド(意識)」が「フル」になっている状態。つまり、「今、この瞬間」に自分の心身に起こっていることにすべての意識を向け、集中している状態のことです。私たちは普段、物事に集中しているつもりでも、脳裏にはさまざまな考えが浮かび、しばしばその考えにとらわれてしまうものです。すると感情も揺れ動いていくため、気持ちが落ち着かなくなったり、不安が強くなったりしてしまいます。こうした状態をリセットし、「今、この瞬間」に集中できるようにするのが「マインドフルネス」です。

マインドフルネスはビジネスシーンでも有効

仕事をする中でネガティブな出来事に遭遇したとき、そのことについて考え過ぎてしまうと憂鬱(ゆううつ)になったり不安になったりして、業務に集中できなくなってしまいます。こうした事態にならないためにも、普段から「マインドフルネス」を実践していれば、やるべきことに集中でき、生産性を向上させることができます。そのため、近年ではマインドフルネスの実践を推奨している企業や組織が増えています。

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マインドフルネスの効果とは?

マインドフルネスは、心身にたくさんの良い効果をもたらします。仕事においては「ネガティブな考えにとらわれなくなる」「集中力が向上する」「ストレスに振り回されなくなる」という三つの良い効果が得られます。

ネガティブな考えにとらわれなくなる

私たちが悩み過ぎているとき、その考えの多くは自分の頭の中で創作したものです。たとえば、業務でミスをすると誰でも落ち込みますが、その落ち込んだ気持ちのままで考え続けていると、現実からずれた妄想が膨らんでしまいます。その結果「私はなんてダメなんだ」などと自分を責め過ぎてしまったり、「また同じミスをするに違いない」と不安になり過ぎてしまったりします。マインドフルネスを実践していると、こうしたネガティブな思考にとらわれる前に、思考をリセットすることができます。

集中力が向上する

業務を効率的に遂行するためには、雑念にとらわれずに目の前の業務にしっかりと集中することが必要です。とはいえ、多くの人は仕事に集中しているように見えても、頭の中では「昼休みに何を食べようかな」「あの人、○○さんに似ているな」などと雑念が次々に湧いてきてしまうものです。こうして余計なことを考えているうちに、仕事の手が止まってしまうことがあります。マインドフルネスを継続的に行っていると、気が散っていることに早めに気づき、素早く仕事に意識を戻すことができます。

ストレスに振り回されなくなる

自分自身をストレスにさらすことは、仕事への意欲を保つために必要なこともあります。ですが、悩み過ぎてストレスが過剰な状態になってしまうと、プレッシャーに押しつぶされて心身が疲弊してしまいます。このようにストレスが増えてきたときに、マインドフルネスを通じてストレスからいったん距離を置くことができれば、深刻に考え過ぎていた思考を客観的に見つめることができ、合理的な解決策を考えやすくなります。

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マインドフルネスをおすすめしたいのはこんな人

マインドフルネスは、ネガティブな思考や感情にとらわれやすく、行動の柔軟性を失いがちな人におすすめしたいエクササイズです。マルチタスクが苦手な人、日々の業務や人間関係にストレスを感じている人、残業時間が長く疲れがたまっている人には、ぜひマインドフルネスを継続的に実践することをおすすめします。

マルチタスクが苦手な人

マルチタスクを遂行するには、一つの仕事だけにかかりきりにならず、タイミングを見計らって効率よく切り回していかなければなりません。マインドフルネスを習慣にしていると、自分の状況を俯瞰(ふかん)して観察する力がついてくるため、マルチタスクをさばく力が身に付きます。今、何を優先して行動すべきか、時間をかけて取り組むべきことは何かなど、仕事の種類を見極めながら業務を遂行する力が伸びていきます。

日々の業務や人間関係にストレスを感じている人

苦手な仕事に従事していたり、職場の人間関係にストレスを感じていたりすると、そのことにばかり思考がとらわれてしまい、しばしば悪い方向に思考が傾いてしまいます。すると「いっそのこと退職してしまおうか」「あの人は私のことを憎んでいるに違いない」というように極端な方向に思考が流れやすくなってしまいます。このような傾向がある場合、マインドフルネスを行って自分を見つめていくと、ストレスにとらわれていた自分を客観的にとらえ、柔軟な発想が浮かびやすくなります。

残業時間が長く疲れがたまっている人

仕事量が多く残業が続いている人は、心身共に疲れがたまりやすくなります。さらに業務の精神的負担が重い場合には、帰宅後も緊張が続き、十分な睡眠をとっても疲労が回復しにくくなります。このような状況が続いているときにマインドフルネスで瞑想を繰り返し行うと、抱えている疲労感から一時的に離れて気持ちを楽に保てるようになります。継続することで心に余裕が生まれ、効率的な業務の取り組み方について考えることができるようになります。

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マインドフルネスの注意点

マインドフルネスは、一般的なリラクゼーション法のように疲れた自分を癒す目的で行うものではなく、自分自身を見つめ、より良い状態を保つようにするためのエクササイズです。「目的意識をはっきりさせて集中して取り組む」「時間を見つけて継続的に取り組む」という二つの注意点を念頭に置きながら行っていくようにしましょう。

目的意識を持ち、集中して取り組む

まず、マインドフルネスを通じてどのような自分でありたいのかを考えてみましょう。「集中力を高め、効率的に仕事に取り組みたい」「忙しくても、落ち着いて対処できる自分でありたい」というように、仕事において目指したい自己イメージがあると思います。こうした自己イメージをはっきりさせることで、マインドフルネスに意欲的に取り組めるようになります。

時間を見つけて継続的に取り組む

マインドフルネスは継続的に取り組むことによって、効果を実感できるエクササイズです。飽きずに続けていくコツは、ちょっとした時間を見つけて気長に取り組んでいくことです。休憩時間、仕事の合間、電車での移動の時間など、1回につき5分ほどでもよいので継続的に行ってみましょう。自宅では、起床後や寝る前のひとときに、リラックスした状態で行うとよいでしょう。

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マインドフルネスの実践方法

マインドフルネスな状態は、瞑想のエクササイズをくり返し行うことによって得られます。場所を問わず、誰でも簡単に実践できますので、ぜひ思い立った時から始めてみてください。具体的な実践方法についてお伝えします。

マインドフルネス瞑想

古来の瞑想は悟りを開くことを目的としていますが、「マインドフルネス瞑想」は雑念に振り回されない穏やかな心の状態を作り出すことを目的としています。マインドフルネス瞑想にはいくつもの方法がありますが、ここではビジネスシーンでも実践しやすい「呼吸による実践方法」「歩く・食べる実践方法」という二つの方法をお伝えします。繰り返し行うことで、マインドフルネスな状態を実感しやすくなるでしょう。

呼吸による実践方法

呼吸による実践方法は以下の3つの手順で行います。

①背筋を伸ばして椅子に座り骨盤を安定させて、その他の体の力を抜きます。
②自然に任せた呼吸をゆっくりと続け、その呼吸を観察していきます。すると、息を吸うときにお腹が膨らみ、息を吐くときにお腹が縮む、という感覚に気づくでしょう。
③「膨らんでいる」「縮んでいる」という様子をありのままに感じながら、自然な体の動きをじっくりと観察していきましょう。

途中で雑念が浮かんできた場合、雑念を消そうとせずにその場に置き、再び呼吸の観察へと戻ります。5分ほどでも瞑想の効果が得られますが、余裕があれば、15~20分ほど集中して行うとさらに効果的です。

歩く・食べる実践方法

日常的に行っている何気ない動作を通じても、マインドフルネス瞑想は実践できます。中でもおすすめしたいのが、「歩く」「食べる」という日常動作を通じて行う瞑想です。

①「歩く瞑想」
昼休みなどの時間に外をゆっくり歩きながら、「右、左、右、左」とリズミカルに足を動かして進んでいる自分の体をありのままに観察してみましょう。着地するときの足の裏の感覚、自然に揺れる手の感覚など、歩行に伴う体の感覚を隅々まで味わいます。

②「食べる瞑想」
食べ物を観察し、食べる前に臭いを味わってから、ゆっくりと口に入れましょう。しばらく舌の上で転がしてから形がなくなるまでゆっくりと噛んで、食材の硬さや味、あごの動き、唾液と混ざりあう様子などをじっくりと観察してみましょう。

瞑想を行っていると、さまざまな雑念が浮かんでくるでしょう。このときに浮かんだ雑念はそっとその場に置き、再び歩く、食べるという動作を観察していきます。この「歩く瞑想」「食べる瞑想」も呼吸による瞑想と同じように、くり返し行うことで「今、この瞬間」の自分に集中することができるようになります。

まとめ

マインドフルネスは特別な技術を必要とせず、誰でも、思い立った時に、短時間で実践できるエクササイズです。仕事をする中で、さまざまな雑念が浮かんできて気が散ってしまう、ネガティブな感情に振り回されてイライラが続いている、もっと効率的に仕事ができるようになりたい、といった思いがある場合、ぜひマインドフルネスを実践してみてください。継続して行っていくと、ストレスが多い中でも「今、この瞬間」の自分に立ち戻り、仕事に集中している自分を実感できるようになるでしょう。

【プロフィール】
大美賀 直子(おおみか なおこ)
メンタルケア・コンサルタント。公認心理師、精神保健福祉士(以上、国家資格)、産業カウンセラーの資格を持つ。「こころと人生と人間関係のベストバランス」をテーマに、カウンセリング、講演、執筆活動を行う。働く人のメンタルケアに関する造詣も深く、テレビ、新聞、雑誌、インターネットを中心に情報を発信。企業研修でも好評を得ている。『なぜあの人の働き方は「強くて美しい」のか?』『サイボーグを目指さないことにした働く私の「自分時間」』(アスカビジネス)、『どうして会社に行くのが嫌なのか?』(アスキー新書)などの仕事に関する著書も出版。
大美賀直子|メンタルケア・コンサルタントーこころと人生と人間関係のベストバランスを提案 - 大美賀直子(メンタルケア・コンサルタント)の公式HP (mentalcare555.com)

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