やりたいことをどう見つけるか 株式会社Dct 島田晴香の「幸せの探し方」

アイドルのセカンドキャリアをサポートする企業「株式会社Dct」を2020年に設立した島田晴香さんのインタビュー後編。仕事や環境を変えたいと考える人にとって大切な「自分の幸せを探る方法」をお聞きしました。

アイドルのセカンドキャリアをサポートする企業「株式会社Dct」を2020年に設立した島田晴香さん。さらにコロナ禍以降、熱海にある実家の旅館の手伝いもされているとか。複数の仕事を持つことの意義とは? さらに仕事や環境を変えたいと考える人にとって大切な「自分の幸せを探る方法」を後編ではお聞きしました。

※インタビュー前編はこちら
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サポートしたアイドルが就職し活躍。起業して1年半の成果

──AKB48でのアイドル活動、ロンドン留学、広告代理店の勤務経験を経て、島田さんは2020年にアイドルのセカンドキャリアをサポートする株式会社Dctを起業されました。広告代理店ではたらき始めたときから構想にあったということですが、「何年後には起業しよう」というビジョンもあったのでしょうか?

広告代理店ではたらき始めて5年以内には起業したいと思っていました。ただその間にコロナ禍がやってきて、熱海にある実家の旅館が大変な状況になったんです。それで旅館の手伝いもしたいと思い、広告代理店の仕事はリモートワークにさせてもらいました。

そしてその時期、アイドルも握手会ができなくなっていました。そのためアイドルの卒業も増えてくるのではないかと思い、「いつでも動けるように」と2020年に会社の設立をしたんです。その後、2021年1月にアイドルのセカンドキャリア事業を本格的に始めました。

──事業を始めてから現在で約1年半経ちますが、その中で一番うれしかったことや喜びを感じた瞬間はどのようなことですか?

相談に来てくれたアイドルのメンバーたちが、何かをできるようになったときですね。例えばパソコンのタイピングが前よりも早くできるようになったとか、そんなささいなことがうれしいです。

自分で芸能以外の職業について調べるなど、セカンドキャリアに対して自発的に行動しているところを見ると、自分が起業した意義を感じます。2022年の4月には一期生が3人就職したので、それもすごくうれしかったです。

──ここでも「一期生」という呼び方なんですね(笑)。

はい(笑)。就職後のサポートもしています。ご飯を食べながら3人の話を聞く機会があるのですが、一期生たちが試行錯誤しながら会社員として頑張っている姿から、私も刺激を受けます。

──アイドルのセカンドキャリア支援の今後の展望を教えてください。

先日発表された秋元(康)さんの新規アイドルグループ創造プロジェクト「IDOL3.0 PROJECT」に、Dctも参画していて。アイドル史上初の試みとして、卒業後のセカンドキャリアの支援もメンバー募集要項に入っているんです。

やっぱり卒業後のキャリアまでサポートしてくれる条件って本人はもちろん、家族もすごく安心だと思うんです。「アイドルなんて、売れるかどうか分からないからやめときなさいよ」と言われて諦めていた人たちも挑戦しやすくなる。それにセカンドキャリアへの不安がないからこそ、ファーストキャリアを一生懸命楽しめると思います

そうした環境をアイドルに提供することが私の理想でした。だから同じように卒業後のセカンドキャリアサポートを募集要項に入れるアイドルグループが増えてほしいと思いますね。Dctとしてもそういった取り組みが一緒にできる会社さんやグループを探していきます。

今の状況を変えたいときに必要なこと。自分の心に耳を傾けること

──島田さんは現在、代表取締役社長でありながら、ご実家の旅館の若女将(おかみ)も務めていらっしゃいます。複数のお仕事を持つことの豊かさはどのようなものだと考えていますか?

私は「副業」を「複業」と書くほうがいいなと思っています。なぜなら複数の仕事をやることでメリットが多いと感じるからです。もちろんタスクも増えますけど、それだけ世界も広がるし、関わる人やビジネスチャンスも増える

例えば私の場合、起業したからこそ旅館の経営状況も可視化できるようになりました。また起業をきっかけに知り合った起業家さんが、社員研修にうちの旅館を利用してくれることもあります。私自身が2つの仕事を持つことでどちらもハッピーにできる経験をしているので、複数の仕事をする「複業」はすごくメリットが多いと思っています。

──いくつも活動されている島田さんのようなはたらき方をする方がいる一方で、「今の仕事に何かしら不満や不安を抱えていて転職したい。けれどやりたいことが見つからない」という人も多いと思います。

「やりたいことがない」はずはないんですよ。「やりたいこと」はなくても「好きなこと」はあるはず。もちろん「好きなことを仕事にしたいのか」「ただお金を稼ぎたいのか」という選択も必要になってくると思うのですが、「とりあえず今の仕事が嫌だ」と思っている人は、まず自分の好きなことを理解する必要があります。そしてそれは、自分との対話を通して行われます

私がサポートしたアイドルにも最初は「やりたいことがない」と言う人がいます。それで話を聞いてみると「休みの日は家でゲームしてます」と言うので、きっとその人はゲームが好きなことなのでしょう。「家ではずっとスマホをいじっています」と言う人に「スマホで何をしているの?」と聞いてみると「Instagramばっかり見てます」と答える。だったら「SNSが好きでしょ?」「写真が好きでしょ」となってきますよね。

──自分を掘り下げる作業が重要ということですね。

そうです。セカンドキャリアについて相談に来たアイドルには「自分にとって何が幸せ?」と聞くところから始めます。「安定が自分の幸せだ」という人には「安定を手に入れるためには何が必要?」「お金はどうやって生み出せる?」と徐々に聞いていくんです。

お金を稼ぐにしても、好きなことを仕事にしてお金を稼ぎたい人もいれば、仕事自体は好きじゃなくてもいいからお金を稼ぎたいという人もいる。そうやって、自分が本当にやりたいことや手に入れたいものを見つけていくことが大切です。私自身も卒業後の進路を考えるときに「自分の幸せをかなえるために必要な5つのものってなんだろう」と考えました。スポーツが好きだし、安定が欲しいし……と思って一般企業への就職を目指したので。

環境を変えることは、自分の幸せを大切にすることにもつながる

──今の島田さんがご自身の幸せに必要な5つを挙げるとしたら何になりますか?

1つ目は仕事の成功。2つ目は友達や家族、周りの人が笑顔でいてくれること。3つ目はおいしいごはんとおいしいお酒。そのためには1つ目の「仕事の成功」が必要です。できれば好きな人、大切な人たちと一緒に食べたり飲んだりしたいので、2つ目にもつながってきますよね。

4つ目は数年前から始めたゴルフのスコアを伸ばすこと。最後は健康であること。そのために年に一度は人間ドックに行っています。もちろんこの5つは人それぞれ違いますし、ライフステージによっても変わっていくものですが、みんな「自分の幸せはなんだろう」と考えるだけでワクワクするのではないでしょうか。

──それこそ「今の仕事を変えたい」と思っている人も、自分が何に幸せを感じるかを考えているうちに、「仕事を変えたい」と思う原因が見えてくるかもしれないですしね。

そうですね。ですので、ぜひ皆さんも考えてみてほしいですね。

──それを考えることは、自分の幸せの追求に結びついていきそうです。

そうですね。アイドルはもちろん、今転職を考えている人に対しても「自分の幸せを大事にしてください」と言いたいです。私は自分よりも周りの人が幸せになってほしいタイプなので、ガラッと職は変わりましたが今の仕事は天職だと思っています。

もちろん仕事をしていると大変なことやつらいこともあります。でも「周りの人の幸せのためだ」と思うと頑張れる。自分が幸せだと感じることは人それぞれ違うと思うので、自分がやりたいことや目指している場所に向かうためにも、みんなそれぞれが自分の幸せを大切にしてほしいと思います。

※インタビュー前編はこちら
元AKB48 島田晴香の「転身術」。新しい道を踏み出す0.5歩

【プロフィール】
島田 晴香(しまだ はるか)
アイドルグループ「AKB48」の第9期生メンバー。同グループ卒業後はロンドンへの単身留学や広告代理店での勤務を経て、2020年にアイドルのセカンドキャリアを支援する株式会社Dctを設立。現在、経営者として活躍する傍ら、地元・熱海で両親が営む「旅館 立花」の若女将(おかみ)として運営をサポートする。
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