サザエさん症候群とは? 症状や乗り越える方法を専門家が解説

「サザエさん症候群」というキーワードをご存じでしょうか。休みの終盤に、翌日から始まる仕事を思って憂鬱(ゆううつ)になる現象だそうです。本記事ではそうしたネガティブな気分を乗り越える方法を保健師の中森チカさんに伺いました。

サザエさん症候群とは?

「サザエさん症候群」とは月曜からの仕事に向けて、日曜の夕方から深夜にかけて憂鬱な気分になることを指します。その具体的な症状などはどういったものなのでしょうか?

サザエさん症候群の症状は?

「サザエさん症候群は日曜日の夕方、サザエさんや笑点が始まる時間帯に『明日からまた仕事をしなければいけない』という現実に直面することで症状が現れます。名前の由来はアニメ『サザエさん』が日曜夕方の代名詞になっているから。具体的な症状としては『憂鬱な気分』『モチベーションの低下』『睡眠不足』などが挙げられます」(中森さん・以下同)

うつ病と何が違う?

「憂鬱な気分になる」という点で、サザエさん症候群はうつ病の症状に似ています。サザエさん症候群とうつ病は異なるのでしょうか。

「うつ病とサザエさん症候群の異なる点は主に2点です。1つ目はうつ病は『疾患』として登録されている点。2つ目は憂鬱な気分の継続する期間。

サザエさん症候群は日曜の夕方から月曜までの一時的な症状ですが、憂鬱な気分が2週間以上続くとうつ病の疑いがあります。サザエさん症候群の場合は火曜、水曜と日が進むにつれて憂鬱な気持ちが軽減されるでしょう。しかし一時的なものと思って軽く考えないことが重要です。サザエさん症候群も放っておくとメンタルヘルスの不調につながってしまう可能性があります」

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サザエさん症候群の原因とは?

どうしてサザエさん症候群になってしまうのでしょうか。その原因を中森さんに解説いただきました。

仕事のストレス

サザエさん症候群の主な原因は仕事や職場で抱えるストレスだと言います。

「仕事量の多さや職場環境の問題など、仕事で抱えるさまざまなストレスがサザエさん症候群の原因になります。さらに土日の過ごし方次第で、平日のストレスが解消できないどころか、土日にストレスが蓄積される人もいるようです」

人間関係のストレス

仕事で抱えるストレスはさまざまですが、その中でも特に「職場における人間関係」が大きな要因になるそう。

「1番のストレス要因は人間関係にあると考えられます。離職理由の上位に入るほど、人間関係はストレスの原因になりやすいです。休み明けに上司や先輩社員とまたオフィスで顔を合わせなければならないと思い、憂鬱な気分になるのでしょう」

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生活リズムの乱れ

仕事のストレスだけでなく、不規則な生活もサザエさん症候群の原因になります。

「平日と休日の睡眠時間に大きな差がある人もいると思います。金曜の夜に遅くまで起きていて、土曜日はお昼近くまで眠ってしまう。土曜の夜にしっかり寝られれば良いのですが、土曜の夜も夜更かしして生活リズムが崩れる場合も多いです。土日に生活リズムが乱れる現象は『社会的時差ぼけ』と呼ばれています。社会的時差ぼけは人間の体にストレスを与え、サザエさん症候群の一因になります」

サザエさん症候群になりやすい人の特徴は?

サザエさん症候群になりやすい人はどんな人なのでしょうか? その特徴を聞きました。

責任感が強く、気分転換が苦手

「仕事が憂鬱だ」と言われると、仕事を軽んじているように見えるかもしれません。しかしサザエさん症候群になりやすい人というのはむしろ責任感が強い人が多いそうです。

「責任感の強い人は『仕事を頑張らなければ』と自分にかけるプレッシャーが強く、その分ストレスも抱えやすいです。

さらに責任感の強い人は『ストレスの解消』や『気分転換』が苦手な傾向にあります。もちろん責任感が強いことは素晴らしいのですが『自分でどうにかしなければ』と過度に思う人は注意が必要です」

他人に頼るのが苦手

責任感の強い人は他人に迷惑をかけることを避けようとするため、他人に頼ることが苦手な傾向にあるそうです。

「サザエさん症候群になりやすい人には、『ストレスを一人で抱え込んでしまう』特徴もあります。自分の悩みを周囲の同僚や家族、友人にうまく伝えることが苦手です。『愚痴を言う』というとネガティブに感じる人もいるかもしれません。しかし上手に愚痴を言える人の方がサザエさん症候群にはなりにくい傾向にあります」

新しい環境に慣れない

サザエさん症候群にならないためには、職場環境や仕事への慣れも重要と言います。

「新入社員の方や、異動・転職など新しい環境で仕事をスタートし始めたばかりの人もサザエさん症候群になりやすい傾向にあります。なぜなら慣れない仕事で気を張り過ぎてしまい、ストレス状態が続いてしまうからです。最初から仕事をうまくこなそうと考え過ぎないことが重要でしょう」

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サザエさん症候群の対策とは?

サザエさん症候群にならないために、どんな対策が打てるでしょうか。対策法や、土日の過ごし方のポイントを伺いました。

メリハリを付けて土日を過ごす

仕事に向けて大切になるのが休日の過ごし方です。インドア派の人もアウトドア派の人も重要なのは「メリハリを付けること」だと言います。

「休日の過ごし方は人それぞれ。自分にマッチした過ごし方ができていれば問題ないと思います。

しかし2日連続でアクティブに過ごすと疲れてしまう人や、2日間ずっと家に籠もっている人は少しメリハリを付けることをおすすめします。1日は外に出かけて刺激を受け、1日は家でゆったり過ごしましょう。2日間家で休むにしても、家の中で少し体を動かすなどすると良いでしょう」

休日に寝だめしない

平日に忙しいビジネスパーソンがついしてしまうのが土日の寝だめ。しかし寝だめの効果には疑問があるそうです。

「寝る時間、起きる時間をなるべく平日と一定にします。休日に寝だめするのは物理的に難しいと言われています。もし睡眠が足りていないと感じている人は、土日の起きる時間を2時間ずつ伸ばすのではなく、平日30分でも長く眠ることをおすすめします。もし土日にどうしても眠りたい場合は、朝に長く眠るのではなく、30分以内の昼寝の時間を設けるなどすると良いでしょう」

月曜に楽しみを用意する

仕事が始まる月曜日の予定を調整するだけでも、サザエさん症候群の軽減につながるようです。

「月曜に楽しみな予定を入れておくと、日曜が終わる憂鬱な気分は軽減されるはずです。仕事でもプライベートでも構いません。

また自分にとって負担になる予定は水曜以降に設定するのもおすすめです。重要なプレゼンや上長との1 on 1など、プレッシャーになる予定は週の後半に調整できるとサザエさん症候群を軽減できると思います」

土日に仕事を持ち込まない

多忙な時期は土日にも仕事をしてしまう人もいるかもしれません。しかしサザエさん症候群にならないためには原則、土日には仕事をしないことをおすすめします。

「土日に仕事を持ち込まないことも重要です。どうしても難しい場合もあると思います。そのときには土曜か日曜、どちらか1日は休みを取るように心がけましょう」

社内に友人を作る

人間関係や職場環境を良好にすることもサザエさん症候群にならないための対策として有効です。

「サザエさん症候群の原因の1つが人間関係です。ギクシャクした人間関係の職場に『行きたくない』と思うのは当然です。人間関係を良好にするために職場内で『雑談を増やす』『あいさつを大切にする』などすると良いでしょう。

職場に友人を作ることはおすすめです。友人を作ると気軽に悩みの相談ができます。また仕事の合間の気分転換もしやすくなるでしょう。」

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まとめ

ビジネスパーソンであれば誰もが経験しているであろう、休みが終わってしまうことの憂鬱さ。もちろん一時的なことであることも多いですが、あまり軽く考え過ぎないことも必要です。もし休日終わりの憂鬱が何週にもわたって続いたら、ぜひ記事を参考に対策を考えてみてください。

【プロフィール】

中森チカ(なかもり ちか)
株式会社ドクタートラスト 保健師、公認心理師。大学病院の病棟勤務などを経て、現在はドクタートラストで、特定保健指導や健康セミナーなどに携わるほか、新入社員に対するカウンセリング、「メンタルヘルスセミナー」などを行っている。特に「管理職セミナー」は高い評価を得ている。

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