会議で“聞き専”になっていませんか?「質問力」を高めて仕事を有利に進めよう!

20〜30代前半の若いビジネスパーソンは、会議やMTGの場で質問をするのが苦手という人も少なくないのではないでしょうか。実はビジネスにおいて社内、社外を問わず必要となるのが「質問力」なんだそうです。今回の記事では、何を質問したらよいかわからないという人へ向けて、なぜ質問することが大事なのか、質問力を身につけるメリットや高める方法などを、『「質問力」って、じつは仕事を有利に進める最強のスキルなんです。』の著者、ひきたよしあきさんにうかがいました。

会議で“聞き専”になっていませんか?「質問力」を高めて仕事を有利に進めよう!

「質問」することに苦手意識を持っていませんか?

「質問」することに苦手意識を持っていませんか?

最近、会議やMTGで質問をするのが苦手というだけでなく、そもそも人と話すこと自体が苦手という人が増えているそうです。なぜ、このような現象が進んでいるのでしょうか。

「新型コロナウイルスの影響でオンラインでの会議が定着しましたよね。誰かが話している時にミュートにすることはあるかと思いますが、特に若いビジネスパーソンの場合は上司や先輩が話してくれるから、ずっとミュートにしてただ聞いているだけになりがちです。それに慣れてしまって、自分からは発言しない、いわゆる『聞き専』な人が増えてしまったんです。そうなってくると、いざ出社して対面で会議やMTGをするようになっても質問ができないだけでなく、そもそも会話自体が活発にならないんです。よく話してくる人に任せて、自分は聞いているだけでいいという思考が染み付いてしまっているんですね」(ひきたさん・以下同)

日本人は学校で正しい質問の方法に触れてこなかった

それ以外にも、諸外国と違い、日本では学校で「質問」の仕方を教わらないことも一因と言われているそうです。

「外国ならば、『先生はこう言いましたけど、私はこう考えました、どうですか?』と話を深めるための質問をするのですが、日本ではあくまでもわからない部分を聞いてくださいというスタンスです。つまり、今まで聞いてきた中で、どこがわからなかったかを暴露する場になってしまう。その質問の角度によっては、ものを聞いているのか理解しているのかなどを判断される材料になるのです。

この他にも就職活動の悪影響もあると私は思うのですが、質問をした内容によってその人となりが見定められるというようなことがありますね。うかつに質問をすると逆に評価が下がってしまう。そうすると余計萎縮してしまいますよね。そういった経験の積み重ねによって、質問すること自体がどんどん苦手になってしまうのです

質問ができると、口下手でもビジネスがうまくいく?

特に若手のビジネスパーソンで苦手意識を持っている人が多い「質問」。ビジネスにおいて質問はどのくらい重要なのでしょうか。

「若手のうちは会議やMTG、交渉の場でただ聞いているだけという姿勢は許されますが、だんだん仕事を一人で任されるようになると、受け身なままではいられなくなるわけです。そうなったときに、たとえ自分が口下手だとしても質問がうまければ、相手が勝手に話してくれるわけじゃないですか。相手に気持ちよく話をしてもらい、それで『この人は自分の話をよく聞いてくれる』と思わせて、好印象を与える方がうまくいくんです。

ビジネスでは『企画力』や『プレゼン力』などを高めた方が役に立つという印象があるかもしれませんが、実はそれらはあくまでも個人の能力。このように的確な質問をして、相手と対話をしながら進められる『質問力』の方がはるかに大切な最強のビジネススキルだと思います」

そもそも質問力とは?

そもそも質問力とは?

「質問力」とはどのような力のことを指すのでしょうか。ひきたさんに解説してもらいました。

「質問力は、疑問点を問いかけるための力であると単純に思われがちですが、実はそうではありません。自分の仕事を有利に進めるために、相手が本音を言いたくなるような環境を質問することを通じてつくるスキルです。相手の意見を取り入れて共感と感情移入を起こさせながら、同じ方向を見つめる『仲間』にしていくことができるんですよ。

相手の本音を引き出すために僕が特に大切にしているのは、相手とリラックスした関係をつくっていくことです。質問というと、ついつい詰問調になってしまう人や、相手を論破してやろうというような戦闘モードになってしまう人もいますよね。そうではなくて、基本的に会話というのは、猿の毛づくろいのようにお互いがいい気持ちになるということを目指すべきなんです。質問をきっかけにして相手の悩みを引き出し、それをどうやって解決していこうかというところまで持っていくのが理想ですね

質問力を身につけるメリットは?

質問力を身につけるメリットは?

質問力がどんなスキルかということは理解できたかと思いますが、質問力を身につけるとどのようなメリットがあるのでしょうか。それぞれ解説していきます。

その場ですぐ聞く度胸が身につく

「大人数の会議の場で質問するのは勇気がいることです。最初は『こんなことを質問して恥ずかしいとか、変だと思われないかな』といった不安もあるかと思います。そのため、場数を踏むことが大切なのです。普段から身の回りの人にちょっとしたことを質問するようにしていると次第に人に話しかけることへの苦手意識が薄れてきて、立場が上の人や大勢の前でも臆せず質問できるようになっていきますよ

相手の意図や状況を正確に理解できる

「もし、相手がなかなか本音を言いづらい状況の場合、まずは相手の現状を肯定して質問しましょう。例えば、後輩に作業の進捗を確認する時は『よくやっているね』という声がけからはじめます。するとホッとした後輩は、『まだこの点が足りていません』など自ら課題点を話してくれるようになります。このように、質問の仕方しだいでは、相手の状況や本音を正確に理解することもできるんです」

相手との心の距離を縮め、信頼関係をつくれる

「ビジネスではじめての相手と対話する場合は、どうしてもお互い緊張や警戒があるもの。『私のことをもっと知って!』というように一方的に話してしまうと相手は心を許してくれません。まずは相手のことを観察して小さな質問を繰り返すと、心の距離が縮まり、次第に会話が弾むようになっていきます。特に意識したいのは相手に好奇心を持つこと。『あなたのことをもっと知りたい!』という思いが伝わるような質問をしていきましょう」

質問力を高める方法とは?具体例も紹介

質問力を高める方法とは?具体例も紹介

質問力を高めるためにはどのような方法があるのでしょうか。実生活に取り入れやすい具体的な例を挙げながら、解説していきます。

すぐに質問を思いつく「質問脳」をつくる

「質問力を高めるには、日常的に身近なことからコツコツと質問を繰り返して、質問をすぐに思いつく『質問脳』をつくっていくことが何より大切です。例えば、オフィスのエレベーターで乗り合わせた同僚に『そのネクタイいいですね、どこで買ったんですか?』と質問するとか、ちょっとしたことに気づいて質問する癖をつけていきましょう。そうすると相手を観察して、さっと気になることを質問できるようになっていきますよ」

頭に浮かんだ質問をメモに書き出す

質問をする際、あらかじめ質問をメモに書き出しておくという方法もおすすめです。新聞記者から聞いたのですが、彼らは記者会見のとき、『何を聞くか』という質問事項を常に考えていて、思いついた質問をメモに3つ書き出しているそうです。3つというのがポイントで、質問って他の人と被ってしまうことがありますよね。でも3つ書いておけば1つダメでも、あと2つあるので余裕を持って質問ができます。普段から会議やMTGの場でクエスチョンメモをつくってみるとスムーズに質問できるようになりますよ」

日常的に5W1Hで質問する

質問をする際は、5W1Hの『いつ』・『どこで』・『誰が』・『何を』・『なぜ』・『どうすれば」ということを意識するといいでしょう。明石家さんまさんってよくしゃべるイメージがありますが、実は全然自分のことを話していないんです。相手の話を聞いて、『えぇー』とか『いつ?』『誰と』などの質問で会話していて、自分から何かを主張することはあまりないんです。リアクションをして相手にしゃべってもらい、それに対して大きくリアクションして、また次の質問を投げかける。それも、5W1Hのような質問を投げかけているのです。漠然とした質問ではなく、ピンポイントな質問をすると相手は面白いと感じ、会話のラリーが続きやすくなりますよ」

何について質問するのか「軸」をつくる

この質問が終わったから次の質問というように、流れ作業的に質問するのはNGです。何について質問するのか軸を決め、それについて深く聞いていくことが大切です。たとえば、『パスタが好き』という話題では、『パスタの中ではどんな味が好きですか』とか、『どこかパスタが美味しいお店を知ってますか?』というように、パスタを起点により突っ込んだ質問をして、話題を深掘りしていきましょう。

パスタの話をしているのに、急に映画の話や旅行の話など別の質問をしてしまうと会話も盛り上がりませんし、相手からも会話のつなぎのために質問しているんだなと思われてしまいます。私はこれを深掘りドリルといっているのですが、もっと教えてもっと教えて!というように、より深く縦に質問をしていくことがポイントです

やみくもに質問しない

「質問力が大切だと言われると、つい勘違いしてやみくもに質問してしまいがちです。自分の質問力を試したい、高めたいという自分本位の気持ちで周りの人にひたすら質問してもただ迷惑な人なだけですよね。

大事なのはしっかり質問する相手に好奇心を持つこと。1日でたくさんの質問をするよりも、相手と話していて気になったことや思いついたことをさりげなく質問することを毎日続けた方が質問力が磨かれますよ」

AI時代にこそ必要とされる質問力

AI時代にこそ必要とされる質問力

近年はChatGPTなど、AIのツールが台頭してきています。そんなAI時代こそ、今まで以上に質問力が必要になっていくそうです。

「そもそも、AIに必要な答えをアウトプットさせるためには質問するというプロセスが必須です。ただし、単純に『〜について教えて』というような質問をすると、当たり障りのない回答しか返ってきません。例えば、SDGsについてChatGPTに質問する場合、一口にSDGsといっても環境問題や人権問題などいろいろな要素があるじゃないですか。AIから望む回答を得るためには、自分が一体何についてどういったことを知りたいのか、質問する側の知識がものすごく大事になってくるんです。質問力を身につけている人はどういった質問をすれば望む回答を引き出せるかといった思考が自然にできるので、AIを使いこなすことも容易にできるはずです。質問力こそAIに代替できない人間ならではのスキルだといっても過言ではありません。そのため、ここまで解説してきたような質問力を磨くトレーニングを日々意識して生活するのが、今後より一層大切になるかと思います」

まとめ

質問に対して苦手意識を持っているという人も、ビジネスシーンにおいて質問力を身につけることの大切さが理解できたかと思います。質問力を高めるのには、地味な積み重ねが大事。まずは会社の同僚をよく観察して、気になったことを質問してみましょう。

【プロフィール】
ひきたよしあき
1984年、早稲田大学法学部卒。博報堂に入社後、クリエイティブディレクターとして数々のCMを手がける。政治、行政、大手企業などのスピーチライターとしても活動し、世代や職種を超え、自分と相手を笑顔にするコミュニケーションの重要性を伝えている。

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