- 「やぶさかではない」の正しい意味
- 多くの人が「やぶさかではない」を間違って使用している
- ビジネスシーンにおける「やぶさかではない」の正しい使い方・例文
- 「やぶさかではない」と伝える際の注意点
- 「やぶさかではない」の言い換え表現
- 仕方なくする場合はどのように表現する?
- 本来「やぶさかではない」は喜んですること
実は、「やぶさかではない」を「仕方なく〜する」の意味で使うことは間違いです。間違えて理解している人が一定数いるため、状況によって別の言い換え表現を使わなければなりません。
本記事では、「やぶさかではない」の正しい意味と使い方や、伝える際の注意点について詳しく解説します。
「やぶさかではない」の正しい意味
そもそも、「やぶさか(吝か)」とは「物惜しみするさま」を意味します。そのため、「やぶさかではない」の正しい意味は「喜んで何かをする」です。
多くの人が「やぶさかではない」を間違って使用している
多くの人が、「やぶさかではない」を間違って使用しています。「やぶさかではない」の誤用例が、「仕方なく(何かを)する」として使うことです。
2013年に文化庁が実施した「国語に関する世論調査」によると、「やぶさかで(は)ない」を誤用の「仕方なく~する」の意味で回答した割合は、43.7%でした。これは、正しい意味である「喜んで~する」と答えた割合(33.8%)を上回った結果となりました。
出典:文化庁「平成 25 年度「国語に関する世論調査」の結果の概要p.19」
ビジネスシーンにおける「やぶさかではない」の正しい使い方・例文
ビジネスシーンにおける「やぶさかではない」の正しい使い方や例文を紹介します。
喜んで引き受ける場合
上司からの依頼を喜んで引き受ける際、取引先からの希望に快く応じる際に、「やぶさかではない」を使用できます。取引先からの要望に応える際の例文は、以下のとおりです。
(取引先から、主催するイベントに参加してほしいと伝えられて)
いつもお世話になっている〇〇様のご依頼とあれば、参加にやぶさかではございません。
条件付きで快諾する場合
条件付きでOKという場合に、「やぶさかではない」を使用することもあります。先に条件を提示した上で、「やぶさかではない」の表現を使いましょう。
人事面談の際、上司から引越しを伴う転勤が可能か尋ねられた際の例文が、以下のとおりです。
新たに立ち上げるプロジェクトに参加するためであれば、〇〇への転勤もやぶさかではございません。
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「やぶさかではない」と伝える際の注意点
「やぶさかではない」と相手に伝える際に、いくつか気をつけなければならないことがあります。それぞれ確認していきましょう。
相手が間違った意味で理解している可能性がある
相手が、「やぶさかではない」を間違った意味で理解している可能性があります。すでに説明したように、「やぶさかではない」を「仕方なくする」という意味でとらえている人がとても多いためです。
いくら自分が正しい意味で使っていても、相手が理解していなければ意味がありません。意味の取り違えから、上司や取引先に「自分の依頼を仕方なくするつもりなのか・・・」と思わせてしまう可能性もあります。
意味を正しく理解してもらえるか考慮した上で、「やぶさかではない」を使うようにしましょう。
「まんざらでもない」と混同しない
「やぶさかではない」と「まんざらでもない」を同じ意味と考えて使わないようにしましょう。
「まんざら(満更)」とは、「まったく」「ひたすら」などの意味の言葉です。「ない」などの打ち消しの言葉を伴う場合、否定的な意味合いを和らげたり、肯定したりする気持ちを示すこともあります。
「まんざらでもない」は、「それほど悪いと思わない、むしろ嬉しい」などの意味になるため、「やぶさかではない」と比べると、積極的な気持ちが伝わりにくいです。
「やぶさかではあります」と言わない
曖昧に理解していると、「やぶさかではない」と伝える場面で誤って「やぶさかではある」と表現してしまう可能性があります。「やぶさかではあります」と伝えると、「物惜しみする気持ちがある」という意味になってしまいます。
例えば、「〇〇様のご依頼であれば、協力にやぶさかではあります」と表現した場合、「嫌々ながら参加する」というニュアンスになるため注意しましょう。
「やぶさかではない」の言い換え表現
「やぶさかではない」を言い換えた表現も、いくつか存在します。「やぶさかではない」は誤解を招きやすい表現のため、状況次第で言い換え表現を使うことを検討した方がよいでしょう。
各言い換え表現の意味や、例文を解説します。
喜んで〜します
「喜んで〜します」は、積極的に協力したい気持ちを示す言葉です。「喜んで〜します」を使えば、シンプルに自分の気持ちを相手に伝えられます。
「喜んで〜します」の例文
ご依頼いただいたプレゼン資料作成について、喜んでお引き受けいたします。
願ってもないお話です
「願ってもない」とは、望んでいても簡単に叶いそうにないことが実現することです。「願ってもないお話です」は、自分が以前から望んでいた仕事を引き受けることになった際、自分が想像していたよりも好条件の依頼を受けた際などに、相手に喜びの気持ちを伝えるために使います。
「願ってもないお話です」の例文
(以前に自社製品をプレゼンした取引先から、今でも発注できるか問い合わせがあり)
願ってもないお話です。明日中に発送可能なため、今週中にお手元に届くかと存じます。
異存ございません
「異存」とは、反対の意見や不服な気持ちを示した言葉です。相手の意見に対して、反対や不服がないことを示す際に、「異存ございません」を使います。
「異存ございません」の例文
課長:Bさんは新人でまだ業務に慣れていないから、Aさんも〇〇プロジェクトに参加してサポートしてほしいのだけれど、どうだろうか?
自分(A):異存ございません。承知いたしました。
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仕方なくする場合はどのように表現する?
今まで「やぶさかではない」を間違って使っていた方は、「仕方なくする」場合に「やぶさかではない」を使わずどのように表現すればよいか気になるでしょう。
「致し方なく」を使えば、「仕方ない」「やむを得ない」などのニュアンスを表現できます。今まで長い付き合いがあった取引先と取引解消する際の例文が以下のとおりです。
(社内会議にて)
A社とは長年の付き合いがありますが、ここまで不誠実な対応をされてしまうと取引解消も致し方ないことと存じます。
なお、安易に「致し方ない」を使うと、相手に不快感を与えることがある点に注意が必要です。例えば、相手からの依頼に「致し方ないですね」というと嫌々な気持ちが伝わります。また、時間や手間をまったくかけずに、「致し方ないことです」と言って特定の業務や依頼を断念すると、無責任な印象を与えてしまう可能性があるため使用する際は気を付けましょう。
本来「やぶさかではない」は喜んですること
本来、「やぶさかではない」は「喜んで何かをすること」を意味する言葉です。しかし、多くの人が「仕方なくする」と勘違いして使っています。
「やぶさかではない」の正しい意味を理解した上で、使うようにしましょう。また、相手も勘違いしていることがあるため、誤解されないように別の表現を使うことも大切です。
状況や相手によって、「やぶさかではない」「喜んで〜する」「願ってもないお話です」などを使い分けましょう。
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