- 自己嫌悪とは?
- 自己嫌悪に陥りやすい場面
- 自己嫌悪に陥りやすい人の特徴
- 「自己嫌悪」がもたらすポジティブな側面
- ポジティブな面もあるが、早めの対処が大事!知っておきたい自己嫌悪を克服する方法
- 早めにモードを切り替えて、自己嫌悪から抜け出そう
自己嫌悪に陥ると、なかなか抜け出せないという人も少なくありません。できれば早く克服したいものですが、なぜ人は自己嫌悪に陥ってしまうのでしょうか。
今回は、心理学博士の関屋裕希さんに伺ったお話をもとに、心理学の観点から見た自己嫌悪の意味や陥る理由、陥りやすい人の特徴、自己嫌悪を克服する方法について分かりやすく解説します。
自己嫌悪とは?
自己嫌悪とは、一般的に「自分が嫌になること」「自分をうとましく思う気持ち」を指す言葉です。理想の自分と現実の自分にギャップを感じたり、何かに失敗したりして、自分に嫌気が差している状態といえるでしょう。
心理学的には、「否定的な感情や事象の原因が自分自身にあり、自分のことが嫌だと感じること」と定義されています。
自己嫌悪に対してネガティブな印象を抱く人は多いと思いますが、実は、自身の成長や人間関係の修復に役立つなど、心理学的に見ると良い面もあります。とはいえ、自己嫌悪が長く続くと、メンタルや生活に支障をきたすこともあるため、早めに克服したいものですよね。
自己嫌悪は、自分の考え方の癖に向き合うことで克服できる場合も少なくありません。また、睡眠不足や疲れが原因になっていることもあるので、休息をしっかり取ることで改善される場合もあります。まずは、自己嫌悪に陥りやすい場面や原因などを把握した上で、焦らずゆっくり克服していきましょう。
自己嫌悪に陥りやすい場面
まずは、自己嫌悪に陥りやすいシチュエーションについて解説します。自分によく当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
仕事がうまくいかないとき
ビジネスシーンでは、思うような結果が出せないことも少なくありません。ミスをすることもあれば、見通しが甘く、目標を達成できないこともあるでしょう。
そうしたときに、「自分のせいだ」「自分はなんてだめなんだ」と、自分を責めてしまうと、自己嫌悪に陥りやすくなります。
厳しいフィードバックを受けたとき
1on1や面談などで上司から厳しいフィードバックを受けたときにも、「努力が足りていなかった」「この仕事に向いていないのかも」と自信を失い、自己嫌悪に陥りやすくなります。会議や打ち合わせなどで厳しい指摘を受けたとき、友人や家族から厳しい意見をもらったときなども、自己嫌悪に陥りやすくなるでしょう。
周囲と自分を比較したとき
周囲の人と自分を比較するのも、自己嫌悪に陥るきっかけになります。
例えば、同僚や同期、友人の良い知らせを知って、なぜか気持ちが沈んでしまった……という経験はないでしょうか? 仕事やプライベートが充実している人たちと比べて、自分のほうが劣っていると感じると、自分が嫌になることも少なくありません。
他人の期待に応えられなかったとき
上司や同僚など、周囲の人の期待に応えられなかったときも、自己嫌悪に陥りがちです。「相手を失望させてしまったかも」と思うと、罪悪感や後悔を感じ、自分に嫌気が差すこともあるでしょう。
また、客観的に見れば仕事のクオリティーも高く、上司から評価されていたとしても、「努力が足りていなかった」と感じると、自分が嫌になってしまうこともあります。
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自己嫌悪に陥りやすい人の特徴
自己嫌悪に陥りやすい人と前向きに考えられる人にはどんな違いがあるのでしょうか。ここからは、自己嫌悪に陥りやすい人の特徴を解説します。
完璧主義の傾向がある
まず挙げられるのが、完璧主義の傾向です。完璧主義の人は、常に高い基準を設定し、達成困難な目標を自分に課しています。そのため、客観的には十分成果を発揮しているように見えても、自身の目標を達成できないと、自分を厳しく批判してしまう傾向があります。
些細なミスでも自己嫌悪に陥ってしまうため、自分への要求がさらに高くなったり、自己嫌悪が深刻になったりする場合もあるでしょう。
物事の捉え方に癖がある
物事の捉え方に癖があり、現実を過度にネガティブに捉えてしまうのも、自己嫌悪になりやすい人の特徴です。心理学では、この癖を「認知のゆがみ」といいます。
例えば、「0か100か」「白か黒か」といったように、物事を極端に捉える「全か無か思考」が癖になっていると、自分に1つでも気にならない点があれば、自分自体が嫌になってしまいます。
そのほか、一度の失敗をほかの仕事すべての失敗と捉える「過度の一般化」や、問題はすべて自分の責任と捉える「自己関連づけ」といった思考パターンも、自己嫌悪の要因になります。
完璧主義の人は、こうした思考パターンを持っていることも多いでしょう。
他人からの評価に依存している
他人から受ける評価は、自分では直接コントロールできません。そのため、他人からの評価を自己評価の基準にしていると、自分の価値をなかなか感じられず、自己嫌悪に陥りやすくなります。
また、成功した場合でも失敗した場合でも、原因を他人や環境に求める傾向があるため、自己肯定感を感じづらかったり、成長のチャンスを逃したりする場合も少なくありません。
反芻思考を行う
心理学では、ネガティブな出来事について何度も思い出し、考え続けることを「反芻(はんすう)思考」と呼びます。
例えば、仕事が終わったあとや友人と会ったあとに、「なんであんなことを言ってしまったんだろう」「もっと違う言い方をすればよかった……」などと、ぐるぐる考え続けてしまうことはありませんか?
こうした反芻思考を行うのも、自己嫌悪に陥りやすい人の特徴の一つです。反芻思考が癖になると、自分を否定しがちになり、自己嫌悪がさらに強くなるため、早めに対処するようにしましょう。
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「自己嫌悪」がもたらすポジティブな側面
自己嫌悪は不快な状態なので、できれば避けたいものですよね。「そもそも、不要なものなのでは?」「どうして自己嫌悪に陥る必要があるんだろう?」と思う人もいるかもしれません。
しかし、心理学的に見ると、自己嫌悪には成長や社会適応を促すといった良い面もあるようです。ここからは、「自己嫌悪」がもたらすポジティブな側面について、心理学の観点から解説します。
自己成長に役立つ
自分を成長させるには、自分の行動を見つめ直し、改善につなげることが大切ですが、自己嫌悪はそのきっかけになることが分かっています。
成長したいという思いが強くなると、自分に厳しくなったり、他人と自分を比べたりして、自己嫌悪に陥ってしまう人も多いでしょう。
そんなときは、自分を責めるのではなく、「自分の行動は適切だったかな」「状況をちゃんと把握できていたかな」と、自己内省につなげられると、自身の成長につなげられます。
社会に適応した行動が取れる
思いがけず、ほかの人に対して迷惑をかけてしまったり、社会のルールに反した行動をしてしまったりしたときに、恥ずかしさや罪悪感から自己嫌悪に陥ると、自分を客観視するきっかけになることもあります。
結果的に、道徳的・社会的規範に則した行動を取れるようになるのも、自己嫌悪のポジティブな側面といえるでしょう。
現実的な自己評価ができる
自己嫌悪に陥ると、理想の自分と現実の自分のギャップに気づかされることも少なくありません。
自分を過大評価していると、成長の機会を失ったり、人間関係が悪化したりすることもあるため、認識と現実の差を自覚し、現実的な自己評価に近づけていく必要があります。その際に自己嫌悪が役立つことも多いでしょう。
自己嫌悪を通じて、自分を客観的に評価できるようになると、現実的な目標や計画を立てられるようになります。
人間関係の修復に役立つ
自己嫌悪は、人間関係の修復にも役立ちます。ここでは、上司との関係がギクシャクしている場合を例に考えてみましょう。
人間関係がうまくいかなくなる原因はさまざまですが、場合によっては、自分の言動が要因の一つになっていることもあります。その場合、「上司が全面的に悪い」と考えていると、なかなか関係は改善しません。
一方、自己嫌悪に陥ることで、「自分にも良くないところがあったのかも」と反省できると、上司と話し合ったり、謝罪したりすることで、関係修復につなげられるでしょう。
ポジティブな面もあるが、早めの対処が大事!知っておきたい自己嫌悪を克服する方法
ポジティブな面もある自己嫌悪ですが、長く続くと自己否定感が強まり、なかなか抜け出せなくなることもあるため、早めに対処するようにしましょう。
自己嫌悪を克服するのに役立つおすすめの方法を5つ紹介しますので、ぜひ実践してみてください。
失敗を成長のチャンスと捉える
仕事などで失敗すると、自己嫌悪に陥ってしまうという人も多いのではないでしょうか。そんなときは、自分を責めるのではなく、失敗から何を学べるか考えて、次の行動に活かすようにしましょう。
このサイクルを習慣化できるようになると、必要以上に自己嫌悪することもなくなり、成長にもつながります。まずは、失敗は成長のために必要な経験だと意識することが大切です。
自分らしい目標を立てる
ほかの人と自分を比べると、劣等感を抱くことが増えるので、自己嫌悪に陥りやすくなります。
足りていない部分に目を向けるのではなく、「自分は何がしたいのか」「自分の強みを活かせることは何か」といった点にスポットを当ててみましょう。
自分らしい目標を立てて、行動を積み重ねていくと、自己肯定感が高まっていくはずです。まずは、小さな目標からで問題ありません。他人と比べず、自分のペースで進めていきましょう。
休息をとる
疲れていたり、睡眠が不足していたりすると、人はネガティブな思考パターンに陥りやすくなります。そのため、自己嫌悪に陥ったら、まずはしっかり休息を取りましょう。
休息を取る際は、身体だけでなく、心も休まっているか、意識することが大切です。休日は仕事から心理的距離をとり、リラックスして過ごす時間を持つと良いでしょう。就寝時には呼吸法などを活用して緊張を解くと、睡眠の質が高まり、心身が休まります。
3 Good Thingsを実践する
人は、よかったことやできたことよりも、嫌なことやできていないことのほうに注意が向きやすいといわれています。そのため、自己嫌悪を克服するには、ポジティブな出来事に意識的に目を向ける必要があります。
そこでおすすめなのが、その日よかったことを3つ書き出す「3 Good Things」というアプローチです。しばらく続けると、自然とポジティブなものに目が向くようになり、ポジティブな感情が生まれやすくなるので、自己肯定感も高まります。
書き出すことは、「ランチがおいしかった」「洗濯物を干せてよかった」など、ちょっとしたことでも十分です。まずは気軽にはじめてみましょう。
マインドフルネスを取り入れる
現代では、SNSや動画配信サービス、ECサイトなど、人の注意を惹きつけるものが多く、自分を見失ってしまうことも少なくありません。そんなときにぜひ試してほしいのが、今この瞬間に注意を向ける「マインドフルネス」です。
今、目の前で起きている出来事や自分が考えていること、感じていることに意識を向けるだけで、思考や感情が整理されます。意識を向けるのはどんなものでも良いですが、自分の呼吸なら、いつでも気軽にできるので特におすすめです。そのほか、音や香りなどに意識を向けるのもよいでしょう。
大切なのは、「自分のせい」「人よりできていない」「自分なんか」と評価や判断をするのをやめ、今ここにあるものをただ観察すること。マインドフルネスを行うと、自己嫌悪のモードに入りづらくなるので、自分が嫌になりそうになったら試してみましょう。
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早めにモードを切り替えて、自己嫌悪から抜け出そう
自己嫌悪は、陥るとつらい気持ちになりますが、実は、成長や人間関係の修復を促してくれる大切な機能でもあります。とはいえ、自己嫌悪を引きずったままでいると、自己肯定感が下がったり、仕事や交友関係に影響が出たりすることもあるため、早めに対処することが大切です。
どうしても自己嫌悪から抜け出せないときは、まずは心身に休息を与えてあげましょう。今回紹介した3 Good Thingsやマインドフルネスなどの克服方法も、ぜひ試してみてください。
監修:心理学博士、臨床心理士、公認心理師 関屋裕希
東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座所属。
早稲田大学文学部心理学専攻卒業、筑波大学大学院人間総合科学研究科発達臨床心理学分野博士課程修了。専門は、産業精神保健(職場のメンタルヘルス)であり、業種や企業規模を問わず、ストレスチェック制度や復職支援制度などのメンタルヘルス対策・制度の設計、職場環境改善・組織活性化ワークショップ、経営層・管理職・従業員それぞれに向けたメンタルヘルスに関する講演や執筆活動を行う。著書に『感情の問題地図』、最新刊の『モチベーションの問題地図』(技術評論社)が発売中。
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