- 「WILL(意志)」が分かれば、自分の力で人生を切り開ける
- どんな人でも必ず、自分の中に「WILL(意志)」はある
- 「WILL(意志)」を掘り起こすための3つのステップ
- 掘り起こした「WILL(意志)」を活かすためのポイント
- ■「WILL」は人生の羅針盤
「WILL(意志)」が分かれば、自分の力で人生を切り開ける
ワークショップなどを通して、これまで5,000人以上のビジネスパーソンの「WILL(意志)」を見つけるお手伝いをしてきた大川さん。どのようなきっかけでキャリアや生き方の軸として「WILL(意志)」が重要だと考えたのか、伺いました。
言われたことばかりをこなしていると、他責思考になる
「ぼくは20代の頃、それなりに給料をもらえて休みが取りやすいという理由で会社を選ぶような意識低めの社員でした。それでも会社に入ってみると、いい人ばかりだし、事業は社会に貢献しているし、すっかり満足もしていました。ただ、同僚や上司とお酒を飲みに行くと、ついつい会社や誰かの愚痴で盛りあがっちゃうんですよね。それはそれで楽しかったのですが、ある時、このままでいいのか!?と怖くなった瞬間がありました。
これから先もずっと、誰かのせい、政治のせい、会社のせい、上司のせいにして、愚痴を言いながら働くのかと。自分の人生なのに、他責にしていることに気が付きました。その時、“自分はいったい、何をやりたかったんだっけ?”と改めて考えたのですが、答えが出なかった。それは、誰かに言われたことばかりをやっていたからなんですよね。
そこでようやく「やばい」と思って、自分のWILL(意志)を探すための行動をはじめたわけです。」(大川さん、以下同)
MUSTとCANばかり肥大して、WILLが小さくなっていませんか?
「就活の時は、“CAN=できること”がないわけですから、自分の“WILL(意志)”で、やりたいと思っていることを語って入社します。なのに、いざ会社に入ると覚えなくてはいけない仕事、すなわち“MUST=やるべきこと”ばかりが目の前に降ってきます。それをこなして、CANが増えると、さらにMUSTを任されて、MUSTとCANの間を往復するだけの日々が続いてしまう。
その結果、WILLが相対的に小さくなり、他者が決めたことに乗っかって働くだけのビジネスパーソンになるのです。
MUSTとCANが多いのは素晴らしいことです。一見、仕事が充実しているようにも見えますし、会社からも評価されるでしょう。でも、もしかしたらこれは会社のWILLを自分のWILLだと思い込んでいる状態なのかもしれません。“これは本当に自分がやりたいことなのか?”と自身に問いかけた時、イエスと言えますか? “もし明日、会社がなくなったとしたら?”と仮定した時、また今の仕事をゼロからつくりたいと思いますか?
現状の会社や組織と切り離した、まっさらな自分として、何がしたいかのかを考える。それが本当の“自分のWILL”を見つける大事なポイントなのです。
自分のWILLが見つかれば、他責にすることなく、納得感を持って自分の責任で自分のキャリアや人生を生きられる。自分の人生なんだから、自分で舵をにぎりましょう。だから、ぼくはできるだけ多くの人にWILLを手にしてほしいと考えています」
どんな人でも必ず、自分の中に「WILL(意志)」はある
WILLについて、大川さんは「意志」や「やりたいこと」と意味づけていますが、この概念について、もう少し深掘りして説明をしていただきました。
WILLは未来へ進んでいくための羅針盤
「WILLは、夢やパーパスとはちょっとニュアンスが異なります。夢やパーパスは、目指すゴールや行き先、社会的価値のこと。一方でWILLは、手元に持つ羅針盤のようなもの。自分自身の意思決定を行うための起点や基準、足場とも言い換えられます。
自分の想いの起点がなければ大きな夢なんて描けないし、足場がなければ前に進むことすらままならない。だから、まずはしっかり自分のWILLを持つところから始めましょうと私は提案しています。
WILLは、高尚なものである必要はありません。純粋な”好き”という気持ちや、“やりたい”と思う根源的な衝動などが、WILLなのです。本来私たちは、子どものころ、自分の意志で、好きなように行動しまくっていましたよね。主体性の塊のような生き物だったはずです。
それが、“あれはしちゃダメ”“こうやってやりなさい”と、「教育」されていくなかで、主体性を失い、受動的な「大人」になってしまった人も少なくありません。学校や会社では特に、はみ出す人は評価されませんから、よけいに主体性が押さえつけられます。「WILL(意志)を掘り起こす」ことは、この主体性を取り戻す、大事な起点となるのです。
WILLは誰でも持つことができるものなのでしょうか。この疑問に、大川さんは次のように答えます。
「WILLは外から見つけてくるものではありません。自分の中にあるのに、MUSTやCANに隠れて見えなくなってしまっているだけ。それを掘り起こせるかどうかの話です。WILLがない人はいません。だって、誰だってもともとは意志ある生き物だったのですから」
WILLに向き合うことは、人生を豊かにする最も大切なスキル
WILLが明確だと、どんなメリットがあるのでしょうか。大川さんに教えていただきました。
「まず1つは、自身の行動のポートフォリオが明確になること。やりたいことが分かれば、それを会社の中でやるのか、副業でやるのか、起業してやるのか、プライベートでやるのかなど、アクションを起こす場所やスタンスを決めることができます。今後の計画を立てやすくなって、人生設計の選択肢や解像度が上がりますし、何かに依存しすぎることも減るでしょう。
もう1つは、会社でのパフォーマンスが上がること。WILLは個人の文脈で語られがちですが、組織で働く上でも個人のWILLが明確なことは大きなメリットです。なぜなら、会社が掲げるWILLと個人のWILLが重なる部分がよく見えるようになり、そこで力を発揮しようと決めることができるから。重ならない部分は、他の場所で実現しようと割り切ることができますし、組織にとっても「多様性」といって重宝されることもあります。
自分のWILLを理解していれば、転職などの場面で自分自身について語るのも上手になります。良い人間関係を構築したり、偶然の出会いを生み出す上でも、自分の価値観や想いを魅力的に語れるのは重要なポイントです。WILLに向き合うことは、“人生を豊かにする最も大切なスキル”と言っても過言ではありません」
「WILL(意志)」を掘り起こすための3つのステップ
では実際、WILLを見つけるには何をすればいいのでしょうか。大川さんによると、「発掘して、磨いて、星座を描く。これがWILLを発掘する基本的な3つのステップ」なんだそうです。具体的にどのようにWILLを掘り起こしていくのか、各ステップの詳細について解説します。
ステップ1:過去・現在・未来を見渡して、自分の要素を分解する
「“何をしたいの?”と直球で自分に問いかけても、答えはなかなか出てきません。だから、どんな要素で自分が構成されているのか、分解して知ることから始めましょう。これが、“掘る”ステップです。
人生曲線を描くように、幼少期から振り返り、現在までに夢中になったこと、好奇心をくすぐられたこと、人から褒められたこと、憧れていた人、ターニングポイントになったこと、心に残っている言葉などを、とにかく思いつくままに書き出します。”過去”から、自分の価値観や行動に影響を与えた「原体験」や「伏線」を探してみましょう。書き出すのは、単語でも短文でも構いません。
特に幼稚園児や小学生時代など、何にも縛られずにWILLを持っていた頃を振り返るのは大きな意味を持ちます。思い出せないのなら、親やきょうだいに聞いてみてもいいでしょう。
次に、”今”の切り口として、「偏愛」から自身を発掘してみましょう。「偏った愛(趣味、こだわり)」とその「マニアックな理由」に、自身を表す個性となるような表現が見つかるかもしれません。「なんとなく好き」のままにせず、誰かに伝えるように「言語化」してみてください。
さらに、”未来”の切り口として、「やってみたい」と思っていることを小さなことから大きなことまで、ひたすら書き切りましょう。週末にやろうと思っていることから、いつか世界を征服したい!という大胆なことまで。
ここまでできたら、一度全体を俯瞰して眺めてみてください。いろんなキーワードが出てきましたよね。それらを見て、気づいたことや共通点、変化点などを書き出してみてください。
一見バラバラなようでも、「同じ私という人間が書いていることなんだから、絶対共通点があるはず!」という前提を持って発想してみてください。ここではアイデアレベルでも、どんどん発散させて書き出すことが重要です。
<ワークシート>
<記入例>
ステップ2:バラバラの要素から重要なものを選んで、磨いていく
「次に、さまざまに書き出した要素の中から、自分にとって重要だと思うものをいくつかピックアップしましょう。「価値観」を表すような言葉だったり、未来で実現したい「こと」や「景色」だったり。特に、「なにをしたいか?」のヒントとなるような「動詞」を探してみましょう。
考え方のヒントとして、例えば野球部での経験が自分にとって重要なのだとしたら、その中で何をするのが好きだったのか、何をしている時にやりがいを感じたのかなどを考えて、そのやりがいを「動詞」として抽出していきます。チームメイトを“励ます”ことなのか、戦術を“練る”ことなのか、キャプテンとしてチームを“率いる”ことなのか。“支える”にしても、後ろから押す、寄り添って伴走する、上から引き上げるなど、いろんな支え方がありますよね。
他にも“化学”が好きという場合は、”化学反応”から想起すると”反応させる”、”ぶつける”、”つなぐ”という動詞が思い付きます。さらに、化学反応の中でも「触媒反応」が好きだとしたら、自分が”媒介となる”ことを望んでいるのかもしれません。
このように、発掘された要素を、具体化したり抽象化したりして、自分らしいキーワードを磨いていきましょう。これらは、WILLを形づくる星座の一等星や二等星の役割を果たします。掘り出した要素を磨いて、目印となる星として輝かせる。そんなイメージです」
ステップ3:バリュー、ミッション、ビジョンに落とし込んで構造化する
「次は一等星や二等星を基準にして、それぞれの要素をつなげ、星座を作るステップです。ステップ2で明らかになった自分を表す動詞や、ステップ1で書き出したキーワードを短文としてつなぎ、意志を構造化していきましょう。具体的には、下図のようなフレームで整理していきます。
<ワークシート>
WILL(意志)は、バリュー(ありたい=判断軸)、ミッション(やりたい=行動)、ビジョン(なりたい=結果)の三段構造で組み立てることができます。
1:こんな価値観を持った私は(バリュー)
2:こんなことをやりたくて(ミッション)
3:その結果、こんな未来を見たい(ビジョン)
というイメージです。
【例】
1:好奇心と直感を信じてハミダスことを信条としている私は、(バリュー)
2:自らを触媒として、人と人との化学反応を起こすことをやりたいと思っています。(ミッション)
3:その結果、多くのオドロキが生まれ、トキメク進化が起こる未来をみたいのです。(ビジョン)
この3つに当てはまる短文を構造化することができれば、あとは人に魅力的に伝わるような「物語」をのせていきましょう。「物語」は星座でいう神話のようなもの。誰かにも教えたくなるようなストーリーがつくれるとよいですね。
具体的には、バリュー・ミッション・ビジョンの3つの軸のうち、自分が優先している軸を中心にして、「なぜそのような表現をつかっているのか」と裏付けるような「原体験、偏愛、願望」のエピソードと組み合わせていきましょう。自分が何を大切にしているのか、どのような論理で行動しているのかを示すことで、「WILL」がきちんと他人に伝わるようになります。
【WILLを物語化した自己紹介の例】
私は、自らを触媒として、人と人との化学反応を起こすことをミッションとして活動しています。なぜなら、私が介在した出会いをきっかけに、新規事業が生まれるというドキドキの原体験があったからです。
今は、メーカーの研究開発者として、意識的に領域外にはみ出し、そこで得たものを組み合わせて化学反応を生み出す実験的な活動をしています。今後は、特にアートやデザインを触媒にして対話型のアプローチをすることで、化学反応を起こすチャレンジをしていきたいと思っています。その結果、人と人との間に起こる化学反応で、オドロキからのトキメク進化が実現することを願っています。エネルギーが高くて面白い人がいたら、ぜひ紹介してください。
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掘り起こした「WILL(意志)」を活かすためのポイント
自身のWILLを掘り起こした後、どんなことをすればキャリアや生き方の選択により良い形で活かしていけるでしょうか。大川さんにアドバイスをいただきました。
完璧でなくていい。生煮えのままで行動を起こしてみる
「WILLに正解はありませんし、そう簡単に明確化できるものでもありません。それに、一度決めたら追い続けなければいけないものでもありません。価値観や環境の変化などによって変化して当然です。だからこそ、あまり大げさに考えず、なんとなく“これかな?”と思ったら、まずは行動を起こしてみるのがおすすめです。
トライして“ちょっと違ったかも”と気付いても、それは失敗ではなく、必要なステップだと思えばいい。WILLは持つだけでなく、アクションして初めて意味を成します。アクションした結果、WILLの解像度はどんどん上がっていくのです」
人に話して、フィードバックを得て、アップデートさせる
「飲み会の場でも、何かの自己紹介の場でもいいので、ステップ3で物語化したバリュー(ありたい=判断軸)、ミッション(やりたい=行動)、ビジョン(なりたい=結果)をベースに、誰かにWILLを語ってみてください。伝わった、伝わらなかった、この言葉は違うかな、共感してもらえたなど、さまざまな反応をもらい、振り返りを繰り返すことによって、一層WILLは磨かれていきます。
おすすめなのは、外に出て行って話すこと。職場などいつも関わっている人がいる場所では、WILLの話はあまりウケません。それは普段からMUSTやCANによってつながっている人たちですので。逆に、これまで関わったことがないような人がいる場所の方が、WILLの話は盛り上がります。
普段の業務(MUSTやCAN)について知らなくても、ワクワクするような未来の話(WILL)なら、共通の話題として楽しめますよね。話したことを誰かが覚えてくれていて、チャンスがめぐってくることも。言葉の力は、大きいのです」
引っかかりのある「ざらつく言葉」として言語化する
バリュー(ありたい=判断軸)、ミッション(やりたい=行動)、ビジョン(なりたい=結果)をまとめる際、一般的に使い倒された言葉ではなく、個性を際立たせるユニークな言葉を使うのもポイント。ぼくはそれを“ざらつく言葉”と呼んでいます。そういう言葉を使う方が、人の記憶に残りやすくて、チャンスを引き寄せやすい。
“こうなりたい”という想いを込めて、肩書きを作ってしまうのもおすすめです。ぼくの場合、“#WILL発掘おじ”というハッシュタグをつけて、いろんなところで発信をしていました。ざらつく言葉が入ったハッシュタグなら、自分が直接アピールしなくても、勝手に独り歩きして広く流通します。
そして流通した先から、チャンスが来ることもあるのです。ぜひ、“これ、どういうこと?”と多くの人に興味を持たれるような言葉を探してみてください」
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■「WILL」は人生の羅針盤
誰だって、「本当にやりたいこと」から目をそらさずに生きていきたいと願うもの。しかし、その願いから遠ざかってしまっているのは、他でもない自分自身かもしれません。受け身ではなく、主体性のある自分を取り戻す。それはきっとワクワクするようなプロセスになるはずです。そのためにも、まずは自分に向き合い、どんなことに心が躍るのかを知ることから始めてみませんか。
『 WILL 「キャリアの羅針盤」の見つけ方』
著 大川陽介
発行 ディスカヴァー・トゥエンティワン
監修:株式会社ローンディール WILL-ACTION Lab.所長 大川 陽介
早稲田大学大学院にて機械工学を学んだ後、富士ゼロックス株式会社にSEとして新卒入社。SOL 営業、新規事業開発、人材開発など企業内での越境を経験した。社外では、約50社の大企業若手有志1000名を巻き込んだ任意団体「ONE JAPAN」の共同発起人/副代表として、 挑戦する個人の覚醒、組織風土変革、価値共創に挑む。それらを通じて人の 「WILL」の重要性に気づき、「越境」の可能性に共鳴したことから、株式会社ローンディールに参画。現在、WILL-ACTION Lab. の所長として、「意志ある行動」を電動アシストしている。三人娘の父。国際コーチング連盟認定コーチ/中小企業診断士。
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