言語化とは?言語化トレーニングの方法を現役コピーライター監修のもと詳しく解説

ビジネスシーンで「伝えたいことがあるのに、うまく言葉にできない」と感じたことはありませんか? 言語化力を活かすメリットやトレーニング方法について、現役のコピーライターである専門家監修のもと、分かりやすく解説します。

言語化が上手な人のイメージ

伝えたいことを言葉にする「言語化」。この「言語化」をうまく行う力はビジネスに役立つスキルの一つで、誰でもトレーニングによって鍛えることができます。この記事では『こうやって頭のなかを言語化する。』の著者で、電通にて現役のコピーライターとして活躍する荒木俊哉さんにお話を伺い、言語化力を構成する要素やトレーニング方法などを紹介します。

言語化とは

言語化とは、まだ言葉になっていない自分の思いや意見を言葉にする一連のプロセスのことを言います。「頭の中で考えていることをうまく言語化ができない」と悩むときは、「話す」「書く」「伝える」といった言葉のアウトプット部分だけに注目しがちかもしれません。しかし、アウトプットに至るまでの過程もとても重要です。この過程に意識を向けることで、これまでよりスムーズに自分の言葉で話したり、うまく伝えたりできるでしょう。

言語化力を構成する要素

「聞く力」が備わっている人のイメージ

「言語化力」とは、先ほど説明したように頭の中にある思いや言葉などを適切なタイミングで発信することをいいます。「言語化力」に欠かせない要素について、詳しく見ていきましょう。

聞く力

言語化力の基本は「聞く力」です。丁寧に、ときに根気強く聞いていくこと。この「聞く力」が自分はもちろん、ほかの人の思いや考えを言語化するときも大切になるでしょう。なぜなら、人は通常思っている、あるいは感じていることのほとんどを、明確に言語化できていません。

言語化のために必要なことは、「聞く」という過程を通して少しずつ考えを分解し、当てはまる言葉を探すことなのです。

問う力

「聞く力」と関連しますが、問いかける力も同じように重要です。いきなり自分自身に「仕事で一番つらいことは何?」と問いかけてみても、自分のこととはいえ言葉にするのは難しいですよね。そこで意識したいのが、「出来事」から「感じたこと」の順で問いかけていくことです

例えば、自分の頭の中に「最近、仕事が面白くない」とモヤモヤを抱えているとします。その場合には、「どんなときに、特に面白くない?」とモヤモヤの原因となる出来事を自問してみましょう。「今の上司と話すとき」という出来事を思い出したら、「上司に何と言われたときに面白くない?」と深掘りします。そして、「なぜ、そう感じる?」と自分の感情にまで問いかけると、モヤモヤの原因がどこにあるのかが具体的に見えてくるでしょう。

内省力

「問う力」で挙げた例のように、自分の思いや意見を言語化することは内省する過程そのものです。内省とは自分の内側に目を向け、言動を振り返り、新たな気づきを得ること。同時に自分の至らなさや間違いに気づき、受け入れて次へ進む力をもらえる行為でもあります。モヤモヤを「出来事」「感じたこと」に分解して一つずつ言葉にしていくことで、客観的に自分を見つめ直すことにつながり、「なんとなくストレスがある状態」がスッキリと解消されることもあるでしょう。

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このように「言語化力」を身につけるためには、スラスラと淀みなく話す特別な能力が必要というわけではありません。それよりも重要なことは、自分の中にある思いやモヤモヤを明確にして、それを言語に組み立てていくことなのです。

言語化力を身につけるメリット

言語化力が向上すると、さまざまなメリットがあります。ここではビジネスシーンでのメリットを見ていきましょう。

無駄に悩む時間がなくなる

人はそもそも悩む生き物です。しかし、悩みの原因が言語化されると、落ち込んだり、クヨクヨしたりする時間が減っていきます。仕事のトラブルなどが起こっても、冷静に対処できるようになり自信も生まれるでしょう。

思考力がUPする

「なぜ、そう思うのか」と自分で自分の話を聞いていく。これはまさに自問自答して自分の内面を言語化する過程です。「自問自答する量=思考の量」であり、「自問自答の質=思考の質」とも考えられます。毎日の仕事で言語化する習慣を持つことで、思考力も自然と高まっていくでしょう。

伝え方が上手になる

会議などで意見を求められたとき、自分が一番重要だと考えていることを真っ先に伝えられるようになります。一般的に、ビジネスシーンで求められる「結論から話す」テクニックがありますが、急に話題を振られたときなどは、とりあえず「そうですね」などと話しながら考えをまとめた経験がある人も多いのではないでしょうか。

普段から自分の思いを言語化する習慣があると、まずポイントから伝えられるようになるので、結論から分かりやすく発言できるようになります。

言語化するのが苦手な人に共通する特徴

ビジネス用語に頼りすぎてうまく言語化できない人のイメージ

ビジネスシーンでの言語化が苦手な人の特徴について、詳しく見ていきましょう。

「うまく話さなくてはいけない」というプレッシャーがある

言語化に苦手意識を持つ人のなかには、「うまく話さなくてはいけない」という強いプレッシャーがあることも多いです。ビジネスシーンでは、どうしても質問に対して分かりやすく解説しなければいけないと考えてしまいがちですが、多くの場合は「その人が何を考えているのか」が知りたくて質問しているので、強いプレッシャーを感じる必要はありません。

ビジネス用語に頼りすぎている

例えば、プライオリティやイニシアチブなど……ビジネスでよく使われるカタカナ用語。それらの言葉に頼りすぎていて、自分の言葉になっていない伝え方をしている人も良く見られます。「自分を賢く見せたい」「仕事ができるように見せたい」という気持ちが無意識に働いているのかもしれません。

分からないことをそのままにしている

仕事をしていると分からないことが出てくるものですが、言語化が苦手な人は、そんなときに場の空気を読み、分かったふうにやり過ごしてしまいがちです。そうすると、自分が分からないものの「言語化」が出来ないのはもちろん、 物事の本質を理解しないまま働くことになってしまい、結果的にミスやトラブルに繋がってしまうかもしれません。

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言語化力のトレーニングになる「超シンプル言語化ノート術」

スムーズに言語化できる人のイメージ

ここでは、荒木さんの著書『こうやって頭のなかを言語化する。』で提唱されている、言語化を習慣化するための具体的なメソッドをご紹介します。普段の仕事などで自分の言語化力が足りないと思っている人はこちらを1日の終わりに試してみましょう。繰り返し行うことで言語化力を鍛えるトレーニングになります。

STEP1:「出来事+自分が感じたこと」を1日1つメモする

まずは、自分が経験したこと(WHAT)の言語化をすることからです。仕事で起こった「出来事」と、そのことによって「感じたこと」をスマートフォンのメモ機能などで文章にします。内容はシンプルな一行でOK。文語ではなく、むしろ日常会話で使うようなくだけたメモで十分です。このとき、「出来事」と「感じたこと」は必ずセットで書き込むようにしましょう。

(例)
「プレゼン終了。テンション上がった」

STEP2:メモしたことに対して自問自答する

次に、なぜ自分がそう感じたのか(WHY)の言語化をしましょう。STEP1で溜めたメモの最後に「のはなぜか?」をつけます。すると、問いが生まれるのでこの問いに対し、思いつくことを紙のノートに箇条書きでどんどん書き出しましょう。「頭に浮かんだ言葉をそのまま書きなぐる」イメージです。

目標は3分間で5つ以上。時間を区切ることで、目の前の問いに集中しやすくなるでしょう。取り組むタイミングは、メモを残したその日の夜がおすすめです。

(例)
「プレゼン終了。テンション上がった」のはなぜか?
・勝ちたいプレゼンだった
・クライアントに褒められて、うれしかった
・頑張って準備してきた成果が認められた
・自分が認められた気がした
・会社からの評価が上がると思った
・形にしたいプロジェクトだった
・実現への第一歩が始まってワクワクした

STEP3:自分がなぜそう感じたのか結論をまとめる

STEP2で言語化した内容をシンプルな1行の「結論」にまとめます。書き出した内容から印象的な言葉をピックアップするように取り組むと、まとめやすいでしょう。具体的には、ノートに何度も出てくる言葉や似た意味の言葉があれば、○で囲むなどして印をつけることです。その印象的な言葉を並べてみて、今の自分にしっくりくる1行にまとめていきましょう。

(例)
プレゼンでテンションが上がったのは、 相手に認めてもらえたから

なお、この結論に正解はありません。自分がしっくりくる一行になったら完了となります。このSTEP3の目的は、自分の思いをパッと答えられるようにすること。言語化はあくまで手段なので、それぞれの「問い」に対する現時点での自分の思いをまとめたり、優先順位をつけたりしながら、整理ができれば成功です。

STEP4:結論をふまえてどう行動するか言語化する

最後にまとめた「結論」について、具体的にこれからどうしたいか(HOW)の観点から言語化します。これをしておくと、同じような場面で行動や判断の軸を持てるようになり、さらに良い成果や評価に結びつく可能性が高くなるでしょう。STEP3まででも十分ですが、時間に余裕があればやってみましょう。

(例)
「プレゼンでテンションが上がったのは、 相手に認めてもらえたから」
  ↓
・どうすれば相手に納得感を持ってもらえるかを意識する
・相手の評価ポイントを事前に調べ、プレゼンの内容に反映する
・クライアントだけでなく、自分のチームからも評価される行動を意識する

それぞれのSTEPは1日3分ほどで完了します。日常の仕事から少し離れて、ノートとペンを使いながら自問自答を繰り返す時間を持つことで、自分の頭の中にあるモヤモヤや言葉になっていない思いを言語化できるでしょう。

「言語化力」を鍛えるために日常的に意識したいこと

言語化力を鍛えていくには前述した「言語化ノート術」だけでなく、日常的に意識しておきたいことがあります。普段の業務や日常生活の中でさりげなく取り入れられる「言語化力」の基礎固めをする方法を見ていきましょう。

会議の議事録をまとめてみる

議事録をまとめるには、会議の内容をとにかく「聞く」ことが必要です。そうやって、まずは人の思いや意見を聞く習慣を身につけてみましょう。

さらに、議事録をまとめるというアウトプットを行ってみると、自分はどこまでが分かっていて、どこからが分かっていないのかが明確になります。同時に「次回の会議で不明点を言語化できるようにする」といった自分なりの課題が見つかるでしょう。

分からないことをスルーしない

例えば、会議の資料には文字にはされていない資料作成者の意図や背景が必ず存在します。資料を読み込み、「なぜ、この書き方をしたのか?」「なぜ、この文章にマーカーを引いたのか?」など、作成者の意図までを想像してみましょう。浮かんだ疑問は会議で質問できると、さらに良いでしょう。

上司やクライアントから依頼を受けるときも同様です。依頼の意図や相手がイメージするものなど、言葉にされていない部分で不明点があれば、その場で時間が許す限り質問する癖をつけるのがおすすめです。自分だけでなく相手の言語化にもつながり、感謝される機会がきっと増えるでしょう。

自分の感情の変化に敏感になる

仕事で「なんとなく嫌だな」「なんとなく腑に落ちないな」と思いながら、忙しさもあって受け流した経験はないでしょうか。小さなことでも自分の感情に変化を感じたら、「なぜそう感じたのか」と自問自答する習慣を身につけてみると良いでしょう。「なんとなく」の理由がしっかり言語化できれば、ストレスの原因が自分で分かるようになり、問題の根本的な解決にも役立ちます。

日々の業務を行いながら、少し意識を変えるだけで言語化力が身につくようになっています。ぜひ参考にしてみてください。

言語化力の基本は「聞く力」。まずは聞くことを意識しよう

「言語化」というと、言葉のアウトプット部分に意識がいきがちかと思います。しかし、その前にベースとなるのが「聞く力」です。

例えば、若手のビジネスパーソンのなかには、会議やプレゼンでなかなか言語化ができずに、「自分がチームに貢献できてない」と落ち込んでいる人もいるかもしれません。その場合は、焦らずにまずは日ごろの仕事から人の話を「聞く」ということを意識してみましょう。すると「言語化力」は自然と磨かれていくはずです。

さらに、「聞く力」は自分で自分の話を聞くことにも関わってきます。自分の話を聞いて考え方や行動の「軸」が言語化されると、悩みも減り仕事もより効率的に行えるようになるでしょう。

監修:株式会社電通 荒木俊哉
1980年、宮崎県生まれ。一橋大卒。2005年に株式会社電通へ入社。コピーライターとして商品、企業、自治体のブランディングに取り組み、これまで手掛けたプロジェクトの数は100以上、活動は5大陸20か国以上にのぼる。世界三大広告賞のうちCannes LionsとThe One Showのダブル入賞をはじめ、ACC賞、TCC新人賞、毎日新聞広告賞、日経広告賞、広告電通賞など、国内外で20以上のアワードを獲得。広告以外にも、国際的ビッグイベントのコンセプトプランニング、企業のミッション・ビジョン・バリュー策定のサポート、一橋大学にて広告のゼミ講師を務める。また、国家資格キャリアコンサルタントの資格を持つ。著書に10万部を超えるベストセラー『瞬時に「言語化できる人」が、うまくいく。』(SBクリエイティブ)がある。2024年11月には『こうやって頭のなかを言語化する。』(PHP研究所)を上梓し、はやくも3万部を突破。

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