点ではなく、線で捉えれば、失敗も単なる通過点。挑戦を続ける元尼神インター誠子に聞く、不安との向き合い方

フリー芸人として幅広いジャンルで活躍する元・尼神インターの誠子さん。後編では、フリーになってからの活動や不安との付き合い方、お仕事をする上で大切にしているマインドを伺いました。

挑戦を続ける元尼神インター誠子に聞く、不安との向き合い方

尼神インターを解散し、現在はフリーの芸人として活躍している誠子さん。お笑いの活動のほか、料理イベント「誠子食堂」やライフスタイルブランド「merci」を展開するなど、ジャンルにとらわれずに活動されています。

後編では、フリーになってから仕事を軌道に乗せるまでの道のりやお仕事をする上で大切にしていること、不安との向き合い方などについて伺いました。

※インタビュー前編はこちら
人生は一度きりだから、フルスイングで生きる。元尼神インター誠子の「夢をかなえるマインド」とは

夢に不安はつきものだから、不安ごと受け入れる

――誠子さんは尼神インター解散後、吉本を退所してフリー芸人としての道を歩き出しました。解散後、ピン芸人として吉本に残ることは考えなかったのでしょうか。

そうですね。吉本にいながらピンで活動するのは、自分の中で中途半端になってしまうと思いました。解散があまりに悲しかった分、何か新しいことに挑戦しないと自分らしくいられなくなるなと。

それで「自分でもどうなるか分からない、周りの人も驚くようなことをしたい」と考えたとき、思い浮かんだのがフリー芸人の道だったんです。一度思い浮かんだら、もうその道しか見えなくなりました。

でも、尼神インターのときみたいにうまくいくビジョンが見えているわけじゃなかったんです。1年後にどうなっているか想像もつかなくて、だからこそワクワクしましたね。「私は今、フルスイングのチャレンジをしているな」って。

――失敗が怖くて「フルスイングのチャレンジ」ができない人も多いと思います。誠子さんは、なぜ失敗を恐れずに前に進めるのでしょうか。

不安はあります。正直、吉本を退所したときは、仕事も収入もなくなって、すごく不安でした。

だけど、その不安もひっくるめて夢に向かうプロセスなんですよね。不安や困難があるからこそ、夢がかなったときは嬉しいし、それが生きている実感につながる。だから、不安も含めて夢なんだと受け入れています。

誠子さんインタビューの様子1

――フリーになった当初はお仕事が少なかったんですね。どういうふうに軌道に乗せていったのでしょうか。

最初はまったく仕事がなかったので、とにかくたくさんの人に会いました。イベントに顔を出したり、友達が紹介してくれる人に会ったり。昨年いただいた名刺を数えたら100枚くらいありました。そうやって人とのご縁をつないでいると、少しずつお仕事をいただけるようになったんです。

いろんな人に会っているうちに、あらためて「私って人が好きやな」と思いました。人と関わることによって、新しい活動が生まれることもあるし、やりたいことや夢もどんどん増えていくんです。

フリーになってからは、「仕事はもらうだけのものじゃなく、自分で作るものなんだ」ということにも気づきました。それからは、いただく仕事と生み出す仕事、両方をやっていますね。

――フリーになってから他に変化を感じたことはありますか?

まず、お金についての価値観が変わりましたね。以前は「お金は消費するもの」という認識でしたが、フリーになってからは「資金」という認識に変わりました。

ライブを開催するにしても、フリーの場合はまず資金が必要です。吉本に所属していれば、仮に一度のライブで赤字を出したとしてもギャラがもらえるし、次のライブも開催できる。でも、フリーになってからは、黒字にしないと次のライブが開催できないんですよね。

お世話になっている税理士さんがいるんですけど、フリーになったばかりの頃に私が「儲けることは考えていない」と言ったら、「それは違うよ」と言われました。その税理士さんが言うには、会社も「法人」と書くくらいだから人間であって、お金は血液なんだそうです。

「ちゃんと利益を上げていかないとビジネスが死んじゃうよ。誠子さんのビジネスは、誠子さんがお世話して育てるんだよ」と教えていただいて。もちろんお金がすべてではないけど、やりたいことを続けていくためには、お金も大切にしなきゃいけないということを学びましたね。

芸人の経験があったからこそ、お客さんの顔を想像できる

誠子さんインタビューの様子2

――現在はフリー芸人として単独ライブなどを行っているほか、「誠子食堂」や「誠子食堂ラジオ」、ライフスタイルブランド「merci」の展開などもされています。それぞれの活動について詳しく教えてください。

吉本にいたときの話なのですが、コロナ禍で仕事がなくなったときに、自分がいちばん苦手なことに挑戦してみようと思って、料理をはじめたんです。そしたら運よくハマって。

インスタに「#誠子食堂」というタグで料理の写真を投稿していたら、みんなが「誠子食堂のご飯食べたい!」と言ってくれるようになって、イベントを開催するようになりました。最近は飲食店さんとコラボしたり、調味料メーカーさんと一緒に調味料を作ったりしています。

ライフスタイルブランド「merci」は、以前の私と同じように料理が苦手な人にも料理を好きになってもらえるようなコンテンツやグッズを作りたいと思い、友達で料理家の荒谷未来ちゃんと立ち上げました。使うとテンションが上がるエプロンやまな板などをプロデュースしています。

ライフスタイルブランドmerciの様子

merciのホームページ

「誠子食堂ラジオ」は、フリーになったあと、仕事がないときに何か始めなきゃと思い、家で録音するようになったのがはじまり。友達にお願いして出てもらっているんですが、人と会えるし、喋りの練習にもなるから大切な居場所ですね。

――「誠子食堂」や「merci」の活動に、芸人の経験が活きていると感じることはありますか?

芸人として15年間、ずっとお客さんの笑顔を想像してネタを書いてきたので、お客さんのことを考えてものづくりをする癖が身についていますね。

例えば、「merci」でエプロンをプロデュースするときは、それをつけて料理をする人のことを想像しながら作っていく。「誠子食堂」のイベントなら、来てくれたお客さんのリアクションをイメージしながらコンテンツを考える。それができるのは吉本時代に芸人としていっぱいステージに出させてもらったおかげなのかなと思いますね。

――やはり、お客さんの笑顔を直接見られることがモチベーションにつながっているのでしょうか。

そうですね。やっぱり舞台にたくさん立たせていただいて、お客さんの笑顔が大好きなので、お客さんの顔を直接見たいっていう気持ちが強いです。

「merci」にはECサイトがあるので、遠方に住んでいるお客さんにも商品を届けられるんですが、やっぱり直接会ってお客さんの顔を見て渡したい。だから、リアルで対面できるイベントを開催したり、お笑いライブの物販に立って「merci」のアイテムを売ったりしているんです。

――イベントに来てくれたお客さんのエピソードで、印象に残っているものはありますか?

「merci」のイベントを開催したとき、「1週間後にニュージーランドに留学するので、誠子さんからパワーをもらいたくて来ました」と言ってくれた方がいて。「ニュージーランドで挫けそうになったときにmerciのアイテムを見たら、誠子さんもフリーで頑張っているんだから私も頑張ろう!って思えそうな気がします」と言ってくださったんです。それがすごくうれしくて、私も「いつかニュージーランドでライブができるように頑張ります!」と答えました。ファンの方のおかげで、またひとつ夢が増えましたね。

人生は点じゃなくて線。生きている限り、失敗は失敗で終わらない

誠子さんインタビューの様子3

――誠子さんはカナダでのお笑いライブ開催を考えているそうですが、不安よりもワクワクの方が大きいのでしょうか?

そうですね。やっぱり、不安は夢の一部だし、全身全霊で準備して全力で頑張ったなら、たとえ失敗したとしてもそれでいいと思っています。全力で頑張った経験は糧になるし、「カナダで大失敗しちゃって~」とネタにできるし。

人生は点じゃなくて線だから、失敗したあとも続いていくわけじゃないですか。その場面だけを切り取ったら失敗って思っちゃうかもしれないけど、そのあとも努力を続けて最終的に成功すれば、失敗は成功に至るまでの通過点になると思っていて。

関西人だからか、常に「失敗からたくさん学んで元を取ってやる!」という気持ちでいるんですよ。下積み時代とか解散とか、いろんなことがあったけど、続けてさえいれば過去はすべて笑い話にできるし。こういう思考になったのも、今までいっぱい失敗してきたからこそだと思います。

――「このままでいいのか不安だけど、何かに挑戦して失敗するのは怖い」という人も多いですが、たしかに、失敗が失敗ではないとしたら、怖がる必要はないですよね。

そうなんです。何かに興味を持ったり、好きになったりすることって実はそんなになくて、自分だけの宝物だと思うから、少しでも「やってみたい!」と思うことがあったら、恐れずにチャレンジしてみてほしいですね。

私は極端な性格だから、大学進学を辞めてNSCに入ったり吉本を退所してフリーになったりしたけど、みんながみんな、リスクをとる必要はないと思います。会社員を続けながら休みの日にやってみるとか、自分に合ったペースでチャレンジするのもすごくいいと思う。もしやってみて続かなかったとしても、それはそれで学びだし。チャレンジした時点で100点だと思います!

とにかくチャレンジを続ける、そして、シンプルですけど、人に優しく。この2つさえ守っていれば、絶対に大丈夫。それだけで生きていけますから。これは私だけじゃなくて、みんなもそうだと思いますよ。

読者へのエール_挑戦を続けていれば_失敗は笑い話にも_成功の糧にもなる

※インタビュー前編はこちら
人生は一度きりだから、フルスイングで生きる。元尼神インター誠子の「夢をかなえるマインド」とは

【プロフィール】
誠子(せいこ)
2007年に大阪の吉本お笑い養成所NSCに入学。漫才コンビ・尼神インターを結成。劇場ライブやバラエティ番組に多数出演。2024年にコンビを解散、吉本興業を退所。現在はフリー芸人として、お笑いライブや料理イベント、ライフスタイルブランド「merci」をプロデュースするなど、今まで以上に新しい分野にも積極的に挑戦中。

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