劣等感とは?心理士監修のもと、抱きやすい人の特徴や原因、克服方法について解説

他人と自分を比べて、劣等感を感じることはありませんか。この記事では劣等感を感じやすい人の特徴や、感じてしまう原因、克服方法などをビジネスシーンに沿って解説します。

劣等感を抱えている人のイメージ

「自分は他の人より劣っているかも……」ふとそんな気持ちにとらわれることはありませんか。劣等感は自然な感情ですが、それが過度になると、自分の行動に自信が持てず、挑戦しにくくなってしまうことも。この記事では、臨床心理士の関屋裕希さんにお話を伺い、劣等感の意味や抱きやすい人の特徴、抱いてしまう原因、ビジネスにおけるデメリットや克服方法などをご紹介します。

劣等感とは?

劣等感とは、そもそもどのような感情なのでしょうか。その意味とコンプレックスとの違いについて詳しく解説します。

劣等感の意味

劣等感とは、他人との比較などがきっかけとなって生じる、「自分は劣っている」という感情です。例えば、同僚が先に昇進した際に「自分は仕事ができない」と感じたり、予想よりも成果を出せずに自信をなくしたりするときは、劣等感を感じているといえるでしょう。

劣等感とコンプレックスとの違い

「コンプレックス」は、無意識的のうちに作られる心理構成要素(衝動や欲求、観念、記憶など)が複雑に絡み合ったものとされており、過去に置かれていた環境や経験によって形作られ、現在の行動に影響を与えます

例えば、昔人間関係で嫌な思いをした経験が無意識に影響して、他人と深い関係を築くことに対して恐れを感じるようなことが挙げられます。一方、劣等感は他人と自分を比較した結果、現在進行形で生じる感情です。劣等感よりもコンプレックスの方が、自覚しづらいという特徴もあります。

どういったシーンで劣等感を抱いてしまう?

友人が充実している様子を聞き劣等感を抱くイメージ

日常生活において、特にどういったシーンで劣等感を抱きやすいのでしょうか。主な例をご紹介します。

思うように成果が出せないとき

同僚が評価されたり、大きなプロジェクトを任されたりしているとき、自分が思うように成果を出せていないと、劣等感を抱いてしまいます。また、ミスをしたり、注意を受けたりした場合も、理想の自分とのギャップを強く感じ、「自分には能力がないのではないか」と感じることが多いです。

周囲のキャリアやライフステージが変化するとき

周囲がキャリアやライフステージの変化を迎えるときも、プレッシャーや焦りを覚えることが多くなります。ライフプランは人それぞれ異なるものですが、自分の中に明確な指針がないと、「他の人は人生を着実に進めているのに、自分は……」と劣等感を抱いてしまう場合があります

SNSを見て、他人が充実しているように見えるとき

SNSは、成功体験や楽しい出来事が強調されやすい傾向があります。そのため、友人や知人が充実した生活を送っているように見えやすく、反対に自分の生活が退屈でつまらないものに感じられ、劣等感を抱いてしまうことが多いです。

劣等感を抱きやすい人の特徴

劣等感を抱きやすい人には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、主な特徴について解説します。

他人と自分を比較することが多い

劣等感を抱きやすい人の特徴として、「あの人は褒められているのに、それに比べて自分は……」「あの人は私と違って毎日充実していそう」などと他人と自分を比較しがちなことが挙げられます。他人の評価や成功によって自分の能力に対する評価も変わるため、自信が安定しにくいのです。

完璧主義

完璧主義な人も、劣等感を感じやすい傾向にあります。「完璧にできていないと意味がない」「ひとつのミスも許されない」という考えが強いと、ちょっとした失敗でも理想の自分と現実のギャップを感じ、自分に対する失望感や不満が強くなりやすいのです。

自信がない

自分の長所を見つけるのが苦手な人も劣等感を抱きやすい傾向があります。周囲から褒められたり、ポジティブなフィードバックをもらったりしても素直に受け取れないことが多いため、自己肯定感が得にくくなってしまうのです。

劣等感を抱いてしまう原因

劣等感を抱いてしまう原因には、どのようなものが挙げられるでしょうか。ここでは、主な原因について解説します。

過度なネガティブ思考

行き過ぎたネガティブ思考は、劣等感を感じる原因となります。少しでも予定通りに進まなかったところがあれば「失敗してしまった」と感じたり、上司からの指摘を過剰に否定的に捉えて「自分には能力がない」と決めつけてしまったりすることにつながるのです。

自分軸がない

自分なりの明確な目標や方向性が定まっていない場合も、劣等感を抱きやすくなるでしょう。自分軸がないと、他人の成功や成果が目に入るたびに、「自分もああなりたい」と感じたり、「自分はまだまだだ」と考えてしまったりする傾向があります。

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成功体験が少ない

人は成功を経験することで、自分ならできるという感覚(自己効力感)を養い、それが次の挑戦に対するモチベーションになります。しかし、そもそもの成功体験が少ないと、自分の能力に対する自信が持ちづらく、他人の成功を見て「自分にはできない」と感じやすくなります。

劣等感が強いことによるデメリットは?

劣等感が強くなると、仕事やキャリアにはどんな影響があるのでしょうか。ここでは、主なデメリットとして考えられる点を紹介します。

新しい挑戦を避けてしまう

劣等感が強いと「自分にはうまくできない」「失敗したら恥ずかしい」と感じて、新しい挑戦を避ける傾向があります。例えば、上司から新しいプロジェクトを任せたいと打診されたときに「自分には無理だ」と感じて、断ってしまうということが挙げられるでしょう。こうしたことが続くと、成長やキャリアアップの機会を逃してしまいかねません。

自分の欠点を受け入れにくい

強い劣等感を抱えていると、傷つくことを避けようと過剰な反応が現れることがあります。例えば、自分の仕事がうまく進まないとき、他人を批判して、責任転嫁しようとすることがあるかもしれません。

また、ありのままの自分を受け入れることができず、できないことを隠そうとする場合もあります。例えば、自分の能力だけではこなせない仕事が与えられたときに、能力不足を認めずに無理にやろうとしたり、サポートを求めることを避けたりする可能性があります。こうしたことが続くと、上司や同僚からの信頼を失うことにつながりかねません。

劣等感があることにはメリットもある?

劣等感には、悪い影響ばかりがある訳ではありません。劣等感を感じるとき、その原因を深掘りしてみると、自分の弱点や足りない部分に気づくことができます。こうして自己理解のきっかけとして活用することができれば、劣等感を成長につなげることもできるはずです。

【すぐに実践できる】劣等感を克服するための方法

劣等感はデメリットだけではありませんが、他人と比べて落ち込んでばかりいると、どうしてもストレスが溜まってしまいます。前向きに毎日を過ごすためにも、劣等感はできれば克服したいですよね。まずは、思い立ったときにすぐに取り組める方法をご紹介します。

自分の強みを再確認する

自分の強みを改めて理解することで、他人と比べることなく、自信を持つことができるようになります。自分ではなかなか気づけない部分もあるため、身近な人にフィードバックをもらったり、自己分析ツールや性格診断などを利用したりして、強みを具体的に把握すると良いでしょう。

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SNSとの付き合い方を見直す

SNSを見て劣等感を覚えたときは、「本当に自分もそれを目指しているのか?」と自分に問いかけてみましょう。実際には、他人が持っているものや達成していることと、自分が本当に望んでいるものが異なることも多いです。SNSを見るときは、「これはあくまで他人の一部だ」と心の中でリマインドするのもおすすめです。もし、SNSを見ることがしんどいと感じる場合は、一時的に距離を置いてみても良いでしょう。

【長期的に取り組みたい】劣等感を克服するための方法

劣等感を克服するためには、長期的な視点も必要です。ここでは習慣化することや、時間をかけてじっくり考えることによって、考え方に変化が期待できる方法についてご紹介します。

小さな成功を意識的に記録する

自分を他人と比較するのではなく、昨日の自分と比べるようにしてみましょう。小さな進歩でも、自分ができるようになったこと、うまくいったことに意識を向けると、自分の成長を実感できるはずです。例えば、「今日は時間通りに仕事を終わらせた」「他の人と協力できた」など、小さなことで良いので、毎日成長を振り返ってみてください。それを記録しておくと、自分を肯定的に捉える力が高まります。

<関連記事>書いて振り返れば、未来が変わる!自己理解を深めるノート術

内省する習慣をつける

定期的に自分を振り返る時間を作ることも大切です。その際はネガティブな面だけでなく、うまくいったことや成功体験も忘れずに振り返り、自信につなげるようにしましょう。これによって自分に対する理解が深まると「自分は自分、他人は他人」という考え方ができるようになり、劣等感を軽減することができます。

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「理想の状態」の定義を見直す

自分がどんな人生を送りたいか、定期的に考える時間を作りましょう。その際は社会や他人の基準で理想を設定するのではなく、自分の価値観や願望に基づいた理想を描くことが重要です。自分の「理想の状態」が見つかったら、それを実現するための具体的な目標を設定します。目標に向けて準備をしたり、実際に行動したりしていると、次第に劣等感が弱まっていくはずです。

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劣等感とうまく向き合い、成長につなげよう

劣等感を克服して充実した日々を送る人のイメージ

劣等感は誰もが持ちうる感情ですが、過度に抱えてしまうと、モチベーションが下がり、自己評価が低くなってしまうことがあります。劣等感を抱きやすいと感じる場合は、普段から他人と比較しがちになっていないか、自分の考え方を見直してみましょう。自分自身の目標に向かって着実に進むことが、劣等感を克服する鍵となります。

監修:心理学博士、臨床心理士、公認心理師 関屋裕希
東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘルス講座所属。
早稲田大学文学部心理学専攻卒業、筑波大学大学院人間総合科学研究科発達臨床心理学分野博士課程修了。専門は、産業精神保健(職場のメンタルヘルス)であり、業種や企業規模を問わず、ストレスチェック制度や復職支援制度などのメンタルヘルス対策・制度の設計、職場環境改善・組織活性化ワークショップ、経営層・管理職・従業員それぞれに向けたメンタルヘルスに関する講演や執筆活動を行う。著書に『感情の問題地図』、『モチベーションの問題地図』(技術評論社)など。

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