伝え方を磨く方法とは?基本の考え方と効果的に伝えるポイントを解説

ビジネスシーンで自分の考えを効果的に伝えるためには、基本的な考え方や具体的なコツを押さえることが重要です。本記事では伝え方を磨く方法や、相手に伝わりやすい表現のポイントを分かりやすく解説します。

伝え方が上手な人のイメージ

ビジネスシーンでは、会議やメールでのやり取りなど、さまざまなコミュニケーションが発生します。その際に、相手に用件をうまく伝えたつもりなのに理解されていない、自分の伝えたいこととズレて伝わってしまうということはありませんか。

本記事では、やさしいビジネススクール学長の中川功一さんに伺った話をもとに、ビジネスにおける伝え方の重要性や、上手に伝えるためのコツ、日常的にトレーニングしていく方法などを分かりやすく解説します。

ビジネスにおいて「伝え方」が重要な理由は?

ビジネスシーンにおいて伝え方を工夫することはなぜ重要と言えるのでしょうか。ここでは、その理由について解説します。

相手の理解を促すことができるため

多くの情報にあふれているビジネスシーンにおいて、メッセージが埋もれてしまい届かないこともあるでしょう。例えば、チームの上司や同僚に対して、新しいツールの導入を提案する際、ただ「ぜひ導入しましょう。便利です!」と言うだけでは、相手の興味を惹くことは難しいです。

しかし、例えば「この業務効率化ツールを導入すると、作業にかかる時間を月間で約40時間も短縮でき、業務時間の削減につながります。また、空いた時間に別の作業ができるので、生産性や業務品質の向上が期待できるでしょう。導入事例として、競合のA社も成功しており、導入後のサポート体制も万全です」などと、具体的な数字や競合の成功事例を示すことで、導入するメリットがより理解されやすくなるでしょう。このように「伝え方」を磨くことで、確実にメッセージを届け、理解を促すことができるのです。

強固な人間関係を築くことができるため

ビジネスは人間関係で成り立っています。そのなかで「伝え方」は、相手との信頼関係を築き、良好なコミュニケーションを築くための重要な手段です。例えば、チームメンバーに仕事を依頼する際、ただ「これ、今日中にやっといて」と命令口調で伝えても相手は不満を感じ、協力的な姿勢にはならないでしょう。

しかし、「このタスクが完了すれば、チームの目標達成に近づきます。Aさんの交渉スキルを活かして、ぜひお願いしたいことがあります」など、相手のスキルへの期待、タスクの意義などを明確に伝えると受け取り方も大きく変わり、納得して協力してくれるでしょう。

キャリアアップにつながるため

「伝え方」を工夫すると、自らの能力を周囲に効果的にアピールでき、社内での存在感も高まっていきます。例えば、社内の会議で意見を述べる際、自信なさげに小さな声で根拠の薄い資料を広げて話しても、聞き流されてしまうでしょう。

しかし、ハキハキとした話し方で、根拠となるデータや事例を提示しながら意見を述べることで、説得力が増し周囲の注目を集めます。例えば、「過去5年の気象データを見る限り、4〜5月から既に初夏と同気温の日が多いです。それを踏まえると、夏向けの商品のキャンペーンは従来通りの6月よりも1カ月ほど早めた5月ごろからスタートした方が、売上の向上を見込めるかと思います」のように、論理的な根拠を示して持論を展開するように意識することで評価にもつながり、キャリアアップを大きく後押ししてくれるでしょう。

伝え方が上手な人の特徴

相手の立場で情報を整理できる人のイメージ

伝え方が上手な人にはどのような特徴があるのでしょうか。主なものについて見ていきましょう。

相手の立場で情報を整理、伝達できる

伝え方が上手な人は、常に「相手がどう受け取るか」を意識しています。例えば、プロジェクトの進捗報告をする際も課題と協力依頼を明確に伝えるために、「進捗は順調ですが、クオリティの面が課題です。解決するためにAさんのスキルをお借りしたいと考えています」と報告するのです。

このように伝えると、上司は安心して状況を把握でき、メンバーは自分の役割を認識しやすくなるでしょう。相手目線で情報を整理することで、スムーズな意思疎通と共感を生み出せるのが特徴です。

相手の心に響くストーリーを伝えられる

単なる情報を羅列するのではなく、ストーリーを意識して語りかけることで、相手の記憶に残りやすくなります。新商品のプレゼンテーションを行う際は、商品の機能やスペックばかりを説明するのではなく、例えば「この商品は、毎日の栄養不足という問題を抱えるお客様に対して、手軽に栄養補給をしてほしいという想いで開発されたものです。開発チームはコスト調整など多くの困難を乗り越えて、完成させました」というように、開発ストーリーや顧客の課題を語ると、共感しやすく、興味を持ってくれるでしょう。

質問を投げかけて双方向でコミュニケーションが取れる

うまく伝えられる人は、一方的に話すだけでなく、質問を通じて相手の理解度を確認したり、意見を引き出したりします。例えば、会議で自分の意見を述べた後、「この点について、何か懸念点はありますか?」のように質問を投げかけることで、参加者の意見を積極的に引き出し、議論を深めることができます。

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伝え方が下手な人の特徴

一方、伝え方が下手な人にも共通した特徴があります。主なものを見ていきましょう。

主語を省略してしまう

「伝え方」が下手な人は、主語を省略しがちです。例えば、プロジェクトの遅延を報告する際、「遅れています」「問題が発生しました」だけでは、誰が何について遅れているのか、どんな問題が発生したのかわかりません。相談を受けた上司が、具体的に問題点はどこなのか、次に取るべき行動は何なのかが分かるような伝え方を意識することが重要です。

話が長く、結論がなかなか見えてこない

「伝え方」が下手な人は話が長く、主題は何なのか、結論として何がいいたいのかが、なかなか見えてきません。例えば、会議で意見を述べる際、関係のない情報や個人的な意見を延々と話し続け、何が言いたいのかが分からなくなってしまうことがあります。結論を先に伝えて簡潔に話すことで、相手に意図が伝わりやすくなるでしょう。

感情的な表現を多用しがち

感情的な表現を多用するところも特徴です。例えば、チームメンバーのミスについて指摘する際にも、「なんでこんなミスするの」「信じられない」などと感情的に怒鳴り散らしても、反省するどころか、反発心を抱いてしまうでしょう。伝えるときは、冷静に事実を伝え、具体的な改善案とセットにすることを意識しましょう。

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押さえておきたい伝え方の基本

非言語コミュニケーションも意識しつつ伝えるイメージ

自分の考えを上手に伝えるためにはどういったことを意識すればいいのでしょうか。まずは最低限知っておきたい、「伝え方」の基本について解説します。

具体的かつ簡潔に伝える

具体的かつ簡潔な言葉で、自分の考えを正確に伝えるよう心がけましょう。上司や同僚に相談をするときは、具体的に今困っていることと、手伝ってほしい内容などをはっきりと伝えることでコミュニケーションの齟齬が減り、的確なアドバイスをもらえます。また5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識し、情報を整理することが重要です。

非言語コミュニケーションも意識する

言葉だけでなく、表情や声のトーン、ジェスチャーなどの「非言語コミュニケーション」も、相手に与える印象を大きく左右します。例えば、ビジネスシーンでプレゼンテーションを行うときには、自信なさげに小さな声で棒読みするのではなく、はっきりとした声で、適度なジェスチャーを交えながら話すことで、メッセージがより効果的に伝わるでしょう。

習得のためには鏡を見て練習したり、自分のプレゼンテーションを録画して客観的に分析したりすることもおすすめです。

実は相手の話をちゃんと「聞く」ことも大事

効果的な伝え方をするためには、相手の話を注意深く聞き、理解しようと努める「傾聴力」も大切。例えば、会議やMTGでも相手の話を遮ったりはせず、まずは最後まで話を聞き、その内容を正確に理解しましょう。相手の言葉に耳を傾け、分からないところは質問を通じて理解を深めることで、建設的な議論につなげられるようになります。「傾聴力」は、相手との信頼関係を築き、より深いコミュニケーションを可能にしてくれるのです。

<関連記事>「傾聴力」ひとつで、好印象に!コミュニケーションが円滑になる、話の聞き方

ビジネスシーンで取り入れたい伝え方のコツ

伝え方の基本を理解したら、次は実践的なテクニックを身につけましょう。ビジネスシーンで取り入れたい伝え方のコツについて解説します。

結論ファースト&ピラミッド構造で伝える

「伝え方」で最も重要なのは、結論を最初に伝えることです。そして、その結論を支える根拠を構造化して提示することです。つまり、プレゼンテーションで一番伝えたい「結論」から説明し、次に具体的な「根拠」へ移っていくという、「ピラミッド構造」のフレームワークを活用すると伝わりやすくなります。

例えば、上司に提案をするシーンにおいては、「売上の減少という課題を解決するために、既存顧客の単価向上を提案します。理由は3つあり、1つ目は新規顧客より獲得コストが低いので取り組みやすい点、2つ目は顧客のニーズを把握しやすく、提案の精度を高められる点、3つ目は既存顧客に満足してもらうと紹介や口コミが拡大する点です」というように、ピラミッド構造を意識して話すことで、相手はメッセージの全体像についてイメージがしやすいです。

専門用語を多用しない

同じ社内でも職種や業務内容が違うと、使われている用語や前提の知識にズレがあることも多いです。その状態で専門用語を多用すると、話が伝わりにくくなります。

例えば、営業部門の人がIT部門の人に「顧客にメールが送れない」ことを相談します。そんなときにIT部門の人が「SMTPのスプーフィング対策が原因でしょう。DMARCのポリシー設定を確認しないと、メールがブロックされることがありますよ」と答えても、理解してもらうことは難しいですよね。

「メールの送信元が正しいことを証明する設定があり、それがうまく機能していない可能性があります。送信できなかった顧客リストを確認してください」というように、相手が持つ前提知識に合わせて、分かりやすい言葉で説明することが重要です。

視覚的な情報も活用する

言葉だけでなく、視覚情報を効果的に活用することで相手の理解度を高めることができます。例えば、プレゼンテーションの資料は、テキストばかりではなく、図表やグラフなどを積極的に活用することで、情報を視覚的に捉えやすくなります。また話す際には、ジェスチャーを交えることで、感情や強調したいポイントを表現できるでしょう。

話し方に緩急をつける

単調な話し方は、相手の集中力を低下させます。声のトーン、話すスピード、間の取り方などを意識的に変化させ、相手を飽きさせない、メリハリのある話し方を心がけましょう。

例えば、重要なポイントを強調する際には声を大きくしたり、ゆっくりと話したりすることで、相手の興味を惹くことができます。また、話と話の間に適度な間を入れると、相手は情報を整理し、理解する時間を確保することができるので、意識してみてください。

相手を尊重したポジティブな言葉遣い

ネガティブな言葉遣いは、相手に不快感を与え、コミュニケーションを阻害する可能性があります。「しかし」「でも」「だって」などの否定的な言葉を避け、ポジティブな言葉遣いを心がけましょう。

例えば、相手の意見に反対する場合などでも、「Aさんの意見は間違っています」ではなく、「Aさんの意見は素晴らしいと思いますが、利益面も考慮すると、他の選択肢もあるのではないでしょうか?」のように、相手の意見を尊重しつつ、自分の意見を述べることで、建設的な議論をすることができるでしょう。

話にユーモアを交える

状況に応じて、ユーモアを交えることで場を和ませ、相手との距離を縮めることができます。例えば、会議の冒頭で、ちょっとしたジョークを言ったりすると、緊張感を和らげられるでしょう。

ただし、ユーモアは諸刃の剣ともいえるので、相手や状況を考慮し、不快感を与えないように注意しましょう。ユーモアを上手に活用することで、より円滑なコミュニケーションを実現することができます。

日常的に伝え方を磨く方法

伝え方について学ぶイメージ

伝え方は日々のトレーニングで、着実なステップアップが可能です。ここでは日常的に伝え方を磨く方法をご紹介します。

1分間スピーチ

毎日朝のニュースなどから気になった記事を選び、そのテーマに沿って1分間スピーチをすることを実践してみてください。毎日練習を繰り返すことで、構成力とプレゼンテーションスキルを鍛えることができます。

例えば、「今日のニュースで『企業のDX推進事例』という記事が気になりました。この記事から私が学んだことはツールの整備だけではなく、社内の意識改革も重要という点です。この学びを活かして、今日の業務ではツールの活用方法についての勉強会を企画したいと思います」のように、1分間で要約し、自分の意見を述べることを意識します。最初は難しく感じるかもしれませんが、続けるうちに、頭の中で情報を整理し、簡潔に伝える力が身につくでしょう。家族や友人に聞いてもらったり、録音して客観的に分析したりするのも効果的です。

要約チャレンジ

ニュース記事や書籍などを読んだ後、内容を3つのポイントに絞って要約することもおすすめのトレーニング方法です。繰り返すことで情報整理力と要約力を高められるでしょう。

例えば、ビジネス書を読んだ後に、「この本の概要は、オフィスのコミュニケーションを改善するための具体的な方法です。そのために重要なポイントとして、1つ目は『心理的安全性』を確保すること、2つ目は『小さな成功体験』を積み重ねること、3つ目は『結論ファースト』で話すことです。これらのポイントを実践することで、チーム全体のモチベーション向上という効果が期待できます」というように、要点を絞って説明文を記録する習慣をつけましょう。要約する際には、キーワードを意識したり、図解を作成したりするのも効果的です。SNSで発信して、他の人と交流するとアウトプットの練習にもなります。

ロールプレイング

職場の同僚や先輩に協力してもらい、ビジネスシーンを想定したロールプレイングを行うと、より実践的な「伝え方」を磨くことができます。例えば、上司への報告、顧客へのプレゼンテーションなどの様々なシチュエーションを想定して実際に話す練習を繰り返してみてください。重要なことは相手からのフィードバックをもらい、改善点を見つけることです。繰り返すことで、自信を持って、状況に応じた「伝え方」ができるようになるでしょう。

自分らしさを活かした「伝え方」を見つけよう

「伝え方」の基本や、具体的なコツについて説明してきましたが、それらの正解はひとつではありません。大切なのは、失敗は成長の糧になると考え、怖がらずに自分らしさを活かした「伝え方」を見つけることです。

情熱的な語り口、ユーモアを交えた話し方、親しみやすいキャラクターなど、自分自身の個性や強みを活かすことで、周囲の人の心に深く響くプレゼンテーションが可能となります。重要なことは自分の強みを見つけ、それを磨いて「自分らしい伝え方」を追求することです。

監修:やさしいビジネススクール学長 中川功一
経済学博士(2009年、東京大学)。「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。学長を務めているオンライン経営スクール「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作などで経営知識の普及に尽力している。 主な著書に『感染症時代の経営学』『ど素人でもわかる経営学の本』『戦略硬直化のスパイラル』など。

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