得意なことの見つけ方とは?自己分析の方法や仕事への活かし方について解説

就職や転職を意識した際に、自分の得意なことが分からないと悩んでしまう人は多いかもしれません。本記事では、得意なことの見つけ方や自己分析の方法などについて詳しく解説します。自分の強みを知ってキャリアに活かしましょう。

自分の得意なことを把握して生き生きと働くイメージ

ビジネスシーンにおいて、「自分には得意なことがない」と思ったことはありませんか?その背景には、「得意なこと」についての認識のずれ、自己肯定感の低さなど、さまざまな要因があります。

本記事では、得意なことを見つけるための自己分析の方法や、仕事での活かし方について、キャリアコンサルタントの村井真子さんに伺い、わかりやすく解説します。

そもそも「得意なこと」とは?

一般的に「得意なこと」とは、「自分にとって負担感が少なく、他者と比較したときによりよくできると自分が考えていること」です。突出して人より優れている長所やスキルである必要はないのです。

長所、好きなこととの違い

「長所」とは、その人が持つ比較的優れた特性や強みであり、性格や資質に根ざしたものです。一方で「得意なこと」は、特定の行動やスキルに焦点を当てたもので、長所とは区別されます。

「好きなこと」とは無理なく継続できること、なおかつ時間を忘れて没頭できることです。「得意なこと」と似ていますが、「得意だけど好きではないこと」もあるので、自分の心が動くかどうか、ワクワクするかどうかが違いとなります。

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得意なこと=スキル・資格なの?

例えば、英語や会計などの資格取得やスキル獲得のために勉強を重ねて、ある程度まで上達させることは、それが「苦手なこと」であっても可能といえるでしょう。それを踏まえると、得意なことをもっと磨くためにスキルや資格を取得するケースもあれば、得意ではないけど、努力を重ねて身につけたスキルや資格もあるので、完全に同じものではありません。

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ビジネスにおいて自分の「得意なこと」を考える意義

自分の「得意なこと」を理解しておくことには、どういったメリットがあるのでしょうか。主なものについて解説します。

自分に合った仕事やキャリアを選びやすくなる

「得意なこと」は説明してきたように、無理なく行えて、結果を出せることです。つまり、それを活かせる仕事を選ぶことで、自分が評価されやすい環境に身を置くことができます。特に転職活動をするときなどは、「前職で何ができたか」だけでなく、「次の職場で何を活かせるか」が問われるため、よく分析しておくといいでしょう。

自分の市場価値を高め、キャリアが描きやすくなる

自分の「得意なこと」が周囲の人にとって苦手なこと、負担感の強いことであれば、その得意を活かして働くことで、自分の市場価値を高めることにつながります。

また、努力には「苦手なことを引き上げる」努力と「得意なことを伸ばす」努力の2種類があります。後者の「得意なことを軸にスキルを磨くこと」を意識することで、着実なキャリアアップの道を描くことができるでしょう。

このようにビジネスシーンにおいて、「得意なこと」を知ることは、単なる自己理解にとどまらず、キャリアの方向性を定め、成長につなげるための要素となります。

面接・面談で「得意なこと」を質問されるのは何故?

面接で堂々と得意なことについて話す人のイメージ

「得意なこと」は、面接や人事面談などで取り上げられやすい項目です。ビジネスシーンにおいて得意なことを聞く理由や、そこから判断される評価ポイントについて具体的に解説します。

組織に貢献できる分野、能力を知りたい

企業が「得意なこと」を質問するのは、応募者がモチベーションを保ちながら、無理なく業務を遂行できるかを見極めるためといえます。適材適所で能力を発揮し、長く働いてもらうことは会社に利益をもたらす結果になるので、その人の得意なことを事前に確認しているのです。

組織とのマッチングや自己分析の精度を知りたい

「得意なこと」を明確に説明できる人は、自己分析がしっかりできている人と言えるでしょう。また、入社後にどのような仕事をしたいのかが明確なため、組織にマッチするか、本人のやりたい仕事が社内の業務とマッチするかどうかを判断する重要な材料になります。企業はこの質問を通して、応募者の強みがどのように業務に活かせるかを見極めているのです。

得意なことがなかなか見つからない原因

得意なことを見つけ、それを仕事で活かす必要性について説明してきましたが、実際は「自分の得意なことがわからない」と悩む人は多いのではないでしょうか。ここでは、得意なことが見つかりにくい主な原因を解説します。

「得意なこと」=「他者と比べて圧倒的に優れていること」と思い込んでいる

他者と比べて圧倒的に優れていないと得意なこととは言えないという認識があると、自分にとって得意なことが見つかりにくくなります。例えば、資格や学位といった客観的な証明がなければ価値を感じにくかったり、周囲の人から絶賛されるほどの実力がなければ「得意」とは言えないと考えてしまったりするケースです。

人と比べる機会がない

「得意なこと」は他者との比較によって見えてくるものです。しかし、周囲に適切な比較対象がいなかったり、比較される経験が少なかったりすると、何が得意で何が苦手なのか判断しにくいです。特に一人で完結する業務が多い人や、客観的な評価を受ける機会が少ない環境にいる人は、自分の得意なことを認識しづらい傾向があります。

「得意なこと」に対しての褒め言葉を適切に受け取れない

他者からの評価をうまく受け取れないと、自分の得意なことに気付きにくくなります。例えば、比較的女性に多いと言われている「インポスター症候群」の性質を持つ人は、自分の実力を認められずに、周囲から褒められても「運が良かっただけ」「本当はたいしたことないのに、周囲を欺いてしまっている」などと考えてしまいがちです。

このような考え方をできる限り改善するために、自分の言動に対するフィードバックは歪めて受け取らず、一度正面から受け止めてみましょう。

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得意なことを見つける方法5選

各自が得意分野で活躍するイメージ

ここからは、得意なことを見つけるための具体的な方法を紹介します。「自分には得意なことがない」と感じている人は参考にしてみてください。

自分が「無理なく楽にできること」に意識を向ける

「得意なこと」は、自分にとって負担感がなく、自然にできることです。しかし、多くの人は「できて当たり前」と思っているため、自分の強みとして認識していません。例えば、業務中の資料作成や統計データの取り扱いなど、「日常的に苦労せずに行っていること」を意識的に振り返ってみましょう。

ポイントは、「自分にとって普通のことが、他の人にとってはそうではないかもしれない」と考えることです。自分では意識していない強みが、実は周囲から評価されていることもあります。

人と比較するときは「同じ環境や年齢の人」と比べてみる

「得意なこと」を見つけるときに、その業界のプロフェッショナルや、雑誌などで取り上げられているキャリアの人と比較してしまい、「自分は大したスキルを持っていない」と落ち込んでしまうことはありませんか。しかし、本来の比較対象は自分と同じような業界・職種・経験年数の人たちです。

例えば、「営業の経験が2年の自分」が「業界歴20年のトップ営業マン」と比べるのは適切ではありません。それよりも、「同じ経験年数の同僚と比べて、どんな業務が得意か?」という視点で考えると、より現実的な「得意なこと」が見えてきます。

自分の得意なこと=人と比べて特色あるスキルである必要はない

「得意なこと」とは、誰にも負けない唯一無二のスキルである必要はありません。むしろ、他の人より少しでもスムーズにできることが、自分の強みになります。

例えば、「話を整理してわかりやすく伝えるのが得意」「細かい作業をミスなくこなせる」「プレゼン資料を短時間で作れる」といったスキルは、一見特別な才能に見えなくても、仕事の現場では大いに役立ちます。大切なのは、自分が負担なくできる業務をよく理解し、それを活かせる場面と環境についてよく考えることです。

自分の認識より周囲の客観的な意見を参考にする

「得意なこと」を見つけるときに、自分の感覚だけに頼ると間違いやすくなります。なぜなら、多くの人は自分の能力を過小評価したり、逆に過大評価していたりするからです。それを防ぐためにも、周囲の意見を積極的に取り入れましょう。

具体的には、過去に上司や同僚から褒められたこと、友人から感謝されたことなどを振り返ると良いでしょう。自分では気付かなかった強みが、周囲からのフィードバックによって明確になることもあります。

自己分析ツールを活用する

そうはいっても職場の同僚や友人に、面と向かって得意なことを聞くのは、難しいかもしれません。その場合は自己分析ツールも活用してみましょう。診断してみることで、自分の強みや向いている仕事の傾向が客観的に分かります。

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得意なことは、一朝一夕で見つかるものではありません。しかし、視点を変えたり、新しい経験を積んだりすることで、意外な強みに気付くこともあるため、焦らずに探してみてください。

得意なことが見つからない場合はどうすればいい?

今までに説明した方法を試しても「どうしても得意なことが見つからない」と感じる人もいるかもしれません。その場合は日頃の習慣を変えてみたり、新しい経験を積んだりすることで、自分の強みを発見できる可能性があります。ここでは、得意なことを見つけるための、実践しやすいアプローチをご紹介するので、参考にしてください。

積極的に行動し、新しい経験を積む

「得意なこと」は、今まで経験したことの中にしか存在しません。そのため、まだ試したことのない新しいことにチャレンジして、新たな得意分野が見つかることもあります。

例えば、新しい趣味を始めたり、ボランティア活動をしたりなど、多様な環境に触れることで、「意外とこれが得意かも?」と気付くきっかけが増えます。大切なのは、最初から「得意なこと」を探そうとするのではなく、まずは経験を積むことです。

自分が楽しいこと、興味があることを続けてみる

「得意なことが見つからない」と感じる人は、自分が純粋に楽しいと思えることや、興味を持ち続けられることを深掘りしてみましょう。「得意なこと」は、生まれつき持っているものだけではありません。「楽しくて続けていたら、自然と得意になった」というケースも多くあります。

例えば、趣味で始めたデザインを追求するうえで得意になって、新しい仕事につながることもあるでしょう。まずは、「時間を忘れて没頭できること」を見つけることが大切です。

キャリアアドバイザーに相談してみる

自分の得意なことや志向性を客観的に判断して、向いている仕事を考えることは簡単ではありません。そんなときは、キャリアや他己分析のプロフェッショナルであるキャリアアドバイザーに相談してみましょう。面談は、就職・転職エージェントなどに登録するとできるようになります。

企業によっては国家資格のキャリアコンサルタントやキャリアコンサルティング技能士に相談することも可能なので、まずは調べてみてください。

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得意なことを仕事にするメリット

ここでは、得意なことを仕事にすることで得られる主なメリットをご紹介します。

辛い作業ではないためスムーズに仕事を進められる

得意なことはスムーズにできるため、無理なく業務をこなせます。負担感が少ないことでストレスが減り、継続的に高いパフォーマンスを発揮しやすいです。また、現状のスキルでは少し難しい業務を任されても、得意なことであれば挑戦しやすく、評価されやすくもなるでしょう。

周囲から認められやすいためキャリアアップにつながる

仕事で得意なことを発揮すると、他の人との違いや強みが明確になり、周囲からの評価を得やすくなります。例えば、「資料作成が得意」「交渉が得意」といったスキルが目立つと、その分野での役割を任される機会が増え、昇進やキャリアアップにつながる可能性が高いでしょう。

得意なことを仕事にするとデメリットもある?

得意なことを仕事にするのは良い面ばかりとは限りません。次の注意点に気を付けましょう。

「得意なこと」=「好きなこと」とは限らない

先にも少し解説したように、例えば、「データ入力が正確にできる」というスキルを持っていても、それが好きとは限りません。また、長期的なキャリアとしてその業務を続けたいかどうかも別問題です。「得意=やりたいこと」とは限らないため、仕事選びの際には「自分が本当にやりたいことか?」を考えることも重要です。

周囲の環境によって「得意なこと」は変わる

得意なことは、環境や周囲の人間関係によって変わることがあります。例えば、現在の職場では「プレゼンが得意」と思えても、コンサルティングファームなどの環境に身を置くことで、自分より得意な人がいて、自信を失うこともあるでしょう。得意なことに固執しすぎると、環境の変化に対応しづらくなったり、自己肯定感が下がったりするリスクがあるため、柔軟な考え方を持つことが大切です。

得意なことを仕事にすることは、多くのメリットをもたらしますが、それにとらわれすぎず、「好きなこと」や「やりがい」とのバランスを考えることも重要です。

得意なことをビジネスシーンで活かす方法

自分の得意なことを積極的に発信していく人のイメージ

自分の得意なことについて、少しずつ理解が深まったら、それを仕事にどう活かせるかまで考えてみましょう。すぐに実践することは難しいかもしれませんが、ここで紹介する方法を一つずつ試してみてください。

周囲に自分の得意なことを積極的に開示して有効活用する

自分の得意なことは周囲に積極的に伝え、チームや組織の中で役立てることを意識しましょう。例えば、「データ分析が得意」「場を仕切るのが得意」など、自分のスキルを公言することで、周囲から自分の強みを発揮しやすい業務の相談や依頼が増えて、それが組織への貢献や成果にもつながります。

得意なことを伸ばしてスペシャリストのキャリアを歩む

得意なことは単に活用するだけでなく、さらにスキルを磨くことで、希少価値のある強みに変えることができます。例えば、マーケティングが得意ならデータ分析やデジタル広告運用の専門知識を深めるなど、スキルを深掘りすることで市場価値が高まるでしょう。

自分の得意なことを強みとして確立し、長期的なキャリア戦略の軸にしてみましょう。

「得意なこと」から仕事を見つける方法は?

得意なことをビジネスシーンで活かす方法を理解したら、最後にそれを仕事選びにどう活かすかを考えてみましょう。

「得意なこと」を活かせる業界・職種を探してみる

「得意なこと」は相対的なものであり、環境によってその価値が大きく変わります。そのため、自分の強みが「希少なスキル」として評価される業界や職種を探すことが重要でしょう。

例えば、データ分析が得意な人は、同じような得意分野を持つ人が集まるIT業界よりも、まだデータ活用が比較的進んでいない教育・介護・製造業などの業界で、より強みを発揮できる可能性があります。自分のスキルがどこで特に求められるのかを考えることで、より活躍しやすい仕事が見つかるでしょう。

自分の「得意なこと」が評価された経験を振り返る

過去に「これは得意かもしれない」と感じた瞬間や、周囲から評価された経験を振り返ることも、仕事選びのヒントになります。特に、「他の人が苦手と感じることを、負担なくできた経験」に注目すると、自分の強みがより明確になるでしょう。

例えば、顧客ニーズをとらえるのが得意という人は、企画職やマーケティング職などで活躍できる可能性が高いです。このように、得意なことをどの業務で活かせるかを考えながら、自分に合った仕事を探しましょう。

「得意なこと」と「仕事で求められるスキル」の共通点を探してみる

求人情報や企業の募集要項を見ながら、自分の得意なことと仕事で求められるスキルの共通点を探すのも一つの方法です。「この仕事なら、自分の得意なことをどのように活かせそうか?」という視点を持つことで、納得感のある仕事選びができます。

例えば、「人と話すのが得意」な人は、営業職だけでなく、カスタマーサポートや人事・採用などの職種にも適性があるかもしれません。「得意なことを活かせる仕事」だけでなく、「仕事で求められるスキル」との共通点を意識することで、より幅広い選択肢が見えてくるでしょう。

客観的に自分を見つめて、強みとなる「得意なこと」を見つけよう

「得意なこと」は、「無理なく続けられて、かつ人より優れている」と自分が感じるものです。そのため、今の職場では特別なスキルとは思えないことでも、別の業界や職種では大きな強みとして評価されることがあります。

まずは客観的な視点を持ち、自分の得意なことが最も活かせるフィールドを探してみましょう。そうすることで、自分に合った仕事やキャリアの方向性がより明確になり、より充実した働き方につながります。

監修:村井社会保険労務士事務所 代表 村井真子
社会保険労務士/キャリアコンサルタント/経営学修士(MBA)。総合士業事務所で経験を積み、愛知県豊橋市にて2014年に独立開業。LGBTQ+アライ。行政協力業務を経験し、あいち産業振興機構外部専門家を務めた。地方中小企業における企業理念を人事育成に落とし込んだ人事評価制度の構築・組織設計が強み。著作に『職場問題グレーゾーンのトリセツ』、漫画原作に「御社のモメゴト それ社員に訴えられますよ」、監訳に『バウンダリーレス・キャリア上巻』など。

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