人望とは?その意味と人望が厚い人の特徴、ビジネスで重要視される理由について紹介

「人望」はビジネスにおいて、重視されている要素の一つです。人望を得るためには、どうすればいいのでしょうか。今回は、人望が厚い人とない人の特徴、周囲から信頼される人になるために心がけるべきポイントについてご紹介します。

人望がある人の元で一致団結するイメージ

ビジネスにおいて、特に重要とされているのが「人望」。周囲から信頼される人には、共通した考え方や行動があります。この記事では、人望の基本的な意味、ビジネスにおいて人望が重視される理由、人望が厚い人・ない人の特徴、周囲から信頼される人になるために心がけるべきポイントを、オンラインでビジネススキルが学べる「やさしいビジネススクール」学長の中川功一さんに伺い、解説します。

人望とは?

人望とは、そもそもどのような意味なのでしょうか。ここでは「人望」という言葉の意味と、似た言葉である「人徳」との違いについて解説します。

人望の意味

広辞苑によると、人望は「世間の多くの人々がその人に寄せる尊敬・信頼、また期待の心」と定義されています。特にビジネスにおいては、「周囲からの信頼と尊敬を集め、協力や支援を得られる力」といえるでしょう。

例えば、あなたが困っている時、日ごろから誠実な態度で接していれば同僚から何か手伝えることはある?」と声をかけてもらえるはずです。逆に、自分のことしか考えていないと、なかなか協力の手は差し伸べてもらえません。人望は、チームワークを円滑にし、成果を最大化するために不可欠な要素なのです。

人望と人徳の違い

「人徳」は、広辞苑によると「人に自然に備わっている徳」と定義されています。この「徳」とは、人が持つ内面的な美しさ、誠実さ、優しさ、正義感などを指しています。

一方、人望は、その人の行動や実績によって築かれる、周囲からの信頼や尊敬を集める力です。リーダーシップを発揮してチームを成功に導いたり、困難な状況でも諦めずに成果を出したりすることで、周囲からの信頼を得て人望が集まります。

つまり「人徳」が、その人自身の魅力に重きを置いた言葉であるのに対して、「人望」は周囲から寄せられる信頼や尊敬の念を表しているのが主な違いとなります。

人望の厚さがビジネスで重要視されている理由

ここでは、人望の厚さがビジネスで重要視される理由について、解説します。

周囲からの協力を得やすい

人望が厚い人は、周囲からの協力を得やすいのが強みです。前述したように、プロジェクトで困難に直面した際、人望のある人には、「自分が困ったときにも〇〇さんならきっと助けてくれる」と周囲の人が積極的に協力してくれるでしょう。これは、日ごろから誠実な態度で接し、困っている人を助ける姿勢を見せているからこそです。このように良いチームワークが生まれると、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。

顧客との良好な関係が構築できる

人望は社内だけでなく、顧客との関係構築にも大きく影響します。顧客は、商品やサービスの品質だけでなく、担当者の人柄や対応も重視します。例えば、顧客からクレームを受けた際、人望のある営業担当者は、言い訳や責任逃れをするのではなく、真摯に謝罪し、迅速かつ誠実な対応を行うでしょう。このような対応は、顧客の信頼を損なうことなく、むしろ関係を深めるきっかけになることもあります。人望の厚い担当者は、顧客からの信頼を獲得し、リピート率の向上や新規顧客の紹介につなげることで、会社の成長に大きく貢献するのです。

キャリアアップの機会が増える

人望が厚いと、重要なプロジェクトや役職を任される可能性が高まり、キャリアアップの機会が広がります。ほかにも、さまざまな人脈を通じて、新しい知識やスキルを学ぶ機会が増え、成長にもつながるでしょう。

例えば、上司や同僚から「〇〇さんなら、きっと成功させてくれる」と、重要なプロジェクトリーダーに抜擢されるケースが考えられます。また、社内外のセミナーや研修への参加を推奨されたり、メンター制度を活用して、スキルアップを支援してもらえたりすることもあるでしょう。

人望が厚い人の特徴

誠実な人柄で人望が厚い人のイメージ

人望が厚い人には、いくつかの共通した特徴があります。ここでは、その傾向について解説します。

誠実な人柄である

人望が厚い人は、誠実さを大切にし、一度交わした約束は必ず守ります。例えば、仕事で納期に遅れそうな場合でも、言い訳をせずに早めに上司や関係者に状況を説明し、影響を最小限に抑える方法を考えます。小さなことでも嘘をつかず、常に正直であることが特徴です。

傾聴力と共感力が高い

人望が厚い人は、話を注意深く聞く「傾聴力」と、相手の気持ちに寄り添う「共感力」が高いです。

例えば、同僚が仕事で悩んでいる場合、アドバイスよりも前に、まずはじっくりと話を聞き、相手の気持ちを受け止めます。「それは大変でしたね」「よく頑張っていますね」など、共感の言葉を伝えると、相手は心が軽くなり、安心して相談できるようになるでしょう。

感謝を日ごろから言葉と行動で示す

人望が厚い人は、どんなに小さなことでも感謝の気持ちを忘れず、言葉と行動で表現します。例えば、同僚が自分の仕事を手伝ってくれた場合、口頭で「ありがとう」と感謝を伝えるだけでなく、後日、その同僚が困っていることがあったら率先して助けるなど、具体的な行動でも感謝の気持ちを示します。上司や先輩から指導を受けた場合は、感謝の気持ちを伝えるとともに、学んだことを実践し、成果を出そうと努めるでしょう。

ポジティブ思考でユーモアがある

人望が厚い人は、常に前向きな姿勢で物事に取り組み、困難な状況でもユーモアを忘れません。ネガティブな発言や愚痴ばかり言うのではなく、明るい話題を提供することで、周囲を元気づけるのです。

例えば、プロジェクトが失敗に終わっても、反省点を見つけ出し、次への教訓とする一方で、「今回の失敗をバネに、次は成功させましょう!」と前向きな言葉でチームを鼓舞します。ほかにも、自分のちょっとした失敗のエピソードを面白く話すなど、周囲の空気を和らげることも多いでしょう。このようなポジティブ思考やユーモアを交えた話術は、周囲に良い影響を与え、困難な状況でもチームの団結力を高めてくれます。

人望がない人の特徴

人望がない人にはそれなりの特徴があります。ここでは、その代表的な要因について、ビジネスシーンに即して解説します。

自己中心的な行動をとりがち

人望がない人の特徴として、まず挙げられるのは自己中心的な行動です。自分の利益を優先しすぎるあまり、周囲への配慮が足りなくなることがあり、その結果として周囲からの信頼を得にくくなります。 例えば、プロジェクトの成果を独り占めしようとしたり、自分のミスを他人のせいにしたりする、会議で自分の意見ばかり主張し、他者の意見に耳を傾けない、困っている人がいても見て見ぬふりをするなどの行動が挙げられます。このような行動は、周囲に「あの人は自分のことしか考えていない」という印象を与えやすく、自分の評価を下げてしまうこともあるでしょう。

約束を守らない

人望がない人は、自分の都合が悪くなると、平気で嘘をついたり、約束をキャンセルしたりする傾向があります。例えば、納期に間に合わないのに「大丈夫」と嘘をつく、同僚との約束をドタキャンするなどの行動は、周囲からの信頼を大きく損ないかねません。ビジネスにおいては信頼関係が非常に重要なので、嘘をついたり、約束を破ったりする人は、長期的に見て成功することは難しいでしょう。

感謝の気持ちを表現しない

人望がない人は、周囲からの助けやサポートを当たり前だと思い、感謝の気持ちを表現しない傾向があります。助けてもらっても「ありがとう」を言わなかったり、お礼をすることを面倒くさがったりするため、周囲は「感謝の気持ちがない人だ」と感じ、協力する意欲を失ってしまうことがあります。感謝の気持ちを伝えることは、人間関係を円滑にするための潤滑油です。これが不足すると、人間関係がギスギスし、孤立してしまう可能性があります。

他人の悪口や噂話をする

人望がない人は、平気で他人の悪口や噂話をすることがあります。例えば、同僚のミスや上司の個人的な情報を不用意に話すと、周囲に「あの人は信用できない」「いつ自分の悪口を言われるかわからない」という警戒心を抱かせます。また、悪口や噂話が巡り巡って当事者の耳に入ると、大きなトラブルに発展し、結果的に孤立してしまうことも考えられます。

人望が厚い人になるため、心がけるべきポイント

感謝の気持ちを言葉に伝えるイメージ

人望が厚い人になるためには、日ごろからどのような行動を心がけると良いのでしょうか。ここでは、若手のビジネスパーソンが特に心がけたいポイントについて解説します。

積極的に「あいさつ+α」でコミュニケーションを始める

人望を高める第一歩は、積極的なコミュニケーションをとることです。ただあいさつをするだけでなく、「おはようございます!今日もお元気そうですね」「おつかれさまです、何かお手伝いできることはありますか?」など、一言添えることで、相手との距離がぐっと縮まります

また、会議後には「今日の〇〇さんの意見、とても参考になりました。ありがとうございます」などと個別に伝えることも有効です。コミュニケーションが生まれるだけでなく、仕事のヒントを得ることにもつながるでしょう。

困っている人に声をかける

困っている人に寄り添う姿勢は、人望を高める上で非常に重要です。忙しい時でも、周囲に目を配って、声をかけてみましょう。例えば、業務でなにか困っている同僚がいれば、「何かお手伝いできることはありますか?」「大丈夫ですか?」などと話しかけてみてください。直接サポートができなくても、話を聞いてあげるだけで、相手の気持ちは楽になるはずです。

感謝の気持ちを言葉にして伝える

感謝の気持ちを伝えることは、人間関係を良好に保つための基本です。ただ「ありがとうございます」と言うだけでなく、「〇〇さんが手伝ってくれたおかげで、本当に助かりました」など、具体的な内容を添えることで、感謝の気持ちが伝わりやすくなるでしょう。

失敗を素直に認め、改善に努める 

誰でも失敗はするものですが、人望のある人は、自分の失敗を素直に認め、きちんと責任を取ろうとします。例えば、ミスをしてしまった場合は、「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。今後は二度と繰り返さないよう、再発防止策を徹底します」と謝罪し、具体的な対策を提示するようにしましょう。

謙虚さを武器にする

若手のビジネスパーソンの場合は特に、謙虚な姿勢を意識しましょう。会議で意見を述べる際であれば、「勉強不足な点もあるかと思いますが……」などと前置きすることで、周囲はあなたの意見をより真摯に受け止めてくれるはずです。また、先輩や上司からアドバイスを受けた際は、「貴重なご意見ありがとうございます。参考にさせていただきます」と感謝の気持ちを伝え、積極的に質問するなどの姿勢が大切です。

<関連記事>謙虚(けんきょ)とは?意味とビジネスにおけるメリット、身につける方法を解説

学びの姿勢をアピールする

積極的に研修やセミナーに参加し、そこで得た知識を積極的に業務に活かす姿勢を見せましょう。若手のビジネスパーソンには、新しい知識や技術を吸収するスピードが速いという強みがあります。例えば、最新のマーケティング手法を学んだら、チームに共有したり、小さなプロジェクトで実践してみたりすることで、貢献意欲を示すことができます。また、上司や先輩に「〇〇分野についてもっと学びたいので、何かオススメの書籍はありますか?」などと尋ねることで、やる気を示すとともに、コミュニケーションのきっかけを作ることができるでしょう。

約束を守る

小さな約束でも必ず守り、信頼を積み重ねましょう。例えば、「明日までに資料を送ります」と伝えた場合、相手はそれを前提に予定を立てているかもしれません。やむを得ず約束を守れそうにない場合は、早めにその旨を伝える誠実さも重要です。

人望を高める上で避けるべき発言

ここまで人望が厚い人になるために心がけたいポイントを見てきましたが、反対に日ごろのちょっとした発言で、人望をなくしてしまうことがあります。ここでは、人望を高める上で避けたほうがよい発言をいくつかご紹介します。

周囲に責任転嫁するような発言

失敗してしまった時、言い訳をしたり責任転嫁をしたりするのは絶対に避けましょう。例えば、自分のミスで納期遅延が発生した場合であれば、「〇〇さんの協力が得られなかったから」「システムの不具合が原因で」などと責任をほかに転嫁するような発言は、周囲からの信頼を大きく損ないかねません。その代わりに、「私の確認不足で、納期遅延が発生してしまい申し訳ありません。今後は二度と繰り返さないよう、改善策を徹底します」と、まずは自分の責任を認め、改善に努める姿勢を示すことが重要です。責任を果たすことこそが、信頼を築く上で最も大切な要素の一つとなります。

ネガティブな発言

常に不満や愚痴ばかりを口にしていると、周囲のモチベーションだけでなく、自分の評価も下げてしまいます。例えば、新しいプロジェクトが始まった際、「どうせうまくいかない」「残業が増えるだけだ」などとネガティブな発言を繰り返すのは避けましょう。代わりに、「今回のプロジェクトは新しい挑戦なので、いろいろと困難もあると思いますが、チーム一丸となって成功させましょう!」などと、前向きな姿勢を示すことが大切です。批判ばかりで具体的な改善策を示さないと、ただの文句と捉えられてしまうので、建設的な意見や提案を心がけましょう。

空気を読まない発言

状況にそぐわない発言は、周囲を不快にさせ、あなたの評価を下げてしまう可能性があります。例えば、上司や先輩が真剣な話をしている最中に、場をわきまえない冗談を言ったり、関係のない話題について話し始めたりするのは、失礼と受け取られるでしょう。常に周囲の状況を把握し、TPOに合わせた発言を心がけることが大切です。特に、ビジネスシーンでは、相手への敬意を忘れないようにしましょう。

長期的な視点で人望を築こう

人望は「与えること」だけで築かれるものではありません。助け合いには健全なギブ&テイクのバランスが不可欠です。無理をして与え続けると、相手との関係が不均衡になって自分自身も疲弊してしまうため、長続きしません。例えば、困っている同僚を助けるのは素晴らしいことですが、自分のキャパシティを超えるほど手伝ってしまうのは本末転倒です。 時には「今は手が離せないけれど、あとでなら」と正直に伝えることも、信頼を深める行動のひとつでしょう。長期的な視点で見たときに、より強固な人望を築くためには、自分も相手も大切にする姿勢が求められます

監修:やさしいビジネススクール学長 中川功一
経済学博士(2009年、東京大学)。「アカデミーの力を社会に」をライフワークに据え、日本のビジネス力の底上げと、学術知による社会課題の解決を目指す。学長を務めているオンライン経営スクール「やさしいビジネススクール」を中心に、YouTube・研修・講演・コンサル・著作などで経営知識の普及に尽力している。 主な著書に『感染症時代の経営学』『ど素人でもわかる経営学の本』『戦略硬直化のスパイラル』など。

【関連記事】
信頼関係を築くには?仕事における重要性や築き方を解説
影響力のある人の特徴は?ビジネスにおけるメリットや高めるポイント、方法も紹介
「傾聴力」ひとつで、好印象に!コミュニケーションが円滑になる、話の聞き方

page top