- そもそも「好きなこと」の定義は?
- 「好きなこと」を見つけるメリットとは?
- 「好きなこと」が見つからない原因
- 自分の「好きなこと」を知るための5つの質問
- 「好きなこと」を仕事に活かす方法
- 「好き」は見つけるものではなく、育てていくもの
好きなことを仕事にできたらいいのに……そう考える人も多いのではないでしょうか。とはいえ、そもそも「自分の好きなことがわからない」といった悩みを抱える人も少なくありません。
今回は、キャリアコンサルタントとして人材育成に携わってきた村井真子さんに伺ったお話をもとに、好きなことをビジネスシーンで活かすための方法などについて、分かりやすく解説します。
そもそも「好きなこと」の定義は?
「好きなこと」は何ですかと聞かれたとき、どのように答えますか。答えるのが難しいと感じる人は、そもそも「好きなこと」が、自分の中であいまいになっているのかもしれません。まずは「好きなこと」の定義について考えてみましょう。
無理なく続けられて、作業が心地よく感じること
「好きなこと」とは、無理に頑張らなくても自然と続けられること、そしてその時間が心地よく感じられるもののことです。例えば、誰かに言われなくても、つい調べてしまうことや、気付けば何時間も夢中になっていることがあれば、それが「好きなこと」と言えるでしょう。
得意なこと、長所、憧れとの違い
「好きなこと」は、あくまで主観的に考えるものなので、他の人との比較は必要としません。一方で、「得意なこと」や「長所」は、他者からの評価や順位が関わってくるものであり、両者はそこが大きく違います。
また、「憧れ」については、まだやっていないけれどやりたいことや、取り組みたいと思っているもののことを指します。それに対して、「好きなこと」というのは、継続して楽しんでいるものが多く、今まで経験してきているかどうかが違いになるでしょう。
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「好きなこと」を見つけるメリットとは?
「好きなこと」を見つけることは、単に趣味を増やすという意味だけではありません。それは、自分がどのように働きたいのか、どんな人生を歩みたいのかを考える重要なきっかけにもなります。ここでは、「好きなこと」を見つけるメリットについて、見ていきましょう。
知識やスキルを習得しやすい
「好きなこと」は、それを続けること自体が心地よく感じられるため、新しい知識を吸収したり、スキルを磨こうとしたりするモチベーションが内側から湧きやすいです。そのため、結果的にその分野への理解が深まり、実践的なスキルや専門性の向上にもつながります。
モチベーションの維持につながる
「好きなこと」をすることは、自分にとって心地よく気分が上がる行為です。そのため、苦手な作業や集中力が必要な業務に取り組む際、「好きなこと」を合間に挟むことで、気持ちの切り替えがしやすくなり、モチベーションの維持にもつながります。
例えば「人と話すのが好き」であれば、単調な経理業務や報告書作成の合間にミーティングや面談の予定を入れることで、集中力の低下を防ぎ、仕事全体の効率アップにも役立つでしょう。
キャリアを考える際の材料になる
自分のキャリアプランを考えるなかで、「好きなこと」から考え始めることは、有効な手段の一つです。好きなことは自分で探求し、成長しやすい分野なので、キャリアを考える際の材料にすることで選択肢が広がるでしょう。
例えば「人と話すのが好き」なら、営業やカスタマーサポート、カウンセラーや研修講師などといった対人スキルを活かせる職種への挑戦も考えられます。
「好きなこと」が見つからない原因
このように「好きなこと」を見つけるメリットについて説明してきましたが、実際に自分の好きなことをはっきりと自覚している人は少ないのではないでしょうか。好きなことを見つけるまでに陥ってしまいやすい思い込みや間違いについて解説します。
日常が忙しく、自分と向き合う時間が取れていない
仕事や家事、学業などに追われる日々では、自分の感情や興味に目を向ける余裕がなくなりがちです。そのため、「自分が本当に好きなことは何か」を深く考える時間が持てず、自分が心から求めていることに気付かないまま過ごしてしまうことも少なくありません。
過去の経験から、自分の感情を抑えるクセがついている
特に子どもの頃に、自分の好きなことに対して否定的な意見を言われてきた人は、「好き」という感情にフタをするクセを持ってしまうこともあります。この影響で、自分が何にワクワクするのか、何が心地よいのかを感じにくくなっている人もいるでしょう。
比較思考が強く、他人と比べてしまう
最近はSNSなどで可視化されやすいこともあり、周囲の人の成功と比べたりして、「自分にはあれほど夢中になれるものがない」と感じてしまうことがあります。さらに、「好き=得意」「人より上手でなければ」といった思い込みが、自分の素直な感情を押し殺してしまう原因になることもあるでしょう。
十分な経験や挑戦をしていない
「好きなこと」が見つからないのは、そもそも十分な経験や挑戦をしていないだけということも少なくありません。新しいことに触れる機会が少ないと、「これが好き」といえるものに出会うチャンスも限られます。興味のあるなしに関わらず、まずは行動して体験を重ねると、「思ったより楽しい」「意外と合っているかも」といった気付きが得られることもあるでしょう。
自分の「好きなこと」を知るための5つの質問
「好きなことを見つけたいけれど、どうやって探せばいいのかわからない」という方も多いのではないでしょうか。これから紹介する5つの質問は、答えを考えるなかで、自分の興味や心地よさのヒントを探る手がかりになります。
自然に答えが思い浮かぶものだけでもいいので、気軽に取り組んでみてください。
問1:時間を忘れて何かに夢中になった経験はありますか?
ふと気がついたら、時間があっという間に過ぎていたということはありませんか? それは、「頑張ろう」と意識しなくても自然と続けられること、すなわち「好きなこと」の可能性が高いのです。「自分の好きなことは何だろう」と考えたときに、まずはこの問いを思い出してみましょう。
問2:人からよく「それ詳しいね」と言われる話題はありますか?
自分では特別に意識していなくても、実は気になったらすぐ検索しているという分野は、好きなことである可能性が高いです。こうした分野は自然と知識が深まりやすく、熱を注いでいるものと言えるでしょう。PCの検索履歴を眺めてみるのもおすすめです。自分でも気付いていなかった「好きなこと」に目を向けるきっかけになります。
問3:体調も良く、完全に予定のない休日を過ごせるとしたら、何をしたいですか?
この質問は、無意識に「こういう時間を過ごしたい」と思っている心地よい時間の使い方を知る手がかりになります。「健康な状態で、時間がたっぷりある」ことがポイントであり、そんなときに選ぶ行動こそ自分が時間を使いたいと本気で思っていることです。
問4:お金や評価を一切気にしなくていいとしたら、何を仕事にしたいですか?
日常的に抱えている、「制限」や「期待」から解放されたときに表れる、純粋な好奇心を探ります。周囲の目や損得を考えずに「やってみたい」と思えることのなかに、あなたの「好き」が眠っているかもしれません。いったん条件を外して考えてみることで、より素直な自分の興味や願望に気付くことができるでしょう。
問5:最近心を動かされたことはどんなことでしたか?
テレビやSNSで見た出来事、誰かの言葉や、音楽や映画、本に触れることで、「心が揺れた瞬間」はありましたか? その感情には、大切にしている価値観や、興味関心が表れていると言えるでしょう。「自分は何に共感し、何に反応する人間なのか」を知ることは、「好きなこと」を見つける第一歩といえます。心が動いた出来事を丁寧に振り返ることで、意外な「好き」の種が見えてくるかもしれません。
【番外編】好きなことを見つけるためのヒント
これらの質問を自分に問うことで、自分についての理解が少し進んだのではないでしょうか。ほかにも、まいにちdodaでは自己理解を進めるための実践的な方法を記事で紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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「好きなこと」を仕事に活かす方法
自分の「好きなこと」は見つけられたけれど、それを仕事にどう結びつければいいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。実は、必ずしも「好きなこと=職業」にする必要はありません。ここでは、好きなことを日々の業務や役割のなかから仕事に活かす方法をご紹介します。
好きなことを「業務内容」に近づける
まずは「好きなこと」を今の仕事のなかに取り入れることから始めてみましょう。例えば、「人と話すのが好き」なら、クライアント対応やチーム間の調整役として積極的に関わる、「資料作成やデザインをするのが好き」なら、社内のプレゼン資料や提案書の作成を引き受けるなどがよいでしょう。今行っている業務のなかに、自分の「好き」が活かせる場面を見つけ出して組み込むと、仕事のモチベーションやパフォーマンスも高まりやすくなります。
好きなことを「スキル」に変換する
「好きなこと」は、継続して取り組むことが苦にならないため、自然と知識や技術が深まりやすい特徴があります。継続して深めたスキルを活かして、仕事での価値や活躍の場を広げることもできるでしょう。
例えば、「動画編集が好き」なら社内広報や商品PR動画の制作に関わる、「文章を書くことが好き」ならば、文章力を強みとして、会社のSNS運用や広告文を考えるなど、好きなことを育てて、キャリアの武器にも変えられます。
好きなことを「キャリアの方向性」として活かす
「好きなこと」を軸にキャリアの方向性を描くことで、自分らしく納得感のある働き方を目指すことができます。今すぐ仕事に結びつけなくても、「いつかはこうなりたい」という長期的な視点を持つことで、日々の選択や行動に意味が生まれるでしょう。
例えば、「人に教えるのが好き」ならば、将来的に研修講師や育成担当、人材開発職を目指す、「アートや表現が好き」なら、デザイン職やクリエイティブ職へのキャリアチェンジを視野に入れるなどの目標を持つと、日々のスキルアップや経験の積み重ねにも前向きに取り組めるようになります。
「好き」は見つけるものではなく、育てていくもの
「好きなことが見つからない」「仕事にどう活かせばいいかわからない」と悩むのは、自分らしく働きたいという前向きな気持ちの表れです。しかし、「好きなこと」は最初からはっきりとしたかたちで存在するとは限らず、経験を重ねながら「育てていく」ものです。まずは、今の仕事のなかにある小さな「好き」に目を向けてみましょう。その積み重ねが、自分らしいキャリアへの第一歩になります。
監修:村井社会保険労務士事務所 代表 村井真子
社会保険労務士/キャリアコンサルタント/経営学修士(MBA)。総合士業事務所で経験を積み、愛知県豊橋市にて2014年に独立開業。LGBTQ+アライ。行政協力業務を経験し、あいち産業振興機構外部専門家を務めた。地方中小企業における企業理念を人事育成に落とし込んだ人事評価制度の構築・組織設計が強み。著作に『職場問題グレーゾーンのトリセツ』、監訳に『バウンダリーレス・キャリア上巻』『組織と従業員の間で変化する心理的契約』『経営心理学』など。
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