- 自信過剰とは?
- 自信過剰な人の特徴とは?
- 自信過剰な人と自信のある人の違いは?
- 自信過剰な人の心理状態とは?
- 自信過剰が仕事に与えるネガティブな影響
- 自信過剰が仕事に与えるポジティブな影響
- 自信過剰な人との職場での付き合い方
- 自信過剰を改善するには?
- 現実に見合った自信を持つことが自信過剰を改善するポイントに
自分の行動や気持ちに自信があると、仕事の生産性が上がり、モチベーションの維持にもつながります。しかし、自信がありすぎて「自信過剰な状態」に陥ってしまうと、職場での人間関係が悪化してしまったり、リスクを軽視してしまったりすることもあるでしょう。
この記事では、コミュニケーション講座の講師として心理学や人間関係に関するワークを行っている公認心理士の川島達史さんにお話を伺い、自信過剰の意味や自信過剰な人の心理状態、仕事に与える影響から改善方法などを解説します。
自信過剰とは?
自信過剰とは、自分の能力や価値について、現実よりも高く評価している状態のことを指します。周囲から見ると「根拠のない自信」に見えることが多く、自身の失敗や周囲の助言を軽視しがちといった特徴があります。心理学的には、自己効力感(自分にはできるという感覚)が過剰であると表現することが多いです。
自信過剰と自意識過剰の違いとは
自信過剰と少し似たような言葉に「自意識過剰」がありますが、この2つは本質が異なります。
「自信過剰」は自分の能力や価値を実際以上に高く見積もり、根拠のない自信を持つ状態を指しますが、「自意識過剰」は他人からの評価や視線を過剰に気にしてしまう状態を指します。
前者は自分に意識が向きすぎて慢心しやすく、後者は他人に意識が向きすぎて不安や緊張を招くといった違いがあります。「できる」と思い込むのが自信過剰、「他者からどう見られているか」を気にしすぎるのが自意識過剰と覚えておきましょう。
自信過剰な人の特徴とは?
自信過剰な人にはどのような特徴があるのでしょうか。ここではビジネスシーンを例に、よく見られる特徴を紹介します。
知識や経験が不足している
自信過剰な人は、知識や経験が不足していることが多々あり、自分自身の状況を正しく判断できないケースが多いです。能力が低い人ほど自分を過大評価してしまうという心理的傾向は、「ダニング・クルーガー効果」と呼ばれ、1999年に心理学者のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーによって提唱されています。
忠告を軽視する
自信過剰な人によく見られる特徴の一つに、他者からのアドバイスや忠告を軽視するという点も挙げられます。自信過剰な人は自分の判断が正しいと思い込み、他人の助言を受け入れようとしない傾向があります。
リスクを軽視しがち
根拠のない自信によって「自分なら失敗しない」と思い込む傾向があるため、周囲が指摘するリスクや注意点を軽視しがちです。その結果、十分な準備を怠ってしまったり、無謀な挑戦をして失敗を招いたりすることがあります。
周りのせいにする
自己評価が表面的には高いため、仕事で失敗してしまったり、トラブルが起こったりしても、自分の非を認めず、問題の原因を外部に求めて責任逃れをしようとする傾向があるのも特徴の一つです。
これは、「優秀な自分がうまくいかないのは、環境や周りが悪いからだ」と考えてしまうためです。しかし、内心では自分に対する不安や劣等感を抱えていることもあり、
その矛盾が周囲とのコミュニケーションに影響を及ぼし、誤解や孤立を招くこともあります。
成果を誇張しがちで、自慢が多い
承認欲求が強く、実際の実力以上に成果を語ったり、無意識に自分をよく見せようとする言動が多かったりする傾向もあります。周りからはギャップがあるように見えるため、対立を引き起こす要因にもなり得るでしょう。
自信過剰な人と自信のある人の違いは?
自信があることは、決して悪いことではありません。むしろ、ビジネスシーンにおいては強みになることも事実です。しかし、自信がある状態と、自信過剰な状態は、根底にある本質が異なります。
自信のある人は、「客観的かつ妥当な根拠」に基づいて自分を理解しています。一方で、自信過剰な人は、「根拠のない思い込み」に基づいて自分を過大評価してしまいがちです。後者は虚勢に近く、周囲を困惑させてしまうことが多いですが、前者は安定した強さを持ち、客観的に自分を評価しています。
実力、姿勢、行動に一貫性があるのは自信がある人の特徴であるため、周囲からも納得されやすいのです。
自信過剰な人の心理状態とは?
そもそも、どうして自信過剰な状態になるのでしょうか。ここでは、考えられる心理的要因について解説します。
防衛的な心理
自信過剰というと、自信にあふれているという印象がありますが、実際には自己評価が低く不安を抱えていることが多いです。その弱さを隠すためにあえて強気でふるまったり、自信があるように見せていたりすることがあります。本人はその矛盾に無自覚なことが多く、周囲からは虚勢を張っているように見られていることも少なくありません。
承認欲求が強い
承認欲求とは、他者から「すごい」と思われたり、「認められたい」という気持ちが強かったりすることを指します。自信過剰な人はこの承認欲求が強い傾向があり、常に周囲の反応を気にして行動しがちです。他者からの評価に敏感なあまり、自信過剰や自意識過剰な状態を招くことがあります。
<関連記事>承認欲求とは? 強い人の特徴やなくしたい場合の方法を徹底解説
パーソナリティの傾向(ナルシシズム)
自信過剰な人は、自分を特別だと思いたい気持ちが強く、他人からの視線に過剰に反応する傾向があります。自意識が高まり、常に注目されていたい欲求が高くなるなどのパーソナリティ(人柄)が影響し、自信過剰な状態に陥っている可能性があるのです。
過保護な養育環境が要因になることも
親から過剰に守られて育つと、自分で問題を解決する機会に恵まれないため、問題解決能力や人間関係の構築に問題が生じることがあります。
その結果、現実的な自己評価が育たないまま周囲の目に過敏になり、自分をより良く見せようとして自信過剰な言動をするようになってしまうこともあります。
自信過剰が仕事に与えるネガティブな影響
自信過剰であることは、ビジネスシーンにおいてどのような影響を及ぼすのでしょうか。まずはネガティブな影響を解説します。
リスクを軽視して大きな損失につながる可能性がある
前述した通り、自信過剰になると「自分なら失敗しない」と思い込む傾向があり、リスクを軽視して行動してしまいがちです。仕事をする際は具体的な目標に向かって、十分な計画とリスク管理を行うことが大切です。しかし、自信過剰になると準備や対策を怠ってしまい、大きな損失を招いてしまうことがあります。
自己主張が控えめな人の意見を拾えない
自信過剰な人は、自分が正しいという思い込みから、発言力の弱い人の意見を軽視しがちです。結果的に自分の意見を押し通す形で仕事を進めてしまうため、多様な視点を失い、チームの本来の力が発揮できなくなることもあるでしょう。
面接時は高評価でも入社後に評価が下がりやすい
自信過剰な人のポジティブな側面として、意見をはっきり言うことや、堂々とした態度で存在感を示す点が挙げられます。その結果、面接などでは堂々とした振る舞いで高評価を得ることができますが、入社後に実力のギャップが明らかになり、かえって信頼や評価を失う可能性も出てくるでしょう。
自信過剰が仕事に与えるポジティブな影響
自信過剰と聞くとネガティブに捉えられがちですが、ビジネスにおいてプラスの効果をもたらすこともあります。次に、自信過剰が具体的にどのように良い影響を与えるかを解説します。
時には行動力を発揮することも
新しいチャレンジをする際は緊張したり尻込みしてしまったりすることがあるでしょう。しかし、自信過剰な人は未知の分野にも恐れず挑戦できるため、成功の可能性が見えにくい新規事業などでその行動力が武器になることがあります。
プレゼンで成功しやすい
堂々と話す姿が相手に自信と安心感を与えるため、営業やプレゼンテーションなど、人前で話す場面では説得力が増し、成果につながりやすいです。そのため、発言力や行動力が求められる営業の仕事では、自信過剰なことが逆に強みとなる場合もあります。
自信過剰な人との職場での付き合い方
自信過剰な人が職場の同僚にいる場合、どのように接したらいいのか悩んでしまう人もいるかもしれません。ここでは、自信過剰な人との付き合い方のポイントについて解説します。
長所を活かしてもらう
堂々と話せる力や行動力は、ビジネスシーンにおいて大きな武器になります。営業やプレゼン、新規事業の立ち上げなど、適正のある場面で協力を依頼するとその長所を活かしてくれるでしょう。
リスクをフォローする
仮に、同じ部署やチームに自信過剰な人がいた場合は、さりげなくフォローすることで生産性の低下を防ぐことができます。特に、自信過剰な人はリスク管理が甘い傾向があるため、周囲が事前にリスクを洗い出し、現実的な視点で補完することがポイントになります。
仕事を細分化したり、ダブルチェック体制にしたりするなど、状況を把握しやすい環境を整備するとよいでしょう。
客観的な根拠を求める
もしも、自信過剰な人が自分の意見を押し通そうとしたり、他者の意見を聞かない態度を見せたりした場合には、発言や判断に対して「貴重な意見ありがとう。でも、よく考えたらこんな懸念点があるかも」「まだ議論が足りてない気がするから他の人の意見も聞いてみようか」など、冷静に問いかけることで思い込みによる過信をやわらげる効果が期待できます。
誤った判断を防ぐためにも、客観的な根拠をもとに分析・判断する習慣をつけることが重要です。
少し距離を取ってみる
他人を見下す態度が強い場合など、もし自分が相手との関わりでストレスを強く感じる場合は、無理に状況改善に努めるのではなく、一旦精神的・物理的に距離を取り自分の心を守ることも大切です。
ハラスメントに近い深刻なケースの場合は、第三者に相談し、部署変更や出勤時間の調整など、精神的な負担を和らげるための何らかの対策も検討してみましょう。
自信過剰を改善するには?
自信過剰な人との付き合い方について解説しましたが、逆にふとした瞬間に「もしかしたら、自分は自信過剰なのかもしれない」と感じることがあるかもしれません。自信過剰を改善するためには、次の3点を意識してみてください。
周りの意見に耳を傾ける
自信過剰になると、他者の声や第三者の意見に耳を傾けず、自分の主張を繰り返してしまう傾向があります。そのため、自分の考えだけに固執せず、信頼できる人の意見を素直に聞いてみることを意識しましょう。他者の意見を聞くことで、視野が広がってバランスの取れた判断ができるようになります。
謙虚な姿勢で取り組むことを意識する
「自分ならできる」とポジティブに捉えることは決して悪いことではありません。しかし、知識や経験が不足している分野については、謙虚な姿勢で慎重に取り組むことが重要です。知識や実績が伴わない自信は、とても危険です。
初心者であるからこそ「まだ知らないことが多い」と自覚する姿勢を意識してみましょう。
リスク管理を常に意識する
楽観的な見通しだけで動くのではなく、最悪のケースも想定して行動することで、慎重で現実的な判断が可能になります。意思決定をする際には、それが本当に最善の選択なのかどうかを確認するために、他者の意見も参考にしながらリスク管理を行うことが重要です。
現実に見合った自信を持つことが自信過剰を改善するポイントに
自信過剰は、行動力や突破力につながる一方で、周囲とのトラブルやリスクを招くこともあります。大切なのは「自信があること」ではなく、「現実に見合った根拠ある自信を持つこと」です。特にビジネスの世界では、根拠のない自信だけでなく、経験と努力から蓄積された自信が必要です。健康的な自信を保ちつつ、現実に根ざした視点で自分を見つめ直していくことが、より良い仕事にもつながっていくはずです。
監修:ダイレクトコミュニケーション 代表取締役 川島達史
目白大学大学院心理学研究科を修了し、現在ではコミュニケーション講座の講師として、心理学や人間関係に関するワークを行う。専門は成人のソーシャルスキルが孤独感・対人不安に与える影響。普段は「コミュニケーション講座」の主催や、YouTubeチャンネル「ダイコミュ大学」による情報発信を行なっている。
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