
- 自分にできることがないと感じる若手ビジネスパーソンは多い?
- 「できること」がわからないときの考え方
- 自分の内面や過去の経験がヒントになる?「できること」を見つける方法
- 「できること」を活用する方法
- 自分の「できること」が見えてくると、人生の選択肢も広がっていく
将来や今後のキャリアについて考えるときや、これまでの自分を振り返ったときに、「そもそも、自分には何ができるんだろう」「なりたい自分になるためには、何をしたらいいのだろう」と悩むことはありませんか。
「自分のできることがわからない」という状態に陥っている人は、意外と多いかもしれません。しかし、そのわからない原因を知ることで、自分の強みや得意なことを知るきっかけになるはずです。
本記事では、『キャリアは言語化でうまくいく 書くだけで人生のモヤモヤがなくなる自分を言葉にする技術』の著者でもあり、早期離職防止コンサルティングやキャリア教育を行う井上洋市朗さんにお話を伺い、「できること」がわからないときの考え方や、「できること」を見つける方法を解説します。
自分にできることがないと感じる若手ビジネスパーソンは多い?

企業の若手社員定着率向上支援や講演を行ってきた井上さんによると、若手ビジネスパーソンの中には、「自分にはできることが少ない」と感じる人が多いといいます。
「できることがないと感じる人は、自信がないというよりも、『早く何かできるようにならなくては』『自分はもっと成長しなければならない』など、焦燥感が起因していることもあるんです。
近年は、同じ世代ですでに成功している人をSNSなどで目にする機会が増えていますよね。その影響もあって、『できること』へのハードルが、より一層高くなっていると考えられます」(井上さん、以下同)。
自分の「できること」がわからない原因
なぜ、自分の「できること」がわからなくなってしまうのか。その原因について、井上さんは周囲との過剰な比較や将来に対する強迫観念などが挙げられると話します。
SNSや周囲の優秀な人との過剰な比較
「周囲の人と自分を比較しすぎてしまうのも、自分のできることを見失ってしまう原因の一つですね。
『学生時代に起業した』『20代で事業を成功させた』など、SNSでさまざまな情報に触れる機会が増えたことで、無意識のうちに“当たり前”のレベルが上がってしまい、“自分には何もない”と感じてしまうのです。
また、周囲に優秀な同期や後輩の存在があると、『自分は成長していないのではないか』と自信を失う原因になることもあるかもしれません」。
将来に対する強迫観念や焦燥感
「近年は企業間の競争が激化しており、スピード感のある実行力や意思決定力など、企業が従業員に求める期待も上がってきています。
また、SNSなどで『20代のうちにできることを見つけておかないと、将来後悔することになるかもしれない』といった投稿を目にし、将来に対する不安が大きくなってしまう人もいるようです。
そのような背景を受け、『もっと今の自分よりもできるようにならなければならない』という強い焦燥感が生まれ、視野が狭まって自分のできることを見失ってしまうと考えられます」。
資格や語学など「わかりやすいスキル」への固執
「自分のできることを探すときに、資格や学歴など、定量化しやすく他者と明確に差別化できる“わかりやすいもの”ばかりを求めてしまう傾向もあります。
その結果、ビジネスシーンでは、資格などのスキル以外にも、性格や知識など、さまざまな要素を考慮して評価が決まるにもかかわらず、目に見える資格がないだけで“自分にはできることがない”と思い込んでしまうのです」。
突出した能力への憧れ
「わかりやすく突出した能力に憧れるあまり、さまざまな仕事をそつなくこなすバランス型の自分を『器用貧乏』とネガティブに捉えてしまい、自分の価値を必要以上に過小評価してしまうことも原因として挙げられます。
仕事であれ趣味であれ、結果が出ていれば十分にできることとして認識しても良さそうなのですが、その分野のトップでないというだけで、なぜか自己評価が低くなってしまうことがあるんです」。
「できること」がわからないときの考え方

自分の「できること」がわからないとき、私たちはどのように受け止めたらいいのでしょうか。井上さんに「できること」がわからないときの考え方のポイントを伺いました。
「自分の『できること』がわからないときには、他の人との比較という視点から一旦離れてみることが重要です。『他の人よりも優っていること』を無理に探そうとせず、やっていても苦痛でないことや、意識しなくてもこなせることを思い起こしてノートや手帳、メモなどに書き出してみましょう。
たとえば、『本を読むのが苦にならない』『人と長く話していても苦にならない』など、本当にちょっとしたことでかまいません。そうやって書き出してみると、普段あまり意識していなかった自分の『できること』の種に気づくことができるはずです」。
自分の内面や過去の経験がヒントになる?「できること」を見つける方法

自分の「できること」を見つけるための具体的な方法についても、井上さんに伺いました。「できること」がわからないときは、次の方法を試してみてください。
苦にならないこと・自然にできることを細分化(要素分け)する
「自分の『できること』を見つける方法の1つ目が、『苦にならないこと・自然にできること』を細かく分解して要素分けすることです。以下に具体例を紹介しますので、自分に当てはめて考えてみてください。
普段、何気なくやっていることでも、要素ごとに分解してみることで、隠れた自分の得意領域や部分的な強み=『できること』が見えてくるはずです」。
【細分化の例】
ケース①:プレゼン
・プレゼンで話すことを考える(ちょっと苦手)
・プレゼンの資料作り(あまり得意ではない)
・人前に立つ(そこまで苦に感じない)
・聞き取りやすい声で話す(意識したことはないが、声が良いと言われたことがある)
・計画通りの進行(今まで時間をオーバーしたことがない)
→人前などの注目を集める場でも堂々と話すことができる、進行管理する力がある
ケース②:営業活動
・営業戦略の作成、下調べ(普通)
・資料作り(ちょっと苦手)
・社内調整(普通)
・クライアントとの商談(相手のニーズをキャッチするのが得意)
・アフターフォロー(そこまで苦に感じない)
→相手のニーズをうまく引き出すことができる
ケース③:遊びや旅行の計画
・やりたいことや行き先を考える(普通)
・予算や日程の条件を整理する(普通)
・移動手段や宿泊先などを比較する(ちょっと苦手)
・一緒に行く人の希望を確認する(相手の話を聞くのは好き)
・全体のスケジュールを組む(そこまで苦に感じない)
→複数の条件や相手の要望を踏まえて、最適なプランに落とし込むことができる
上記のように、自分の普段の行動を細かく要素分けすることで、隠れた自分の得意領域や「できること」が見えてきます。
他者からのちょっとしたフィードバックを振り返る
井上さんによると、「できること」は自分では気づきにくいため、上司、先輩、友人など、他者から褒められたことを振り返ってみるのも効果的だそうです。
「たとえば、『プレゼンは自分ではそこまで得意だと思っていないけれど、上司からプレゼンのときの声がとても聞き取りやすかったと褒められたことがあったな』というように、自分では当たり前だと思っていることの中に、自分の個性や『できること』が隠れている可能性があるんです。
振り返りをしやすくするために、自分がやった仕事、自分の考えなどを、日常的にパソコンや手書きの日記などに書いて残しておくのもおすすめですよ。思考を整理して言葉に残すことで、言語化能力を鍛えられるだけでなく、後から見返したときに『自分はこういうことをよく考えているんだ』と、自分の思考傾向に気づくきっかけにもなります」。
「できること」がないなら、自分で作ってしまう
「なかなか『できること』が見つからないときは、できることを作ってしまうというアプローチも有効です。どのような自分になりたいのかをイメージし、自己プロデュースしてみましょう。
実は、現在のビジネス環境では、基本的なことを安定してきちんとこなせる人材が以前より貴重な存在になっています。そのため、下記のようなことを意識して積み重ねていくだけでも、同年代との差別化につながる可能性がありますよ。
- 身だしなみや言葉遣いなどのビジネスマナーをきっちりする
- わからないことは社内で確認し、期限内にすぐに対応する
- 必要に応じて対面・オンラインを使い分けるなど、関係構築を意識する
- リモート環境でもリアクション・表情・カメラオンなど、相手に伝わりやすい振る舞いを意識する
意識していくつかの項目を実行することで、自分なりの『できること』を作り出していけるでしょう」。
例:
・身だしなみや言葉遣いなどのビジネスマナーをきっちりする
・わからないことは社内で確認し、約束通りすぐにメールで返信する
→相手に安心感を与え、信頼関係を築く行動ができる
例:
・対面、オンラインを状況に応じて使い分ける
・あえて手書きの資料を使って顧客の前で熱心さをアピールする
→年齢、社内外問わず誰とでもコミュニケーションがとれる
「できること」を活用する方法

自分の「できること」が明確になったら、求めている場所や人の前でその強みを発揮してみるのもおすすめです。最後に、井上さんに「できること」を活用する際のポイントについて伺いました。
「自分の能力をただ主張するのではなく、相手の立場や状況に応じて『何ができるのか』を見極めることが大切です。環境に応じて考え方や行動を変える柔軟さが、自分のできることを最大限活かすためのカギになるでしょう。
たとえば、コミュニケーション力に自信がある場合は、チームメンバーの特性や進行状況を見極めながら、『今回はリーダーシップを発揮する』『今回はサポート役に回る』など、臨機応変に対応しましょう。自分の役割を固定せず、周囲の状況をよく見ながらできることをどう活かしていくのかを考えることが大切です。
また、自分のできることを活かすときは、1つのスキルを単体でアピールするのではなく、複数のスキルを組み合わせてみるのが効果的です。
たとえば、「私の得意なことは、データ分析力とトレンドへの感度、そしてプレゼンテーション能力です。市場の動向やユーザーの行動ログから現状の課題を客観的に洗い出し、単なる数字の報告に留まらず、『今、世の中で何が求められているか』という時代にマッチした具体的な企画に落とし込むことができます」というように、具体的な場面を想定して説明すると、相手に伝わりやすくなります。
1つひとつのスキルは平凡に見えても、できることを掛け合わせることで『あなただけの独自の強み』に進化できるのです」。
自分の「できること」が見えてくると、人生の選択肢も広がっていく
近年はAIの台頭など、環境が目まぐるしく変化してきています。多くの情報を目にする中で、自分の「できること」を見つけるのが、昔よりも難しくなっているかもしれません。
インターネットやSNSからの情報に流されたり、他の人と比較したりと意識を外に向けてしまいがちですが、自分の「できること」は自身の内面や過去の経験の中にすでに存在しているはずです。
まずは、自分自身が何が好きでどんなことをしてきたか、あらためて振り返ってみましょう。その過程で「できること」が見えてくれば、人生の選択肢が広がっていくはずです。
話を聞いた人:井上 洋市朗さん
株式会社カイラボ 代表取締役。新卒入社後3年以内に会社を辞めた早期離職者にインタビューを行い、「早期離職白書」を発行。企業向けの離職防止コンサルティングや、企業の若手向け研修やキャリア研修を手がけ、高校生や大学生向けのキャリア教育の授業にも登壇。主な著書は『キャリアは言語化でうまくいく 書くだけで人生のモヤモヤがなくなる自分を言葉にする技術』(かんき出版)『若手が辞める「まさか」の理由』(秀和システム)。
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