知らない20代は老後が危ない? 確定拠出年金を始める6ステップ

老後に企業が社員に対して年金を支給する「企業年金」。まだ20代や30代のうちだと、他人事のように思いますよね。

知らない20代は老後が危ない? 確定拠出年金を始める6ステップ

老後に企業が社員に対して年金を支給する「企業年金」。まだ20代や30代のうちだと、他人事のように思いますよね。

「自分は特に何かしなくても、自動的に決まった額がもらえるんでしょ」。そう思っているなら、ちょっと危ないかもしれません。実は近年、そうした従来の仕組みを切り替えている企業が増えているのです。

そこで知っておくべきなのが、「確定拠出年金」という仕組み。今回は「20代の若手ビジネスパーソンがこの仕組みを知らないと、30年後に厳しいことになる」と警鐘を鳴らすファイナンシャルプランナーの坂本綾子さんに、確定拠出年金の概要や、始めるための方法を伺いました。

確定拠出年金とは


確定拠出年金(かくていきょしゅつねんきん:Defined Contribution Plan.通称DC)とは、退職時にもらえる「退職給付金」のうちの「企業年金」の一つ。この確定拠出年金を理解するには、従来の企業年金で主流だった「確定給付年金」と比較すると分かりやすくなります。

■確定給付年金:「給付額」を先に決定する年金。老後に決まった額を受け取ることができる。
■確定拠出年金:「拠出額(掛け金)」を先に決定する年金。現役時代に会社から掛け金を出してもらい、自分で運用して将来受け取る年金額を増やしていく。(企業型の場合)

つまり確定拠出年金は、会社が出したお金を自分で投資して運用していく必要がある年金です。そのため老後に受け取る年金の額は、自分がどう運用していくかによって大きく変わってきます。

会社によって、確定給付年金と確定拠出年金のどちらを取り入れているかは異なり、両方を組み合わせて導入しているところもあります。確定拠出年金には掛け金を出すのが企業か個人かの違いによって、企業型と個人型とに分けられます。会社で導入されていない場合には、個人型に加入することができます。

若手ビジネスパーソンは知らないと損する!?


坂本さんによれば、20代のビジネスパーソンはこの確定拠出年金を知らないでいると、将来困るといいます。その理由は、会社にとって負担の大きい従来の確定給付年金から、社員が自己責任で運用する確定拠出年金に切り替えている企業が増えているため。

これまで会社で運用してくれていた確定給付年金は、将来もらえる年金額が決まっていましたが、確定拠出年金は自分がどう運用するかによって、年金額が増えたり減ったりします。つまり皆さんの会社でも確定拠出年金が導入されたときに、意味や運用の仕方を知っているかどうかで、老後の生活が大きく左右されてしまうのです。将来困らないためにも、ぜひその仕組みを知り、自分で運用をする準備をしておきましょう。

確定拠出年金を始める6ステップ


では、実際に確定拠出年金はどのように始めればいいのでしょうか?

ステップ1:勤務先で確定拠出年金制度が導入されているか確認する


まず自分の勤める会社の年金制度を調べます。人事部などに問い合わせ、確定拠出年金制度を導入しているか、ほかに併用している年金制度はあるかを確認しましょう。

ステップ2:掛け金となる拠出額を確認する


確定拠出年金制度が導入されていた場合、企業が負担してくれる掛け金の額も確認しておきましょう。
月の上限は55,000円、他の企業年金と併用の場合は上限27,500円と定められています。

ステップ3:必要書類を提出して口座開設し、商品を選択する


すでに確定拠出年金が導入されている場合、まず社員研修などで説明を受けます。そして運用する口座の開設手続きをするための必要書類を提出し、商品を選択すれば運用を開始できます。

ステップ4:加入者サイトのIDやパスワードを確認する


運用は、会社が提携している運営管理機関に開設された自分の口座を通じて行います。加入時に運用商品を選択すると、毎月の積み立てが始まります。残高や運用状況の確認や売買注文などは、運営管理機関の「加入者サイト」上で行います。会社からIDやパスワードなどの設定情報をもらっているはずなので、確認しておきましょう。

ステップ5:加入者サイトにログインして、残高や買い付けた商品を確認する


IDとパスワードで加入者サイトにログインしましょう。まずは残高と、口座開設時に買い付けた商品が反映されているかを確認しましょう。

ステップ6:買い付ける金融商品について検討する(手数料を必ず確認)


買い付ける金融商品には、預金や保険も選べますが、ある程度の利回りを目指すなら投資信託が選択肢になります。
運用の際には、手数料(信託報酬)がかかることも覚えておきましょう。
初めはできるだけ手数料(信託報酬)が安いもので、国内・海外の株式や債券にバランスよく投資するものを選ぶとよいです。これからの世界の動向について、長期的な視点で考えて選びましょう。世の中の動きや金融・経済のニュースをチェックしながら、年に一回程度、残高を確認して、利用している商品がこのままでいいか検討しながら、自分で運用していきます。


投資信託について学びたい方は、以下のサイトが参考にります。

日本証券業協会の「学ぶ」コーナーの投資信託のページ
投資信託協会

確定拠出年金の注意点


確定拠出年金を運用していく際には、ぜひ知っておいてほしい注意点があります。

■中途解約はできない


確定拠出年金は中途解約ができません。60歳以降に受給できるときまで、途中でお金を引き出すことができないので、並行して、イザというときや近い将来に使うための資金として預金の積み立てを必ず行いましょう。

■転職時には制度の有無、変更点などを調べておく


企業年金制度は、会社によってさまざまです。将来、転職することになったら、必ず転職先に確定拠出年金制度が導入されているかを確認しましょう。転職先に確定拠出年金が導入されていれば、口座の資産をそちらに移換することができます。しかし転職先の運営管理機関で商品を選び直す必要がありますし、もし制度そのものがない場合には、個人型に移換するなど、対処法が変わってきます。

■「マッチング拠出」について


2012年から「マッチング拠出」制度が始まりました。これは、会社が出してくれる拠出額に、自分で上乗せをして掛け金にできるという制度です。このマッチング拠出制度を導入しているかどうかも会社に確認しましょう。自分で上乗せができますが、60歳の受給時まで受け取ることができないことをよく覚えておく必要があります。

確定拠出年金制度があっても、放置してしまっている人は多いといわれています。しかし、自分でどう運用するかによって、将来の年金額が大きく変わってくることは意外と知られていません。老後になってはじめて、「あのとき、きちんと運用しておけばよかった」と後悔しないように、今のうちから仕組みを理解して、実際の運用を行えるようになっておきましょう。


【参考サイト】
「確定拠出年金」ってぶっちゃけ何? 若手社員がベテランFPに聞いてみた「確定拠出年金」の"メリット"と"選べる金融商品"とは? |マイナビニュース
あなたの入っている企業年金は何でしょう? |知るぽると
確定給付企業年金と確定拠出年金の違い |北越銀行
識者プロフィール
坂本綾子(さかもと・あやこ)/ファイナンシャルプランナー。フォスター・フォーラム(良質な金融商品を育てる会)事務局次長。大学在学中より雑誌の編集に携わり、卒業後に取材記者として独立。1988年よりマネー誌、女性誌にて家計管理や資産運用の取材記事を執筆。1999年ファイナンシャルプランナー資格取得。2008年より情報サイト「オールアバウトマネー」ガイド。執筆に加え、家計相談やセミナー講師も務める。著書『お金の教科書』全7巻(学研教育出版)。

※この記事は2015/01/19にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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