セガの「中の人」はとてつもない行動力で周囲を巻き込む「巻き込み型 中の人」だった!

グループ全体で350ものアカウントを持つという「セガ」のツイッターアカウント。そのコンシェルジュ的役割!? をも担う、セガ公式アカウントの「中の人」にインタビューしました。

セガの「中の人」はとてつもない行動力で周囲を巻き込む「巻き込み型 中の人」だった!

ツイッター上での企業間コラボといって、まず思い浮かぶのが「セガ」。フォロワーのツイートに機敏に反応し、面白いネタを次々と実行に移していくその姿は、企業アカウントの進化の歴史そのものと言えそうです。聞けば、グループ全体で350ものアカウントを持つとか。そのコンシェルジュ的役割!? をも担う、セガ公式アカウントの中の人にインタビューしました。

https://twitter.com/SEGA_OFFICIAL

実現力と実行力が「中の人」の歴史を作った

――本日はよろしくお願いします。今でこそSNS発信による企業間コラボは珍しいものではなくなりましたが、御社がその先陣を切ったという感じがあります。きっかけはどんなことだったのでしょうか?

中の人:2014年に、セガとシャープさんとパインアメさんとで「洗濯祭」というイベントをやりました。弊社にはゲームセンター向けの「maimai」という音ゲーがあるのですが、これがドラム式洗濯機に似てるねという話になりまして。

シャープさんも「似てる」とツイートしてくださり、さらにゲーム内で飛んでくるアイコンが「パインアメ」に似ているという話から、ゲームイベントの会場に実際にシャープさんの洗濯機を持ち込んで、「maimai」風に改造して、ゲーム内のデータにイベント限定で本物の「パインアメ」の画像データを入れました。こういう企業コラボは初めてだったのですが、反響もあって、お互いに良かったと思います。

――企画はどのように進んでいったのでしょうか?

中の人:まず、私から両社の公式アカウントにDMで、「お話ししたいことがあるのでメールをお送りしていいですか?」と連絡しました。それから企画書を送りました。今でこそ企業間コラボやタイアップはよく見かけるようになりましたが、当時はほかに見当たらず、シャープさんもパインアメさんも会社を説得するのが大変だったそうです。

https://togetter.com/li/708521

――お察しいたします。フォロワーにはどのように伝えていったのですか?

中の人:打ち合わせをリアルタイムで見せました。「シャープさんが大阪から移動して、セガに来社した」「いま打ち合わせをしている」とか。その様子の写真もアップしました。「ただただ、見た目が似てるっぽいから、なんかやりましょう」とか、「洗濯機を持ち込んで一生懸命、「maimai」に擬態するシールを貼っている」とか……。

――なるほど。それはもともと、過程も見せる企画としてスタートを切ったんですか?

中の人:最初からそこまで考えていたのかというと、そうではなく、どんどんおもしろいアイデアが湧いたりキャッチーな写真が撮れたりしたので、それを自然にツイートしていったんだと思います。

――それが結果的にフォロワーにとっても企業にとっても良かったんですね。

中の人:ワクワク感が伝わったと思います。きっと先が見えない期待感を共有していったことが面白かったのでしょう。

――ツイッターならではの機動力ですね。結果だけじゃなくて、打ち合わせからレポートしていくというのは今っぽいですね。ただ当時は前例がないはずで、その発想力がすごいですね。

中の人:ほかにも、靴下を洗った件はご存知ですか?

グループ会社のセガトイズから「クレヨンしんちゃん」の玩具「クレヨンしんちゃん 対決!ぶーぶーケツミントン」を新製品として発売するにあたり、アニメでもネタになっている「ひろしの靴下」の臭いをケツミントン熱戦後のにおいとして再現するという企画を東京おもちゃショーで展示したんです。

ケースの正面にはスライドさせる「嗅ぎ穴」の小窓があり、鼻にツーンと刺激臭がするくらい。「ひろしの靴下」を嗅ぐと、みんな気絶するくらい臭いっていうのは有名な設定なので、おもちゃショーのセガトイズブースはその靴下の臭いを小窓から嗅いでみたいという老若男女で大行列。メディアでも大変話題になりました。

そしたら、花王のアタックさんのツイッターから、「これ、終わったら洗っちゃダメですか?」ってリプライが来たんです。すぐにシャープさんが「(うちの)洗濯機で洗いましょうか?」と名乗りをあげ、タニタさんがちょうど『においチェッカー』っていうからだのニオイを測るデバイスを出すから、それで測ろうと、主審:タニタで話が膨らんで。

さっそく「やってみよう!」となって、靴下を厳重に保護して運び出しました。私たちにも、どうなるかわからない。「『アタック』で洗っても、臭いが残るかもしれませんよ、それでもガチ対決でいきますよ」って。結果的には、ほとんど臭いは消えました。本当のことを言うと、ほのかにひろし臭は残っちゃったんですけどね(笑)。

――(笑)。結果的にはどの企業もプラスになりましたね。

中の人:「アタック」のパワーは充分に伝わったと思います(笑)。SNS上でも「うちの旦那の靴下もこれで洗いたいから洗剤を変える」っていう方がいらっしゃいました。シャープさんの洗濯機もおしゃべり機能や洗浄力が伝わりましたし、タニタさんの「においチェッカー」も、においを数値化できることが伝わったと思います。

正直なところ、セガトイズのおもちゃは期待ほどは売れなかったです(笑)。でも売上に直結しなくても、セガ面白い、セガ大好き、とセガを好きになってもらうことが目的なので。 

長く見ている人なら分かっていただけると思うのですが、企業間コラボって、実現するのがめちゃくちゃ大変。こういう企画は、スピード勝負な上に、何のためにやるのかという目的に対してブレないことが重要なんです。人件費を除けばほぼコストはかかってないとはいえ、「熱意」だけではなく実現する行動力は大切ですね。

アイデアだけなら誰にでもあるけれど、それをやり切るのは大変です。しかも社内調整に一番苦労する。社内稟議にかけて、数字の根拠も提出して、社外と交渉して、見ている側が楽しめるかというエンタテインメントの部分も担保して……。大変ですが、自分自身も思いきり楽しむのがポイントですね。 

セガはゲーム会社にあらず! 総合エンタテインメント企業がすべきこと

――ツイッターを発信する上で、心掛けていることはありますか?

中の人:「もっとセガを好きになってもらいたい」という気持ちがあるので、親近感、信頼感を大切にしています。ゲームの専門用語に頼らず、フォロワーに誤解なくわかりやすく伝える表現にも気を遣っています。なので、なるべくやさしい日本語を使うことを心掛けています。毎日小学生新聞、読んでいるんです。

――ツイッターのためにですか?

中の人:そうですね、それに、好きなんですよね。目線を合わせてくれてわかりやすい。ノーベル化学賞などの難しい内容も、すごく丁寧に説明されていて。小学生にもなんとか伝えたいという気概を感じます。編集長がたまに本音を言うところも好きです。それはセガの公式アカウントでも同じです。どういう人がつぶやいているのか、安心してもらうためにたまに自分のことを話します。

といっても、自分自身が前面に出るのではなく、いろんなお客さまをつなぎたい。点と点を繋いで線にしていくように、お客さまとお客さま、お客さまとセガをつなぐお手伝いをする存在でいたいと考えています。いろんなハッシュタグを使って盛り上げたりもします。タイトルの周年や、セガの誕生日だからお祝いしよう、みたいに。来年セガは設立60周年なんです。

――前回の東急ハンズの取材では、「中の人」には、会社を外側から見る目が必要という話が出たんです。

中の人:それもすごく大事なことだと思います。

――東急ハンズ井村屋は、もとの自分の仕事にプラスアルファする形でアカウントの運用をなさっていましたが、セガではプロジェクト化されているのでしょうか?

中の人:そうですね。私の場合、仕事の半分はSNS運用、残り半分は広報の仕事です。取材対応および社内報の記事を書いたり、リリースを書いたりしています。

社内報の取材の仕事は好きですね。社内のことがよくわかるし、開発者、発案者の気持ちや思い入れを知れるので、ツイートにも活きています。

350アカウントと連動する「中の人」の頭のなか

中の人:セガグループは、全体で350もの公式アカウントを運営しています。運営店舗が200近くあって、タイトル、サービス、ゲームソフト、スマホゲーム、アーケードゲーム……。そのほかにも、グループ企業のなかにはアニメとか、セガトイズとか、ダーツなどもあって。たぶんアカウント数は日本でもトップクラスの数かもしれないですね。

――350アカウントはおのおの独立している状態なのでしょうか?

中の人:はい。それぞれコアな内容が多いですね。そこで、私が担当しているセガ公式アカウントでは、グループ全体を通じた情報をお届けしています。

私、セガの公式アカウントを壁新聞みたいにしたいんです。セガは、総合エンタテインメント企業ですから、いろんな楽しい情報をバランスよく発信していきたい。一方で、壁新聞のようにみんなからの投稿や疑問にも答えていったり大喜利で交流したいと思っているんです。

――なるほど。ほかに、ツイッター投稿を通じて、どんなことを届けていきたいですか?

中の人:私は食べこぼしたり忘れ物をしたりという失敗をすることが多くて、社会人になりたてのころはよく落ち込んでいました。でも、ツイッターでは失敗しても一生懸命本気でやっていることは誰も責めないし、応援してくれる。上手にフォローしようとする傾向もあり、私自身、それに救われたこともありました。

そういう寛容さを表現する出来事や同僚の温かさに触れたときは必ずツイートするようにしています。なぜなら、それを見た人が勇気づけられたり、「そういう同僚いいな」「自分もそうなりたい」とつぶやき、そう心がけたり、その思いがどんどん伝わっていけば、いろいろな職場がよくなると信じているからでもあります。

――ツイッター運用に限らず、仕事との向き合い方も参考にできそうです。ツイッターはもとより「個の時代」なんて言われていますが、若手ビジネスマンに対して、働く上でのアドバイスをお願いします。 

中の人:「個の時代」と言われ、企業アカウントも個が輝くことで脚光を浴びるようになりましたが、「個の時代」だからといって組織が軽視されるわけではなくて、個の力をチーム力や組織力で活かしていくとより強みが出ると思っています。

セガでも350の公式アカウントが、それぞれ個性的な投稿をしながら、チーム力でセガというブランドを活かしています。

上司が任せてくれるのなら上司に恩返しをするつもりで、先輩に感謝したことは自分が後輩に惜しみなく出し切るつもりでいると、結果的にそれに共感する人が集うようになり、働きやすい環境になるのではないかと思っています。「“一緒に働きたい人”に自分がなる」ということを心がけたいですね。

―――

目線を等しくする他企業の「中の人」とも協業しながら、フォロワーも巻き込んだ数々のイベントを作り上げてきたセガの公式アカウント。その瞬発力を伴った行動力は、ビジネスにおける多くの場面において見習うべきものとなりそうです。

今回インタビューをさせていただくにあたり、「中の人」にビジネスマンにおすすめのゲーム機、グッズなどもピックアップしていただきましたので、そちらもご覧ください!

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文/土田貴史

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