「えっ、私って社畜?」気付いたらすぐ学びたい、アドラー心理学4つの教え

『嫌われる勇気───自己啓発の源流「アドラー」の教え』が30万部を超えるベストセラーとなるなど、アドラー心理学が注目を集めています。

「えっ、私って社畜?」気付いたらすぐ学びたい、アドラー心理学4つの教え

『嫌われる勇気───自己啓発の源流「アドラー」の教え』が30万部を超えるベストセラーとなるなど、アドラー心理学が注目を集めています。

アルフレッド・アドラーはオーストリア出身の心理学者で、日本のビジネスパーソンに不動の人気を誇る『人を動かす』の著者D・カーネギーや、『7つの習慣─成功には原則があった!』の著者スティーブン・R・コヴィーにも影響を与えたといわれます。今回は、会社に縛られないために知っておきたい、アドラー心理学の中の4つの教えを、30年間アドラー心理学の研究を続ける岩井俊憲さんに紹介していただきました。

なぜアドラー心理学が受け入れられているの?


そもそもなぜ、アドラー心理学が最近になって受け入れられるようになってきたのでしょうか。

「行き過ぎた競争社会や企業が利益を追求し過ぎた背景で、いわゆる“社畜”と呼ばれる人たちが大多数を占める日本ですが、今の10?30代前半の若者たちは、そんな“社畜”という生き方・働き方を真っ向から否定しますよね。実は、アドラー心理学は何十年も前から彼らと同じ価値観を提唱しています。だからアドラー心理学が、若手ビジネスパーソンにとって、非常に大きな心のよりどころになっているのです」(岩井俊憲さん:以下同じ)

若者の生き方・働き方が多様化していくなかで、退職や転職、独立、起業などを考える若者は増えています。アドラー心理学は、そんな若者の価値観を肯定し、勇気を与えているのだといいます。

それでは、会社に縛られないために知っておきたい、アドラー心理学4つの教えを見ていきましょう!

教えその1「自己決定性」?依存心ではなく自立心を持つべし?


「アドラー心理学は、『人は一人一人ユニークなもの』だと言っています。uniqueとはつまり、かけがえのない独自性を持つ存在だということです。ですから、たとえ会社員であっても、『縁あってたまたまこの会社にいるだけ』という考えを持つべきです」

会社に依存し切ることは、個人が持つユニークさにふたをしてしまうのだと岩井さんは言います。

「依存心ではなく自立心が大切です。『レベルチェック』と言うのですが、自分の置かれている立場を俯瞰し、複数の尺度から見ること。これからを生きる若者にとっては、会社に依存しないインディペンデントな存在であることが大切なのです」

つまり、自分を客観視できれば、会社が倒産してしまったときでも、転職や独立をしようというときでも、まったく問題なく次のフェーズへ進むことができるのです。

教えその2「共同体感覚」?小さな価値観から抜け出すべし?


「アドラー心理学では、『共同体感覚』というものをとても大切にしています。例え話をしましょう。『ある企業が日本に工場を持っていた。しかしその工場が排出する公害が問題となり、日本に工場を置けなくなった。そこで、東南アジアに工場を移転した』。もしもあなたがその会社の一員であれば、声を上げなくてはいけません。場合によっては告発者になる勇気も必要です」

会社だけでなく、それを取り巻く社会にまで目を向けること。会社という小さな価値観にどっぷり漬かると、この「共同体感覚」が失われてしまうと岩井さんは話します。

「今の若者は、総合的学習やインターネット社会によって、この共同体感覚に優れていると思います。だからこそ、就職した企業の価値観だけにとらわれてしまうのは、とてももったいないことです」

企業というのは、小さな価値観を反映する組織の一つにすぎません。地域や国、世界、宇宙全体にまで広がるような大きな「共同体感覚」を失ってはいけないのだそうです。

教えその3「目的論>原因論」?過去を振り返らず、未来を見据えよ?


「『失敗の原因を探して撲滅する』『悪いところを指摘する』というのが、これまで企業が取ってきた生産性原理と呼ばれる『原因論』の社会です。しかしこれでは、人間は成長できません。主体性がなく、個人の意志が問われないことが多いからです」

「なぜ、どうして」と過去を振り返ることに重きを置く「原因論」よりも、未来志向型の「目的論」を持つべきだと岩井さんは語ります。

「アドラー心理学のアプローチは常に『目的論』です。未来の目標が現在を規定し、そこでは人間の意志が問われるのです。失敗を成長のために必要なものだと許容し、そのプロセスを重要視します」

これからを生きていく若者にとって、成長に不可欠な『目的論』ほど大切なものはないのではないでしょうか。

教えその4「やりがい」?『何を持つか』より『何をするか』を考えよ?


「アドラーの弟子であるW・B・ウルフがその著書『どうすれば幸福になれるか』の中で、having、being、doingについて語っています。havingは『所有すること』です。beingは『何者かであること』。doingは『何をするかということ』。ウルフは最も幸せなのはdoingを追い求めることだと言っています」

doing、つまりやりがいを追求することが、人間にとって最も幸せだということのようです。岩井さんは続けます。

「特に最近の若者は、所有にこだわりませんよね。やりがいを追い求めて転職や起業をする。その考えは、競争社会に対して協力社会と呼ばれます。havingよりdoingで結ばれたつながりのほうが、より連帯感が強く強固なものだとも言えます」

いかがでしたでしょうか。会社員人生や転職などで悩む若手ビジネスパーソンにとって、アドラー心理学は心のよりどころになりそうですよね。ここで挙げたアドラー心理学の考え方以外にも、若手ビジネスパーソンにとって参考になりそうなものはたくさんあるようです。人生の転機を力強く踏み出すためにも、一度アドラー心理学を勉強してみるのはいかがでしょうか。


識者プロフィール
岩井俊憲(いわい・としのり)/1947年栃木県生まれ。早稲田大学卒業後、外資系企業の管理職などを経て、1985年に有限会社ヒューマン・ギルドを設立。アドラー心理学に基づくカウンセリング、カウンセラー養成、各種研修を行っている。近著に『マンガでやさしくわかるアドラー心理学』(日本能率協会マネジメントセンター)、『「もう疲れたよ…」にきく8つの習慣 働く人のためのアドラー心理学』(朝日新聞出版)などがある。

※この記事は2014/09/03にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。

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