海の色と空の色。今すぐにでも航海へ繰り出せそうな、爽やかなブルーで彩られたオフィス。
扉の向こうにはどんな景色が広がって……ん?キャットウォーク???
オシャレなオフィスの中へと足をのばすと、そこにはキャットタワーや猫のおやつ、それに猫用おもちゃがちらほら。
運用型広告代理店の株式会社オーリーズでは、正式な5番目の社員(にゃいん?)である猫の“まる美ちゃん”が、コミュニケーション担当として毎日社員のみんなとともに業務を行っているそう。今回は代表取締役の鈴木多聞さんに、彼女の仕事っぷりや魅力について、また出会いのきっかけについてのお話を伺います。
普段は猫が苦手というあなたも、まる美ちゃんの愛らしさに思わずときめいてしまうかも。
社内のピリッとした雰囲気を温和にするコミュニケーター
―まずはオーリーズはどのような事業を展開されているか、簡単にお伺いできればと思います。
鈴木多聞さん(以下、鈴木):われわれは運用型広告専業の広告代理店になります。GoogleアドワーズやYahoo!プロモーション広告をはじめとした検索連動型広告やディスプレイ広告、Facebook広告などの運用代行とインハウス支援のサービスを提供しています。日々、管理画面に向き合いながら戦略を練って、どのような広告を打ち出せばよいか、どれくらい投資すべきかを考え続けています。
―それだけ聞くと、非常に堅そうな職場を想像してしまいますね。皆さん、とても集中して業務に取り組んでますし、オフィス内も非常に静かなようです。
鈴木:ダイレクトにお客様の予算をお預かりして運用している分、プレッシャーを感じながら仕事をしています。そのため良くも悪くも、和気あいあいと話しながら業務をしているというよりも、どちらかというと黙々とパソコンに向かっている時間の方が長いんです。
猫がオフィスにいるので周りからは“すごく自由でフランクな組織”とイメージされやすいのですが、どうなんでしょうね。実際は逆にピリッとなるぐらい緊張感のある雰囲気になっていることが多いかもしれません。
でも、そんな雰囲気をほどよく崩してくれているのがコミュニケーション担当の猫社員、まる美です。張り詰めた空気のときにこそ、うまいタイミングでブレイクタイムをつくってくれるというか。そこで社内のバランスをとってくれるのが彼女の大きな仕事の一つでもありますね。
会話のきっかけも、全てがまる美
――そもそも、まる美ちゃんを飼うきっかけって何だったのでしょうか?
鈴木:2年前、ちょうど弊社の業績が上がりはじめたという時期に、今後は運用者である社員たちにとって最高な環境をつくるをことを考え、設備まわりに対して投資をしていこうという話が挙がりました。そこで、副社長の足立に「どこに設備投資していこうか」と相談ベースで聞いてみたら、「会社とは関係ないんだけど、最近、実家で飼っていた猫が亡くなってしまって。寂しいから、猫のいるオフィスで一度働いてみたいなあ」と言ったんです。
そのときは、「あー、まぁええんちゃうか」って軽く返事したんですよ、冗談だと思って。でも足立は本音で本気だったんです。話をした当日に早速猫を探しに行ったようで、会社に戻ってきたなと思って足立に目をやったらかわいい子猫を抱えていました。
それが、まる美との出会いです。
―いきなりの展開だったわけですね。鈴木さん自身、驚きや動揺はありませんでしたか?
鈴木:正直そのときは「え?まじか?」って思いましたね(笑)。てっきり口約束のつもりだったので。
一応、足立に「猫を飼う以上はちゃんと面倒見るんだよね?」と話したら「もちろんやん。一生かけて面倒見るわ」って。猫の平均寿命って10年以上だといわれているのですが、会社って10年続いたら長寿だといわれている中でまる美を飼うってことは、会社を10年以上続ける覚悟の表れでもあると思います。
足立はそれ以来、エサをあげるために平日や土日に関係なく毎朝7時30分に出社するようになりました。しかも、世話をするためにオフィスから徒歩で通え、なにかあったときにまる美を迎えいれられるように、ペット飼育がOKなマンションに引っ越しまでしたっていう…。
―連れて帰ったりはしないのですか?
鈴木:足立いわく「猫は場所が変わると、環境に慣れるのが大変」らしいので、極力ストレスがかからないよう、会社から連れ出さないようにしています。ただ、会社に誰もいないとき何かあったら大変なので、外からでも様子が分かるようにペット専用の監視カメラを設置しました。
苦労もあるけどやっぱり大事。仲間の一員・まる美ちゃん
――まる美ちゃんを飼ったことで、苦労した点などありますか?
一番苦労したのはやっぱりオフィス選びです。まる美を連れていくにあたって「猫OKなオフィスを探さなアカンよね」って話になりました。で、いざ物件を探したらセキュリティーの問題で条件に合う建物が全然見つからない。しかも、猫を飼ってもOKなビルって通常よりも賃料がグンと上がってしまうんです。
「猫1匹のために賃料の高いオフィスに移転するってどうなんだ」って話し合いにもなりましたが、なんだかんだ一番愛着がない私が「いや、絶対にまる美を飼えるオフィスを探す」って押し通しました。結局、8棟ほどビルを見て回って今のオフィスにたどりついたんですよ。
他に苦労した点といえば、ドアの入り口付近をまる美が動き回ることがあるので、警備用センサーが反応して警報が鳴るトラブルが一時期は頻繁にありました。その都度、警備会社さんに平謝りです(笑)。
―いろいろ苦労をともにしてきたわけですね。まる美ちゃんの入社前、入社後で社内にはどのような変化がありましたか?
鈴木:社員みんなの会話が増えましたね。私たちが黙々と作業に集中している机の上をまる美が突然横切ったり、静かなときにガタガタって大きな音をさせたと思ったら、いきなりゴミ箱の中に落ちたり。それを見たときに「かわいいね」なんて、社員同士で盛り上がっています。
特に変化があったのは副社長。普段、本当に仕事に厳しい足立が猫に対して「まるちゃん、どしたん?あーそうかそうかー」って優しく呼びかけている姿に、社員は「こんな一面があるんだ」ってかなりのギャップを感じているようです(笑)。
入社前は、業務の特性上すごく集中しなくてはならないし社内全体が緊張感漂う感じで、若い社員が多い割にコミュニケーションが少なかった。今はみんなが打ち解け、笑顔が増えましたね。
先日開いた社内での飲み会も、2時間まる美の話題で持ち切りでした。仕事に絡まない範囲で共通の話題があるから、話も盛り上がるんです。
―社外の方からはどのような反応がありますか?
鈴木:やっぱり猫がいることで面白がっていただけますし、会話のきっかけは作りやすいですね。猫=オーリーズってイメージで弊社のことを覚えていただけたり。第一声でだいたい「猫、いるんですね」って言われます。
ただ会議中に扉の前をまる美が横切ることも多く、お客様の視線が猫の方へ向いていることが多いですね。大事な打ち合わせで、もうすぐ話がまとまりそうっていうピリリとした局面でも、お客様がまる美を目で追っているのが分かるんです(笑)。
航海をモチーフにしたスタイリッシュなオフィス
―オフィス全体がまる美ちゃんに優しい! 皆さんの思いやりと愛情がいっぱいですね。オフィス全体はとてもクリーンでスッキリしています。
鈴木:入り口でスリッパに履き替えていただきましたが、土足禁止になったのはまる美が理由です。前のオフィスは土足だったのですが、まる美が汚れた床を歩いた足で机の上に乗ると資料が汚れる可能性がありますし、衛生的にも良くないと思って変えました。オフィスの清潔感を保つためにも、週2回みんなで掃除をしています。
鈴木:ちなみにオフィスは、“どこまでも広がる空と海(時代と世界)を超える”をコンセプトにしています。WEBサイトや名刺、入り口の床にコンパスの模様が描かれているのも、指針を示すという意図が込められているんです。
―最後に鈴木さんご自身が、まる美ちゃんが入社して良かったと思う点はどこでしょうか?
鈴木:繰り返しになりますが、一言でいえばコミュニケーションが円滑になる、これに尽きます。足立とかメンバーに言わせるともっとたくさんでてくるのでしょうけどね(笑)。私自身はもともと、猫が特段好きではなかったのですが、飼ってみるとやっぱり愛着は湧きますし、とにかく全体の雰囲気が良くなりました。
ブランディング?から福利厚生という面でも非常に活躍してくれているんじゃないかなと。
社内全体の空気感を前向きに、良い方向へ導いてくれていることは最も大きな功績だと思っています。今思うと、オフィスに猫を招かない理由がよく分からないくらいですね。それくらいメリットが大きいかも。
―事業のかじ取りは、もしかしたらまる美ちゃんが行っているかもしれませんね。どんな困難な航海の旅路でも彼女が守ってくれそう。
社内外のコミニケーション担当のまる美ちゃん
まんまるなお顔ともっふもふのボディーでドンっと構えるまる美ちゃん。オフィスの空気を和らげ、そしてチームワークを強めるべく、今日もコミュニケーション担当として奮闘しています。
マイペースなまる美ちゃんですが、オフィスの中ではしっかり自身の任務を遂行してくれているようです。彼女の航海はまだまだこれから?かもしれませんにゃ!
(取材・文:真貝聡/撮影:笹井孝祐)
識者プロフィール
鈴木多聞(すずき・たもん)代表取締役
20歳のとき、人生をかけて世の中の思いを形にできるようなインパクトのあることを成し遂げたいと考えビジネスコンテストに参加した後、キャリア支援事業と地域共創(NPO法人)事業を立ち上げる。その後、経営コンサルティングファームに入社。新規事業としてファイナンスコンサルティング部門に所属、インターネットサービス業種を中心としたM&Aや資金調達に従事し、2011年9月に株式会社オーリーズを登記設立する。経営理念に「本質的であること・問題解決をすること・インパクトを与えること」を掲げ、2014年に運用型広告に特化した広告代理店として、広告運用とインハウス支援事業を開始、現在に至る。
※この記事は2017/05/22にキャリアコンパスに掲載された記事を転載しています。
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